全国生産量2%の品種茶を使用した、新潟の老舗・紫香園のお茶「越後路」で作る丁寧なひととき

2023/02/28

「最近、美味しい緑茶を飲んでいないな」。そんな人も多いのではないでしょうか？今回、アッキーこと坂口明子編集長が注目したのは、お茶の卸・小売業の「お茶の紫香園」。創業77年、お茶の消費地でもある新潟の地で、ひたすら美味しいお茶をブレンドすることにかけてきた名店です。2代目社長・佐藤陽子氏に、その美味しさの秘密と新しい挑戦について聞いてきました。

株式会社お茶の紫香園代表取締役社長の佐藤陽子氏

―新潟で創業77年の老舗ですね。

佐藤　創業したのは私の父で、戦後すぐの頃でした。戦地から日本に戻ってきた父は、駅である光景を目にしたそうです。おばあさんが、やかんから容器にお茶を注ぎ販売していたのですが、1杯のお茶にたくさんの人が並んでいたのです。父は「これからは空腹を満たすものだけでなく、お茶に心の癒しを求める時代がくる」と強く感じたそうです。すぐに静岡行きの電車に飛び乗って、お茶の買い付けを学び、その後仕入れたお茶が毎日届くと、午前中には売りさばいていたと聞いています。次第に扱う量を増やして、新潟でお茶の卸問屋をはじめました。新潟の人はお茶が好きですから、商売は順調だったようです。

新潟県にある本店。白鳥が飛来することで有名な瓢湖の近くにある。
このほか直営店は全8店舗。

―看板のお茶「越後路」は、どんなお茶ですか？茶葉は鹿児島のものですか？

佐藤　全国的にお茶といえば静岡のイメージであり、当時、九州一円のお茶の知名度はあまりありませんでした。だからこそ、鹿児島の生産者は、新しい品種を積極的に開拓し続けていました。50年前、ひとつの出会いから飲んでみた先代が「目が飛び出しそうなほど美味しいお茶」と驚いたのがきっかけとなり、それからのご縁で、鹿児島や九州産のお茶が身近になりました。

先代が亡くなってからは、弟の専務が2代目茶師として、先代の想いと共に、産地や品種に限らず、日本にはもっと美味しいお茶が有るのではないか？もっと美味しいお茶を作れるのでは？と、商品開発の為、時間を見つけては全国の産地を尋ね歩きました。
その先々でお茶に真摯に取り組む茶業者の方々と交流を重ね、たどり着いたのが、産地内で消費されてしまうため一般には出回らない類の品種の茶葉でした。その茶葉を中心に、それぞれの特性を生かしながら、いくつかの品種と独自配合したのが、紫香園オリジナルシリーズです。
中でも水色（すいしょく）が青緑色で見た目も美しく、芳醇な旨みと茶葉の自然な甘味を感じることができ、渋み、苦みが少ない、茶師専務のまさに理想の味わいのオリジナルブレンド茶が「越後路」です。発売以来、他のお茶に比べ高値ながらに人気を集め、お茶好きの方へ、心を伝える贈り物としてもとても喜んでいただいています。

目にも鮮やかな「越後路」のお茶。
茶葉から淹れると、まろやかで渋みのない甘い旨味を感じられる。

―お茶も、コーヒーと同様に、ブレンドが大切とか？

佐藤　お茶は作物ですから、毎年味が違います。樹齢にもよりますし、その年の天候にもよります。ですから、新茶の時に産地に買い付けに行き、味などを確かめてから、荒茶を冷蔵保存しその後仕上げ加工を経て、産地から輸送されたその新茶たちを実現したい味にブレンドを行い袋詰めにして販売します。「越後路」は、鹿児島や九州産を中心として全国の茶葉を12種類ほどをブレンドして、香りやすっきり感、コクといったそれぞれの特徴を組み合わせます。ほぼ毎日試飲合組をするので、スタッフは少し閉口しているかもしれませんが（笑）、紫香園の特色は、ブレンド力だと話して聞かせ、ひたすら美味しいお茶のために商品開発を続けています。

―ティーバッグの場合、飲み方のオススメはありますか？

佐藤　せん茶（緑茶）というのは、ご存知の通り、熱いお湯で入れると、渋くて苦くなってしまいます。せん茶「越後路」自体がそうですが、「越後路のティーバッグ」も熱めでも気を使わなくても旨味の美味しいお茶を淹れられるのでオススメしたいです。お湯の中に30秒ほど入れ、それから糸を持ちゆっくり何度もお湯にくぐらせます。ご自宅、職場、旅行などどこでも誰でもお気軽に、本格派の美味しいお茶が淹れられます。

水出しもできます。日本は近年暑いですから、年々冷たいお茶が好まれ需要がありますね。夜、ボトルにティーバッグを2つくらい入れておくと、朝には美味しい煎茶が飲めます。温度が低いほど甘いお茶になりますし、カフェインも出ないので、デカフェにもなるんですよ。朝は熱いお茶で目を覚まし、夜はぬるめのお茶で体を休ませる。そんな風に用途に合わせた飲み方もできます。

ティーバッグでも味わいは本物。
好きなお菓子と一緒に煎茶をいただく時間は最高の癒しに。

―日々を丁寧に生きることにも繋がりそうです。

佐藤　日本茶は、中高年層や、特定の人のものになってしまいそうですが、お茶はテアニンやビタミンCなど成分も素晴らしいですし、何よりも、美味しいお茶は人の心を和やかに癒してくれます。
ぜひ1度、茶葉の量やお湯の量、温度まで気を使って、お茶を淹れてみてはいかがでしょうか？丁寧に自分と向き合う時間だったり、ゆっくりとしたコミュニケーションのひと時をお茶を通して作ることができると思います。忙しい現代人にこそ、お茶を通してそんな間合いを楽しんでいただけたらと願います。

―若い人にもアプローチしたいですね。

佐藤　若い方の中にも「日本茶は好き」だったり憧れ度の高い方もいらっしゃるのですが、ペットボトルしか知らない方が多いですね。もっとお茶に触れてほしいですし、急須で飲むお茶のことも知ってほしいです。

そこで、新しい試みとして、令和5年春に本店、隣の3階建て倉庫の1階に日本茶を楽しむ場所として茶房「茶茶れ（さざれ）」を新設します。昔からの文化にふれたい、本物を知りたい若い世代が増えているようです。急須を知らない世代が増える中、豊かな時間の過ごし方、心の拠り所としてお茶を楽しむ時間の提案が出来る場所にしたいと思っています。

この新設に当たり新たに全国に赴き選び抜いた品種のオリジナルブレンド茶、様々な日本のお茶を飲み比べ新たな商品シリーズを開発しています。
そちらも含め、美味しいお茶の淹れ方などを是非この場所で体験していただければと思います。

また、冬になると白鳥が地元阿賀野市旧水原町の瓢湖に飛来し賑わいます。店内も地元の良さを知っていただくため、内装の素材なども出来るだけ地元のものを使いこだわりの空間に仕立てております。近隣にお越しの際は、是非訪れていただきたいです。