自家製サツマイモがホクホク!素朴で懐かしい味わいの「熊本いきなり団子」

2024/04/24

全国でも指折りのサツマイモの産地である熊本県には、「いきなり団子」というサツマイモを使った郷土菓子があります。初めて口にした人にもどこか懐かしく感じられる素朴な味わいが魅力で、ホッとひと息つきたいときや小腹がすいたときに食べれば、お腹も心も満たしてくれます。

今回、お取り寄せで楽しめるいきなり団子を探していた編集長アッキーが気になったのが、自社栽培のサツマイモを使用した有限会社コウヤマの「熊本いきなり団子」です。代表取締役社長の香山龍海氏に、おいしさの秘密をうかがいました。

有限会社コウヤマ 代表取締役社長 香山龍海氏
有限会社コウヤマ 代表取締役社長の香山龍海氏

―いきなり団子について教えてください。

香山 起源や歴史についてはあまり詳しくないのですが、熊本に古くからあるお菓子です。食べ物が少なかった時代に、育てやすいサツマイモと手に入りやすかった小麦粉を使って、誰でも家で簡単に作れるお菓子として生まれたと聞いています。熊本にはいきなり団子を売るお店が大小問わずたくさんあります。

最初の頃のいきなり団子は、小麦粉で作った生地にサツマイモが入っているだけの素朴なものだったそうですが、今はサツマイモとあんこを入れるのが主流です。当社では、2001年頃に販売を始めました。

ホクホクのサツマイモとあんこが入った熊本名物「いきなり団子」。

―御社ならではのこだわりはありますか。

香山 昔ながらのいきなり団子の生地は、小麦粉だけを練った感じで少し粉っぽく、口に入れるとモゴモゴするような感じがありました。そこで当社では、生地に独自ブレンドの粉を使うことでモチモチの食感に仕上げています。あんこの小豆は北海道産のものを使用しています。

―中に入れるサツマイモにはどういったものが使われているのでしょうか。

香山 主に自社で育てたサツマイモを使っています。いきなり団子などの加工品に合うのは、昔ながらのホクホク系のサツマイモです。加熱してもサツマイモらしさが残り、満足感があります。今人気のある甘みの強いサツマイモはベチャッとなりやすく、お菓子にしたときの食感がよくありません。

サツマイモの味や食感は、品種だけでなく貯蔵方法にも影響を受けます。当社は自社で栽培をしているので、そのあたりはコントロールしやすく、ベストのタイミングで最適な品種を使えるようにしています。

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丹精込めて栽培しているサツマイモ。

―味について教えてください。

香山 今あるバリエーションは昔ながらのプレーンと、ヨモギ、黒糖、紫芋、さくらの5種類です。以前はチョコやカレーなどの味も試したことがあります。

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味は全部で5種類。
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白あんに塩漬けの桜葉が練り込まれている「さくら」。

―おすすめの食べ方は?

香山 温めて熱々にしてから食べてください。当社の製品は冷凍ですので、レンジや蒸し器で加熱してお召し上がりいただけます。

―どこで販売されているのでしょうか。

香山 当社はいわゆるBtoBの卸がメインです。全国の生協さんや大手の商社さんなどで取り扱っていただいています。あとは空港のみやげ店にも熊本みやげとして置いていただいています。

―いきなり団子の製造を始めた経緯を教えてください。

香山 元々は農家で、祖父の代はタバコの栽培がメインでした。サツマイモはタバコの裏作で、タバコとサツマイモを交互に育てていた感じです。タバコは畑に植えるとどんどん上に伸びていくぶん、台風などの影響を受けやすく、祖父は苦労していました。その苦労を見た私の父親が、「自然災害に影響されにくく安定した収入を得られる作物はないか」と考え、サツマイモ1本にしてみようと。サツマイモは地中に埋まっているので、自然災害にもあまり影響を受けません。

ただ、当時はサツマイモの価格が安く、形がよくないものやサイズが大きすぎたり小さすぎたりするものは、ほとんど価値がありませんでした。それを父親が「もったいない」と考え、業務用のオーブンを購入して焼き芋にして1個ずつ手で皮をむき、中身をミンチ機に通してペースト状にし、お菓子の原料として売り歩くようになりました。それが加工品の始まりです。

