白ワインのようなフルーティさが新しい。鳥取の老舗蔵が醸す、低アルコールの純米大吟醸「IKU’S SHIRO(いくす しろ)」

2026/05/21

今回、編集長のアッキーが注目したのは、日本酒の概念を覆すほどフルーティで優しい飲み心地の低アルコール日本酒「IKU’S SHIRO(いくす しろ)」です。グラスに注げば、まるで白ワインのようにさわやかな飲み口で、繊細な香りが広がります。
その背景には、「お酒が全く飲めなかった」という異色の経歴を持つ女性社長が、お嬢さんの成人という人生の節目に寄せて込めた、母としての温かな思いがありました。取材スタッフが、鳥取県に本社を構える、株式会社稲田本店 代表取締役の成瀬以久氏にお話を伺いました。

株式会社稲田本店 代表取締役の成瀬以久氏

―まずは御社の歩みについて教えてください。

成瀬 創業は1673年と言い伝えられていますが、実はあまりに古すぎて正確な記録を証明できる者がいないほどなのです。元々は稲田家が代々営んできた蔵でしたが、1990年代に 入って間もない頃に跡継ぎがいなくなった際、私の父がその暖簾を引き継ぐことになりました。
私の実家も元々は小さな酒蔵を営んでいたのですが、戦時中の整理統合などで一度は酒造りを断念せざるを得なかった過去があります。父には「いつか家業だった酒造業を復活させたい」という強い思いがあり、地元の金融機関から話を聞き、稲田本店を受け継ぐことになったのです。稲田本店には、明治時代に地ビールの先駆けとなる「イナダビール」を発売したり、昭和初期に全国に先駆けて冷用酒を発売したりと、伝統を大切にしながらも常に新しいことに挑戦する先駆的な社風がありました。私たちはその精神を大切にしながら、地元の名峰・大山の伏流水を仕込み水に使用し、心を込めてお酒を醸し続けています。

鳥取・米子の地で、明治期には地ビール、昭和初期には冷用酒を全国に先駆けて発売するなど、
伝統を尊重しながら常に新しい挑戦を続けている。

―どのような経緯で蔵を継がれたのでしょうか。

成瀬 私は一人っ子だったので、幼い頃から「後を継いでほしい」という親の思いを感じて育ちました。別の道も見てみたいという気持ちがあったので、高校から県外に出て、名古屋市の大学に行き、そのまま就職・結婚をしました。その頃には、家業に戻る予定なんて全くなかったです。
ところが、家族の事情で地元に戻ることになり、「社長の娘という楽そうなポジションで仕事ができればいいな」なんて安易な気持ちで入社したのですが、気づけば代表を引き継ぐことになっていました。

実は当時、私はお酒が全く飲めませんでした。これではお客様に勧めることができないと思い、日本酒をソーダやジュースで割って飲む練習から始めました。どうせなら「お酒が飲めない私だからこそ、同じように苦手な人にも楽しめるお酒を造ることができるのではないか」と、自分を実験台にして楽しく前向きに考えるようにしたのです。

今では、大きな鍋いっぱいにカレーや粕汁を作って蔵のスタッフに振る舞うなど、「蔵のお母ちゃん」のような役割も、私の大切な仕事だと思っています。同じ釜の飯を食べ、社員が笑顔で働ける環境を作ることが、私の役目だと思っています。

―今回紹介する「IKU’S SHIRO」の誕生秘話を教えてください。

成瀬 きっかけは、私の娘が20歳を迎えるタイミングでした。娘が人生で初めて口にするお酒が、自分たちの造ったものだったらどんなにうれしいだろう、という蔵元としての純粋な思いから開発がスタートしたのです。お酒を苦手に感じている方に「これならおいしく飲める」と思ってもらえるには…と固定概念を捨てて、想像力をふくらませて、スタッフのみんなと話し合い、実験しました。とにかく日本酒のハードルを下げたかったです。商品名の「IKU’S」には、私の名前である「以久(いく)」と、英語の「EX(乗り越えていく)」という意味を重ねています。私の名前がつくことに最初は抵抗もありましたが、社員たちの「社長の名前が入ることで思いが伝わりやすい」という熱意に押されて決まりました。「醸し、新し、おもしろし。」がコンセプト。しっかりと社風を引き継いでいます。

