毎日安心して飲める、おいしい牛乳を探し求めていた編集長・アッキー。ついに出合ったのは、低温殺菌牛乳(パスチャライズド牛乳)のパイオニア「東毛酪農」。生乳そのままの味わいをいかした牛乳や、それを原料としたアイスクリームなど、さまざまな商品を手がけています。今回お話を伺ったのは、東毛酪農の商品販売を担っている「東毛酪農直販株式会社」の代表取締役を務める大久保克美氏。酪農や牛乳づくりにかける想いや商品について詳しくお聞かせいただきました。
生乳の風味そのまま!限りなく搾りたてに近い「東毛酪農低温殺菌牛乳63度」とすーっと溶けてなめらかな「アイスクリーム」
2024/03/28
東毛酪農直販株式会社 代表取締役の大久保克美氏
―社長のこれまでの歩みを教えてください。
大久保 私はもともと農家の長男で、学生時代には農業高校で畜産を学び、卒業後は酪農家のもとで1年間の実習を受けました。19歳のときに実家へ戻って以来ずっと酪農業に携わってきました。29歳のときに父を、その6年後くらいに母を亡くしましたので、その頃は大変でした。でも東毛酪農業協同組合に入ってからは、父と同じ年頃の方たちとの付き合いができて、いろいろ勉強させてもらいました。
―東毛酪農業協同組合とは?
大久保 1952年に、太田市を中心とした地域の酪農仲間が集まって作った組合です。酪農をやっていく上での一番の理想は、近場で生産したものを近くの人にお届けすること。せっかく首都圏に近い専門農協なのだから、自分たちが責任を持って作った製品を消費者へ直接届けよう、という想いのもと、1975年に工場を開設。4年後に「東毛酪農直販株式会社」を設立し、牛乳などの商品製造は組合が、販売は東毛酪農直販が担うようになりました。
「低温殺菌牛乳(パスチャライズド牛乳)」とは、
生乳の風味や栄養などを極力損なわず、有用な菌を残す温度で殺菌した牛乳のこと。
これが生産できるのは、酪農家の徹底した管理体制があってこそ。
―低温殺菌牛乳を作りはじめたきっかけは?
大久保 工場開設当初は、超高温で殺菌する一般的な牛乳を作っていました。それから7年ほど経った頃に、消費者グループとのつながりができたんです。そのなかで、「低温殺菌牛乳を作れないか」という要望をいただいたことがきっかけです。以来、消費者と生産者(酪農家)、組合とで話し合いを重ね、実現したのが1962年。その翌年から製造をはじめました。
―当時は国内でも珍しいことだったのですか?
大久保 早い方ですね。今でも95%くらいは超高温殺菌ですが、歴史を遡ると昔はみんな低温殺菌だったんです。なぜ超高温殺菌が主流になったかと言うと、ひとつは量産のため。あとは衛生上の問題です。当時は冷蔵庫やクーラーが普及していない時代でしたし、質の良い生乳も取れませんでしたから。
多くの契約農家を抱えるのではなく、
“顔の見えるお付き合い”ができる18戸の酪農家とともに高品質な生乳づくりを行っている。
―超高温殺菌と低温殺菌の味わいの違いは?
大久保 本当は、搾りたての生乳をそのまま飲むのが一番おいしいんです。搾りたての味わいに近いのが、低温殺菌牛乳です。牛乳特有のにおいが苦手だという人もいますが、そのにおいは生乳に熱を加えることでたんぱく質が変性して発生します。超高温殺菌は130度で2~3秒間殺菌する方法が主流ですが、低温殺菌牛乳——たとえば弊社の販売する「東毛酪農低温殺菌牛乳63度」なら63度で30分間殺菌しています。このようにできるだけ低い温度で殺菌したほうが、においが出にくいのです。
「東毛酪農低温殺菌牛乳63度」はサラリとした飲み口で、舌にまとわりつく感覚ナシ!
スッキリとした味わいのなかに、自然な甘みが感じられる。
大久保 卵を例にとるとわかりやすいと思います。生卵よりもゆで卵のほうがにおうでしょ?ゆで卵を割ってみると白身が白く、黄身も固まっていますよね。たんぱく質に熱が加わると、ああいう風に固まってにおう。牛乳でも同じことが起こるのです。牛乳を飲むとお腹が痛くなったり、ゴロゴロしたりする人も少なくありません。その理由も、たんぱく質が変性して胃で充分に固まらず、消化されないまま腸に到達してしまうからです。低温殺菌牛乳は変性が少ないため胃酸で固まり、それが少しずつ溶けながら腸へ向かうため吸収もゆるやかです。
静置しておくと上部にクリームの層が浮かぶノンホモジナイズドタイプ。
クリームはそのまますくって紅茶やコーヒーなどに入れても◎。
―牛乳を作る上で大切にしていることは?
