
お香や便箋、はがき、京都の伝統文化を伝える老舗。心に安らぎをもたらすオリジナル「サッシェイ」
2026/01/09
伝統文化に常々関心を寄せている編集長アッキー。今回注目したのは、1663年(江戸・寛文3年)創業、お香や書画用品、はがき、便箋、金封等の老舗、鳩居堂。京都と東京に店を構え、和を基本に京都で製造した趣ある品々を販売しています。職人の手仕事によるものをはじめ、日本の伝統文化を守り育て現代に伝える商品は、本物を求める人に愛され続けています。京都寺町、本能寺門前にて薬種商として始まってから12代、株式会社京都鳩居堂 代表取締役社長の熊谷直久氏に、商品やお店づくりについて、お話を伺いました。
―京都で創業されて現在京都と東京にお店がおありです。製造は京都で?
熊谷 京都と東京の店舗は、それぞれ販売を担う拠点として、姉妹会社のような関係にあります。もともと京都で創業し、宮内庁の御用も務めてまいりました。東京が首都になったことをきっかけに東京出張所を開設し、現在の東京鳩居堂へとつながっています。一方、商品づくりは創業以来一貫して京都で行なっており、製造は専門会社である鳩居堂製造株式会社が担っています。

京都の本能寺門前、寺町商店街にある京都鳩居堂。
(photo : Sohei Oya(Nacasa&Partners))
―もとは薬の原材料を扱う「薬種商」だったそうですね。
熊谷 薬種の原材料の中にはお香の原材料と共通するものが多かったので、江戸時代後期になると、薫香や線香を製造・販売するようになりました。また、1800年頃、顧客に学者や書家の方が多くおられ、鳩居堂がお香の原料を中国から仕入れていることが知れ渡り、本格的な書画用品も中国から仕入れてほしいという声も聞かれるようになって、やがて仕入れた道具の販売だけでなく、自分たちで開発するようになりました。書画用品について学者の頼山陽先生が親身に助言を与えてくださり、改良を重ねた結果、「鳩居堂の品は本場中国の道具よりも質が良く使いやすい」と評判をいただくようになったそうです。

創業は1663年。写真は明治時代後期。

よく知られる「向かい鳩」の商標は、
祖先であり文楽や歌舞伎でも知られる熊谷直実が、
軍功により源頼朝から賜った家紋に由来。
―現在は多様な商品を取り扱われていますね。
熊谷 薫香、お香、筆墨、書画用品や葉書、金封など和紙製品を扱っております。京都にはそれぞれの分野を専門とするお店が多く、お香はお香屋さん、筆は筆屋さんというように、一つの品目を大切に守り続けておられるお店が数多くありますが、その中でも、このような組み合わせで店づくりをしているところは、あまり多くないのではないかと感じております。
ーバラエティ豊かであることで差別化を?
熊谷 差別化というよりも、昔からそうだったものを私は受け継いでいるわけです。私どもが目標にしているのは、日本の伝統文化を守り伝え、育てていくということ。昔から伝えられてきた、日本人の生活の知恵や風習、伝統行事や「しきたり」を、お香や和紙製品、書画用品などの販売を通じて、大切に伝え、お客様と共に守り続けていくということで、これが私どもの使命だと考えています。専門家の方々はもちろん、これから「和」の世界に触れてみたいという方にも楽しんでお買い物をしていただけるような商品を、ご提供ができればと思っています。

お香、書画用品から、便箋、はがきまで、日本の伝統文化を伝え、
かつ現代の心豊かな暮らしに役立つものばかり。
―時代の変化のなかで厳しい部分もおありかと。
熊谷 お香や筆、はがきなど、私どもが扱う分野は、いずれも必ずしも右肩上がりの産業とは言えません。近年では、年賀状をLINEで済ませたり、書道に触れる機会が少なくなったりと、時代の変化も感じています。
それでも、職人が一つひとつ手作業で仕上げる筆や木版刷りをはじめ、私どもの商品には、日本の文化や手仕事が息づいています。そうしたものづくりを、単に商品としてではなく、日本の文化として次の世代へ残していくことも、私どもの使命の一つだと考えています。
そのためには、ただ守るだけでなく、時代に合わせたかたちで需要を掘り起こしていくことも必要です。一方で、時代にそぐわないように見えるものでも、あえて残していくことも大切にしたい。残しながらつくり続けることに、私どもは大きな意味があると感じています。
―時代に合わせて変わった商品にはどのようなものが?
熊谷 お客様のお声を聞き、工夫しながら変わってきたのは、たとえば線香。かつて線香は、お経の間焚いてたので長かったのですが、今は火元が危ないというご意見もあり、短くなってきています。
―今回ご紹介する「サッシェイ」についてお教えください。
熊谷 香りを好まれる方が多く、お香は以前から売れ筋の商品ですが、火を使うことに抵抗を感じられるお客様や、煙を気にされる方もいらっしゃいます。そこで、香りそのものをやわらかく楽しんでいただけるものとして、ふだん使いにも匂い袋もご提案させていただいております。
匂い袋というと、日本では衣装に香りを移す用途が主でしたが、玄関に置いたり、消臭や、リビングなどに添えたりすると、空間の香りや雰囲気がさりげなく変わります。火を使わず、安全で気軽にお使いいただける点も、最近とくにご好評をいただいている理由の一つです。
―デザインもおしゃれですね。若い方にも好まれそう…。
熊谷 デザイナーさんには幅広い世代の方に親しんでいただけるものをとオーダーしています。便箋やパッケージもデザイナーさんにおまかせしています。

