職人の手技が光る、梅の花びらを模した美しい五角形の「献上田むらの梅」とごま蜜が溢れ出る「ごま摺り団子」

2026/05/11

今回、編集長のアッキーが注目したのは、藩主との縁が紡いだ高貴な香りが漂う「献上田むらの梅」と、とろりと溢れ出す芳醇なごま蜜が話題の「ごま摺り団子」です。
職人の手仕事が生み出す梅菓子と、噛んだ瞬間に口の中いっぱいに広がる香ばしいごまの香りの団子。この上品な甘みは、日々の暮らしに心地よい安らぎを与えてくれます。
その背景には、120年以上にわたり伝統を重んじながらも、新たな看板商品を生み出す挑戦がありました。取材スタッフが、岩手県に本社を構える、株式会社松栄堂 代表取締役社長の小野寺 宏眞氏にお話を伺いました。

株式会社松栄堂 代表取締役社長の小野寺宏眞氏

―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。

小野寺 株式会社松栄堂は、岩手県一関(いちのせき)市で1903年(明治36年)に創業しました。私で5代目になります。初代は埼玉県出身の土木技師で、公務員としてこちらに赴任したのですが、この地で結婚したことを機に、菓子屋を始めました。当時は甘いものがきわめて貴重で、憧れがあったのでしょうね。最初はパンや飴玉を扱う駄菓子屋のような形態だったと記録に残っています。和菓子屋としての屋号である「松栄堂」の名が広まり、本格的な和菓子作りが始まったのは、職人だった2代目の代からです。土木技師から始まったという意外なルーツは、固定概念にとらわれず、その時々のニーズに合わせたものづくりを行う、現在の柔軟な社風の原点になっているのかもしれません。

120年以上にわたり、一関の菓子文化を支え続ける松栄堂。
家内工業から始まった菓子作りは、「田むらの梅」を天皇陛下へ献上するまでの老舗へと歩みを進めた。

―社長ご自身は、一度は家業を離れて海外へ行かれていたそうですね。

小野寺 幼い頃から、将来は継ぐものだという教育をされて育ちました。しかし大人になるにつれ、それが普通ではないのではと感じ、いわゆるレールを敷かれている感覚がありました。そのため、大学時代には別の道を考え、一度自由を求めてアメリカへ留学しました。転機となったのは、現地の本屋で出会った和菓子の本。和菓子の美しさに衝撃を受け、客観的な視点で和菓子の価値を再発見したのです。
帰国後、実家の経営が思わしくない時期があったことも重なり、今度は自ら「地元のために何かしたい、家業を守りたい」と決意しました。経営に携わるうえで数字の強さは不可欠だと考え、3年間会計事務所で修業し、経営者としての武器を身につけてから家業に戻りました。

―看板商品の一つである「献上田むらの梅」は、非常に格式高い歴史をお持ちだと伺いました。

小野寺 「献上田むらの梅」は大正時代、旧一関藩主であった田村家14代の丕顕(ひろあき)子爵から「梅を愛した先祖の田村建顕(たつあき)公を偲ぶ菓子を」との命を受けて開発された、弊社のなかで最も古いお菓子です。初代が辛苦の研究の末に完成させたこの風味を大変お気に召してくださり、田村の家名を冠することを許されました。
100年以上の歴史があり、1928年(昭和3年)には、天皇陛下へ献上されたという輝かしい実績もございます。藩主が認め、家名まで託したという事実は、このお菓子が持つ気品を象徴するエピソードとして、今も大切に語り継いでいます。

天皇陛下にも献上された、100年以上の歴史をもつ「献上田むらの梅」。

―職人の方による繊細な手仕事も、このお菓子の特徴なのですね。

小野寺 梅肉入りの白餡を求肥で包み、さらに塩漬けにした青紫蘇の葉で巻くという三層構造になっています。青紫蘇は塩漬けにしたものを丁寧に水洗いし、蜜に漬け直して風味を閉じ込めるという、きわめて手間のかかる工程を経ています。そして何よりのこだわりは、今も一つひとつ職人が手作業で巻いていることです。梅の花びらを模した美しい五角形に仕上げる技術は、機械ではどうしても再現できず、継承されてきた手仕事でしか出せないものなのです。近年は原材料の「完全地産化」を追求しており、地元産の梅や紫蘇、契約栽培の餅米を使用することで、一関の四季と歴史をそのまま凝縮しています。

梅の果肉を練り込んだ白餡を求肥(ぎゅうひ)で包み、さらに手作業で青紫蘇を巻いた3層構造。
砂糖をまぶしたタイプ(画像左)と、砂糖なしタイプ(画像右)の2種類。

―現在はどのようなスタイルでお客さまに親しまれているのでしょうか。

小野寺 お茶請けや贈答用として長く愛されています。2001年には、健康志向や現代のお客さまのニーズに合わせ、表面にお砂糖をまぶさない「砂糖なし」タイプを開発しました。現在はそちらが主流になっていますが、伝統的な味を好むファンの皆さまのために「砂糖あり」も継続して製造しています。催事のたびに関東などからも事前にお電話で取り置きの依頼をいただくこともあり、本当にありがたいと感じています。

