
熟成が生む、角の取れたまろやかさ。500年変わらぬ兵庫の銘酒・剣菱の「瑞穂」と「瑞祥」
2026/06/04
今回、編集長のアッキーが注目したのは、500年以上の歴史を誇る日本酒銘柄「剣菱(けんびし)」の熟成酒「瑞穂(みずほ)」と「瑞祥(ずいしょう)」です。琥珀色に輝くその雫は、一口含めば芳醇な香りと奥深い旨みが広がります。
その背景には、蔵を継ぐ家が幾度変わっても「名前と味」だけは守り抜くという、強い信念がありました。取材スタッフが、兵庫県に本社を構える、剣菱酒造株式会社 代表取締役社長の白樫政孝氏にお話を伺いました。

剣菱酒造株式会社 代表取締役社長の白樫政孝氏
―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。
白樫 創業は520年以上前の1500年頃で、兵庫の伊丹で始まりました。現存する酒蔵の中でも屈指の歴史があり、織田信長や徳川家康が生きた時代から続く数少ない存在です。歴史の荒波の中で、蔵を経営する家系が5度も入れ替わるという経験もしましたが、「剣菱」という名前と味だけは変えることなく、社会の大切な資産として守り継いできました。江戸時代には「酒の王様」として人気を博し、多くの文豪や歴史上の人物にも愛されてきたというロマンがあるのです。



室町時代から一貫して同じ屋号を掲げる、日本屈指の酒蔵。
伝統的な手仕事による酒造りを続けている。
―社長ご自身が、家業を継ぐという決断をされたきっかけを教えてください。
白樫 学生時代、実は私自身も家業を継ぐべきかどうか非常に迷っていました。そんな折、あるイベントで自社の酒と他社の酒を飲み比べる機会があり、そこで初めて、自社の酒が持つ、他とは明らかに一線を画す突出した個性と完成度の高さに驚かされたのです。その瞬間、この唯一無二の味を守り抜く責任を引き受けられるのは自分しかいない、と腹を括りました。
弊社には「止まった時計でいろ」という家訓があります。不変の価値を守り抜くことこそが、私に課せられた最大の挑戦であり使命であると考えているのです。
―看板商品の一つである「瑞穂」は、どのような経緯で誕生したのでしょうか。
白樫 「瑞穂」という名には、日本の豊かな実りへの感謝が込められています。江戸の食文化の中で「どんな料理と合わせても外さない酒」を目指して設計された、究極の食中酒とも言える存在です。特定の料理に合わせるのではなく、あらゆる献立を包み込む包容力を実現するため、熟成酒をブレンドするという当時の常識を超えた独創的な発想で生まれました。「おいしさの本質は、時代が変わっても人間の本能に寄り添うもの」という信念のもと、200年以上もの間、そのレシピを変えることなく守り続けています。

「どんな料理が来ても外さないお酒を」という江戸時代のニーズから誕生した「瑞穂」。
そのレシピは200年たった今でも変わらず守られている。
―こだわりや、独自性について教えてください。
白樫 「瑞穂」は、平均約4年という歳月をかけて熟成させた原酒を、緻密な計算に基づきブレンドする高度な技を駆使しています。また、麹造りに使用する「甑(こしき)」や「暖気樽(だきだる)」といった木製道具までも、自社工房で職人を育てて手作りしているのです。教科書にも載っていないくらいの古式製法を守り、手仕事が生む揺らぎを大切にすることで、角が取れた、絹のようなしなやかな口当たりを実現しています。



