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快い酸味と極上のキレ!東北最古の酒蔵が、手間ひまかけて醸す山廃仕込みの純米酒「飛良泉(ひらいずみ)」

2025/10/27

今回、アッキー編集長が注目したのは、東北で最も歴史があり、全国でも3番目に古いという老舗蔵元の日本酒です。製造しているのは、秋田県南部の霊峰・鳥海山(ちょうかいさん)のふもとにある酒蔵、株式会社飛良泉本舗。「山廃づくり」という手間のかかる製法にこだわり、室町時代中期の創業から一貫してきめの細かい丁寧な酒造りを継承しています。26代目当主となる代表取締役社長の齋藤雅人氏に、そのルーツや酒造りの手法、今後の展望など、取材スタッフがお話を伺いました。

株式会社飛良泉本舗 代表取締役社長の齋藤雅人氏

株式会社飛良泉本舗 代表取締役社長の齋藤雅人氏

―御社は室町時代のご創業だそうですね!

齋藤 室町時代中期の1487年創業になります。元号でいうと長享(ちょうきょう)元年、といってもピンとこないですよね(笑)。その3年後に八代将軍・足利義政が京都の東山に銀閣寺を建立した、そんな時代のことです。

―創業時のエピソードなどは残っていますか?

齋藤 屋号である「泉屋(いずみや)」が示す通り、もともと当家は関西の泉州(現在の大阪府泉佐野市)で廻船問屋を営む家系でした。北前船といって、泉州堺と東北や北海道を船で結ぶ交易で商売をしていたのです。ところが応仁の乱が起こって焼け出され、一家は2艘の船に乗って日本海を北上し、交易地でもあった現在の秋田県南部に流れ着きます。そこは鳥海山という2,300メートル級の高い山がそびえ立ち、山裾に日本海が広がる風光明媚な土地でした。西の松島とも呼ばれ、のちに松尾芭蕉が「奥の細道」で最北の目的地とした美しいこの地に腰を据え、造り酒屋としての第一歩を踏み出したのが、1487年。そこから数えて500年あまり、私で26代目になります。

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秋田県と山形県にまたがる鳥海山。豊富な湧水が、山麓に豊かな自然と農耕の恵みをもたらす。

―酒銘「飛良泉(ひらいずみ)」の由来も、そのあたりから?

齋藤 祖先が辿り着いて蔵を開いたのが、旧仁賀保町(現にかほ市北部)の平沢というところでした。平沢の泉屋の酒で平泉なのですが、平泉の字だと奥州の平泉と一緒になってしまうので、「飛び切り良い泉」になぞらえて「飛良泉」としたといわれています。「良(りょう)」の字を「ら」と読むのも、関西ならではですよね。奈良、長良川、比良山地など、西方特有の読み方だと思います。

江戸時代中期には、仁賀保に暮らす増田九木(ますだきゅうぼく)という画工が、友人である名僧・良寛和尚に「飛び切り良い、白い水」と手紙にしたためてこの酒を贈ったという逸話も残っています。「白」と「水」は、上下に並べると「泉」。これには齋藤家が泉州出身であるという意味合いも含まれているはずです。

―古くからの歴史がきちんと受け継がれているのは、すごいことですね。

齋藤 大体は先祖代々、親から子へ語り継がれてきたもので、家に証拠としては残っていないんです。古文書みたいなものがなかったわけではないのですが、ほとんど消失してしまいました。
でも例えば、17代目の時に鳥海山が噴火して、驚いた当主が地元の関西に神頼みに戻った、ということが伝えられています。当家は代々、宗派が真言宗なので、高野山の奥之院に墓標を建てに行ったそうなんです。一昨年、その墓標が本当にあるのか、私自身の目で確かめに行くことができました。高野山の奥之院という聖地に、当家の痕跡が確かにあったということは、泉州を出発点とする長い歴史を辿ったような気がして、身が引き締まる思いでした。

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蔵や屋敷は、趣深い歴史的な建物でありながら酒造りのための導線や設備がきっちり整えられている。

―酒造りの特徴を教えてください。

齋藤 蔵のあるにかほ市は、鳥海山の山裾が日本海に面して広がり、渓流あり、平野ありの起伏に富んだ恵み豊かな土地です。酒造りに不可欠な清らかな湧水に恵まれ、米をはじめとする農産物も豊富な一方、冬は激しい季節風に見舞われ、海岸部では波の華も見られるくらい厳寒の地となります。この風土と厳しい寒さこそが、うまい酒を造る源です。

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1882年(明治15年)築の土蔵は、温度変化にも負けない酒造りに適した環境を生み出す。

―「山廃づくり」は、いつ頃から始められたのですか?

