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日本の風土に適した素材と職人の技。BEAMS監修、「蔦重」にちなんだ粋な桐箱。

2025/10/29

大河ドラマ「べらぼう」人気もあって、いま江戸文化にあらためてスポットが当たっています。とくに関心を集めているのが職人の手仕事。伝統の職人技が生き、現代の暮らしにも映える粋な品々には、編集長アッキーも心ひかれます。その一つが、桐箱。古くから大切なものを入れるために使われてきた桐箱の伝統を守り、次代へとつなぐ有限会社箱義桐箱店 代表取締役社長の戸張茂義氏に、お店や商品、またBEAMS監修の話題の桐箱について取材陣がお話を伺いました。

有限会社箱義桐箱店代表取締役社長 戸張茂義氏

有限会社箱義桐箱店代表取締役社長 戸張茂義氏

―ご創業はいつですか?

戸張 明治元年、1868年ですので今年で創業157年。仕事はもっと以前、江戸の頃から代々行われていたそうです。創業地は埼玉で、埼玉には当時から桐箱を扱う店があり、今も数社あります。2代目が六右衛門という名で、屋号を「箱六」としていたのですが、4代目である祖父常義の時、1951年に法人化し、義の字を取って「箱義」になりました。

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創業は明治元年(1868年)、それ以前から桐箱作りは代々行っていた。

―戸張社長は6代目。継ぐことは決まっていたのですか?

戸張 うちは祖父も一緒に暮らしていて、私はおじいちゃん子でしたから、小さい時から「お前は棟梁になるんだからね」と言われ、継ぐものだと思って過ごしました。今は工場は移りましたが、当時は祖父が作っている姿を見ていたので、それが普通だと思っていたんです。小学生の時の作文に、私は「日本一の桐箱屋になりたい」と書いていたらしいです。他社に入る時も、ただ入るのではなくて、自分の会社にいかにプラスになるかを考えて就職をしました。

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桐箱は大切なものを保存する箱。
湿度が高くなると桐は膨張して内部に湿気が入るのを防ぎ、乾燥すると収縮し水分を放出して湿度を一定に保つ。

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オーダーメイドの商品は、職人の手仕事が基本。数ものの場合も最後の仕上げは人の手で。

―就職先ではどのようなお仕事を?

戸張 宝石の専門企業に入って営業をしました。一代で上場された会社ですから、経営のさまざまなことをトータルに学ぶことができて、こういうことをすると社員のモチベーションが上がるとか、組織はこういうふうに作ったほうがいいとか、学んだことをのちに自分の会社にフィードバックできました。

弊社は桐箱という特殊なものを扱っているので、どちらかというと、待っていてもお客様が探してきてくださる仕事だったのですが、私の時代からは自分からどんどん営業したいという気持ちもありましたので、営業職をしたくて入社し、実際に貴重な経験になりました。

また、お客様も宝石関係ですので、桐箱を使っていらっしゃる会社もあり、営業に行った時も「箱義さん知っているよ」と言っていただいたり、退社して30年以上になりますが、今も弊社の桐箱を使ってくださっているところもあったり、お世話になった就職先やお客様にとても感謝しています。

―その後家業を継がれて社長にご就任。本社は東上野ですね。

戸張 その他に、谷中にアンテナショップがあり、あとは広島と富山に営業所があります。

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台東区東上野にある箱義桐箱店の本店。
入れたいものに合う桐箱を求めるお客様の話を聞き、納得してもらえる商品を案内するという。

―アンテナショップですか?

戸張 箱屋が本当に箱に入れたいもの、器やガラス工芸を集めたり、これから出るであろう作家さんの作品を展示したりできるスペースにしています。作家さんがなかなか東京で発表するのは難しいという時に、ワークショップ等も含めて発表できる店舗にしています。

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谷中にあるアンテナショップ。箱の中に入れる作品の展示も。

―オンラインショップでの展開はいつ頃から?