麹造りに使用する道具も自社工房の職人が手作りし、伝統の製法を守り続けている。
―「瑞穂」はどのようなシーンで楽しむのがおすすめでしょうか。
白樫 和食はもちろん、洋食や家庭のおそうざいともよく合います。少し贅沢をしたい週末、お取り寄せしたおつまみと一緒にゆっくりと一日の疲れを癒す時間を過ごすごきにもおすすめです。
以前、お客さまから「亡くなった父が好きだった味と同じで涙が出た」というお声をいただいたことがありますが、世代を超えて共有できる「記憶の味」を守り続けることが、私たちの誇りなのです。どのような温度帯でも「剣菱の味」としての完成度は揺るぎませんが、温度変化による香りの広がり方などの表情が豊かに変化します。ぜひ冷やだけでなくお燗でも楽しんでみてください。
―最高級品である「瑞祥」の誕生には、どのような背景があるのですか。
白樫 「瑞祥(ずいしょう)」は、剣菱のラインナップの中でも熟成の極みを目指して造り上げられた、まさに「めでたい兆し」を名に冠した特別な一本です。単なる長期熟成ではなく、複数の年次の原酒を複雑に組み合わせることで、弊社にしか出せない圧倒的な深みと個性を追求した結果、この酒が誕生しました。

さまざまな原酒を組み合わせた、深みのある味わいが特徴の「瑞祥」。
―「瑞祥」ならではのこだわりや、おすすめの楽しみ方を教えてください。
白樫 平均10年という長い時間をかけて熟成された原酒が織りなす、濃密で力強い奥行きが最大の特徴です。グラスに注ぐと琥珀色に輝き、砂糖が焦げたような芳ばしい香りが漂います。こちらは肉料理やきのこ料理の深い旨味にも負けない存在感がありますが、意外な組み合わせとして、レーズンチョコやチーズケーキ、羊羹などのスイーツとのペアリングもおすすめしているのです。大人の贅沢な夜を彩る、至福のひとときを演出してくれます。毎年11月1日から出荷が始まり、春先には完売してしまうという希少な季節の風物詩として、多くの方に楽しみにしていただいています。

10年の歳月を経て熟成された、琥珀色の水面。
―「瑞祥」は、専門家や海外からも高く評価されているそうですね。
白樫 ありがたいことに、本場ヨーロッパのソムリエからも「世界に通用する味」として称賛されました。和食の枠を超え、ワインのようにペアリングを重視するプロたちからも、そのポテンシャルの高さを認められています。この琥珀色の雫が持つ世界基準の価値を、日本の皆さまにもぜひ改めて知っていただきたいです。
―最後に、今後の展望を教えてください。
白樫 私たちは、酒造りそのものだけでなく、それを取り巻く日本の風景や文化を次世代に繋ぐことを自らの使命と考えています。木製道具の職人育成や、国内で消滅しかけていたわら縄の製造復活、さらには耕作放棄地を引き受けて環境を守りながら米を作る取り組みなど、日本酒文化の「原流」を守るための活動を続けているのです。私たちはこれからも、日本酒の「深み担当」として、100年後も今と変わらぬ味を届けるための情熱を注ぎ続けていきます。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「瑞穂 720ml」
価格:¥1,829(税込)
店名:剣菱オンラインショップ
電話:078-451-2501(9:00~16:00 ※土日祝日を除く)
商品URL:https://kenbishi.com/?pid=153087268
オンラインショップ:https://kenbishi.com/

「瑞祥 720ml 化粧箱入り」
価格:¥3,190(税込)
店名:剣菱オンラインショップ
電話:078-451-2501(9:00~16:00 ※土日祝日を除く)
商品URL:https://kenbishi.com/?pid=153087332
オンラインショップ:https://kenbishi.com/
(※瑞祥は11月1日より季節・数量限定販売)
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
白樫政孝(剣菱酒造株式会社 代表取締役社長)
2017年に代表取締役社長に就任。甲南大学卒業後に入社し、醸造試験所で酒造りを学ぶ。家訓である「止まった時計でいろ」を指針に、200年以上変わらない味を守り続ける伝統の守護者。木製道具の職人育成や農業支援など、日本酒文化の根底を支える取り組みにも注力している。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中香花 画像協力/剣菱酒造>




