齋藤 明治時代に入ってからです。江戸期まで、この地は仁賀保氏の城下町・羽州浜街道の宿場町・北前船の寄港地として栄えていましたので、廻船問屋が本業、酒造りは副業でした。戊辰戦争で屋敷や蔵の半分を失ったことをきっかけに酒造りの方を本業とし、同じ頃に山廃仕込みの酒を造り始めました。
ちなみに、先ほどお話した古文書など当家の歴史的な資料はこの時にほとんど焼失し、現在の建物もほぼ明治以降のものです。
明治維新ののち、22代目の時に鉄道が開通し、海運業が大打撃を受けたことで完全に酒造り主体にシフトしました。

―「山廃づくり」とはどのような手法ですか?

齋藤 日本酒を造る土台となる酒母(しゅぼ)を、「山廃仕込み」(正式には「山卸(やまおろし)廃止仕込み」)という手法でつくるのが「山廃づくり」です。蒸米、麹、水を仕込んだあとの、櫂棒と桶を使ってすりつぶす山卸という作業を廃止することから「山廃仕込み」といい、昔ながらの酒母製造方法になります。人の手を使うと2週間くらいで仕上がる酒母ですが、「山廃」酒母は空気中の乳酸菌などの微生物を利用し、自然のままにゆっくりと培養、育成するため30日間ほどもかかります。微妙なさじ加減の温度管理を必要とし、とても手がかかる伝統的な手法を、代々守り続けているのです。

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「まるでわが子を育てるような感覚で、手間ひまを惜しまず酒造りと向き合います」と、齋藤氏。

―「山廃」にこだわる理由は?

齋藤 山廃づくりのお酒は、しっかりとした味わいが魅力の男酒。仁賀保家から拝領した井戸に湧く鳥海山の伏流水は、山廃仕込みに最適の硬水で、力強い骨格を感じさせる酒に仕上げることができます。
流行りのフルーティな華やかさはありませんが、少し酸味があって味わい深い、職人堅気で頑固な辛口の酒。時代の風潮に惑わされず、時間と手間のかかる昔ながらの製法をかたくなに続ける姿勢が、真の日本酒通が好む味を守ることに繋がると考えています。

―今回ご紹介する「山廃純米酒」も、そんなこだわりの一本でしょうか。

齋藤 はい。伝統的な山廃仕込みに力を注ぎ、「飛良泉」の名を一躍有名にした当蔵の看板商品が、この「山廃純米酒」です。特徴は、ふくらみのある味わいと、飲み飽きせず味くずれしない腰の強さ。食中酒にぴったりとご好評をいただくベストセラー商品です。

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生粋の日本酒好きが舌鼓を打つ、日々の晩酌にちょうどいい「山廃純米酒 飛良泉」。

―どんな料理に合いますか?

齋藤 魚料理はもちろん、キレのある力強い酒なので、こってりとした肉料理にもおすすめです。山廃独特の乳酸の香りがほんのりと漂い、快い酸味とキレ味のよさで、料理をバランスよく引き立ててくれると思います。

―飲み方のコツなどはありますか?

齋藤 冷やせばすっきりと、お燗にしても味くずれせず飲めるので、季節を問わず、気軽にご愛飲いただける一本です。常温でもおいしいですから、届いたらすぐ開栓して楽しめるのも、味わいがしっかりとした山廃ならでは。
この、温度変化に柔軟に対応できる利点を生かして開発したのが、もうひとつのおすすめ商品「山廃氷結生酒」になります。弊社の夏の大ヒット商品です。

―凍結酒、ということでしょうか。

齋藤 冷凍庫(-10℃~-15℃)で5~6時間ほど凍らせ、シャーベット状のものを溶かしながら食べたり飲んだりしていただけるお酒です。山廃づくりした搾りたての生酒を、冷凍しても割れない瓶に閉じ込め、クール便でお届けします。

じつはこれ、私が1986年に弊社に入社後すぐ開発して売り出した、思い入れのある商品なんです。当時はまだ凍結酒というのは珍しくて話題になりましたが、ここまでロングランで人気が続いているのは、やはり山廃仕込みならではの味わいが高く評価されている証拠だと思います。アルコール度数も16度と高めで濃醇でありつつ、フレッシュな生酒の風味と山廃らしい酸味、キレのよさは唯一無二のもの。凍結しても薄まらず、再冷凍しても水っぽくならないのも特長です。秋田の夏の風物酒としてすっかり定着しました。

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凍らせるとボトル表面に霜がついてとても涼し気。シャリシャリ食感のみぞれ酒として、またはオンザロックで楽しんでも。

―夏期限定商品なのですね。

齋藤 そうなんです。今年(2025年)は猛暑続きであっという間に完売してしまいまして…。自社のオンラインショップでは取り扱いなしとなってしまうかもしれませんが、来年またたっぷりと仕込んで4月末頃から販売する予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います!

