
木桶仕込みの醤油と職人の技が生んだ「老舗の味 つゆ」と「岩手・老舗の白だし」
2026/02/19
栓を開けた瞬間にふわりと立ち上る、驚くほど芳醇で豊かな出汁の香り。今回、編集長のアッキーが注目したのは、「老舗の味 つゆ」と「岩手・老舗の白だし」です。機械化が進む現代に、あえて手間のかかる木桶醸造と、職人の手作業による出汁取りを貫く希少な蔵元。
その背景には、良い水を求めた創業の志と、震災を乗り越え地域と共に歩む深い物語がありました。取材スタッフが、岩手県花巻市に本社を構える、佐々長醸造株式会社の代表取締役、佐々木洋平氏にお話を伺いました。

佐々長醸造株式会社 代表取締役 佐々木 洋平氏
―100年以上の歴史をお持ちですが、まずは企業のルーツについてお聞かせください。
佐々木 元々は1906年(明治39年)に、豊かな湧き水に恵まれた岩手県花巻市という地で、造り酒屋として産声を上げたのが始まりなんです。その後、大正時代に入ってから、創業者が「より多くの人々に喜んでもらえる食品を作りたい」という願いを抱き、味噌・醤油造りへと大きく舵を切りました。
すべての仕込みに使われるのは、このあたりの地層によって長い年月をかけて磨かれた「早池峰霊水(はやちねれいすい)」です。霊峰・早池峰山の雪解け水が地下深くでろ過され、ミネラルを豊富に含んだこの清らかな水こそが、私たちの味の根幹を支える「恵みの源」となっています。


ミネラル豊富な「早池峰霊水」が、雑味のない透き通った味を生み出す。
―5代目となる社長ご自身の、これまでの歩みについて教えてください。
佐々木 私は幼少期から、祖母や父から「家を継ぐこと」を意識づけられて育ちました。その流れで東京農業大学へ進学し、醸造学を専門的に学んだのです。その後、県外の醤油メーカーや味噌メーカーでの修業を経て帰郷しました。
帰ってきてすぐに参加した物産展での出来事は、今でも忘れられません。私が店頭に立っていると、お客様から「いつもの従業員さんはいないの? じゃあ帰るわ」と言われてしまったのです。後継ぎという立場にもかかわらず、「人」で選ばれる商いの厳しさを肌で感じた瞬間でした。目の前のお客様一人ひとりと向き合う大切さを痛感し、そこから自らの足で信頼を築く「0からのスタート」を経験しました。
また、蔵の象徴であるロゴデザインは、創業者の親友であった高名な画家・萬鉄五郎氏の手によるものです。伝統を重んじる心と、芸術を愛する遊び心。その両方が現在の私たちの豊かな文化を作っているように思います。

創業者の親友が描いたロゴには、
創業者の時代から受け継がれる伝統と、遊び心を忘れない精神が込められている。
―看板商品である「老舗の味 つゆ」は、長年愛され続けている商品だそうですね。
佐々木 はい。誕生から40年以上が経ちますが、味もパッケージも一切変えることなく愛され続けています。流行を追ってリニューアルするのではなく、最初から「これ以上引くことも足すこともできない理想の味」を追求して完成されたものだからです。特徴的な包装についても、1本1本スタッフが手作業で和紙を包み、紐を結んでいます。この姿は、発売当時から変わらぬ私たちの誠実さの証です。手間暇を惜しまないその姿勢が評価され、自家用だけでなく、特別な贈り物としても重宝される唯一無二の存在感を生んでいるのだと思います。


発売当初から変わらない味とパッケージ。
和紙の暖かさを感じるパッケージは、贈り物にもうってつけ。
―この商品のこだわりや、独自性について詳しく教えてください。
佐々木 ベースとなるのは、明治時代から100年以上使い続けている秋田杉の木桶で、ゆっくりと時をかけて熟成させた醤油です。また、このつゆのベースとなる醤油に合わせる出汁は、熟練の職人技によって抽出されています。
大釜で厚削りの上質な鰹節を、まるで「泳がせるように」手作業でゆっくりとかき混ぜ、旨味を引き出します。ここでのポイントは、雑味や苦味を入れないために、あえて鰹節を「絞らない」こと。自然に滴り落ちる「一番出汁」のみを贅沢に使用しています。
さらに、化学調味料やエキスによる味付けは一切行わず、純粋な素材の力だけで深いコクを表現しています。機械による効率化よりも、人の手が生み出す繊細な味を何よりも大切にしているのです。


つゆの味の決め手となるのは、この巨大な木桶で熟成された醤油。
創業以来、100年以上現役で活躍し続けている。
―一番出汁の贅沢な味わいを楽しむには、どのような食べ方がおすすめですか?
佐々木 今の寒い季節には、まず温かいお蕎麦で召し上がってみてください。お湯で割るだけで、まるでお料理屋さんのような本格的な一杯が完成しますよ。私個人の隠れたおすすめは「肉じゃが」です。これ一本で味付けが決まりますし、お肉とお野菜の旨味が見事に引き立ちます。もちろん夏場は冷たいそうめんで。4〜5倍に薄めるだけで、一番出汁の華やかな香りが喉を通り抜け、食欲がない時でも箸が進みます。



