鹿児島県内でも屈指の温泉地として知られる指宿市。ここに本社を置く「中園久太郎商店」は、100年もの間、漬物を作り続けてきた老舗企業です。そんな同社の商品の中で、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのが、大根を天日干しして作った「国産大根の本干し沢庵」、そして新登場の「辛子高菜(油炒め)」。それぞれの開発にまつわるストーリーについて、「株式会社 中園久太郎商店」代表取締役社長の中園雅治氏に伺いました。
食物繊維も豊富な発酵食品 冷蔵庫にいつも漬物を!
2024/04/17
「株式会社 中園久太郎商店」代表取締役社長の中園雅治氏。
―御社の沿革について教えてください。
中園 弊社は1912年、明治45年に創業しました。創業者の久太郎は、私の祖父に当たります。祖父は福岡県の城島という町の出身でした。農家でしたので長崎県の醤油屋に丁稚奉公に出されたのですが、なかなかのアイディアマンで、先方からも認められていたようです。
―どんなことをなさったのでしょうか?
中園 例えば、近くの井戸へ水汲みに行ったところ、近所の奥様方が集まって井戸端会議をやっていました。ならばそこで醤油を売ると良いのでは、などと考えたそうです。
その後、知り合いから鹿児島で一緒に商売をやろうと誘われ、鹿児島に移りますが、仲違いをしたのか一人で独立することになりました。知人もいないし何もない。その時に思いついたのが漬物でした。当時の食生活と言えば、ご飯に味噌汁に漬物。日本人の多くが食する漬物を作れば間違いないと思ったようです。
ただ、作ったものがすぐに売れたかというとそうではなく、そこで考えたのが定点定時販売でした。作った漬物を大八車に積んで、月曜日はAコース、火曜日はBコースと6コースぐらい設定し、さらに1番地点には朝8時、2番地点には8時半に必ず回る。それを雨が降ろうが雪が降ろうがやっていたことから、徐々に知られて信用もしていただけるようになり、商売が成り立つようになりました。その地域では、「久太郎さんが来たから何時だ」と時計替わりにされるほど正確だったそうです(笑)。
アイディアマンだった初代の久太郎氏。
―そのお話は久太郎様から直接聞かれたのですか?
中園 弊社のことを冊子にまとめてくれた方がいらっしゃいまして、そこから知ることができました。
中園久太郎商店についてまとめられた冊子「中園久太郎翁一代記」。
―最初はどんな漬物を作っておられたのでしょうか?
中園 詳しくは分かりませんが、弊社の基礎となったのは沢庵です。鹿児島はもともと農業県で、素材となる大根や白菜がたくさん採れる場所。それらを漬けたりしたのではないかと。さらに、その切れっぱしを刻んで福神漬にしたりしたのでしょうね。さらにそれらを鹿児島だけでなく、沖縄でも販売していました。
―輸送手段も限られていた時代に、素晴らしいですね。ところで社長は家業を継ぐことをいつ頃決意されたのですか?
中園 幼い頃から、自分もこの仕事をするのかなと、うっすらとは思っていましたが、決定的だったのは中学生の頃、弟と一緒に父に呼ばれ、「お前たちが跡を継ぐなら今の工場を移転して規模を大きくする。継がないならしない。どうするか」と言われたことです。これを聞いたら「やる」と言わざるを得ませんでした(笑)。
―では、今回ご紹介させていただく商品について。まずは「国産大根の本干し沢庵」のこだわりを聞かせてください。
中園 こちらは契約農家様のところで育った大根をしっかりと天日干しにかけて、砂糖、醤油、みりん、食酢、米ぬか、昆布、食塩、唐辛子で味付けをしました。合成添加物を使わず素材を活かした沢庵です。天日干しは、大根2本をセットにし、紐で括って、長さ100mの矢倉にかけて行っています。
しっかりと干したのち、それらを塩漬けして保存し、加工する際に取り出して洗います。そして長さをそろえて味を調整するのです。
―塩漬け保存は、どのぐらい行うのですか?
中園 最短で1か月です。毎年12月から2月にかけて1年分を漬けます。早いものは一ヶ月ほどで取り出し、遅いものは1年後に使うような感じです。
弊社には以前から大根の沢庵はあったのですが、さらに素材の味を生かしたものを作ろうと思い、こちらを作りました。天日干しという製法もご興味をそそるようで、ご好評をいただいています。
太陽の光をたっぷりと浴びて、大根はしっかりと旨みを蓄える。
―おすすめの味わい方は?
中園 やはり白いご飯と一緒に召し上がっていただきたいですね。あとはお酒にもお茶のお供としても。2~3mmの厚みで切っていただくと良いでしょう。
上品な味付け、シャキシャキとした歯応えの「国産大根の本干し沢庵」。
―ではもう1点の「辛子高菜(油炒め)」についても教えていただけますか?