スタイリッシュなボトルに収められた「IKU’S SHIRO」。
20歳を迎える社長のお嬢さんに向けて開発した、アルコール度数9%と低アルコールの純米大吟醸。

―製造におけるこだわりを教えてください。

成瀬 さまざまな低アルコール酒がありますが、私たちは初めて日本酒を飲むかもしれない人向けだからこそ、あえて手間のかかる「大吟醸」の技術を用いました。磨き上げた良質の酒米と米麹だけを使い、米の甘みを最大限に引き出した後、低温でじっくり丁寧に発酵させています。
余計なものを一切加えず、お米本来の優しい甘みと、白ワインのような爽やかな酸味の絶妙なバランスを追求しました。低アルコールでも、しっかりとしたコクとキレを損なわないのは、機械に頼りすぎない職人たちの丁寧な「手仕事」があるからこそです。
日本酒の「難しさ」をなくし、誰でも直感的に「おいしい」と感じていただけるような、綺麗で澄んだ味わいを目指しました。糖と酸の新しいバランスが生み出す、唯一無二の飲み心地をぜひ体感していただきたいです。

職人の手と、じっくり時間をかけた製法によって、キレのある味わいが生まれる。

―どのようなシーンで楽しむのがおすすめでしょうか。

成瀬 ぜひ冷蔵庫でよく冷やして、香りが引き立つワイングラスで楽しんでいただきたいです。おすすめは、一日の終わり、お風呂上がりにお部屋で「ふうっ」と一息つく時間です。ビールもいいですが、この繊細なさわやかさを一口含むだけで、少しだけ特別な、自分を労う癒やしのひとときになります。
また、食前酒としても最適ですし、休日の昼下がりに少し贅沢な気分を味わいたいときにもぴったりです。日本酒初心者の方でも、フルーティなデザートワインのような感覚で、安心して楽しんでいただけます。

冷蔵庫でしっかりと冷やし、香りが広がるワイングラスで楽しむのがおすすめ。

―実際に飲まれたお客様からは、どのような声が届いていますか。

成瀬 皆さん、最初の一口を飲んだ瞬間に驚かれるんですよ。そして「これ、本当に日本酒なの?」「白ワインみたい!」と、うれしそうに話してくださいます。
これまで日本酒に馴染みがなかった若い世代の方たちが、このお酒をきっかけに日本酒に興味を持ってくれたら、本当に大きな喜びです。
また、ギフトとして選ばれる方も多く、贈ったお相手から「センスがいいね」と褒められたというお話を聞くと、開発して本当に良かったと心から思います。

―最後にこれからの展望についてお聞かせください。

成瀬 私たちの銘柄の一つ「稲田姫」は、縁結びの神様の名前でもあります。お酒を通して単なる取引ではなく、お互いに高め合えるような、温かな「ご縁」を広げていきたいのです。
実は今、娘も蔵に入り、修業を始めています。私が父からバトンを受け取ったように、今度は私が娘と一緒に伴走しながら、次世代へ伝統と革新を繋いでいく準備期間だと捉えています。
350年の歴史という重みはありますが、形式に縛られることなく、社員が笑顔で楽しみながら挑戦を続けられる蔵でありたいです。この「IKU’S SHIRO」を通じて、皆様とまた新しい「ご縁」が繋がることを、蔵人一同、心より願っております。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「IKU’S SHIRO」
価格:¥2,200(税込)
店名:株式会社稲田本店
電話:0859-29-1108(9:00~17:00)
定休日:日祝 ※土曜日は不定休
商品URL:https://www.inata.co.jp/i/00009
オンラインショップ:https://www.inata.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

成瀬以久(株式会社稲田本店 代表取締役)
1967年、鳥取県生まれ。 愛知県名古屋市での大学生活・就職・結婚・出産を経て帰郷し、2009年に株式会社稲田本店の代表取締役に就任。お酒が飲めなかった自身の経験を活かし、低アルコール日本酒やリキュールの開発を主導。社員を温かく見守る「蔵のお母ちゃん」的存在として、350年以上続く老舗蔵の伝統を守りつつ、次世代への継承に注力している。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/稲田本店>

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