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昔ながらの「プレーン」は熊本県民に愛される素朴な味わい。

香山 いきなり団子は、「サツマイモを加工できるなら作れるんじゃないか」と思い立って作り始めました。ちょうどその頃、求人広告を出したときに、自分で団子屋さんを経営していたという人から応募がありまして。それが今の常務なのですが、そういった偶然の出会いもあって量産するようになりました。ただ当時は規模も小さく、ひとつひとつ手作りで、1日に生産できるのは1,000個程度でした。今は機械化できる工程は自動化し、1日に1万個ほど作れるようになっています。

―お客様から寄せられた口コミで印象深いものがあれば教えてください。

香山 いろいろなお店のいきなり団子を食べている地元の方から「ここのいきなり団子が一番おいしい」と言っていただけるとうれしく思います。熊本ではあちこちのお店でいきなり団子が売られていますが、どこの製品も原料は生地とあんことサツマイモで、ほぼ変わりません。その中で、生地にこだわってさまざまな工夫を重ねた当社の製品が一番だと言っていただけることが、本当にうれしいです。

―家業を継がれたのはいつ頃ですか。

香山 1991年に創業したのは父で、私が社長になったのは2016年です。若い頃に少しだけ家業の仕事をしたことがあったのですが、当時は食品加工はほとんどしておらず農業がメインで、キツくて儲からないという現実を見てしまいまして。「家を継ぐのは嫌だ」と思い、しばらくは家業とまったく関係のない飲食や車関係の職場で働いていました。

家業に入ったきっかけは、私が28歳になった頃、仕事が途切れたタイミングで父親から「戻ってこんか」と言われたことです。当時は加工部署の責任者の方が辞められたばかりで人が足りなくなり、空いたポジションの穴埋めという感じでした。その頃は農業がメインだった昔とは違い、加工も手がけるようになっていたので、家業に対するイメージも変わっていました。

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農家からスタートし食品加工業へ。

香山 ただ、正直なところ後を継ぐことまでは考えていなくて。戻ってきて2年ほど経ったときに「ゆくゆくは継いでくれないか」という話があり、ひとまず役員になって経営に携わったところ、「お前が社長になれ」と言われ、翌年には社長に就任することになりました。

―企業として大切にしていることを教えてください。

香山 元々が農業なので、環境の保全や維持にも目を向け、地元の人たちと一緒にさまざまな活動をしています。また、日本ではあまりメジャーではないのですが、農業の食品安全や労働環境、環境保全に関する国際認証の「GLOBAL G.A.P」も取得しました。食品製造の衛生管理に関しても、同業他社に先駆けて菓子製品の高度化基準である「HACCP」の認証を受けています。

―今後の展望を聞かせていただけますか。

香山 当社はサツマイモに特化した会社ですので、いきなり団子のほかにもいろいろな商品を作っていきたいです。当社のいきなり団子は全国で流通していますが、さらに販売網を広げ、海外にもサツマイモを使ったお菓子を広めていきたいと考えています。

一時期は輸出を手がけたこともありましたが、当社のメインである冷凍の物流となると、到着したときに品質が変わってしまったり、コスト的に難しかったりといろいろな問題があり、今はあまり進んでいません。国外にはサツマイモを全然食べない国もありますし、「サツマイモは食べるのに困っている人が口にするもの」というイメージが根強い国もあります。それでもサツマイモの商品やお菓子をもっと広げ、多くの方にサツマイモの魅力を知っていただき、味わってもらいたいと思います。

―ありがとうございました。

「熊本いきなり団子 プレーン」(80g×5個)

「熊本いきなり団子 プレーン」(80g×5個)
価格:¥810(税込)
店名:芋屋長兵衛商店
電話:096-273-7979(9:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://imoya-chobei.com/products/detail/8
オンラインショップ:https://imoya-chobei.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
香山龍海(有限会社コウヤマ 代表取締役社長)

1984年熊本県生まれ。2012年(有)コウヤマへ入社。加工業務を経験し、2015年に専務、翌年代表取締役に就任。

<文・撮影/坂見亜文子 MC/伊藤マヤ 画像協力/コウヤマ>

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