中園 こちらも契約農家様に作っていただいた鹿児島県産の高菜をまず4カ月、乳酸発酵させます。それを流水で丁寧に洗って刻み、ごま油で炒めました。
鹿児島では高菜漬けを味噌と合わせ、味噌と合わせて油炒めする家庭料理があります。そこで弊社では、あらかじめ炒めたものを作りました。20年ほど前、漬物は姿物の商品が中心でしたが、今はカットしてあるものや、加工したものが非常によく売れます。
―おすすめのアレンジ方法はありますか?
中園 ご飯にサッと混ぜて混ぜご飯、炒めてチャーハン、パンに挟んでサンドイッチにしてもおいしいですよ。サラダのトッピングや卵焼きの具材にもぜひ加えてみていただきたいですね。
そのまま食べても味がよく、アレンジのバリエーションも豊富。
―パンに挟むのは意外ですが、おいしそうですね!ところで中園社長は、2023年に全日本漬物共同組合連合会の会長にも就任されました。この組合は、47都道府県の漬物会社様による協同組合ですか?
中園 そうですね。県ごとに漬物組合があるのですが、それらが集まって全国組織として活動しています。現在は34都府県が加盟しています。鹿児島県では12社です。農林水産省などへ出向いて様々な交渉をする他業界の抱える課題解決などの役割を担っています。
就任後は、次の世代にも漬物をもっと味わっていただくために委員会を作り、20・30代の若者がなぜ漬物を食べないのか、どうしたら興味を持ってくれるのか、といった調査などを行ない、対策を考えています。
―漬物離れが起きているのですか?
中園 残念ながら若い家庭に、漬物なしの食生活が定着してきています。弊社の工場では小学生の社会科見学なども受け入れており、見学後は実際に漬物を食べていただきます。すると皆、「おいしい!」と食べてくれるのです。ところが私が「家ではどう?」と聞くと、「家では漬物が出て来ません!」というわけです。
「漬物は塩分が気になる」という方も多くいらっしゃるようです。確かに、半世紀前までは沢庵の塩分濃度も10%ほどありましたが、現在は3%ほどとなっています。理由は、昔は保存の手段がなく、塩をきつく効かせなければならなかったから。近年はパッケージも進化し、輸送手段もしっかりしていますので、塩分もそこまで高くする必要がなくなりました。お医者様から塩分についてきつく言われている方には食べ過ぎを勧めませんが、ぜひ積極的に楽しんでいただきたいです。
何より漬物は伝統的な発酵食品で、食物繊維が豊富です。又、漬物に含まれるカリウムが塩分を体外に排出してくれます。冷蔵庫にストックしておけば、野菜不足の解消にもなります。私たちも、こうしたお話をもっとしっかり伝えていかねばと思っています。
―今後の展望についても聞かせてください。
中園 地元の素材、例えばソラマメとかスナップエンドウなどを使った商品作りにも挑戦したいと思っています。漬物ではなく、惣菜的なものになってしまうかもしれませんが。
実を言うと、現在は漬物だけでなく、種子島産のさつま芋を使った焼き芋などの商品作りも行なっています。漬物に限らず、おいしくて栄養価の高いものを、幅広い年齢層の方に提供できれば、大変嬉しいことです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
ちなみに中園社長によると、本社を置く指宿市山川地区の「山川漬け」は、「漬物の中の芸術作品」。秀吉が朝鮮出兵した時にも保存食として持参した記録のある漬物で、塩と発酵の力のみで仕上げたそれは、独特の風味があり、噛めば噛むほど味が広がるそう。こちらも中園久太郎商店のHPより購入可能。合わせてチェックしてみてはいかがでしょうか?
「国産大根の本干し沢庵」(1本入)
価格:¥490(税込)※送料別
店名:中園久太郎商店
電話:0993-34-1180(8:30~18:30)
定休日:日曜・祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://www.tuke-mono.com/item/390/
オンラインショップ:http://www.tuke-mono.com
「辛子高菜(油炒め)」(140g)
価格:¥324(税込)※送料別
店名:中園久太郎商店
電話:0993-34-1180(8:30~18:30)
定休日:日曜・祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://www.tuke-mono.com/item/4904041061036/
オンラインショップ:http://www.tuke-mono.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
中園雅治(株式会社中園久太郎商店 代表取締役)
1954年鹿児島県生まれ。一橋大学卒業後、日商岩井に入社し、4年の修行期間を経て1981年に株式会社中園久太郎商店へ入社。1997年に同社代表取締役に就任。2023年に全日本漬物共同組合連合会会長に就任。漬物文化の継承と漬物料理による消費拡大を二つの柱に掲げる。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/三好彩子 画像協力/中園久太郎商店>