今回編集長アッキーが気になったのは、手荒れを予防できる指の保護フィルムと保護テープ。絆創膏の製造を自社で一貫して行っている、東洋化学株式会社が販売している商品です。傷の治癒を目的とする商品以外にも、なぜ保護目的の商品が作られたのでしょうか？同社で代表取締役社長を務める岡幸一氏に話を伺いました。

東洋化学株式会社 代表取締役社長の岡幸一氏

―1959年に創業。岡様は2代目の代表取締役社長とのこと。

岡　弊社は私の父が創業しました。祖父は、当時盛んだった医薬品配置販売業の配置員をしていたのですが、父は「自分で薬品を製造する仕事がしたい」と思ったため、会社を立ち上げたそうです。創業した当初の社名は「岡薬品工業社」。現在の社名になったのは、1974年のことです。

―創業当初は何の製造を？

岡　最初に製造したのは、メントールが入っている貼り薬で、腰痛や肩こりの際に使用していただくものでした。

配置薬の箱にはいろいろな薬が入っていますが、特に胃薬や風邪薬、貼り薬などはよく売れていました。胃薬や風邪薬に比べると、貼り薬は競合他社が少なかったため、そこに参入したようです。

―絆創膏を開発したきっかけは？

岡　貼り薬の取引をしていた配置薬メーカーから、依頼をいただいたのがきっかけです。開業後10年ほど経ったときのことでした。

―1986年には業界初のウレタン素材の救急絆創膏を作ったそうですね。

岡　以前は塩ビのフィルムに粘着剤を塗った絆創膏が主流でしたが、そのような中でたまたま伸縮性のあるウレタン素材を入手できたそうです。そのため、取引していた会社と一緒に、その素材を生かして新しい絆創膏を作ることになりました。

当時はウレタン不織布があまりなかったので、業界的にはとても新しい取り組みでした。

―新しいことに積極的に挑戦する社風は先代から？

岡　父はもの作りが好きだったので、「新しいものを作りたい」という気持ちを常に持っていました。そのような背景もあってか、弊社には新しいもの作りにも積極的に取り組む社風になっています。

剥がれにくく、水に強い絆創膏。
0.3mmの薄型で、装着している違和感も少ないのが特徴です。

―現在の主力商品は？

岡　ハイドロコロイド絆創膏の「キズクイック」と「キズクイックfit」です。ハイドロコロイド絆創膏は20年ほど前から日本で発売され始めましたが、当時は高価なこともありあまり売れていませんでした。

市場が大きくなってきたのは、大手企業がテレビCMを行うようになってからです。そこから、弊社を含め、他の絆創膏メーカーも本格的に製造するようになりました。

―一般的な絆創膏との違いは？

岡　一般的な絆創膏は一般医療機器に分類されますが、「キズクイック」「キズクイックfit」は管理医療機器です。

また、一般的な絆創膏の目的は、衝撃や摩擦などから傷を守ったり、ガーゼで血液を吸収したりすることです。一方で、ハイドロコロイド絆創膏は、傷口から出てくる体液を閉じ込めることで、傷の痛みを和らげて早くきれいに治す効果があります。これを「湿潤療法」と呼びます。

―国内でハイドロコロイド絆創膏を製造している会社の数は？

岡　絆創膏の製造をしている会社は国内に10社ほどありますが、ハイドロコロイド絆創膏を製造している会社は、その中でも数社しかありません。また、一般の方向けの絆創膏を製造しているメーカーの中で、自社で一貫製造しているのは弊社だけです。

―一貫製造できるからこその強みは？

岡　絆創膏の形や厚みなどを、ある程度自由に変えられることが強みです。「キズクイックfit」は、先に開発した「キズクイック」の半分ほどの厚みになっています。

また、「キズクイックfit」には、指先用の他、貼りにくい場所にも適したマルチフィット用など、多様な形のものがあります。自社で一貫製造しているからこそ、このように形や厚みを変えられます。

理容師・美容師の悩みから誕生した「手荒れ保護フィルム フィットバンN」。

透明フィルムはわずか0.03ｍｍ。
耐水性に優れ、水仕事中でもしっかり密着します。

―今回ご紹介する「手荒れ保護フィルム フィットバンN」。開発の経緯は？

岡　理容師・美容師の手荒れがひどい、という話を知人から聞いたのがきっかけです。1日中手を使う仕事のため、そこを考慮しながらいろいろな形状のものを試作しました。開発の際には、実際に手荒れに悩んでいる人からも意見をもらい、それを反映させながら作っています。

