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伝統は、変化を楽しんでこそ守られる。京菓子司 俵屋吉富「雲龍」「八重」が長く、広く愛される理由はここにあり!

2022/04/06

宝暦5(1755)年に京都御所のほど近くに店を構え、長く禁裏御用を務めた「京菓子司  俵屋吉富」。現在は、京都だけでなく国内外の多くの人たちに愛されている京菓子店です。「古くからのファンを大切にしつつ、新たなファンを増やし続けている、その秘密を知りたい!」という編集長アッキーの声を受け、取材陣が「俵屋吉富」代表取締役社長の石原義清氏にお話をうかがいました。

株式会社俵屋吉富 代表取締役社長の石原義清氏

-創業1755年というと、「俵屋吉富」は267年もの歴史があるのですね。

石原 京都には、もっと長い歴史を持つお店や企業がたくさんありますよ。最初、うちは雑穀商を営んでいて、小豆も扱っていたことからお菓子づくりに携わるようになりました。禁裏御用を務めさせていただいたのは、店が御所から歩いて10分ほどのところにあるという地の利もあってのことでしょう。同じように、「近い」ということで茶道の表千家・裏千家お家元や京都五山第二位の相国寺さんにもお出入りさせていただけるのだと思っています。ありがたいことです。

-相国寺といえば「俵屋吉富」の代名詞とも言える京銘菓「雲龍」にゆかりがあるとか。

石原 私の祖父にあたる7代目菓匠・石原留治郎が、師と仰ぐ相国寺四代目管長・山崎大耕老師の「この『雲龍図』の龍のたくましさや雄々しさを菓子で表現できないだろうか」とのご要望に応え、誕生したのが「雲龍」です。

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龍の顔をあしらった箱に入っています。カッコイイ!

-京菓子はどちらかというと女性的ですが、たしかに「雲龍」は男性的です。

石原 材料は小豆と砂糖と寒天のみ。色もあんこの色そのものですから、かわいらしさはないです(笑)。留治郎は「村雨あん」という、こしあんをそぼろ状にして蒸したもので小倉あんを巻き込み、雲に乗る龍を表現しました。一見、なんでもないお菓子のようですが、素材も形もシンプルなだけに職人の高い技術が必要なんです。

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どっしり、堂々たる雰囲気。
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そぼろ状の村雨あんで小倉あんを巻いて。小倉あんには大納言小豆を使用。
こうして切り口を見ると、ふっくら炊かれた小豆がよくわかりますね。

-さらに「雲龍」には、和菓子として画期的な面があるそうですね。

石原 「雲龍」は火を入れているので、通常の和菓子よりも日持ちがします。また、「棹菓子」といって1本の棹状になっているのですが、それは留治郎の「お客さまのお好みの厚さに切って召し上がっていただきたい」という思いからからです。当時はそうした発想のお菓子がなかったことと日持ちがするということで全国に広まり、多くの方々に味わっていただけたのでしょう。おかげさまで、「雲龍」は再来年の2024年に100周年を迎えます。

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その日の気分で、お好みの厚さで召し上がれ!

-100周年ですか! ひとつのお菓子がそれだけ長く愛され続ける理由はどこにあるのでしょう。伝統を守り続けるというのは、とても大変なことだと思うのですが……。

石原 実は、「雲龍」は少しずつ変わってきているんです。誕生当時、世の中では「甘い」ことが高級とされていたので、甘みが強かったんですね。ただ、時代とともに人々の食の好みも少しずつ変化してきて、素材の味を楽しみたいという声が多くなりました。そこで、私の代で味の見直しをし、甘さを控え小豆の風味をより生かそうと。それが現在の「雲龍」です。

-伝統を守る=同じことを続ける、ではないのですね。

石原 私は、そう思っています。食の好みだけでなくライフスタイルにしても、時代の流れとともに変わっていきますよね。とくにお菓子は、「そのとき」に喜んでもらうことが大事です。ですから、つねにお客様の好みを把握していなくちゃいけない。でも、ひとつひとつのお菓子を嘘なく、心を込めてつくる。この、創業以来の信念はしっかり守り続けなくてはいけないと思っています。

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7代目のヒット作「雲龍」と9代目のヒット作「京のおまんじゅう 八重」。

-新しいことにチャレンジするのも「お客様のニーズに応えるため」でしょうか?

