
だしが主役のごちそう体験。焼津の老舗鰹節屋が挑んだ「贅沢おでん食べ比べセット」
2026/01/15
今回、編集長のアッキーが注目したのは、「贅沢おでん食べ比べセット」です。封を開けて温めるだけなのに、まるで料亭で味わうような本格的な「だし」の香りが立ち上る、まさに”ごちそう”と呼ぶにふさわしい逸品。忙しい日の救世主として、常備したくなります。その背景には、業界の常識を覆す地元の技術と、鰹節の未来を見据える社長の熱い情熱がありました。取材スタッフが、静岡県焼津市に本社を構える、株式会社新丸正の代表取締役社長、久野徳也氏にお話を伺いました。

株式会社新丸正 代表取締役社長の久野徳也氏
―今年で創業90周年とのこと。まずは企業の歩みについてお伺いできますか。
久野 当社は1935年(昭和10年)に、祖父である久野正作が削り節の製造販売として創業しました。祖父は満州事変で足を負傷し、体が不自由だったんです。営業もできず、工場に入ってもできることが限られていましたが、それでも地域のために何か仕事がしたいと思っていたそうです。そんな時に曾祖父のアドバイスと力添えがあり、削り節の機械を導入して商売を始めたと聞いています。そして、鰹節屋として現在に至ります。直売店の「堅魚屋(かたうおや)」という名前は、1300年前の鰹節の原型である「堅魚(かたうお)」に由来しており、歴史へのリスペクトを込めています。

削り節の製造からスタートした新丸正。
現在は一貫生産が可能な体制を強みに、鰹節の新たな可能性に挑み続けている。
― ご自身は、家業に戻られる前に異業種や名古屋でのご経験があると伺いました。
久野 はい。大学は水産系でしたが、あえて家業とは直接繋がらない食材商社に就職し、高級レストラン向けにラムやフォアグラ、ジビエなどを扱いながら4年ほど勤務しました。家業に入る直前には、名古屋の中部産業連盟で1年間、経営後継者育成カリキュラム(JEA)を受講しました。
東京(都会)と静岡(地元)しか知らなかった私にとって、名古屋での経験は「第三の視点」をくれました。地方(静岡)の価値を全肯定できるようになったんです。これら「外の視点」があったからこそ、家業に戻った際、当たり前だった「一貫生産」体制を最大の武器として再定義し、他社と組む「コラボ戦略」を進める今のスタイルに繋がったと思います。
― その「コラボ戦略」を象徴するのが、今回ご紹介いただくおでんですね。
久野 まさにそうです。この商品は、地元焼津の有力企業である石田缶詰の石田社長とのご縁から生まれました。会社も近く、頻繁にお仕事をさせていただく中で、石田社長のノウハウと当社のノウハウが、いい形でマッチングした素晴らしい商品ができたと感じています。一般的なレトルトおでんとは一線を画す、決定的な違いを生み出すための”必然のコラボ”でした。

黒と白、あなたはどっち?
温めるだけで本格的な味わいが楽しめる、だしが主役の「贅沢おでん食べ比べセット」。
―まずは黒いパッケージの「贅沢静岡おでん」のこだわりを教えてください。
久野 静岡おでんといえば、やはり独特の「黒いだし」が特徴です。この黒いだしは、牛すじを煮込むことや、濃い口の醤油を使う文化から来ています。具材も静岡ならではのラインナップです。名物の「黒はんぺん」はもちろん、ホロホロになるまで柔らかく煮込んだ「牛すじ」、そして大根、こんにゃく、卵、昆布巻き、ちくわと、定番の具材もしっかり入っています。そして何よりこだわったのが「だし」です。「鰹節屋」としては鰹を使いたくなるところですが、本場の静岡おでんのだしは、実は鰹が主流ではなく、「サバ節」をいかにうまく使うかが特徴なんです。本場の味を忠実に再現するため、あえてサバや宗田鰹などの混合節を使いこなすことに挑戦しました。


名物の黒はんぺんや牛すじがたっぷり入った「贅沢静岡おでん」。
―セットには「静岡おでんの粉」も付いていますね。
久野 これが重要で、「これがないと静岡おでんじゃない」と言われるほどです。中身は「青さ」「サバ節の粉」、そして「イワシを削った粉」です。このセットは、湯煎やレンジで温めるだけという手軽さでありながら、仕上げにこの「魔法の粉」をかけることで、静岡の食文化を丸ごと体験できる本格セットにもなるんです。つゆも多めに入れているので、まずはセットのおでんを楽しんだ後、残ったつゆに冷蔵庫の具材を足して次の日にもう一度におでんにするのもおすすめですよ。

