
「作って、そのまま食卓へ。」毎日の料理が楽になる、新潟・燕の老舗が生んだ「おかず鍋」
2025/10/27
毎日の料理、作ったあとの「保存」や「温め直し」が少し面倒に感じた経験はありませんか?そんな日々の小さな悩みに応えるため、調理から食卓、保存までを一つで完結させる「おかず鍋」が、金属加工の聖地・新潟県燕市で生まれました。今回、編集長のアッキーが注目したのは、この画期的な「おかず鍋」です。65年の歴史を持つ老舗製作所を舞台に、父が守ってきた品質と、娘の新しい視点が生んだ、暮らしに寄り添う道具の物語。株式会社宮﨑製作所 代表取締役の宮﨑豊氏に取材陣が詳しく伺いました。
―まずは、宮﨑製作所がどのように始まったのか、その歴史を教えてください。
宮﨑 創業者である私の義父が、1960年に文字通り何もないゼロの状態からこの事業を立ち上げたのが始まりです。金属加工の街・燕市は、当時から洋食器作りが盛んでした。義父もその流れの中で、最初はお土産ものとして売られていたような、ケーキフォークよりも一回り小さい「姫フォーク」作りからスタートしたのです。当時はまさに、一本一本手作業で磨き上げるような時代でした。そこから時代のニーズに合わせて少しずつ事業を拡大し、やがて鍋などの家庭で使われる器物を作るようになりました。
―鍋メーカーとしての地位を確立されたきっかけは何だったのでしょうか。
宮﨑 大きな転機となったのは、1982年に発売した当社の代表作「オブジェ」シリーズです。これは企画から製造、販売まで全てを自社で一貫して行うという、当時としては画期的な挑戦でした。この「オブジェ」が、品質に厳しい全国の有名百貨店のバイヤーの目に留まり、広くお取り扱いいただくようになったのです。そこから、”宮﨑製作所”は単なる下請け工場ではなく、一つのブランドとして認知され始め、鍋メーカーとしての地位を築くことができました。


その誠実なものづくりへの思いはフォーク作りから始まり、やがて鍋へと形を変えていった。
ロングセラーの「オブジェ」シリーズの商品は100を超える。
―宮﨑社長は、初めから家業を継ぐご予定だったのでしょうか。
宮﨑 大学卒業後は、金融業界で働いていました。全くの畑違いだったのですが、結婚を機に妻の実家である宮﨑製作所へ入社。当時は若かったので、「ここで頑張れば、自分も経営者になれるかもしれない」というチャンスだと感じていましたね。
しかし、道のりは平坦ではありませんでした。「オブジェ」シリーズより高価格帯で、1万円を超える鍋をいくつか開発したのですが、ヨーロッパの有名ブランドの壁は厚く、15年ほど苦戦が続いた時期もあったのです。それでも、お客様に誠実に向き合い、ひたむきに品質を守り続けてきました。
―そして今年、創業65周年を機にリブランディングをされたそうですね。
宮﨑 今回のリブランディングは、主に娘の絢子が中心となって進めてくれました。娘は以前から、「オブジェ」など商品の良さは知られているのに、作り手である“宮﨑製作所”という会社の名前はあまり知られていない、という課題意識を持っていたようです。これまで堅実に守り抜いてきたこの品質と思いをもっと直接お客様に届けたい。その情熱が、私たち親子を二人三脚でのリブランディングへと突き動かしたのです。
―今回ご紹介いただく「おかず鍋」は、どのような経緯で生まれたのですか?
宮﨑 リブランディングの核として、「日本の家庭料理をおいしくする、永くたくさん使いたい台所道具をつくる」というコンセプトを掲げました。開発の原点は、実は作り手である娘自身が感じていた日々の小さなストレスにありました。「デザインが可愛くても重いお鍋を毎日使うのは大変」「ステンレス鍋は便利だけど、料理が残ったときは別の保存容器に移し替えないといけないのが手間」。そんな、多くの人が感じているであろう「ちょっとした面倒」をなくしたいという切実な思いがありました。肉じゃがのような日本の家庭料理をイメージし、調理して、そのまま食卓へ。残ったら蓋をして、そのまま冷蔵庫へ。そんな理想のシーンを追い求め、「こういうのが、本当に欲しかった!」と未来のユーザーが心から共感できる鍋を目指して、開発はスタートしたのです。


