長崎三大老舗カステラに数えられる文明堂総本店にルーツを持ち、洋菓子の街・神戸に創業して約100年の老舗。顧客の声から生まれた限定商品焼きドーナツが爆発的な人気を博しました。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社文明堂神戸店 代表取締役社長の片山智絵氏に、取材陣が伺いました。

株式会社文明堂神戸店 代表取締役社長の片山智絵氏

―長崎の文明堂総本店さんと同根でいらっしゃるんですよね？

片山　1900年に文明堂創始者である中川安五郎が長崎市丸山でカステラなどの菓子製造販売を始めました。昭和5年に私の祖父母が神戸支店を任されましたが、第2次世界大戦で焼失。戦後、文明堂グループ独立法人のひとつとして神戸市兵庫区福原町に再開店しました。文明堂総本店、文明堂東京など、全国にある7法人はグループ会社として協力し合っている状況です。私は2020年に父の後を継いで代表取締役に就任しました。

―老舗に生まれたプレッシャーはありませんでしたか？

片山　父は私の入社を期待していなかったようですが（笑）、むしろ私自身、食べることが大好きだったので、望んで入社しました。製造から販売、営業と、あらゆる部署を経験したり、パティシエの資格も取らせて頂いたりと、多くを学びできることが増え、ますます会社が好きになりました。社長に就任した2020年10月は社会的に大変な状況下で、ECサイトの充実や、改めて今の時代に必要とされる商品の開発などに注力しなくてはと思いました。

カステラ職人が作る焼きドーナツ。

―兵庫県内の稲美工場には工場直売店があり、喫茶店も併設されているんですね。

片山　お客様の反応やニーズをダイレクトに感じられる大切な場所です。カステラドーナツも、「どんな商品があったらうれしいですか？」というアンケートのお答えから生まれた商品なんですよ。当初はカップケーキやブッセ、パウンドケーキなどもありましたが、圧倒的に焼きドーナツの方が好評で。最初は工場直売店のみで販売していましたが、驚くほどの人気商品となり、ECサイトからお求めいただけるように整備を急ぎました。

1番人気のフレーバー「ザラメ」。名の通りカステラをイメージしてザラメがちりばめてある。

―カステラを思わせる卵の味わいと優しい甘みが印象的です。商品に込めた想いをお聞かせください。

片山　甘すぎず、油っこくなく、けれどしっとり。何よりも、カステラらしい食感を出すことにこだわりました。ある程度機械も使いますが、生地に油脂を混ぜる工程や最後のチョコがけなどのトッピングは、手作業でないとうまくいかないところもあります。職人の手仕事あってこそのおいしさではないでしょうか。
プレーン、ザラメ、チョコのほか、季節やイベントに合わせてフレーバーも出しています。春はいちごやオレンジ、秋にはパンプキンといった具合に。

左上から時計回りにいちご、プレーン、ザラメ、チョコ、オレンジ。

―おやつにはもちろんですが、朝食にもよさそうですね。

片山　コーヒーを合わせるなら、ぜひ酸味の効いた浅煎りのタイプを選んでくださいね。兵庫の老舗メーカーのコーヒーとの相性を15種類ほど試したところ、カステラの卵の風味と一番マッチしました。朝食には、とろけるチーズをのせてリベイクするのもおすすめです。4つに切ってとろけるチーズを乗せ、オーブントースターなどで焼いてみてください。チーズの塩気が案外よく合いますよ。

モカブレンドなど酸味の効いたコーヒーに合わせて。

表面はカリっと中はよりふんわり、そして甘じょっぱさがクセになりそう……。

―顧客の声を大切に商品開発にも意欲的な片山社長。今後のビジョンは？

片山　創業当時の、お客様に喜んでいただけるお菓子づくりというモットーを変えることなく、会社がどんな状況になっても、絶対に味を落とさず適正価格で販売する。全社員に常に話しています。
それから、カステラの切り落としを家畜の飼料として提供したり、砂糖袋を再利用したりと、以前から続けていることではありますが、SDGsに直結する取り組みも継続していきたいと思っています。

「カステラドーナツ」（1個）
価格：¥129（税込）
店名：カステラの老舗　文明堂神戸店
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品ページ：https://www.bummeido.com/c/type/castella_donut
オンラインショップ：https://www.bummeido.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
片山智絵氏 （株式会社文明堂神戸店 代表取締役社長）

1981年 兵庫県神戸市生まれ
2004年 株式会社文明堂神戸店へ入社
2020年10月より代表取締役社長に就任

＜文・撮影／植松由紀子　MC／鯨井綾乃　画像提供／文明堂神戸店＞