戸張 10年くらい前からです。自社サイトを開いているのは、弊社の商品は特殊ですから、やはりお客様と何度かやりとりをして、納得して買っていただきたいという思いがあるからです。オンラインをする前も今もやっぱり対面でお話しする店舗が中心で、オンラインでは物を見て、寸法だけでも買えるのですが、実際に現物を見ていただいて、材質がこうとか、この大きさならこのくらいの余裕があったほうがいいとか、そういうお話ができればと思います。メールでやりとりしながら、最終的にはお店に来ていただくケースもあります。お客様が大切なものを入れたり、商売でお使いだったりしますから、お話ししながら決めていくというのが多いです。

―海外にも広げておられて?

戸張 タイのラザタというモールに出展していますし、タイをはじめ海外にも商品を展開したいと考えています。海外でも、品物を入れるのにどんな箱がいいのか、寸法にしても材質にしても、実物を見ていただいて、直接お話しして納得していただける販売の仕方ができればと思っています。

―お客様はどんな用途でお使いに?

戸張 千差万別ですね。弊社の場合はBtoBで企業のお客様が多く、北は北海道から南は九州まで2,000から3,000社くらいです。企業様であればガラスや工芸品。アパレルの会社さんで、ふだんは紙箱だけれど限定商品だから桐箱でということもあります。個人の方ですと、へその緒や大切なお着物、形見のお品物など、残しておきたいものを桐箱にお入れになります。お客様それぞれだからこそ、お話を聞いてお渡しすることになります。

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宝石店等で特別な宝石や記念の品を入れる時に桐箱が選ばれる。

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へその緒を入れるのも桐箱。大切に残しておきたいという思いやお祝いの心が込められる。

―そもそも箱は何種類くらいあるのですか?

戸張 200種類くらいです。

―このほどBEAMSさん監修の商品を出されたそうですね。

戸張 「名所江戸水景桐箱」ですね。台東区さんとBEAMSジャパンさんが、江戸文化にフォーカスして商品開発をされる事業がありまして、その事業に申し込んで選んでいただきました。ドラマは吉原が舞台。吉原は台東区なので、台東区さんが浅草で大河ドラマの展示とお土産の販売をされることになったので、ぜひそこで生まれ育った東京の風景を描いて販売できればと思って応募したんです。

またBEAMSさんといえば、エッジのきいた商品を作られる一方で、工芸品も扱われていて、日本の工芸を手伝っておられます。BEAMSさんはユーザーさんのことをよくわかっていらっしゃいますから、BEAMSさんの目線を入れながら商品開発をできたらという思いもありました。この事業には、応募が30数社あってけっこう倍率は高かったんです。選ばれてから、BEAMSさんと半年ぐらいかけて開発に取り組んで完成したのがこの商品です。ドラマにちなんだ台東区の「たいとう江戸もの市(お土産館)」や、BEAMSさんのイベント「台東屋〜TAITO-KU-STAND〜」、弊社の店舗、オンラインで販売しています。

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BEAMS監修、江戸文化を題材にした「名所江戸水景桐箱」。
入れ子仕様になっており、外側の蓋には江戸の古地図、中の箱の蓋にはその地の名所にちなんだ浮世絵の絵柄が。

―どのような商品ですか?

戸張 歌川広重の浮世絵に江戸百景がありますが、江戸を一つの箱に見立てて、それらを9分割にして表現したものです。江戸というのは運河を中心にして町が栄え、運河の荷物の上げ下ろしをした河岸(かし)には活気があって、人が集まってきた。浮世絵の名所になる場所があるんです。今回は江戸名所の中でも水辺、河岸を中心に、水の場所だけをピックアップしたので、江戸百景の名前を借りて、名所を水景としたんです。

―江戸の地図が9分割になっているんですね。

戸張 全部江戸の古地図です。9つの箱は二重箱になっていて、蓋を開けるとその下に浮世絵の柄の箱が入っていて、9か所、地図の中の場所があるんです。ひとつは吉原の2階から外を見たという絵。弊社の近所で上野の不忍の図柄もあります。1つずつでもお求めいただけるのですが、セットにすると大きな地図になっていて、より楽しめると思います。1つの大きさは5センチ×7センチほど。色味はピンクとブルーの2種類があります。

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二重になった箱の中には、江戸の名所の説明書きが入っている。1つずつでも購入可能。

―最初から大河ドラマをイメージして?

