
創業120年、狛江の酒屋が地域の「飲みたい」を形に。3000人のアンケートから誕生したクラフトビール
2026/02/27
今回、編集長のアッキーが注目したのは、缶ビールの「華休(はなやすめ)」と「宴結(えんむすび)」です。「苦くないビールが飲みたい」という声から生まれた、まるでジュースのようにフルーティーな「華休」。3000票もの地域投票によって味や名前が選ばれた、人々の集いを結ぶ「宴結」。
この2つの商品の背景には、明治時代から続く老舗酒屋の、”街と人を繋ぎたい”という温かい願いがありました。取材スタッフが、東京都狛江市に本社を構える、有限会社秋元商店の代表取締役、秋元 慈一氏にお話を伺いました。

有限会社秋元商店 代表取締役の秋元 慈一氏
―まずは、御社のこれまでの歩みと、地域の「ハブ」としてのルーツについてお聞かせください。
秋元 創業は1902年(明治35年)です。店の目の前にある道は「狛江街道(こまえかいどう)」と呼ばれる古い通りなのですが、当時はここで竹籠を編んで売る「籠屋」として商売を始めました。近くに多摩川が流れていて、そこで鮎を捕るための魚籠(びく)などを作っていたそうです。
そこから時代の変化とともに、食品や酒、たばこを取り扱うようになり、地域の方々の生活を支える「御用聞き」のような役割を担ってきました。かつては店先で立ち飲み、今でいう「角打ち」のようなこともやっていて、昔から人が集まり、言葉を交わす場所だったと聞いています。そんな歴史を経て120年以上、この狛江という街と一緒に歩んできました。

創業当時は「籠屋」として地域に親しまれていた。
1914年に店舗を改装し、今や全国の銘酒が集まる地酒専門店へ。
―社長ご自身が、ブルワリー事業に挑戦されたきっかけは何だったのでしょうか。
秋元 私は大学の醸造学科でお酒づくりを学び、卒業後はニュージーランドへの1年間の留学を経て、家業に入りました。酒屋として経験を積む中で大きな転機となったのは、2011年の東日本大震災です。当時、計画停電などもあり、街全体が暗く沈んでいました。そんな中で「酒屋として何ができるのか」「地域のためにあるべき姿とは何か」を深く考えさせられたのです。ただお酒を右から左へ売るだけでなく、自分たちの手で「この街の誇り」になるようなものを生み出したい。そして、ビールを通して人と人を繋ぎ、街に笑顔を増やしたい。そんな思いが強くなり、2017年にレストランとブルワリーを立ち上げました。
―今回ご紹介する「華休」は、地域のママさんたちの声から生まれたそうですね。開発の経緯を教えてください。
秋元 実はこれ、私の母のPTA活動がきっかけなんですよ(笑)。母が地域のママさんたちと集まったり飲み会をしたりする中で、「ビールは苦くて苦手」「もっと飲みやすくてリラックスできるものがいい」という本音がたくさん出てきたんです。それなら、お母さんたちが本当に飲みたいビールを一緒に作ろうじゃないかと。会社の会議室で決めるのではなく、ママさんたちと意見を出し合いながら、「ああでもない、こうでもない」と井戸端会議のような雰囲気で作り上げました。ラベルのデザインも近所の主婦の方が描いてくださったもので、まさに地域のママさんたちのリアルな声と協力から生まれたビールなんです。