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風呂上がりにもぴったりの爽やかさ。飲む少し前に冷凍庫から出し、菜箸などの棒で突き、溶かしながらどうぞ。

―御社のオンラインショップはいつ頃からスタートされたのですか?

齋藤 自社オンラインショップは始めてまだ4~5年でして、少しずつ品数も増やしていって、反響をいただいています。昨年まで店頭販売と併用して、平日のみ電話やファクスなどの通販対応もしていたのですが、今年3月に直売所をクローズし、直営はネット販売だけに絞っています。
これにはきっかけがありました。NHKの日曜朝の番組で当蔵が取り上げられたことがあり、全国放送だし翌日には注文の電話が鳴るだろうなと待っていたんです。ところが、かかってきた電話は10件ほど。オンラインショップにはその10倍以上の注文が入ったんです。休日朝ですし、ご年配の視聴者も多かったと思うのですが、もう皆さんネット通販に慣れていらっしゃる。休日でも深夜でも気にせずご注文いただける利点もありますし、この機会にオンラインショップをもっと充実させる方向に移行しようとなりました。

―それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。

齋藤 500年以上に渡って紡いできた歴史と伝統、こだわりの山廃仕込みの酒ですが、これをどのようにして次世代へ繋げていくか、転換期がきていると思っています。

一部で若い人は日本酒を飲まない、若者の日本酒離れが大変だ、などといわれていますが、それは大きな間違いなんです。今は造り手側が蔵元の若い後継者になりつつあって、その嗜好の、今風の酒をがんばって開発していますから、若者は飲んでくれているのです。

事実、秋田県の酒蔵が合同でイベントを開くと大盛況で、会場には30代前後の日本酒好きのお客様が何千人と集まって、飲み比べを楽しまれています。この蔵の誰それが造った銘柄はどうで、仕込みの方法はこうで、などマニアックな会話に興じるブームもあり、注目しています。蔵元の熱心なファンになってくれる方も多く、ブームだけで終わらせてはいけないと思います。

―上の世代のお客様はいかがですか?

齋藤 残念ながら、先ほど申し上げた今風の酒は、「薄い」「淡い」などの理由で対象外だと言われる方が多いです。私の代くらいまで、酒蔵には杜氏(とうじ)といって酒を仕込むベテランの責任者がいて、蔵主はその指示のもと職人たちが造った酒を売るシステムでした。でもそうすると、どうしても30代、40代の人には売れませんでした。杜氏自身の嗜好が60代、70代ですから。

ところがまさに今、27代目にあたる息子へと代替わりを進めているのですが、彼は杜氏制をとらず自ら酒を造っているんです。同世代の30代、40代の社員と一緒になって、今の嗜好を探りながら懸命に取り組んでいます。そういう蔵元も、増えてきています。

もちろん弊社の特徴は山廃仕込みですから、そこにはこだわってやってくれています。日本酒に慣れていない人でもおいしいと感じる親しみやすい「飛良泉」や、ワイングラスに合うよう酸味を強調した「飛良泉」など、山廃の酒の裾野を広げるよう新しい試みを続け、手ごたえを感じているところだと思い、私も応援しております。

そんな流れのなかにあって、今回ご紹介した「山廃純米酒」も、昔と比べると少しずつ華やかな酒になってきています。造り手と、時代と、何よりお客様の嗜好によって変化していくのは至極当然のことです。たゆまぬ努力と挑戦を続け、新しい味をお届けしながら、日本酒の魅力を広く伝えていきたいですね。

―日本史の流れそのもののような長い時間の重みと、時代に合わせて前進し続けるパワーを感じる取材となりました。貴重なお話をありがとうございました!

山廃純米酒(720ml)

「山廃純米酒」(720ml)
価格:¥1,760(税込)
店名:飛良泉本舗オンラインショップ
電話:0184-35-2031(9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hiraizumi.online/?pid=166350513
オンラインショップ:https://hiraizumi.online/

山廃氷結生酒(710ml)

「山廃氷結生酒」(710ml)
※季節限定商品のため、夏期のみの取り扱いとなります。
価格:¥1,738(税込)
店名:飛良泉本舗オンラインショップ
電話:0184-35-2031(9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hiraizumi.online/?pid=143110541
オンラインショップ:https://hiraizumi.online/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

齋藤雅人(株式会社飛良泉本舗 代表取締役社長)
1956年、秋田県出身。成蹊大学法学部政治学科を卒業後、株式会社東北新社、メルシャン株式会社などを経て、1986年、株式会社飛良泉本舗入社。1997年、代表取締役社長に就任。2020年より2024年まで秋田県酒造組合会長を務める。

<文/亀田由美子 MC/田中香花 画像協力/飛良泉本舗>

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