戸張 江戸文化というコンセプトがあり、蔦重をメインに考え開発しようとスタートしました。当初は吉原にフォーカスして作り始めましたが、吉原を1つの箱に見立てるとかなり深掘りになってセンシティブになってしまうということで、江戸という形にし、そこに吉原の姿も入れるということになりました。

―どのような方が購入されていますか?

戸張 台東区のショップでは大河ドラマ好きの方、弊社谷中店でも販売しており、比較的年配の方が多いように思います。

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9つの小箱を並べると隅田川界隈の地図ができあがる。
しっかりとした作り、開け閉めにも職人技の気持ちよさが感じられる。

―ほかにも、他社と一緒に商品開発をされることはあるのですか?

戸張 はい、経済産業省のジャパンブランド育成事業などを活用して、たとえばシンガポールでも取引をしているのですが、あちらのデザイナーさんに桐箱の素材を使った新しいデザインを作っていただいたり、産学連携の商品で芝浦工業大学の学生さんの若いアイデアを聞いてクラウドファンディングで商品開発をしたりしています。

―海外へはいつ頃から?

戸張 10年以上前からです。現状では国内需要が圧倒的に多いのですが、日本の人口が減っていく中でインバウンドが増え、これからは海外でやっていかないといけないと思っていましたし、コロナもはさんで今はインバウンドも数倍に増え、今後は海外に向かわなければとより思います。力を入れているのは東南アジアをはじめとしたアジアです。

―何か理由が?

戸張 じつは桐箱というのはすぐれた調湿効果、湿気を調整できる機能を持っているんです。なぜこれだけ日本で桐箱、桐箱といわれるかというと、調湿できるので、カビや虫から大切なものを守ることができるからなんです。海外に売りたいというよりも、アジアの気候に桐箱はとても合っているいいものだから使ってほしいという気持ちが強いです。昔の人は数値とか機械でなく、この箱に入れておけば物持ちがよいと気づいていたと思います。ジェトロさんのお声がけをきっかけに、今はタイ、シンガポールでの取引があり、タイのベンジャロン焼の箱を考えたり、日系企業さんとの取引、タイでのネット販売を行ったりしています。

―これからの展望をお聞かせください。

戸張 国内についても一所懸命やりながら、インバウンド向け商品や展示、デリバリーを充実させていきたいです。桐箱はいいものだと信じていますので、海外のお客様に少しでも使っていただけたらと思います。弊社の商品は、オーダーものはすべて、また数ものに限っては一部機械を使いますが、最後の仕上げは一つ一つ職人が手をかけて行っています。そのように作った桐箱を多くの方に見て触って使っていただけたらと思います。

―ほんとうに貴重なものですね。江戸文化に関わる商品のお話をありがとうございました。

名所江戸 水景桐箱

「名所江戸水景桐箱」
価格:¥26,730(税込)
店名:箱義桐箱店
電話:03-3832-8544(9:00~18:00 土日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
オンラインショップ:https://www.hakoyoshi-netshop.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

戸張茂義(有限会社箱義桐箱店 代表取締役社長)
1967年東京都生まれ。株式会社ナガホリに入社し、5年の修行期間を経て1994年に有限会社箱義桐箱店に入社。2003年に同社代表取締役社長に就任。2019年第4回100年企業顕彰(後援:中小企業庁、関東経済産業局)にて100年経営大賞「東京都知事賞」受賞。

<文/大喜多明子 MC/田中香花 画像協力/箱義桐箱店>

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