「手荒れ保護フィルム フィットバンN」は、あかぎれやひび割れを保護することを目的に開発しているので、理容師・美容師以外の方に使っていただいても構いません。

―使用された理・美容師さんの反応は？

岡　とてもいい反応をいただいています。理容師・美容師が来場する展示会に毎年出店し、展示販売を行っているのですが、「初めて使いました」「こんな製品があるんですね」とよく言っていただいています。

―どのような方法で販売を？

岡　もともとは美容系の卸業者からサロンや理美容室への販売を考えていましたが、卸業者が扱っているのは、シャンプーなど施術に使用するものがメインのため、思うように販売できませんでした。

そこで、インターネットを使って直接売ろうと考え、ECサイトを立ち上げました。今では卸業者に扱ってもらっているので、主に卸業者とECサイトで購入できるようになっています。

吸水しない、防水仕様の「家事がはかどる指保護テープ」。

―「家事がはかどる指保護テープ」を開発した理由は？

岡　「指関節用のテーピングが欲しい」と、お客様から直接連絡をいただいたことから開発に至りました。話を聞いてみると、弊社の絆創膏を購入して、ガーゼ部分を剥がしてテーピングテープとして使っていたそうで。そこで、テープ部分だけを製品化しました。

―既存の防水用の絆創膏と同じ素材で製造を？

岡　そうです。ただ、ヘバーデン結節で困っているお客様のために、取り出しやすくする工夫を加えています。

適度な伸縮性があるテープになっているので、強く固定されて指が動かしづらくなることはありません。反対に、指が動きすぎて痛むこともなく、程よく固定してくれます。

―使用されている素材は？

岡　ウレタン不織布とフィルムを貼り合わせています。ウレタン不織布だけだと水に弱くなってしまうので、フィルムと貼り合わせて防水仕様にしました。水仕事の際にもお使いいただけます。

指関節もしっかりサポート。
程よい固定感がありつつ、作業の邪魔はしません。

―「家事がはかどる指保護テープ」の購入方法は？

岡　ECサイトでのみご購入いただけます。ただ、お客様から「お店でも買えるようにしてほしい」という声をいただいていて。近々、お店でも買えるようにするつもりです。

困ってる人を助けるのが仕事だと考えているので、さまざまなニーズに応えていきたいです。

―今後の展望を教えてください。

岡　今後もいろいろな商品開発を進めていくつもりです。もっとエンドユーザーの皆様の困りごとを集めて開発していけるよう、マーケティングには力を入れていきたいなと思っています。

また、今後は弊社の商品を扱っていただいているドラッグストアとのつながりも深めていきたいです。店舗の方からもお客様の声を吸い上げ、そこから新たなニーズに応えられるよう商品開発のヒントを得られればと考えています。

現状ではプライベートブランドやOEMが多くなっていますが、これからは自社で作った商品を自社で販売していきたいです。

―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました！

「手荒れ保護フィルム フィットバンN」（100枚入 25mm×72mm）
価格：¥2,200（税込）
店名：東洋化学 ばんそうこう屋
電話：0748-52-5780（9:00～17:00 平日）
※電話での注文は承っておりません
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.toyokagaku.biz/pro.html
オンラインショップ：https://www.toyokagaku.biz/

「家事がはかどる指保護テープ」（60枚入 25mm×72mm）
価格：¥1,380（税込）
店名：東洋化学 ばんそうこう屋
電話：0748-52-5780（9:00～17:00 平日）
※電話での注文は承っておりません
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.toyokagaku.biz/heberden.html
オンラインショップ：https://www.toyokagaku.biz/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
岡幸一（東洋化学株式会社 代表取締役社長）

1956年生まれ、滋賀県出身。京都薬科大学を卒業後、製薬会社や公的機関での勤務を経て、1986年に東洋化学株式会社へ入社。1988年に専務取締役に就任後、2003年に代表取締役社長に就任した。
現在は、一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 監事、全国救急絆創膏工業会 幹事、滋賀県製薬工業協同組合 副理事長、一般社団法人 滋賀県薬業協会 理事、滋賀医療機器工業会 理事、日野町商工会 副会長も務める。

＜文・撮影／奥山りか　MC／三好彩子　画像協力／東洋化学＞