
山口が誇る風味絶佳な銘品を全国にお届け。温めれば蒸したてのおいしさを味わえる「簾子豆子郎(れんじとうしろう)」
2025/11/10
全国には、ご当地ならではの銘品、銘菓がいっぱい。そのなかで、編集長アッキーこと坂口明子の目に留まったのは山口県の「簾子豆子郎(れんじとうしろう)」。山口外郎(ういろう)の系譜を継ぐ銘菓で、創業以来77年間、年代を問わず多くの人に愛され続けています。その裏にはどんな秘密が隠されているのか、作り手のどんな思いが込められているのか。製造する株式会社豆子郎 代表取締役社長の田原文栄氏に取材陣がお話を伺いました。

株式会社豆子郎 代表取締役社長の田原文栄氏
―御社の歴史についてお聞かせください。
田原 創業したのは、祖父である田原美介です。満州鉄道のエンジニアだった祖父は、終戦後、祖国の復興に貢献しようと故郷の山口に戻ってきましたが、お腹をすかせて覇気がない人たちの姿を目にして愕然としたそうです。故郷のために、この国のために自分は何ができるだろうかと考えたとき、中国で豊かな食文化に触れた経験を活かして「食」関連で何かできるかもしれないと、闇市に出かけたのです。
そこで少量の小麦粉と砂糖を手に入れ、実家からもらってきた米ぬかに混ぜて蒸しパンを作り、トタン板の上に並べて家の軒下で売り始めました。1948年のことです。
当時、甘いものは貴重品で、蒸しパンはよく売れたそうです。その様子を見て、お客様が本当に求めているもの、喜んでくださるものを作りたいと考えた美介は、山口の名産「山口外郎(ういろう)」がいいのではと、地元の老舗菓子店のご主人に教えを乞い、外郎を作り始めました。エンジニア魂に火がついた美介は、外郎とは一線を画したオリジナルのものを作りたいと、試行錯誤を重ねて生まれたのが「豆子郎(とうしろう)」です。

豆子郎総本店 茶藏唵(さくらあん)。

店の入口には、「豆子郎」の文字が染め抜かれた暖簾がかかる。
―「豆子郎」は、どのようなお菓子なのでしょう。
田原 外郎の主な材料は、小麦粉、わらび粉などの粉類と砂糖と水です。美介は、師匠から受け継いだ秘伝の外郎作りの技を生かしつつ、これらの材料を独自に配合し、より舌触りが滑らかで口溶けもよい生地を完成させました。そこに豆を混ぜ、蒸しあげることで甘さと風味が互いに引き立て合うお菓子となっています。

わらび粉と小麦粉を合わせた「豆子郎」は、
もっちりして、ぷるっとした食感が特徴。

山口外郎の伝統を守りながらも、
中に小豆を入れてオリジナルなおいしさを実現。
―「豆子郎」という名前の由来は?
田原 もともとエンジニアで、お菓子に関しては素人です。そんな「トーシロ」な自分が作り出したお菓子であるという意味と、生地に豆を混ぜ込んだ「山口外郎をもとにして生まれた子」という意味で「豆子郎」と名付けたそうです。
―美介さんは、ユーモアあふれるアイデアマンだったそうですね。
田原 はい。もともと外郎は棹菓子で、切って食べるものでしたが、祖父はそれをもっと手軽に食べられるように、女性のおちょぼ口でも食べやすいようにと細長く小さめの、今の形に仕上げました。
当時、和菓子は日持ちしないのが当たり前でしたが、美介は、どうすればより多くの方に届けられるだろうかと考えました。ある日、晩酌で食べた魚肉ソーセージにヒントを得て、フィルムで豆子郎を巻いたらどうかと思い立ちます。ただ、当時は加熱殺菌できるフィルムがなく、美介はフィルムの素材から研究し、同時に開発。日持ちがするだけでなく、湯煎などで再度温めることが可能になり、蒸したての味を再現できるように。これが、「豆子郎」が全国に広まるきっかけとなりました。

創業者・田原美介氏。
―それが、今回ご紹介させていただく「簾子豆子郎(れんじとうしろう)」の原点ですか?
田原 はい。美介が考案した密封包装でも消費期限は2、3日程度でしたので、通信販売をするとなると商品管理が難しい。そこで、さらに改良を重ねて生まれたのが「簾子豆子郎」です。
電子レンジで温めて召し上がっていただけるという意味と、創業以来受け継がれている精神と味を、暖簾とともに繋いでいきたいという意味を込めて「簾子=れんじ」としました。

「簾子豆子郎」<化粧箱入>。こちらは8袋16本入。
ほかに、12、16、20、24、32、40袋入もある。

1袋に「小豆」と「抹茶」が1本ずつ。
―商品のこだわりについて、お聞かせください。
田原 主な原材料は、小豆、小麦粉、わらび粉、砂糖、みりんです。それらすべてにこだわっています。わらび粉を使うのが山口外郎の特徴ですが、弊社ではわらびを生産している農家から取り寄せていますし、砂糖もアクの少ないものを使っています。
豆子郎としては良質なものを使いたい。逆に言えば、良質なものが揃わなければ豆子郎は作らない、という気概を持っています。ただ、年々、原材料の確保が難しくなっていて、わらび粉なども他に代わるものを考える必要が出てくるかもしれません。それでも、豆子郎本来の味と食感を失わないように、今後、研究していきたいと考えています。