オリジナルのサッシェイ。
部屋につり下げたり、玄関に置いたり、机の引き出しに入れて香りを楽しむ。
―リピーターのお客様が多いそうですね。どのような点に魅力を感じておられると思いますか?
熊谷 筆をご購入いただくと筆屋さん、お香をご購入いただくとお香屋さんと、それぞれの品を通して私どもの店のイメージがつくと思っています。お客様ごとに、気に入ってくださる商品があり、それを繰り返しお求めいただいているのかなと感じます。
必需品というほどではなくても、いずれも消耗品ですので、「なくなったらここで」と思い出していただけることが、結果としてリピーターにつながっているのかもしれません。だからこそ、流行に左右されすぎることなく、品質を変えず、いつ来ていただいても安心してお選びいただけるものをお届けすることが大切だと考えています。
―ECサイトを始められたのは?コロナ禍がきっかけですか?
熊谷 たまたまコロナの時期になりましたが、少し前から準備していました。弊社は卸も行っておりますので、以前からインターネットを通じた販売自体はありました。ただ、その多くは商品のお届けが中心で、包装や体裁が整っていないといったお声をいただくこともありました。また、お線香の上書きなど、店舗では当たり前にお受けしているご要望を、オンラインでも対応してほしいという声が次第に増えてきました。
そうした背景から、単に商品をお届けするだけでなく、店頭と同じように気持ちを添えた対応ができる場として、ECサイトを本格的に立ち上げることにしました。さらに、京都、東京以外のご遠方にお住まいの方にも、私どもの商品の魅力を感じていただけたらという思いもありました。

2020年11月に京都鳩居堂本店がリニューアルオープン。
洗練された美しい空間はゆっくりと買い物が楽しめ、たびたび訪れたくなる。
設計は「とらや」でも知られる内藤廣氏。
(photo : Sohei Oya(Nacasa&Partners))
―ご来店される方が多いのですね。
熊谷 やはり、できるだけ店舗に足を運んでいただきたいと思っています。便箋ひとつをとっても、実際に触れて選んでいただくのがいちばんです。書き味は、ネット上の情報だけでは、どうしても伝えきれない部分があります。
だからこそ私たちは、「店舗に来てよかった」と感じていただけるよう、常に店舗の付加価値を高めることを意識しています。コロナ禍の中で店舗の建て替えを終え、ほかの建物も含めて約10年をかけて整備を進めてきました。
店内には、日本最古のラブレターとされる国宝の写しを展示するなど、わざわざ足を運んでくださった方にご満足いただける空間づくりを心がけています。そうした体験が、また来たいと思っていただけるきっかけになり、ふらりと立ち寄っていただく中で、新しい商品との出会いも生まれていくと考えています。
―今後のビジョンは?
熊谷 長い歴史の中で、私が携わるのは30年から40年ほどですが、伝統文化を絶やさないようにしたい。観光地ではない商店街にある店舗にお客様が来てくださることにもつながればと思います。
―お店にもうかがいたくなりました。貴重なお話をありがとうございました。

「KYUKYODO SACHET(鳩居堂サッシェイ)」
価格:¥605(税込)
店名:鳩居堂
電話:075-231-0510(9:00~18:00 土日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/kyukyodo-shop/165923565/
オンラインショップ
URL:https://www.kyukyodo-shop.co.jp/
URL:https://www.rakuten.co.jp/kyukyodo-shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
熊谷直久(株式会社京都鳩居堂 代表取締役社長)
1975年京都府生まれ。大学卒業後、製薬会社に勤務。2001年に家業に入り、2011年に代表取締役社長就任。1663年の創業より12代目となる。「店を訪れてよかった」と思われる付加価値のある店づくりに努めている。
<文/大喜多明子 MC/藤井ちあき 画像協力/京都鳩居堂、Sohei Oya(Nacasa&Partners)>




