石原 そうです。ただ、そうは言ってもなかなかむずかしい(笑)。ようやくお客様に喜んでいただけるものができたかな、というのが「京のおまんじゅう 八重」です。おまんじゅうは比較的日持ちがしますが、どうしてもパサついてしまうんですね。そこを何とかしたい、もっちりした食感がほしい。お世話になっている寒天の伊那食品さんのお力を借りながら試行錯誤の末、私が思い描いていたとおりのおまんじゅうができました。私が手掛けた中で唯一の、ヒット商品です(笑)。

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京手まりがあしらわれたパッケージは、「雲龍」と対照的にソフトでやさしいイメージ。
「八重」という名前は、本店近くの同志社大学の創業者、
新島襄の妻・八重さんにちなんでつけられたそう。
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上品な甘さのこしあんを糯生地(皮)で包んで焼き上げています。
皮のもっちりした食感が、おいしさのポイントに。

-「八重」には、洋菓子のような雰囲気もありますね。

石原 そう言っていただけるとうれしいですね。私は紅茶を飲みながら「八重」を食べるのが好きなんです。コーヒーも合いますよ。和菓子にはお茶、という固定概念にとらわれず、それこそ留治郎がつねに口にしていた「お客様のお好みに合わせて」、自由に召し上がっていただけたら。私はワインが大好きでフランスのブルゴーニュにも何度も足を運んでいるのですが、現地の人に「雲龍」を薄くスライスしてワインのあてとして勧めたところ、評判は上々でした。

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紅茶と「八重」。2つの味の相性がいいのはもちろん、
あんの甘さによって紅茶の味が引き立つのが不思議。
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石原社長おすすめの「雲龍」✕ブルゴーニュ ピノ・ノワール。
あんことピノ・ノワールのマリアージュ、たしかにバッチリ!

-「雲龍」とワイン! 斬新な取り合わせで、留治郎さんも驚かれているでしょうね。

 石原 新しいことといえば、2018年に別ブランド「といろ by Tawaraya Yoshitomi」を立ち上げました。フルーツ味のラムネ風菓子や琥珀菓子など、和菓子をベースにしながらも形や色、味など、年代問わず、さらには外国の方たちにも楽しんでいただけるようなお菓子を揃えています。「といろ」を率いるのは、次の当主である息子です。彼は、「いま」と「これから」のお客様によろこんでいただけるお菓子をつくろうと、研究に励んでいるようです。ぜひ、応援してやってください。

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といろの一番人気、「都色〜京だるま〜」。
御干菓子を活かした苺味のラムネ菓子。
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見た目も涼やかな、
プレーンとレモン味の琥珀糖「水彩糖~Bleu~」。
冷やして氷のように飲み物に入れても。

-長い伝統を大切に守り続けながらも、変化を恐れず楽しみ、新しいことにもどんどんチャレンジする。その姿勢に、勇気をいただきました。ありがとうございました!

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京銘菓 雲龍(1棹)

▶価格 ¥1,620(税込)
▶店名 京菓子司 俵屋吉富
▶電話 075-432-2211(元旦を除く9:00~16:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://tawaraya.xbiz.jp/products/detail/6
▶オンラインショップ https://kyogashi.co.jp/shop/#gsc.tab=0

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京のおまんじゅう  八重(5個入)

▶価格 ¥756(税込)
▶店名 京菓子司 俵屋吉富
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://tawaraya.xbiz.jp/products/detail/99
▶オンラインショップ https://kyogashi.co.jp/shop/#gsc.tab=0

<Guest’s profile>
石原義清氏(株式会社俵屋吉富 代表取締役社長)

1964年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。2004年に俵屋吉富の9代目当主で代表取締役社長に就任。一般財団法人ギルドハウス京菓子理事、京菓子協同組合副理事長、茶道裏千家淡交会京都西支部副支部長、大本山相国寺信徒総代なども務める。

<文・撮影/鈴木 裕子 MC/和田 英利 画像協力/俵屋吉富>

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