原材料の大納言小豆。手仕分けで形のいいものを選び、使用している。
―製造の過程で苦労される点はありますか?
田原 蒸しの工程です。豆子郎の味と食感を一定に保つために、各工程でさまざまな工夫を凝らしますが、中でも蒸しの工程が重要なんです。嗜好品ですので、外郎は柔らかいほうがいい、いや硬めのほうがいいなどお好みは人それぞれだと思いますが、弊社では豆子郎ならではの食感を大切にしているんです。そのために、原材料の状態によって、またその日の温度や湿度によって蒸しの強さや時間を変えるのですが、その加減がむずかしいのです。
―大きさ、形ともに創業以来変わっていないそうですね。
田原 はい。美介は「一口目で食感、二口目で喉ごし、三口目で味わって完結する」としてこの大きさ、形にしたのです。食感を楽しんで、喉ごしを楽しんで、最後に味わっていただければ、お客様にきっと喜んでいただけると。その思いを継承し、大きさ、形ともに変えていません。
―おすすめのいただき方は?
田原 ぜひ、温めてお召し上がりください。パッケージ(袋)に少し切り目を入れて電子レンジに入れ、500Wで10秒ほど温めていただき、ほんのり温かい状態でお召し上がりいただくと、まるで蒸したてのような食感と味をお楽しみいただけます。

こちらは、店頭販売のみの「生絹(すずし)豆子郎」。
創業当時の「豆子郎」を再現すべく、1985年に誕生。
「簾子豆子郎」とは違ったみずみずしい味わいが好評。
―田原社長は6代目と伺っております。もともと後継者になるおつもりだったのですか?
田原 いえいえ。創業者の孫と言っても、祖父母の子どもは4人で、私の母は末娘。いとこの中でも私は一番下でしたから、私が家業を継ぐことはないと思っていました。ですから、高校卒業後は山口を離れて神戸の大学へ進学。英文学を学び、将来は海外へ、なんて考えていたのです。
ところが、大学4年次に阪神・淡路大震災に被災。神戸を離れざるを得なくなり、山口に戻りました。ぶらぶら遊んでいるわけにもいかず、家の仕事を手伝うことに。その流れで、入社式も何もなく社員になったというわけです。社内には、私が子どもの頃からずっと働いてくれているベテラン社員がいらして、その方たちに仕事を教えていただいて。そのうちに現場を任されるようになり、さまざまな経験をさせてもらって、2018年に代表取締役社長に就任しました。
―御社は、経営理念として「人を大切にする、心の経営」を掲げていらっしゃいますね。
田原 創業者である田原美介を、連れ合い、私にとっては祖母の榮子がしっかり支えていました。榮子は自分の家族を大切にするだけでなく、社員の家族も自分の家族だと思って大切にしていました。そして、社員ひとりひとりの在り方も大切にする。つまり、社員それぞれの自己実現の場所が、豆子郎であってほしい。それが、「人を大切にする、心の経営」ということです。
その精神がずっと受け継がれてきましたし、もちろん私も継承しています。現在も社員たちは私にとって親戚のような感じです。社員の家庭で介護や育児の問題が起きれば、一緒に考え、サポートをする。仕事とプライベートは別、と考える人もいるでしょう。「ワークライフバランス」という考え方もありますが、弊社としては仕事とプライベートは「ミックスブレンド」、といったところでしょうか。
私自身としては、社員には「仕事はサクセス、プライベートはハピネス」を実現してもらいたいと思っています。仕事に人生を乗せるのではなく、人生の上に仕事を乗せて欲しい。豆子郎に関わることが自己実現の1つの舞台であって、「人生の軸になっている」と思ってもらえたら私としてもうれしい。そういう経営をしています。
―今後の展望をお聞かせください。
田原 会社というのは私ひとりのものではありません。社員自身が、豆子郎というものを次世代に繋いでいきたい、豆子郎をいつまでも召し上がっていただきたい、と思えるような会社にしていきたいです。そのためにどうするかを考えるのは社員自身で、それを全力でサポートするのが私の役目。社員たちの声に耳を傾けることが、お客様への貢献につながると信じているのです。
社員はお客様を見ています。私は、そういう社員を見て、社員が心から幸せを感じ、喜びを感じるような環境を作っていきたいと考えています。
―作り手が幸せや喜びを感じながら作るお菓子は、おいしくないわけはありませんね。本日は、素敵なお話をありがとうございました。

「簾子豆子郎<化粧箱入>」8袋16本入
価格:¥3,320(税込)
店名:豆子郎オンライン
電話:0120-21-5655(10:00〜16:00 日曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365
日受付
商品URL:https://toushirou.shop/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=renji02-front
オンラインショップ:https://toushirou.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
田原文栄 (株式会社豆子郎代表取締役社長)
1972年山口県山口市生まれ。1995年、大学4年在学中に阪神・淡路大震災に遭う。卒業と同時に山口へ帰郷、株式会社豆子郎に入社。山口県内12直営店舗統括管理や全社のスタッフの採用・育成のほか経営全般に携わり、2018年に6代目代表取締役社長就任。「人を大切にするこころの経営」をテーマに、株式会社豆子郎が社員にとっての自己実現の舞台となり、地元山口に貢献し続けられる100年企業を目指す。
<文/鈴木裕子 MC/藤井ちあき 画像協力/豆子郎>




























