
京都で、大正天皇即位の祝事から続く伝統の味。古都の彩りを映した「小町五色豆」
2026/03/05
今回、編集長のアッキーが注目したのは、大正天皇の即位大典を祝う品として誕生した豆菓子「小町五色豆」とこだわりの大豆を詰め込んだ「節分三角袋」です。封を開けた瞬間に広がる、どこか懐かしく香ばしい豆の香り。職人の感覚だけで仕上げる、本物の手仕事がここにあります。
その背景には、変えてはいけない伝統の技と、時代に合わせて形を変える柔軟な精神「不易流行」の物語がありました。取材スタッフが、京都府に本社を構える、株式会社豆富本舗の代表取締役、冨永 泰憲氏にお話を伺いました。

株式会社豆富本舗 代表取締役の冨永 泰憲氏
―まずは、御社の歩みについて教えてください。
冨永 私たちの創業は1908年(明治41年)のことです。当時は京都駅がまだ「七条ステーション」と呼ばれていた時代で、初代の冨永泰蔵が「煎豆商(いりまめしょう)」としてスタートしました。大きな転機となったのは、1915年(大正4年)に京都御所で行われた大正天皇の即位大典です。
全国からお祝いに訪れる方々のために新しい京都みやげを作れないかと考え、誕生したのが「小町五色豆」でした。これが非常に好評で、当時は「京都みやげといえば八ツ橋か五色豆か」と言われるほどの”二大みやげ”として、街の歴史と共に歩んできました。伝統ある京都の味として長く親しまれてきた自負があります。

千年の都・京都で、「八ツ橋か五色豆か」と言われるほどの地位を築いた。

2025年5月にリニューアルした本店。
伝統を尊重しつつも、現代のライフスタイルに馴染むモダンな空間が広がる。

大正天皇の即位大典を祝う品として誕生した「五色豆」。
長く親しまれてきた味は、今も変わらず京都の伝統として愛され続けている。
―社長ご自身は、最初から家業を継ぐことを決めていらっしゃったのでしょうか?
冨永 大学卒業後は、総合商社の丸紅に5年間勤務していました。職に関して父からは「好きにしていい」と言われていたのですが、家族に不幸があったことをきっかけに4代目として家業を継ぐことになったのです。商社時代は食料部におり、そこで培った客観的な視点は経営に大きな影響を与えてくれました。例えば、昭和50年代半ばという早い段階で、百貨店だけでなく高級スーパーとの取引を開始したのもその一つです。当時は「老舗なら百貨店で商売をするのが当たり前」というプライドからスーパーを避ける風潮もありましたが、私は商社時代の縁を活かしていち早く販路を拡大しました。現在は5代目となる長男も入社し、伝統を守るだけでなく、今の時代に合った新しい形を模索しています。
―看板商品である「小町五色豆 袋入り」には、どのようなこだわりが込められていますか?
冨永 大正天皇の即位を祝うという高い志から生まれた、私たちの原点ともいえる逸品です。まず目を引く五色の彩りは、京都の街を象徴する「瑞色(ずいしょく)」を表現したものです東の蒼龍(青)、西の白虎(白)、南の朱雀(赤)、北の玄武(黒)の四神が司る四方と、中央の御所・紫宸殿(ししんでん)を表す紫。これら五つの色が組み合わさり、京都らしい伝統美を伝えています。
この繊細な表情を作り上げているのが、「砂糖掛け」と呼ばれる伝統の工程です。明治の創業当時から現在に至るまで、熟練の職人が半円形の窯の前に立ち、手作業で砂糖をまぶすことで機械では決して出せない均一で美しい衣を完成させています。一度砂糖を掛けては1日自然乾燥させる工程を3回繰り返し、仕上げるまでに1週間から10日ほど費やします。イギリス産の高品質な青エンドウの風味を、薄い砂糖の衣が引き立てる優しい甘みは、職人の手仕事でしか出せない味です。

薄い砂糖の衣と高品質な青エンドウの香りが調和した、上品な味わいが特徴の「小町五色豆」。



一度砂糖を掛けては自然乾燥を繰り返す。
職人の手加減でしか出せない「砂糖掛け」の工程。
―「小町五色豆」をよりおいしく、贅沢に味わうための楽しみ方を教えてください。
冨永 まずは、その鮮やかな五色の彩りをゆっくりと見て楽しんでいただきたいですね。一粒ずつ口に運ぶたび、上品な砂糖の甘みと青エンドウの香りが広がります。おすすめは、上質な日本茶と一緒に味わうこと。お気に入りのお茶を丁寧に淹れて、一粒一粒を慈しむように楽しんでみてください。
今の時代、誰もが忙しい毎日を送っていますが、この豆菓子を囲む数分間だけでも、京都の静かな空気を感じるような贅沢な時間を過ごしていただきたい。自分へのご褒美としてはもちろん、大切な方への贈り物としても「間違いないもの」として信頼をいただいています。

