京都土産で大人気「阿闍梨餅(あじゃりもち)」で有名なお店、満月。その名をとった看板菓子「満月」にも注目!

2024/03/11

江戸末期1856年創業の老舗菓子店「満月」。こだわりの製法で職人が手がける「阿闍梨餅(あじゃりもち)」は、京土産としても大人気です。編集長アッキーこと坂口明子も京都に行ったら、必ず購入しているというリピーターの一人。その老舗店が、一度は生産の途絶えた菓子を復刻されて注目されています。そこで取材陣が5代目で代表取締役の西浦裕已氏に、商品開発のエピソードやこだわりなどを伺いました。

株式会社満月代表取締役 西浦裕已氏
株式会社満月 代表取締役の西浦裕已氏

―現在5代目と伺っています。長年歴史のある会社を継がれたときの思いなどをお聞かせください。

西浦 京都では自慢になりませんが、しかし、創業から168年という歴史があると、職人気質というか内向きなところもあって、先代はとりあえず良いものを作っていれば、必然的にお客さんが増えていくという考え方だったんです。一方で、私は弊店の商品をまず知ってもらいたい。知ってもらわないことには京都土産の選択肢に入れてもらえないと思っていました。会社を継いだ当初は、北海道から沖縄まで全国を飛び回り、京都の物産展にも積極的に出店させていただいていました。

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創業は1856年(安政3年)と老舗の満月。当時は出町柳橋近くに店舗を構えていた。

―老舗だからこその取り組みですね。

西浦 はい、「不易流行(ふえきりゅうこう)」という言葉がありますが、世の中には変えてはいけないものと、変えていかなければいけないものがあって。時代時代に応じて、それらを見極めていく必要があると思っています。私の次の世代になったらその人たちの考えでやったらいいのです。そうでないと、継続はなかなか難しいでしょう。その辺は次代の後継者にも自然と伝わっていて、ちゃんとやってくれるだろうと思います。

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京都市左京区にある満月本店。

―御社は第二次世界大戦後、お店を立て直すために一品集中の商いを選ばれたとお聞きしました。

西浦 当時は人手がない、資金もないという状況でした。必然的に一つのところに集中せざるを得ない状況だったんです。余裕がないときにあれもこれもと手を広げず、持っている力を一つに集約しました。そのおかげで阿闍梨餅が今現在もここに残っていると思っています。本当に先代、ご先祖様のおかげです。

―そしていま、現状のためになにか意識していらっしゃることはありますか?

西浦 お菓子の基本的な材料や配合は変えていません。ただ、「常により良くするためには」と考え少しずつ改良しています。一度にガラッと変えることはなく、数十年の間に少しずつ、少しずつ。三歩進んで二歩下がるじゃないけれど、みんなで「ちょっとこうやってみよう」「こっちがいいんじゃない?」を繰り返しながら、よりおいしくなるよう改良はしています。

お菓子は割帳(レシピ)どおりに作るのが基本です。だから、極端に何かを変えるってことはありません。

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阿闍梨餅は丹波大納言小豆の粒餡を包んで焼いた半生菓子。
生地には餅粉や卵など良質の素材が使用されている。

―餡のこだわりとして、1種類の餡で1種類のお菓子しか作らないといった基本方針があると伺いました。それはなぜですか?

西浦 ここにAとBという2つのお菓子があるとします。餡はお菓子の命なので、私自身、もし中身の餡が同じならお菓子も同じものになると思っています。弊店では阿闍梨餅用の餡を常に炊いてるので、新しいお菓子を作るときにその餡を使うことだってできる。でも、それでは違うお菓子にならないわけです。

まず小豆は何を選ぶか、どういう炊き方をするか、粒餡にするのか、こし餡にするのか、粒餡だったらどれくらい粒を残すのか。そういったことから考えていかなければなりません。「1種類の餡では1種類のお菓子しか作らない」。だから今も、お菓子は4種類しか作っていない理由はそこなんです。

―「阿闍梨餅」の名前の由来についてお聞かせください。

西浦 「阿闍梨(あじゃり)」とはもともと、仏教用語で高僧を意味しています。サンスクリット語の「アーチャリー」を漢字の当て字にしたものです。比叡山で千日回峰行を行った阿闍梨様が京都に見えた際、御所に向かわれる途中で、当時の店の前を通られたといういわれがあって。阿闍梨餅の形は阿闍梨様が被っていた笠の形を模したものといわれています。

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「阿闍梨餅」の名前は阿闍梨様のあじろ笠の形に由来している。

―阿闍梨餅といえば粒餡を包んで焼いた半生菓子ですが、あの独特の皮のしっとり感にファンも多いと思います。どのようにあの食感を出されているのですか?

