宅配便の受け取りや書類の押印など、事務的要素が強い印鑑。アイデアを盛り込んで、デザインや利便性に富んだオリジナル商品が人気を博している会社があります。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社ヒカリスタンプ 代表取締役の呼子大輔氏に、取材陣が伺いました。

株式会社ヒカリスタンプ 代表取締役の呼子大輔氏

―回転印にイラストを施すという、ありそうでなかったアイデアに驚きました！

呼子　宅配便や郵便の受取印、社内書類の確認印、子どもの連絡帳などに使う気軽な回転印なら、遊び心や個性を出してもいいのではないかと。デザイン系の学校を卒業している社員がいて、試しに描いてもらったんです。ネズミが丸枠をかじったデザインで、くすっと笑えるアイデアやデザインのかわいらしさに、「なかなかいいぞ！」と直感して商品化。動物やスポーツアイテム、食べ物、花、オリジナルのキャラクターなどバリエーションはどんどん広がっています。

第1号は丸枠をかじったネズミ。
いたずら心あふれる表情がチャーミング。

―回転式なのでキャップや朱肉がいらないあたりも便利ですね。

呼子　通常はインクパッドにゴム印がくっついているのでお互いが乾きません。押すときはゴム印がクルリとひっくり返る仕組みです。

インクパッドについていたゴム印が、
押すときだけクルリンパ。

―本体が7色、書体が10種類、イラストは約150種類から選べるバリエーションの広さ！

呼子　実はこの商品、人気のママブロガーさんが、お子さんの連絡帳に使っていると書いてくださったことがきっかけで爆発的な売り上げにつながりました。事務的かもしれない認印にも個性やデザイン性を出せるんだ、出していいんだという気づき、暮らしのちょっとした部分にも楽しさを見出したい、そういうところに刺さったのかな、と。

動物やオリジナルキャラクターなど
イラストは150種類以上。

―デザインやイラストの新作予定は？

呼子　何か「お題」があるといいかなと思い、2022年夏は、恐竜がテーマのSFアクション映画新作公開に先立って、恐竜のデザインを発売しました。これからもお客様のリクエストや時流に沿って、スピーディにどんどん出していきたいですね。

2022年夏の話題の新作映画にちなんで「恐竜」。

―スピーディといえば、社名にもその想いが込められているとか。

呼子　新幹線ひかり号のように、迅速に正確にという想いを込めたそうです。ヒカリスタンプは1985年の創立で、当時はまだのぞみ号がありませんでしたから（笑）。今でもその精神は受け継いでいますよ。ご注文から迅速、正確に納品する、トラブル対応もスピーディに。これは90％以上を自社製造しているからできることだと自負しています。

―改めて、創業から現在までのあゆみをお聞かせください。

呼子　祖父が印鑑の彫師として創業し、父が、印章やゴム印メーカーとして独立開業したのが1985年。3年後に株式会社ヒカリスタンプとなりました。創立当初の業務は、大手企業様への直販が主だったようです。2000年代に入り、オリジナル商品の開発とBtoC、DtoCの体制づくりにも注力するようになりました。

―印鑑メーカーに生まれた呼子社長。初めから後を継ぐつもりで？

呼子　実は違うんです。映画をつくりたいという夢を見て、しばらくその業界に身を置きました。なかなか現実は厳しくて、家族を持ったこともあり、家業に入ることにしたのです。社長に就いて、まったく違う業種に見えて、実は、やりたかったことができていることに気が付きました。例えば、ジョインティという作品を世に送り出すこと、デザインを担当してくれた社員の夢の後押しをできたことなど、いわゆるプロデュース業ができているのかな、と。「マイボールスタンプ」という商品も、8割以上は私が売っているという自負があります。

―オリジナル商品の代表選手ですね。

呼子　社員の1人がゴルフを始めたことがきっかけで作りました。ゴルフって、自分のボールを区別しやすいように何かしら印をするんですよね。印鑑屋としては、それをハンコで作ろうじゃないかと。速乾性の高いインク、球体に吸い付きやすく柔らかい素材など、いろいろ試して完成。おかげ様で販売数45万個のヒット商品になりました。

ゴルフボール型のキャップがかわいらしい。
押してすぐに触っても手に付かないほどの速乾性。

―デザインの幅も広いですね。

呼子　名前の入れ方、書体、イラストの有無など幅広い選択肢がありますし、ご自身で描いたイラストをスタンプにすることもできるので、世界で1つだけのゴルフボールが簡単に量産できると、ご好評いただいています。こちらの商品でも、2022年夏に新作が公開されたアニメ作品とコラボして、映画公開の3か月前から発売を始め、特に広告をしていないにも関わらず非常によく売れました。

―ゴルフ以外のスポーツにも転用できそうですが……。

呼子　グランドゴルフ、パークゴルフ、サッカー、バレーボール、野球など、革やゴム、金属や木でできた球面体に捺印できる「マイボールスタンプH2」という商品はすでにあります。テニスボール表面の毛羽立ちや、卓球で使うプラスチック製などに対応するのはもう少し時間がかかりそうですが、チャレンジし甲斐があります。

―印鑑、判子の可能性を感じられる商品展開ですね。

呼子　判子屋というと、狭いところで地道に判子を作っているイメージがあるかもしれませんが、うちは明るくのびやかに商品開発を楽しんでいると思います。特にBtoCの商品では、遊び心をたっぷり盛り込んでオリジナリティを出すようにしています。コロナ禍においては、ネガティブな風潮をクスっと笑い飛ばせることを願って、「花粉症」「ぜんそくです」とマスクに押せるハンコを作ったりもしました。

―今後の展望をお聞かせください。

呼子　弊社の良さは、とてもまじめに製品づくりに取り組んでいるところだと思っています。おかげ様でECモールの口コミ評価でも5点中4.5点をいただくほど。その実直さを大切にしながら、従来通り企業様とのお取引はもちろん、BtoC、DtoCにも注力すべく、サイトのリニューアルを予定しています。
また、私はコレクターの側面を持っていて、あるフィギュアをコレクションしているのですが、仕事に絡められないかと画策しています。さまざまにコラボレーションをしたり商品開発をしたりと、印鑑、判子、スタンプを切り口に、どんどん幅を広げていきたいと思っています。

―素晴らしいお話をありがとうございました！

「マイボールスタンプ」
価格：¥2,750（税込）
店名：オリジナルスタンプ はんこ 印鑑の製造販売　株式会社ヒカリスタンプ
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：http://www.hikari-stamp.co.jp/golf/character.html
オンラインショップ：http://www.hikari-stamp.co.jp/index.html

「回転ゴム印 ジョインティ J9（イラスト入り スタラボVer.） 丸型 10mm シャチハタ式」
価格：¥1,000（税込）
店名：オリジナルスタンプ はんこ 印鑑の製造販売　株式会社ヒカリスタンプ
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：http://www.hikari-stamp.co.jp/illuststamp/illustj9.html
オンラインショップ：http://www.hikari-stamp.co.jp/index.html

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
呼子大輔（株式会社ヒカリスタンプ 代表取締役）

1972年大阪市生まれ。関西大学商学部卒業後、単身渡米。LAで日本のTV番組、CM等の製作に携わりながら映画のプロデューサーを目指すも、諸事情により帰国。“3代目”として家業を継ぐ。それまで事務用が中心だったスタンプに遊び心を加えたオリジナル商品を開発、販売している。

＜文・撮影／植松由紀子　MC／橋本小波　撮影／石井みなみ　画像協力／ヒカリスタンプ＞