蕎麦やそうめんはもちろん、肉じゃがなどの味付けにも。
―お客様などからは、どのような評価をいただいていますか?
佐々木 まず何より嬉しかったのは、あるお母様からいただいたメールですね。化学調味料に敏感なお子さんが、私たちが作ったつゆで作った料理なら「これならおいしく食べられる」とパクパク食べてくれたそうなんです。また、野菜嫌いのお子さんが、私たちの調味料を使うとおかわりするようになったというお声もいただきました。子どもたちの正直な舌に選ばれたこと、そして食卓の笑顔に貢献できたことが、私たち作り手にとって最高の喜びです。
また、第三者機関からの評価としても、復興庁が主催する「世界にも通用する究極のおみやげ10選」に選出されるなど、折り紙付きの評価をいただいています。日経プラス1のランキングでも上位に選出されるなど、食のプロやメディアからも絶大な信頼を寄せていただいています。
―続いて、「岩手・老舗の白だし」についても教えてください。こちらはどのような経緯で誕生したのでしょうか?
佐々木 もともと東北では白だし文化が薄かったのですが、あえて関西風の模倣ではない「岩手らしい白だし」を作ろうと開発しました。目指したのは、醤油の風味をガツンと感じつつも、後味はスッキリとした「キレのある淡麗系」という独自の境地です。「お店に行かなくても、家で最高の一杯が食べられるように」という願いを込め、試行錯誤を重ねて完成させました。


「醤油屋が作る白だし」ならではの、芯の通ったコクと風味が特徴。
―白だしのこだわりや、おすすめの活用法を教えてください。
佐々木 そもそも、白だしが食文化として定着していなかった東北で、どうすれば受け入れてもらえるか。そこで私たちは、関西風の上品さを真似るのではなく、岩手の醤油屋としての強みを前面に出すことにしました。
ベースとなるのは、岩手産丸大豆を使用した自慢の淡口(うすくち)醤油です。これにより、素材の色を邪魔しない琥珀のような透明感を実現しました。そこに合わせるのは、看板商品の「つゆ」と同じ厳選された鰹節と、北海道日高産昆布の「ダブル出汁」です。
職人がつきっきりで丁寧にアクを取り、雑味を極限まで取り除くことで、見た目の美しさと、醤油の風味がしっかりと主張する「キレ」を両立させています。ただ色が薄いだけではない、出汁の旨味と醤油のコクが凝縮された、醤油屋だからこそ作れた白だしだと自負しています。
おすすめは、この澄んだ出汁の旨味をダイレクトに感じるうどんです。スープまで飲み干したくなるおいしさですよ。意外な活用法としては「洋風ポトフ」があります。コンソメの代わりにこの白だしを加えるだけで、和の深みが加わった極上のスープに変わります。


岩手産丸大豆の淡口醤油をベースに、鰹節と昆布のダブル出汁の合せ技。
ポトフやパスタの隠し味としても活躍する、キッチンに欠かせない一本。
―白だしについても、高い評価を得ていると伺いました。
佐々木 はい。全国の名品が集まる「調味料選手権2020」の出汁部門にて、見事最優秀賞を受賞しました。関東圏の百貨店バイヤーの方々からも高く評価され、成城石井やAKOMEYA TOKYOといった厳選された食材が集まるショップでも取り扱っていただいています。「色の美しさと風味の強さが両立している」と、料理好きの方々から支持されています。
―最後に、今後の展望や未来へのビジョンをお聞かせください。
佐々木 私たちは単なる調味料メーカーではなく、原料から一貫して造る「醤油屋」としての矜持を持ち、次世代の食卓を支えていきたいと考えています。「醤油屋が作るめんつゆだからこそ、おいしい」と言っていただける商品をこれからも作り続けます。
また、東日本大震災を経験したからこそ強まった地域との絆を大切にし、岩手の醸造文化を共に盛り上げていく志を抱いています。国内のみならず、世界中の食卓に「笑顔」が生まれるよう、岩手から本物の味を海外へも発信し続けます。これからも「奉仕なき事業に繁栄なし」の理念を胸に、変わらぬ手仕事の価値を届けていきたいですね。
―素晴らしいお話をありがとうございました!

「老舗の味 つゆ 500ml」
価格:¥1,242(税込)
店名:佐々長醸造株式会社オンラインショップ
電話:0198-42-2311(08:00~17:00 土日、祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.sasachou.co.jp/item/t006/
オンラインショップ:https://www.sasachou.co.jp/

「岩手・老舗の白だし 500ml」
価格:¥994(税込)
店名:佐々長醸造株式会社オンラインショップ
電話:0198-42-2311(08:00~17:00 土日、祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日
商品URL:https://www.sasachou.co.jp/item/t-008/
オンラインショップ:https://www.sasachou.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
佐々木 洋平(佐々長醸造株式会社 代表取締役)
1982年岩手県生まれ。2005年に東京農業大学を卒業後、福島県の内池醸造、栃木県の青源味噌での修業を経て、2009年に帰郷し、佐々長醸造へ入社。2023年に代表取締役に就任。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中 香花 画像協力/佐々長醸造>




