目指したのは「大人のフルーツジュース」。
苦味が苦手な人にも優しい癒やしの一杯。
―「華休」はこれまでのビールのイメージを覆す味わいだと伺いました。具体的なこだわりを教えてください。
秋元 目指したのは、ビールが苦手な方でも楽しめる「大人のフルーツジュース」のような味わいです。スタイルとしては、当時まだ珍しかった「Hazy IPA(ヘイジーIPA)」を採用しました。これは濁りがあって香りが高いのが特徴なのですが、私たちはさらに苦味を極力抑え、コリアンダーを加えることで、口に含んだ瞬間に華やかでフレッシュな香りが広がるように仕上げています。実際にママさんたちと試作してみると「これならおいしい!」「香りがすごくいい」と大好評でした。家事や育児、仕事に追われる日常の中で、ふっと一息つく「華のような休息」を感じてもらいたい。そんな癒やしの時間を届けるために、あえてビールらしくない、優しくてフルーティーな味わいを追求しました。
―もう一つの「宴結」は、なんと3000票もの投票で選ばれたそうですね。こちらも誕生秘話を教えてください。
秋元 ママさん用の「華休」ができたら、今度は地域のパパたちや他の方から「俺たちのビールはないのか!」というお声をいただきまして(笑)。それならばと、今度はもっと大規模に地域を巻き込んで作ることにしました。ビールの味の方向性から、原材料、そして「宴結」という名前の決定に至るまで、なんと3000票以上もの投票をいただいたんです。企業が一方的に作ったもの店頭や地域のお店に協力を仰いでアンケートを実施ではなく、3000人の地域の皆さんが開発者となって、「私たちの街のビール」として誕生したのがこの「宴結」なんです。

穏やかで柔らかく、食事の味を決して邪魔しない。
1杯目より2杯目がさらにおいしく感じる奥深さは、家族や仲間との宴を長く楽しむためにある。
―「宴結」の味わいや、おすすめの楽しみ方について教えてください。
秋元 こちらは多くの人に親しまれやすい、ペールエールとピルスナーの良さを合わせたようなスタイルを目指しました。実は、このスタイルの繊細な風味を損なわずに缶に詰めるのは、非常に難しいことなんです。しかし、私たちは「THE JAPANESE BEER(和食に合わせる日本のビール)」をコンセプトに、ミシュラン星付き店にも認められる醸造技術を駆使して、あえて挑戦しました。その名の通り「宴(うたげ)を結ぶ」ビールですから、香りは穏やかで柔らかく、食事の味を決して邪魔しません。1口目のインパクトよりも2口目、1杯目よりも2杯目がさらにおいしく感じるような、飲み飽きない奥深さを大切にしています。家族の団らんや仲間との集まりなど、人と人が繋がる場で楽しんでいただければ嬉しいですね。


酒屋の敷地内に構えた「籠屋ブルワリー」では、
ミシュラン星付き店も認める高度な技術でビールが醸される。
―最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。
秋元 「ローカルビール」として、もっと地域に根ざした取り組みを進めていきたいと考えています。具体的には、ビールの原料である麦やホップを、ここ狛江の地で栽培するプロジェクトを始動しています。ただ飲むだけでなく、種まきから収穫までを地域の皆さんと一緒に行うことで、「自分たちが育てたビール」という深い愛着を感じていただけるはずです。 「From Seed to Glass(種からグラスまで)」の精神で、この街の土から生まれたビールが、人々の絆をさらに強く結んでいく。そんな未来を、地域の皆さんと一緒に作っていきたいですね。
―貴重なお話をありがとうございました!

「華休 はなやすめ」350ml
価格:¥580(税込)
店名:籠屋秋元商店オンラインストア
電話:03-3480-8931(10:00~19:00 月曜除く)
定休日:月曜日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.kago-ya.net/products/%E8%8F%AF%E4%BC%91-%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%82%84%E3%81%99%E3%82%81
オンラインショップ:https://shop.kago-ya.net/

「宴結 えんむすび」350ml
価格:¥550(税込)
店名:籠屋秋元商店オンラインストア
電話:03-3480-8931(10:00~19:00 月曜除く)
定休日:月曜日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.kago-ya.net/products/%E5%AE%B4%E7%B5%90-%E3%81%88%E3%82%93%E3%82%80%E3%81%99%E3%81%B3
オンラインショップ:https://shop.kago-ya.net/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
秋元 慈一(有限会社秋元商店 代表取締役)
1980年東京都狛江市生まれ。2023年に代表取締役に就任。地酒専門店を軸に、2017年よりブルワリー事業やレストラン事業も展開。近年では市外への店舗展開を行うほか、地域の貢献活動にも積極的に参加し、「食」を通じた街づくりに注力している。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中 香花 画像協力/秋元商店>




























