食の楽しみが広がる一本。能登伝統の魚醤「いしる」の濃厚な旨み「いしるだし」

2026/06/01

今回、編集長のアッキーが注目したのは、水を加えるだけでプロのだしの味を再現できる「いしるだし」です。料理の味が決まらないときに、ひとさじ加えるだけで旨みがでる、まさに魔法のだし。
能登伝統の魚醤「いしる」がもたらす重厚な旨みが特徴のこのだしの背景には、伝統の味を絶やしてはならないという造り手の強い意志と、能登半島地震の被害から2年をかけた復活の物語がありました。取材スタッフが、石川県に本社を構える、株式会社ヤマト醤油味噌 代表取締役の山本晴一氏にお話を伺いました。

株式会社ヤマト醤油味噌 代表取締役の山本晴一氏

―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。

山本 当社は1911年、初代・山本藤松が北前船の寄港地として栄えた金沢・大野で創業しました。初代はもともと船乗りだったのですが、北海道へ醤油や味噌を運び、帰りには材木や海産物を仕入れてきて金沢で販売するという商いで礎を築きました。
代を重ねるごとに醤油、味噌、そして現代のライフスタイルに合わせた発酵調味料へとものづくりの幅を広げてきました。現在は売上の約25%が海外輸出となっており、地域の伝統を守りながらも新しい価値を世界へ届けています。

北前船の寄港地として栄えた金沢市大野町で創業。
能登半島地震による被災を乗り越え、2026年1月には魚醤の原液や、魚醤を加工した「いしるだし」などの生産を再開した。

―ご自身のご経歴もユニークだと伺いました。

山本 大学ではマーケティングを専攻し、在学中にはアメリカへの留学も経験しました。卒業後は家業へ入る前に、地元の名門造り酒屋である「福光屋(ふくみつや)」で2年半ほど修業をさせていただきました。酒造りの現場で発酵の奥深さを肌で感じた経験は、今の私の経営スタイルの土台となっています。伝統をただ盲目的に守るのではなく、客観的な視点でその良さを再定義し、現代の言葉で翻訳して伝える姿勢を大切にしています。修業先だった福光屋とは今でも深い絆で結ばれており、金沢の発酵文化を盛り上げています。

―主力商品である「いしるだし」が誕生したきっかけは何だったのでしょうか。

山本 能登には古くから、イワシやイカを原料とした「いしる」という伝統的な魚醤があります。強烈な旨みがある一方で、塩分が高くそのまま使うと味が決まらないため、家庭では使いこなすのが難しいという課題がありました。そこで「水を加えるだけで、誰でも失敗なくおいしい料理が作れるように」という思いから開発したのがこの商品です。鰹だしといしるを黄金比でブレンドし、現代の食卓に合う万能だしに仕上げました。

能登の魚醤を家庭でも使いやすくアレンジした、看板商品の「いしるだし」。

―この商品は、震災を乗り越えて復活したそうですね。

山本 はい。順調に生産を続けていたのですが、2024年の能登半島地震によって大きな被害を受けました。魚醤を仕込んでいた大切なタンクがすべて壊れてしまい、生産が完全にストップしてしまったのです。発酵食品は一朝一夕には作れません。原料を仕込み、そこから1年以上じっくりと熟成を待つ必要がありました。復活を待ち望んでくださるお客さまの声に支えられ、震災から2年が経った2026年1月、ようやく納得のいく味を再びお届けできるようになったのです。この復活は、私たちにとっても伝統を未来へ繋ぐための大切な再出発となりました。

―「いしるだし」の品質を支えるこだわりについて教えてください。

山本 原料には、国産の新鮮なイワシやイカを厳選しています。余計なものは加えず、自然の力だけで1年以上かけて発酵・熟成させています。大豆由来の醤油が植物性タンパク質なのに対し、魚醤は動物性タンパク質です。そのため、お鍋の締めであるおじやに凝縮された深い旨みを、そのまま取り出したようなパンチのある味わいが特徴なのです。驚かれることが多いのですが、だしに加工したことで塩分は約8%と、一般的な醤油の約半分に抑えています。少量で味がピシリと決まる、まさに魔法の調味料だと自負しています。

イワシやイカを主原料とする「いしる」を、1年以上かけて発酵・熟成させる。
添加物を一切使わず、素材が持つ天然の旨みを引き出している。

―おすすめの使い方はありますか。

山本 私のイチオシは、加賀野菜の「丸葉春菊」を合わせた豚しゃぶです。だしをくぐらせるだけで、野菜の甘みと豚肉の旨みが引き立ち、最高のごちそうになります。また、カレーの仕上げにひとまわし加えると、一晩寝かせたような深いコクが生まれますよ。他にも、お湯で割るだけで贅沢なお吸い物になりますし、ごま油と合わせてナムルの味付けにするのもおすすめです。和洋中問わず、これ一本で料理の質が格段に上がります。

鍋やスープはもちろん、カレーやナムルの味付けにもおすすめ。

―専門家や海外からも高く評価されているそうですね。

山本 2019年には、石川県の優れた特産品に贈られる「プレミアム石川ブランド」の認定をいただきました。また、当社の商品はフランス・パリの三つ星レストランでも隠し味として採用されるなど、世界のトップシェフたちに愛用されています。現在は世界13カ国へ輸出しており、日本の発酵の知恵が世界中の食卓で新しい感動を生み出しています。

―最後に、これからの展望をお聞かせください。

山本 私は「伝統食は未来食である」と信じています。日本人が古来大切にしてきた発酵食品の知恵を、次の世代へ繋ぐことが私たちの使命です。頑張りすぎないけれど豊かな食卓を叶える「一汁一菜に一糀」というライフスタイルを提案し、現代人の心と体の健康を支えていきたいと考えています。創業の地である大野を「糀パーク」として開放し、体験を通じて発酵の楽しさを伝えているのも、その活動の一環です。100年後の食卓にも、豊かな糀を活用した発酵食文化が当たり前にある景色を目指して、これからも挑戦を続けてまいります。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「ヤマト 魚醤 いしるだし 300ml」
価格:¥702(税込)
店名:金沢 ヤマト醤油味噌 WEBショップ
電話:0120-12-1248(9:00~17:00※土日祝祭日を除く)
商品URL:https://shop.yamato-soysauce-miso.co.jp/fs/yamato/ishiru_dashi/142576
オンラインショップ:https://shop.yamato-soysauce-miso.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

山本晴一(株式会社ヤマト醤油味噌 代表取締役)
1955年生まれ。石川県金沢市出身。埼玉大学経済学部卒業後、アメリカ留学を経て、名門造り酒屋での修業後に家業へ入る。1987年に「ひしほ醤油」、1995年に「しょうゆソフト」を開発。2015年には「糀パーク」をオープン。「伝統食は未来食」を信念に、発酵食文化を世界へ発信し続けている。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/ヤマト醤油味噌>

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