今回、編集長のアッキーが注目したのは、和歌山県有田川町のブルワリーから届く「〈6種ノムクラベセット〉定番2種と限定4種」。一口飲めば、まるで世界を旅しているような気分に。飲むたびに新しい発見がある、宝箱のようなクラフトビールのセットです。このビールが生まれたのは、なんと元保育園をリノベーションしたユニークな醸造所！その背景には、代表の金子巧氏が世界を巡る旅の中で見つけた、偶然と情熱の物語がありました。心躍るストーリーが詰まったクラフトビールの魅力について、取材陣が代表取締役の金子巧氏に伺いました。

株式会社CAMPS有田川 代表取締役の金子巧氏

―地域に愛された保育園が、クラフトビール醸造所に。ユニークな場所で事業を始められた経緯を教えてください。

金子　もともとこの場所は、58年間続いた保育園でした。2016年に閉園が決まったとき、町ではこの思い出深い場所をどう未来に繋げるか、さまざまな議論が交わされたのです。その結果、地域創生プロジェクトの一環として、人々が集うコミュニティ拠点「THE LIVING ROOM」として再生されることになりました。そして2019年（令和元年）、僕たちのブルワリー「Nomcraft Brewing（ノムクラフトブリューイング）」は、その新たな物語の核となる存在として、この場所に誕生したんです。

保育園の面影が残る醸造所。
イベントも開催され、新たな賑わいの中心地に。

―ビール造りに至るまでの道のりを教えてください。

金子　大学で教員免許を取り、周りの仲間は皆、教師の道へ進みました。その安定した未来が見えたとき、ふと「自分の人生、このままでいいのだろうか」という思いが湧き上がってきたんです。保証があるからこそ、20代は本当にやりたいことに挑戦しようと決意し、片道航空券だけを握りしめてユーラシア大陸横断の旅に出たのです。
その旅の途中、カナダのブリューパブ（醸造所兼レストラン）で働いた経験が僕の人生を大きく変えました。そこで出会った日本人の醸造家の方から、ビールの奥深さを教わるうちに、その面白さにどんどん惹かれていきました。
その興味から、次に旅先に選んだのがクラフトビールの聖地、アメリカのポートランドです。そこで偶然にも、まちづくり視察に来ていた和歌山県有田川町の方々と出会いました。
後日、そのご縁で有田川町を訪ねたところ、ちょうど今の共同創業者がクラフトビールのプロジェクトを持ちかけているタイミングで。「外国人がいるから通訳で入ってよ」と頼まれ、ミーティングに参加したのが全ての始まりです。本当に偶然と人の縁が重なって、創業メンバーの一員になりました。

―今回ご紹介いただく「〈6種ノムクラベセット〉」は、どのようなラインナップなのでしょうか。

金子　僕たちのビールの魅力を存分に味わっていただける、2つの定番ビールと4つの限定ビールを詰め合わせたセットです。定番の1つ「Nomcraft Lager」は、何杯でも飲めるほどすっきりとしていて、どんな食事にも寄り添ってくれる一杯。もう1つの「Nomcraft IPA」は、柑橘系の華やかな香りが特徴で、クラフトビール入門にも最適です。これに加えて、その季節にしか味わえないフルーツを使ったものや、挑戦的なスタイルの限定ビールが4種類入ります。今日はどれにしようかと、選ぶ時間から楽しんでいただけると思います。

透き通った黄金色が美しい、伝統的なドイツスタイルのラガービール「Nomcraft Lager」。
すっきりとした飲み口で、どんな食事にも合う。

フルーティな香りが広がる「Nomcraft IPA」。
松やシトラスの香りが織りなす奥深い味わいが特徴。

―世界が認める味わいは、どのようにして生まれるのですか。こだわりを教えてください。

金子　おいしさの秘密は3つあります。1つ目は、高野山の伏流水である「空海水」です。この水はミネラルが少なくとてもプレーン。まるで真っ白なキャンバスのように、ホップの香りやフルーツの風味など、僕たちが表現したい味わいをありのままに描き出してくれます。
2つ目は、国際的な醸造チームの「技術」。アメリカ人と日本人とドイツ人の醸造家がそれぞれの得意分野を活かし、最新のアメリカンスタイルから伝統的なドイツスタイルまで、本物の味を追求しています。
そして3つ目は、有田川町の豊かな「自然の恵み」。みかんや山椒など、ここでしか採れない原料を積極的に使うことで、この土地ならではの個性をビールに溶け込ませています。創業当初は販路がなく、イベントで一杯ずつ手渡しするところから始まりましたが、コロナ禍を機にオンラインに注力したことで、このこだわりを全国のファンに直接届けられるようになりました。

豊かな自然の恵みを活かして作られている。

タトゥーアーティストが手掛けた、個性豊かなラベルデザインも魅力の一つ。

―お客様からは、どのようなお声が届いていますか。

金子　定番の「Nomcraft Lager」は、ビール好きの方が集まる評価アプリ「Untappd」にて日本のヘレスラガー部門で1位、「ASIA BEER CHAMPIONSHIP2024」「ASIA BEER CHAMPIONSHIP2025」にて2年連続で審査員長賞を獲得するなど、評価をいただいています。また、別銘柄のIPAは「JAPAN BREWERS CUP2024」で1位を受賞。お客様からは「とにかく飲みやすい」「ホップの香りが華やかで、完成度が高い」といった声をよくいただきますね。プロのお墨付きと、ビールファンの皆様からの熱い支持。その両方をいただけて、嬉しく思います。

―今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

金子　「クラフトビールで街づくり」という創業以来の目標をさらに推し進めるため、生産体制を3倍に拡大し、大阪や和歌山市への出店も計画しています。もっと多くの方に僕たちのビールを届け、有田川町を知ってもらうきっかけを作りたいのです。
僕たちが一番大切にしているのは「地元ファースト」という思いです。全国、そして世界へと挑戦しながらも、この有田川町に深く根を下ろし、地域の方々に愛されるブルワリーであり続けたい。皆様がこのビールを味わってくださることが、遠く離れた有田川町の物語に参加し、その未来を共に創る一歩になると信じています。僕たちの物語が詰まった一杯を、ぜひ楽しんでください。

―本日は、貴重なお話をありがとうございました！

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞

金子巧（株式会社CAMPS有田川 代表取締役）
1989年愛知県生まれ。教育大学卒業後、人生一度きりと300日間のユーラシア大陸放浪へ。海外に魅了され語学留学を経て海外生活を開始。2017年米ポートランドで有田川町民と出会い、帰国後にノムクラフトプロジェクトにスカウトされる。メルボルンや岩手で醸造研修を積み、2018年CAMPS創業メンバーとして入社。2023年に同社代表取締役に就任。クラフトビールを通して楽しいNOM文化を全国に発信する。

＜文／お取り寄せ手帖編集部　MC／田中 香花　画像協力／CAMPS有田川＞