大久保 低温殺菌牛乳は、生産者さんに徹底した衛生管理をしてもらわないと作れないんです。超高温殺菌ならその心配はありませんが、低温殺菌では大腸菌などの有害な菌を処理することは難しいですからね。ですから、毎日のサンプリングや月6回の検査が欠かせません。組合と生産者さんとが一丸となって、一般の基準値をはるかに超えた独自の厳しい基準での生乳作りに努めています。
あとは牛を健康に保つことです。いくら衛生管理をしたって牛の体調が良くなければ、やっぱりおいしい生乳は出ませんので。健康な牛を育てるにはしっかり運動させて飼料をいっぱい食べさせることです。組合では生産者さんのもとを訪れて飼育方法や飼料、環境づくりなどの指導も行っています。
1,000mlは紙パック、200mlサイズは牛乳瓶入り!
いずれもできたてを届けてくれる。
―「アイスクリーム」に使っているのも低温殺菌牛乳なのですか?
大久保 そうです。やはり牛乳がおいしくないとアイスクリームもおいしくなりません。牛乳の味わいがしっかり出せるように余計なものは加えず、きちんとした原料でシンプルに作っています。
たとえば、安価なアイスクリームには増粘剤が使われていることが多いですが、うちは作りはじめた頃からずっと、一切使用していません。長期間熟成させて粘り気を出し、アイスクリーム特有のやわらかな食感に仕上げています。増粘剤が含まれていると溶けたときに泡のようなものが残りますが、うちのアイスクリームはすーっと溶けて液状になりますので、驚くほどキレが良い。舌ざわりも非常になめらかです。
生乳から水分だけを取り除き、熟成させた深みのある味わいの「アイスクリーム」。
フレーバーは「牧場ミルク」のほか、「はちみつバニラ」、「ミルクコーヒー」、
「ミルクチョコレート」、「宇治抹茶」の5種類をラインナップ。
―5つのフレーバーがありますが、なかでも社長のおすすめは?
大久保 どれもおいしいですけれど、強いて言うなら「ミルクコーヒー」がおすすめです。組合の牛乳工場では、瓶に入ったコーヒー牛乳「パスチャライズコーヒー」も作っています。これも原料は非常にシンプルで、低温殺菌牛乳90%、残りの10%はコーヒーと洗双糖を入れただけ。このコーヒー牛乳をもとに作った、スッキリとしたあと味とやさしい甘みのあるフレーバーです。
「はちみつバニラ」には、アルゼンチンにある原養蜂場から取り寄せた無農薬・非加熱のナチュラルなハチミツを使用。
「宇治抹茶」や「ミルクチョコレート」も、きちんと“いいもの”を使うことにこだわって作られている。
―最後に、今後のご展望をお聞かせください。
大久保 今、日本の自給率は37%くらいです。気候変動や大きな災害、戦争の勃発など、さまざまな事象が起きているなかで、今後世界では食糧不足が進んでいくことが予測されます。それを前提に日本型の農業をしっかり確立していかないと、将来大変なことになってしまうと思います。
たとえばもし国内の酪農業が続けていけなくなったとしたら、牛乳や乳製品は輸入に頼りきりになり価格が高騰。消費者の手の届きにくいものになってしまいます。そういった事態を何とか防ぐためにも、牛乳に限らず、できるだけ国産の食材を皆さんに口にしていただけるよう、我々が積極的に情報を発信していかないといけないと考えています。
―本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
「東毛酪農低温殺菌牛乳63度」(1000ml)
価格:¥440(税込)
店名:東毛酪農WEBショップ
メール:webshop@milk.or.jp
商品URL:http://tomo-milk.shop-pro.jp/?pid=84590579
オンラインショップ:http://tomo-milk.shop-pro.jp/
「アイスクリーム」(8個入り)
価格:¥2,780(税込)
店名:東毛酪農WEBショップ
メール:webshop@milk.or.jp
商品URL:http://tomo-milk.shop-pro.jp/?pid=84597781
オンラインショップ:http://tomo-milk.shop-pro.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
大久保克美(東毛酪農直販株式会社 代表取締役)
昭和23年7月23日生まれ、群馬県太田市出身。農家の長男として生まれ、農業高校では畜産を学び、卒業後は実家の酪農を継いだ。循環型農業を実践し米や野菜も作っている。平成12年から東毛酪農業協同組合の代表理事組合長に就任し現在に至る。全国農協乳業協会の会長や全国酪農業協同組合連合会の監事、太田市の観光物産協会の会長なども務めるなど多岐に活躍している。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/高橋知 画像協力/東毛酪農直販>