調理、食卓、保存。すべてがこの一つで完結する。
―「おかず鍋」の最大の特徴は、調理後に鍋ごと冷蔵保存できる点ですが、どのような秘密があるのでしょうか。
宮﨑 その秘密は、本体に使われている独自の「チタニウム・アルミニウム・ステンレス」の三層鋼にあります。この素材で作っているのは、今のところ当社だけです。特に内側に使われているチタンは、人体に安全な素材です。医療現場で人工骨にも使われるほどで、調理器具としての最大の利点はその優れた耐食性にあります。
塩分や酸に非常に強いため、鍋の中に料理を入れたままにしておいても錆びたり、金属の味が料理に移ったりする心配がありません。そのため、お鍋に残った肉じゃがの味や香りを損なうことなく、安心して次の日までおいしく保存できるのです。
この製法は量産が難しく、一つひとつ燕の職人が丁寧に手作業で仕上げています。持ちやすさ、洗いやすさを追求し、ミリ単位で調整された取っ手の角度や、滑らかなフチの仕上げにも、私たちのこだわりが詰まっています。


無水調理や余熱調理も可能で機能性バツグンなおかず鍋は、
職人が手作業で仕上げ、使いやすさを実現。
冷蔵保存が考慮されたコンパクトなデザインも嬉しいポイント。
―具体的な使い方についても教えていただけますか。
宮﨑 調理を終えたら、そのまま食卓へ。器としても映えるシンプルな佇まいが魅力です。そして、おかずが残ったら蓋をして冷蔵庫へ。洗い物が一つ減るだけで、忙しい夜の自分時間や、家族との対話が少し増えるかもしれません。
翌日はそのまま火にかけて温め直せます。例えば残った肉じゃがを潰してチーズを乗せ、オーブンで焼けば、おいしい「スコップコロッケ」にリメイクすることも簡単です。

鍋のまま保存した肉じゃがにチーズをのせて、
「スコップコロッケ」にリメイク。
そのまま食卓に並べて、洗い物も楽ちん。
―お客様からはどのような反応が寄せられていますか?
宮﨑 当社の「オブジェ」シリーズを長年愛用してくださっているお客様からも、「まさにこれが欲しかった」という喜びの声を多くいただいています。特に嬉しかったお声があります。「行平鍋(片手鍋)をよく使っていたけれど、あと少し、取っ手がすっきりしていたら収納しやすいのに…」と感じていた方が、この「おかず鍋」を見て一目惚れしてくださった、というものです。本当にいいものを知る長年の愛用者だからこそ、こうした細やかな点に気づいてくださるのだと思います。その願いに応えることができたのだと感じました。
―長く愛用されるお客様が多いのですね。
宮﨑 「30年、40年と使い続けています」というお客様が、本当にいらっしゃるんですよ。長年使っていると、うっかり鍋を焦げ付かせてしまうこともあります。そんな時は、お客様から鍋をお預かりして、当社の職人が丁寧に手作業で研磨し、再び輝きを取り戻してお返しするアフターサービスも行っています。「売って終わり」にはしない。世代を超えて使える道具を作り続けるという、私たちの誠実な約束です。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
宮﨑 これからも、「日本の家庭料理」に寄り添う道具を届け続けたいというビジョンは変わりません。以前、ある著名な料理研究家の方が「最近の食卓は、“おふくろの味”じゃなくて“袋の味”になってきている」と仰っていました。冷凍食品もおいしくて便利ですが、一品でも二品でも、手料理の温かさや家庭の味を子どもたちに伝えたいです。その手助けとなるような道具を作り続けたいと考えています。この鍋を選ぶことが、日々の家事を楽にするだけでなく、家族の「おいしい記憶」を育むことに繋がっていけば、これほど嬉しいことはありません。
―素敵なお話をありがとうございました!

「おかず鍋」
価格:¥14,300~(税込)
店名:宮﨑製作所
電話:0256-64-2773(9:00~17:00 ※土日・祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://miyazaki-ss.co.jp/product/dishpot/
オンラインショップ:https://miyazaki-ss.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
宮﨑豊(株式会社宮﨑製作所 代表取締役)
1962年、新潟県生まれ。大学卒業後、金融業界での勤務を経て、1987年に結婚を機に妻の実家である株式会社宮﨑製作所へ入社。畑違いである金属加工の世界に飛び込み、ヨーロッパの有名ブランドとの厳しい競争など、数々の困難を乗り越えながら、創業者から受け継いだ誠実なものづくりの精神を守り抜いてきた。2004年に代表取締役に就任。創業65周年を機に、娘と共にリブランディングを手がけ、「おかず鍋」など現代の暮らしに寄り添う新しい道具づくりにも情熱を注いでいる。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/宮﨑製作所>




