―そしてもう一つの看板商品が「ごま摺り団子」です。こちらはどのように誕生したのですか。

小野寺 「献上田むらの梅」に続く新たな柱を作ろうと、1989年(平成元年)に誕生したのが「ごま摺り団子」です。ありきたりな団子にはしたくないという思いから、「団子の外にタレをかけるのではなく、中に蜜を閉じ込める」という逆転の発想で開発されました。開発当初は「こんなの団子じゃない」という声もありましたが、半年以上の試行錯誤を経て、自分たちが自信を持てる形を追求しました。ネーミングは会議中の雑談から「ごまを摺っている蜜が入っているから『ごま摺り団子』でいいじゃないか」と冗談交じりに飛び出したものが、意外にも親しみやすいと採用されたのです。

もちもちとした団子の中から、香ばしく濃厚な黒ごま蜜が溢れ出す。

―おいしさを守る秘訣を教えてください。

小野寺 最大のこだわりは、噛んだ瞬間に「ぷちゅっ」と溢れ出すさらさらとした蜜の食感です。これを実現するため、当時は珍しかった「冷凍販売」をすることにしました。常温のままだとどうしても蜜が固まってしまい、この仕上がりにはならないのです。蜜に使用する練りごまは、香りを最大限に引き出すために焙煎温度を指定したオリジナルの特注品を使用しています。また、団子の生地である米粉は、その日の気温や湿度、粉の状態に合わせて、職人が毎日配合を微調整しています。蜜を限界まで薄く、かつ弾力のある生地で包み込む技術は、まさに職人技の結晶ですね。冷凍技術の進化に合わせて、常にお手元に届くときに一番おいしい状態であることを目指し、今もアップデートを続けています。

口の中に広がるのは、煎りたての黒ごまの香ばしさと、控えめで上品な甘み。

―おいしくいただくためのコツはありますか。

小野寺 冷凍庫から出して、常温で約1時間ほど置いていただくのが食べ頃です。完全に解凍しきるよりも、蜜に少し冷たさが残っている状態が、最もごまの風味と食感が際立ち、おいしくお召し上がりいただけます。同封しているしおりにも「ひと口めは奥歯で優しくお召し上がりください」とメッセージを添えていますが、蜜が勢いよく飛び出さないよう、一口でパクっと頬張るのがこのお団子の醍醐味です。噛んだ瞬間に口いっぱいに広がる香ばしい香りと、とろける甘さを全身で楽しんでいただきたいですね。

―幅広いメディアでも取り上げられ、全国にファンがいらっしゃいますね。

小野寺 全国菓子大博覧会にて、会場内での売上1位を記録するなど、お取り寄せスイーツとしての評価をいただけているのは光栄です。人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に登場するお菓子のモデルとしてSNSでも話題になり、若い世代の方々からも「漫画の通りの食感だ」と喜んでいただいています。最近では、日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」に登場した際の反響がすさまじく、ふるさと納税の寄付額が放映後に900%以上にまで伸びたこともありました。多くの著名な方々がさまざまな場所でご紹介してくださるおかげで、一関の味が全国に広がっていくのを日々実感しています。

―最後に、御社の未来への展望をお聞かせください。

小野寺 一関という地方で商売をする意味を突き詰め、「ここにしかない価値」をもっと発信していきたいと考えています。原材料の完全地産化を加速させることはもちろん、私たちの誇る「もち文化」を、ECサイトや輸出を通じて世界中の方々へ届けていくのが目標です。また、総本店をリニューアルし、職人と直接触れ合える和菓子作り体験を始めたのも、リアルな場でのつながりを大切にしたいからです。様々な地域での催事も予定していますので、そうした場でお客さまと接し、私たちの思いを直接伝えていきたいですね。一粒の和菓子が地域を元気にし、人と人をつなぐ架け橋になれるよう、これからも挑戦を続けてまいります。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「献上田むらの梅6個入」
価格:¥1,426(税込)
店名:松栄堂 総本店
電話:0191-34-1333(9:00~17:00)
定休日:元旦
商品URL:https://www.shoeidoh.co.jp/?pid=85995753
オンラインショップ:https://www.shoeidoh.co.jp/

「ごま摺り団子【8個入】」
価格:¥810(税込)
店名:松栄堂 総本店
電話:0191-34-1333(9:00~17:00)
定休日:元旦
商品URL:https://www.shoeidoh.co.jp/?pid=133210157
オンラインショップ:https://www.shoeidoh.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

小野寺宏眞(株式会社松栄堂 代表取締役社長)
1982年岩手県一関市生まれ。アメリカ留学を経て和菓子の文化的価値を再認識。帰国後、会計事務所での修業を経て2014年に五代目社長に就任。「近きもの喜びて遠きもの来る」をモットーに、地産地消の推進と伝統技術の継承に注力。一関の「もち文化」を国内外へ発信し続けている。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中香花 画像協力/松栄堂>

人気記事ランキング

羽田甚商店

注目の連載

注目の連載

Special serialization

羽田美智子さん連載

SNSできになるあのひと

社長インタビュー

連載一覧を見る

OFFICIAL SNS

Instagramでハッシュタグ#お取り寄せ手帖を検索。

  • Instagram
  • Facebook
  • Twitter