今回、編集長アッキーが気になったのは、老若男女に愛される老舗洋菓子店「銀座ウエスト」。株式会社洋菓子舗ウエスト・代表取締役社長の依田龍一氏に、ロングセラー商品の魅力を取材陣が伺いました。
良い材料を使えば飽きがこない 長年愛される「リーフパイ」の秘密
2023/02/27
―創業の経緯を教えてください。
依田 父が1947年に今の銀座本店の地にレストランをオープンしたのが始まりです。父の叔父が昔、豪華客船でベイカーをやっていたので、彼と友人のシェフの力を借りて、学生時代から夢だった銀座の地でスタートしました。
最初は「グリルウエスト銀座」という名前のレストランでした。戦後のまだ物資も乏しい時代に破格の高額な値段で料理を出していたのです。すると「贅沢だから控えてくれ」と都条例が出されて、高級な料理が出せなくなり……。シェフはやめてしまいましたが、ベイカーは残って、音楽喫茶をしようということになり、「銀座ウエスト」に店名を変更して再出発しました。その後、喫茶だけでなく、洋菓子の販売も行うようになりました。
―家業を継がれることは意識されていましたか。
依田 私が大学を出る頃は先代も元気でしたし、家業のことは考えなくていいから、好きなことをやれと言われていました。まったく洋菓子と関係ない企業に就職し、13年働いてから、家業に戻りました。
小さい頃から父親にお店に連れてきてもらっていたので、コーヒーのいい香りがするのを原体験として覚えています。家業を継ぎ、先代ほどの苦労はしていませんが、コロナ禍で休業せざるを得なかったときは不安でした。おかげさまで現在はコロナ禍前の状態に戻り、安心しています。
―会社として先代から変わらずに続けていることはございますか。
依田 裏表のない真面目な商売をしようというのが社是で、とにかくいい材料を使うことです。その材料の本来の味、風味、それが楽しめるような商品にしたいということです。
ケーキでもクッキーでも良い材料を使えば、良い材料の特徴が出ると言うことを貫いています。着色料や保存料は一切入っていません。良い材料が持つ飽きがこないことが商品にも出ていると思っています。
―今回ご紹介させていただく「リーフパイ」が長く愛されている理由はどういったところにあるでしょうか。
依田 バターと小麦、卵、砂糖。この4つの原材料以外はなんにも入ってない、すごくシンプルな商品です。特にこだわっているのがバターです。リーフパイの場合にはバターの量が非常に多いですから。北海道産のバターを使うとバター臭が強すぎて、しつこくなります。そのため、白っぽい色の東北地方の原乳を使ったあっさりしたバターを使用しています。
それが飽きの来ない理由でしょう。ごはんや味噌汁に近いベーシックなものがリーフパイにはあると思います。砂糖は、きめの粗いものだけだと食感がなくなるので、きめの細かいものを混ぜて、ベストな食感を生み出しています。またバターが主役なので、濃い卵を使うとピントがずれてしまうので、卵は脇役としてバターを引き立ててくれるものを選んでいます。
東北地方山間部の原乳を使用したフレッシュバターと小麦粉生地を256層に折りたたみ、職人の手作業で木の葉のかたちに。
―原料は創業当時から変わっていないのでしょうか。
依田 少しでも良いものに変えられる時は変えていますが、質は絶対落とさないことを意識しています。
―リーフパイを作り始めたきっかけを教えてください。
依田 リーフパイはオリジナル商品ではなく、もともと葉っぱの形のパイというのがあり、それを当店でも始めました。私が子供の頃は今よりもサイズが大きかったのを記憶しています。今はさらに小さいリトルリーフという一口サイズのもあります。大きくても小さくても、1枚1枚、手で整形しており、非常に手間が掛かっている商品です。
葉脈のような模様は、パイが浮き上がりすぎないように穴をあけているもので、 デザインよりも、実は機能のためのものだったりします。生地とバターを256層に折りたたんでいるので、浮き上がるとお餅のように膨らんでしまうのです。
サクっとしたパイの食感と白ザラメ糖の歯ごたえが特徴的です。
―そんなに層が重ねられていたとは驚きです。おすすめのリーフパイの食べ方はございますか。
依田 温めて食べるという方法はホームページでもご紹介しています。バターが多いので、賞味期限を過ぎるバターが酸化して風味も味も劣化します。なるべく早めに召し上がっていただくことをおすすめします。
―通販は早くから行われていたのでしょうか。
依田 2000年代になる前から行っており、早くから取り組んでいました。コロナ禍でさらに強化して、箱でしか買えなかったクッキーをばらで売るなど、ギフトではなく、自分用にも購入いただけるようになりました。
―「リーフパイ」を作り続けるにあたって大変なことはございますか。
依田 機械を使わずに手作業なので職人さんのレベルを維持することが大変です。材料を少し変えただけで気づかれるお客様もいらっしゃるので、変わらない美味しさをキープすることへの努力は欠かせません。
―喫茶店も愛され続けています。
依田 じつは喫茶店は利益がでていないので、宣伝という位置づけです。「利益が出ていないならやめたほうがいいのでは」という声もありますが、親子3代で通ってくださっているようなお客様も多く、銀座の老舗として続けていきたいと考えています。
―今後の展望をお聞かせください。
依田 新商品への意欲は持っていますが、すべて手作りにこだわっているため、急に増産や拡は難しいのです。少しずつ拡大したいと思っていますが、お店を増やしたり、全国展開するといったことは考えていません。コアなお客様に熱烈に支持していただける方向を目指しています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「DL-B リーフパイ」(12枚入)
価格:¥1,944(税込)
店名:銀座ウエスト
電話:0120-73-5622(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL: https://www.ginza-west.com/SHOP/121.html
オンラインショップ: https://www.ginza-west.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
依田龍一(株式会社洋菓子舗ウエスト 代表取締役社長)
1952年2月生まれ。1974年某上場企業に入社し、13年のサラリーマン生活を経て1987年に入社。2000年に同社代表取締役社長に就任。
<文/垣内栄 MC/丹野優紀乃 画像協力/洋菓子舗ウエスト>