
手に馴染む紙の温もり。一枚の紙からできた靴べら「Paper Made Shoehorn」
2025/10/21
今回、編集長のアッキーが注目したのは、一枚の紙が持つ可能性を信じて作られた靴べら、「Paper Made Shoehorn」です。「紙は、弱い」。そんな常識をくつがえす、驚くほどしなやかで、丈夫な靴べら。すっと手になじむ温かみ、かかとに寄り添う優しいしなり。慌ただしい玄関先での時間が、思わず背筋が伸びる心地よい瞬間に変わるかもしれません。
手がけるのは、新潟県長岡市で80年以上にわたり「紙」の加工技術を追求してきた安達紙器工業株式会社。その裏にある、温かい物語とは。取材スタッフが、代表取締役の安達眞知男氏に伺いました。

安達紙器工業株式会社 代表取締役の安達眞知男氏
―まずは、安達紙器工業の歩みについてお聞かせください。
安達 弊社の創業は1942年。もとは新潟県長岡市で呉服商を営んでいました。しかし、太平洋戦争が始まると統制経済下で商売が難しくなりました。国からの奨励もあり、軍需品でもあった特殊な紙「バルカナイズドファイバー」の加工業へ事業を転換したのが始まりです。戦争中は弾薬ケース、戦後はランドセルや裁縫箱を作りました。高度成長期には家電の電気絶縁部品と、私たちはいつの時代も紙と共にあり、その可能性を追求し続けてきました。


人気商品のコレクションバックや、ペーパークッションなど、
紙ならではの素材の味わいを活かした製品を展開。
―社長はもともと、別の業界にいらっしゃったそうですね。
安達 大学卒業後は、お菓子メーカーの大阪支社で6年間、営業として働いていました。弊社は女系家族で、先代も私も婿養子なんです。大阪での仕事も充実していましたが、心のどこかにはいつも「地元・長岡で仕事をしたい」という気持ちがありました。長岡はコンパクトな街に何でも揃っていて、少し車を走らせれば海も山もある、とても暮らしやすい場所です。そんな折に先代から誘いを受け、家業を継ぐことを決心しました。
―「Paper Made Shoehorn」は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。
安達 お客様からの思わぬ反響がきっかけでした。もともと私たちが作っていたコスメボックスが、いつしか男性たちの間で「靴のメンテナンスケース」としてご愛用いただくことが増えてきたんです。作り手としては全くの予想外でしたが、「お客様はこんな使い方をしてくれるのか」という嬉しい発見でした。
その気づきをヒントに、「靴にまつわる新しい商品を開発できないか」と考え、新潟県の産業振興プロジェクト「百年物語」に応募したのが、この靴べらが生まれる直接のきっかけになりました。

紙とは思えない強度としなやかさを両立した
「Paper Made Shoehorn」。
―素材やデザインには、どのようなこだわりが詰まっていますか。
安達 紙、と聞くと繊細で弱いイメージがあるかもしれませんが、原料の「バルカナイズドファイバー」は全くの別物です。天然パルプを100%使用し、特殊な製法で作られる非常に硬くて丈夫な紙で、その強度はプラスチックにも引けを取りません。
そして、この靴べらの最大の特徴は、デザインの核でもある滑らかな「捻り(ひねり)」です。この滑らかな曲線を一枚の紙から生み出すのは、非常に繊細な作業。素材に熱を加えながら、じっくり時間をかけ、職人が一つ一つ作り上げます。まさに私たちの技術の結晶と言えるデザインです。

美しいラインは、職人の手作業により1枚の紙を捻って作られている。
―おすすめの使い方や、お客様からの反響はいかがでしょうか。
安達 この靴べらは、単に靴を履きやすくするための道具ではありません。玄関先での慌ただしい時間を、すっと背筋が伸びるような心地よい瞬間に変えてくれる。そんな体験をお届けしたいと思っています。使わない時も、玄関に置いておくだけでオブジェのように空間を彩ってくれますし、大切な方の門出や記念日の贈り物としても喜ばれています。
ありがたいことに、国内外でデザイン性や品質を評価していただく機会にも恵まれました。特に台所用品やインテリアデザイン、文房具などの消費財分野で世界最大級の見本市であるドイツの「アンビエンテ」では、高い評価を受けました。環境に配慮した持続可能なものづくりが評価され、「エシカル(倫理的)スタイル」にも選定されています。有名百貨店でお取り扱いいただいていることも、品質への信頼の証だと感じています。

引越しや新生活の贈り物、記念日のギフトなど、
様々なシーンで年齢や性別を問わず喜ばれる。
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
安達 「脱プラスチック」が叫ばれる今だからこそ、私たちの紙加工技術が社会の役に立てるのではないかと考えています。「社会にとって存在価値のある企業でありたい」というのが、創業当時から変わらない私たちの理念です。環境負荷の少ない紙という素材で、未来の地球に貢献できるような製品を生み出していくこと。その思いは、次期社長となる娘にも引き継がれ、これからも私たちの挑戦は続いていきます。
―素晴らしいお話をありがとうございました!

「Paper Made Shoehorn」
価格:¥5,940(税込)
店名:Adachishiki Online Store
電話:0258-24-2145(08:30~17:00 ※土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://timevoyager.ocnk.net/product/79
オンラインショップ:https://timevoyager.ocnk.net/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
安達眞知男(安達紙器工業株式会社 代表取締役)
1953年、新潟県長岡市生まれ。大学卒業後、お菓子メーカーの大阪支社で6年間営業職を経験。その後、先代からの誘いを受け、1982年に安達紙器工業株式会社へ入社。2002年、代表取締役に就任。80年以上にわたり受け継がれてきた紙加工の技術を守りながら、環境問題への貢献も見据え、紙の新たな可能性を追求し続けている。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/安達紙器工業>




