お気に入りのお茶を丁寧に淹れて、一粒一粒を慈しむように楽しみたい。
―もう一つの人気商品「節分三角袋」についても教えてください。どのようなきっかけで誕生したのですか?
冨永 今から30年ほど前、お客様にアンケートを取ったことがきっかけでした。その際届いたのは「豆まきはしたいけれど、その後の掃除が大変」「畳の隙間に豆が入って汚れてしまう」という切実な声でした。時代と共に生活スタイルが変わる中で、「行事は大切にしたいけれど、負担は減らしたい」という願いを叶えるため、個包装のまま撒けるスタイルを考案しました。
転がりやすく、かつ見た目にもかわいらしいテトラ型の三角袋を採用し、中身が見えない和紙を使うことで京都らしい温かみを演出しています。ちなみにこの袋の鬼のデザインは、ご縁のあったお坊さんが毛筆で描いてくださったものなんですよ。利便性だけでなく、行事としての楽しさや情緒を損なわないよう、パッケージの一つひとつに思いを込めています。


発売から30年、節分時期には売上1位を誇るロングセラー。
転がりやすく見た目も愛らしいテトラ型の三角袋がかわいらしい。
―中身の豆そのものにも、他社とは決定的に異なる製法上のこだわりがあるそうですね。
冨永 材料には北海道産の特上大豆「鶴娘(つるむすめ)」の中でも、特に大きなサイズだけを厳選しています。最大の特徴は、一般的な「水に浸す」工程ではなく、数日間かけて何度も水をかける「水掛け」という伝統製法です。実はこの製法、小町五色豆でも同様に行っているのですよ。
一晩水に浸して熱風で煎れば効率はいいのですが、どうしても大豆本来の甘みが抜けてしまいます。私たちは朝夕に水をかけ、豆の様子を見ながら4日間かけてじっくりと水分を芯まで含ませます。見た目は白っぽいですが、皮を剥くときつね色に輝くのが、熟練の職人が豆の個体差を見極めながらじっくり煎り上げた証。食べていただければ、その圧倒的な素材の甘みにきっと納得してくださるはずです。


朝夕に水をかけ、じっくりと芯まで水分を含ませることで、大豆本来の甘みを閉じ込めている。
―伝統を守り、かつ現代の悩みにも寄り添う姿勢が、多くのファンを惹きつけているのですね。
冨永 おかげさまで「節分三角袋」は、発売から30年、節分時期には毎年売上が1位というロングセラー商品になりました。豆を撒いた後、そのまま拾って封を切るだけで清潔においしく味わえる。畳やフローリングの掃除に追われるストレスなく、お子様と一緒に宝探しのような感覚で豆を拾う時間を楽しんでいただけます。「豆富本舗の豆でないと節分が始まらない」と言ってくださるリピーターの皆様の期待に応えるためにも、効率を度外視してでもこの製法は変えてはいけない部分だと思っています。
―最後に、これからの未来に向けた展望をお聞かせください。
冨永 2025年の5月に本店をリニューアルし、伝統を尊重しつつも現代のライフスタイルに馴染むモダンな空間に生まれ変わりました。現在は5代目の企画室長を中心に、新ブランド「京都こまめはん」を展開しています。これまでの豆菓子に加え、今人気の高いカシューナッツやアーモンドを使った新商品の開発にも力を入れています。実在の舞妓さんである「まめきぬ」さんをイメージキャラクターに起用するなど、若い世代の方々にも「きゅん」としていただけるようなデザインにも挑戦しているところです。変えてはいけない品質と、時代に合わせて変えていく届け方。この「不易流行」の精神を次世代に繋ぎ、次の100年も京都の文化とおいしい豆菓子を世界に発信し続けていきたいと考えています。

イメージキャラクターには舞妓さんを起用し、京都ならではの発信も。
―素晴らしいお話をありがとうございました!

「小町五色豆」
価格:¥500(税込)
店名:豆富本舗
電話:075-371-5454(10:00~16:00※日を除く)
商品URL:購入をご希望のお客様は店舗へお問合せください。
オンラインショップ:https://mametomi.info/

「節分三角袋(京都嵯峨野二尊院ご祈祷済み福豆)」
価格:¥650(税込)
店名:豆富本舗
電話:075-371-5454(10:00~16:00※日を除く)
商品URL:購入をご希望のお客様は店舗へお問合せください。
オンラインショップ:https://mametomi.info/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
冨永 泰憲(株式会社豆富本舗 代表取締役)
1950年京都市生まれ。1972年3月に神戸大学経営学部を卒業。同年4月に丸紅株式会社大阪食糧部に入社。5年間のサラリーマン生活を経て、1977年4月に株式会社豆富本舗に入社。1995年9月に同社代表取締役社長に就任。京都豆菓子協同組合の理事長や京都府菓子工業組合の専務理事を歴任し、京都の豆菓子業界の発展に尽力している。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中 香花 画像協力/豆富本舗>



