西浦 阿闍梨餅の生地作りは工程が分かれていて、同じ職人が一から十まで手がけているわけではありません。生地を寝かせて少しなじませ、また焼く直前に空気や水を含ませて。それぞれの工程の職人は、経験から加える水の配合や回数なんかを微妙に変えていかないといけない。それで味わいや食感が変わってしまうんです。

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もっちりとした皮の中にほどよい甘さの粒餡がたっぷり。
おいしくてついつい手が伸びてしまう。

―あの食感は職人技だからこそだったんですね。

西浦 人の手によって生まれるお菓子ですが、私たちは菓子舗なので、1週間前に食べた阿闍梨餅と今日食べたものの味や食感が違っていてはダメなんです。その辺は職人にも常に言っています。

―もう一つのお菓子「満月」は、侯爵家からお話があって作られたのがきっかけだったとか。

西浦 そうです。明治に旧九條侯爵家御用達にもなったお菓子です。もともと九條様のお菓子の御用を賜っていて、おそらくお月見のときのお菓子をとご用命いただいたのだと思います。それが大変好評で、それがきっかけとなって屋号も「満月」に変えることになりました。

どことなく洋菓子のような佇まいの「満月」。白餡と皮がしっかりと調和していて、
日本茶はもちろん紅茶やコーヒーなどともよく合う。

―その後、満月の製造を止められいました。復活のきっかけは?

西浦 先代は一つのお菓子に集中しようという考えから満月の製造をやめてしまいました。満月には白小豆を使っていることから、高価な上に手間もかかり、当時、阿闍梨餅の出荷も増えてきたこともあり、手が回らなくなったのです。

先代からお店を継いだ時、私はやっぱり満月は屋号にもなっているので、たとえ売れなくても店に置いておかないといけないと思い、製造を再開しました。幸いにも満月を知る職人がまだいて、割帳(レシピ)も残っていたおかげで作ることができました。

―復活は順調でしたか?

西浦 それが、最初に作った試作品がまったくおいしくなくて…。結局、販売できるようになるまでに1年半くらいかかりました。生地の混ぜ具合とかコネ具合、焼き時間などをああでもない、こうでもないといいながら調整して、やっと満足いくものができたのが25年ほど前のことです。

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味はもちろん見た目もとても美しい満月。贈り物にも喜ばれる。

―満月も“皮”が特徴的ですよね。

西浦 実は、作りはじめの頃は、もう少し生地が硬くてみっちりとしていました。当時のレシピのままでは現代の人の口に合わないと思い、よりサクッとした食感に改良しました。あと、満月の皮は焼き色をつけすぎず、きれいな薄黄色に仕上げる点にも気をつけています。

―それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。

西浦 弊店のお菓子はお茶席などの特別なシーンで食べてもらうのももちろん嬉しいですが、日々の暮らしの中で気軽においしく食べてもらいたいと思っています。ですので京都土産として選んでもらえるのも嬉しいことです。

うちは餡から生地からすべて自分のところで加工しています。それは今後も崩さずにやっていきたいなと。若い人や女性の意見もどんどん取り入れいろんなことが言いやすい社内風土も作っていかないとと思います。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

「京銘菓 阿闍梨餅」(10個入)

「京銘菓 阿闍梨餅」(10個入)
価格:¥1,523(税込)
店名:阿闍梨餅本舗 満月
電話:0120-24-7373(9:00~18:00)
定休日:水曜不定休
商品URL:http://www.ajyarimochi.com/a_ajarimochi.html
公式サイト:http://www.ajyarimochi.com/index.html

「眞菓 満月」(8個入)

「眞菓 満月」(8個入)
価格:¥2,636(税込)
店名:阿闍梨餅本舗 満月
電話:0120-24-7373(9:00~18:00)
定休日:水曜不定休
商品URL:http://www.ajyarimochi.com/a_mangetsu.html
公式サイト:http://www.ajyarimochi.com/index.html

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
西浦裕已(株式会社満月 代表取締役)

1951年 京都市生まれ。1973年に株式会社たち吉入社。1986年満月入社。1993年に5代目として満月を受け継ぎ、代表取締役に就任。翌1994年に製造を中断していた「眞菓 満月」を復刻させ、又これも中断していた「最中」の金型を探し、新たに製餡から模索し、再販。現在に繋げている。常に独自路線を考え、全商品の自社製造を経営のテーマ・根幹としている。

<文・撮影/時田涼子 MC/髙橋美羽 画像協力/満月>

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