
秀吉が愛した440年続く奈良のお菓子。極上の粒あんと、とろける求肥が織りなす餅菓子「御城之口餅(おしろのくちもち)」
2026/02/27
今回、編集長のアッキーが注目したのは、香ばしい青大豆きな粉の香りに包まれた、一口大の愛らしい餅菓子の「御城之口餅(おしろのくちもち)」です。口に運ぶと、なめらかな求肥と、上品な甘さの粒あんがしっとりと溶け合います。
その背景には、1585年(天正13年)から440年という驚異的な歳月を紡いできた伝統と、時代に合わせて変化し続ける老舗の歩みがありました。取材スタッフが、奈良県に本社を構える、株式会社本家菊屋 代表取締役社長の菊岡洋之氏にお話を伺いました。

株式会社本家菊屋 代表取締役社長の菊岡洋之氏
―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。
菊岡 私たちの原点は、1585年(天正13年)までさかのぼります。豊臣秀吉公の弟である秀長公が奈良県にある郡山城に入城される際、私たちの先祖である初代・治兵衛を連れてきたのが始まりです。お城の大門を出てすぐの場所に店を構えたことから、地域の方々からは親しみを込めて「城の口(しろのくち)」と呼ばれてきました。
実は、明治時代にはすでにクッキーを海外に輸出していたという記録も残っています。400年以上経った今も、当時と同じ場所で、同じ看板を掲げて商いを続けていられるのは、地域の方々やお客様が代々にわたって支えてくださったおかげです。歴史が長いということは、それだけ多くの方に「おいしい」と認められ、信頼を積み重ねてきた証だと思っています。



創業から440年。
豊臣秀吉公も愛した味は、今も変わらぬ場所で大切に受け継がれている。
―26代目として家業を継ぐことに、葛藤などはなかったのでしょうか?
菊岡 物心ついた時から、周りには「26代目」と呼ばれて育ちましたので、ある意味で運命として受け入れていました。大学のゼミではマーケティングを学ぶなど、家業とは別の世界について勉強し、視野を広げました。
私が若かった1990年代はちょうどインターネットの黎明期。伝統ある和菓子屋ではありましたが、「これからはネットの時代だ」と確信し、地元の先輩にホームページを作成していただき、当時はまだ珍しかった楽天市場への出店については、自ら試行錯誤しながら進めました。「変わらないために、変わり続けること」が大切だと考えています。古いものをただ守るだけでなく、今の時代のお客様に届ける方法を常に模索し、挑戦し続けることが私の役割だと思っています。
―今回ご紹介する「御城之口餅」の誕生には、興味深いエピソードがあるそうですね。
菊岡 はい。このお菓子は、秀長公から「兄の秀吉を驚かせるような、珍しい菓子を作れ」と命じられた初代が、知恵を絞って生み出したものなのです。秀吉公はこのお菓子を一口召し上がると「これこそ、うまいものだ」と大変気に入り、「鶯餅(うぐいすもち)」という名前を授けてくださったと言い伝えられています。
後に、お店の場所にちなんでお客様の間で「御城之口餅(おしろのくちもち)」という呼び名が定着していきました。400年もの間、本当にたくさんの人々を笑顔にしてきたのだと思うと感慨深いですね。また、江戸末期、文化10年(1813年)刊のグルメガイド本にも、すでに奈良名物として紹介されているほど、昔から太鼓判を押されてきた味なのです。地元では、幼いころの子守唄にも歌われるほど地域の生活に深く根付いており、これほど長く一つの形が変わらずに愛され続けてきたお菓子は、全国的にも非常に稀な存在ではないかと自負しております。

豊臣秀吉公に献上されたお菓子が、400年もの間たくさんの人々に愛されてきた。
―素材や製法において、特にこだわっている点はどこですか?
菊岡 最大のこだわりは、3つの素材が織りなす究極の調和です。中に入っている粒あんは、厳選された丹波大納言小豆の大粒をじっくりと炊き上げ、お砂糖が貴重だった当時の「贅沢な甘み」を現代に伝えています。それを包む求肥は、近江羽二重餅の餅米を使用し、驚くほど柔らかく、口の中でスッと消えていくような繊細な食感を追求しました。
さらに、仕上げにまぶしているのは、香りが強く色鮮やかな青大豆のきな粉。これら三つの要素が口の中で一体となる瞬間の絶妙なバランスこそが、400年以上愛され続けてきた「おいしさの根拠」なのです。シンプルだからこそ、素材の質と職人の技術が問われる、まさに伝統の結晶といえる一品です。


厳選された小豆の粒あんが、青大豆きな粉の香ばしさと溶け合う。
その繊細な食感は、熟練の職人技の賜物。
―おすすめの楽しみ方はありますか?
菊岡 一口サイズですので、ぜひ午後のティータイムのひとときに、お好みの飲み物と一緒に楽しんでいただきたいですね。日本茶はもちろんですが、実はコーヒーや紅茶とも驚くほど相性がいいんです。
きな粉の香ばしさと、しっとりとした粒あんの甘みが、コーヒーの苦みを引き立ててくれます。また、一口でパクっと召し上がれるサイズ感は、家事やお仕事の合間のちょっとした自分へのご褒美にもぴったりです。少し贅沢な器に乗せて、秀吉公が愛した400年前の物語に思いを馳せながら、ゆったりとした時間をお過ごしいただければ嬉しいですね。

秀吉公に思いを馳せながら楽しむ、贅沢なティータイム。
日本茶はもちろん、実はコーヒーの苦みとも相性がいい。
―お客様からは、どのような反応がありますか?
菊岡 地元の方々にとっては、単なるお菓子以上の存在になっているようです。おばあちゃんが「昔よく食べたわね」と懐かしみ、それをお孫さんに伝える。そんな世代を超えた絆の中に、私たちの「御城之口餅(おしろのくちもち)」があります。贈り物としてお持ちした際も、「これなら間違いない」という安心感を持って選んでいただけることが多いですね。長い歴史の中で積み重ねてきた信頼が、今もお客様の笑顔を支えているのだと実感し、身が引き締まる思いです。
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
菊岡 「奈良にうまいものあり」と、自信を持って世界に発信していきたいですね。2026年の大河ドラマの主人公が豊臣秀長公に決まったこともあり、ゆかりの店として私たちの歩みに注目していただく機会も増えています。これを機に、奈良の食文化の奥深さをより多くの方に知っていただきたい。440年守ってきた暖簾を、次の世代へと誇りを持って繋いでいくために、伝統を大切にしながらも、現代のお客様に喜ばれる「新しいおいしさ」への挑戦を止めることはありません。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「御城之口餅(6個入~)」
価格:¥800(税込)
店名:本家菊屋
電話:0743-52-0035(9:00~18:00)
定休日:年中無休(1月1日のみ休み)
商品URL:https://www.kikuya.co.jp/SHOP/004-6.html
オンラインショップ:https://kikuya.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
菊岡洋之(きくおかひろゆき)(株式会社本家菊屋 代表取締役社長)
1966年生まれ、奈良県出身。関西学院大学商学部卒業。26代目として家業に入り、IT黎明期に自らウェブサイトを構築するなど、老舗に革新をもたらす。大和郡山市商工会理事や教育委員会委員なども務め(2025年12月で8年間の任期を満了)、地域文化の振興に尽力している。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/本家菊屋>




