静岡おでん専用の「魔法の粉」。
サバ節、イワシの粉、青さが、本場の風味を完成させる。
―その本格的な味わいは、発売当初から評価が高かったそうですね。
久野 はい。発売当初、この「静岡おでん」が爆発的に売れまして。1回の展示会で、その年に作る予定だったものがすべて予約で売れてしまったんです。パートナーの石田社長に「増産できませんか」とお願いしたのですが、「もう無理だよ」と断られ、泣く泣く販売休止になったほどです。食のプロであるバイヤーの皆さんから高い評価をいただけたことは、大きな手応えになりました。
― 一方、白いパッケージの「贅沢だしおでん」には、また違った誕生秘話があるとか。
久野 こちらは「業界の常識への挑戦」でした。もともと「だし」はレトルトと相性が非常に悪いんです。レトルト殺菌(加圧・加熱)の過程で、繊細な香りは飛んでしまい、逆にレトルト特有の匂いがついてしまう。おいしい”だし”のレトルトは不可能というのが業界の定説でした。しかし、石田缶詰さんの風味劣化を最小限に抑える滅菌処理という高度な技術と、当社の鰹節屋のプライドがタッグを組むことで、その不可能を可能にすることができました。これは本当に画期的なことだと思っています。
― 「静岡おでん」とは対照的に、だしは透明で上品ですね。
久野 こちらの「だしおでん」は、静岡おでんとは対極にある「究極の引き算」がコンセプトです。だしは昆布と鰹節のみ。味付けも醤油と塩、みりんで整えただけで、シンプルな味わいになっています。だしが濁らないよう、丁寧に丁寧に引いていただいています。使用している昆布も昔から仕入れている利尻昆布で、この配合は有名な料亭さんでも使っているレベルの贅沢なものです。石田缶詰さんの高度なレトルト技術があるからこそ、このシンプルな配合が生きるんです。召し上がる際は、具材はもちろんですが、まずはこの黄金色の”だし”そのものを一口、じっくりと味わってみてほしいです。残ったつゆは、雑炊やお吸い物、茶碗蒸しなど、この繊細な風味を活かすアレンジに最適ですよ。

黄金色のだしが主役の「贅沢だしおでん」。
レトルトの常識を覆す、繊細な香りをまずは一口味わいたい。
―こちらの商品は、徐々に人気が広まっていったそうですね。
久野 そうなんです。爆発的に認知度を上げた静岡おでんとは対照的に、こちらは新聞広告での通販をきっかけに、知ってくださる方が増えていきました。10個とか、一度にたくさん買われるお客様が出てきたり、リピート購入や口コミでじわじわと。社長としては「この良さを分かっていただける方がいらっしゃるんだな」と確信を持てた商品です。
―最後に、未来へのビジョンをお聞かせください。
久野 私は「鰹節を日本中に、世界にもっと広げていきたい」 と考えています。今、世界では「Umami(うま味)ブーム」で、「Kombu(昆布)」や「Shiitake(椎茸)」は世界共通語になっています。ですが、「鰹節」だけは「dried Bonito(ドライドボニート)」や「Bonito flakes(ボニートフレイクス)」と呼ばれている。日本国政府の認定書にさえ「dried Bonito」と書かれているんです。これを非常に悔しく思っています。日本の呼称である「KATSUOBUSHI」を世界の共通語にしたい。それが私の夢です。今回のおでんのような加工品や惣菜を通じて、鰹節のいろいろな食べ方をご提案できる」のが当社の役割です。こうした新しい提案こそが、その壮大なビジョンを実現するための第一歩だと信じて、これからも挑戦を続けます。
―貴重なお話をありがとうございました。

「贅沢おでん食べ比べセット【プチギフト・贈答品】」
価格:¥2,080(税込)
店名:堅魚屋
電話:054-624-5158(9:00~17:00 土日、祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.katauoya.com/SHOP/7751Z00021.html
オンラインショップ:https://www.katauoya.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
久野徳也(株式会社新丸正 代表取締役社長)
1978年静岡県生まれ。東京水産大学卒業後、トップトレーディングに入社し、4年の修業期間を経て2005年に新丸正へ入社。2011年に同社代表取締役社長に就任。新丸正はJリーグチーム「藤枝MYFC」の公式スポンサーも務める。
<文/お取り寄せ手帖編集部、MC/田中 香花、画像協力/新丸正>




























