今回編集長アッキーが注目したのは、木の香りが爽やかなエッセンシャルウォーター。100%天然成分から作られており、抗菌や消臭作用もあるので、衛生面が気になる空間や物にもスプレーできます。この木の力を活かした商品を作ったのは、石川県の木材業者である加賀木材株式会社。120年以上も山や木と向き合ってきた歴史の中、培われた自然の知恵をもとに、科学的な視点を加えて商品を生み出しました。“山への恩返し”をいつも心に留めているという代表取締役の増江世圭氏に、商品に込めた思いをお聞きしました。
森の香りで消臭抗菌「NOTOHIBAKARAエッセンシャルウォーター」
2024/04/17
加賀木材株式会社 代表取締役社長の増江世圭氏
―御社は120年以上の歴史を持つ木材卸だとお聞きしました。
増江 加賀木材は1900年、明治時代に創業しました。船を持った海鮮問屋として東北などにも出向くうちに、青森ヒバという木材を扱うようになったそうです。ヒバというのは腐ったりカビたりしづらく、シロアリや害虫にも強い木です。冬は降雪が多くて、夏は非常に蒸し暑い北陸地方において、住宅用の木材として重宝されました。その後、丈夫で長持ちするヒバは非常に人気が出て、昭和初期には消費量が急増し価格も高騰しました。
先代はもう少し安価なヒバを探し、海外に進出。米ヒバを輸入し始めたのです。地方の材木屋だった当社は、商社のような機能を備えつつ、事業を拡大してきました。
―代々、さまざまな産地の木材を扱い、現在は能登ヒバを数多く販売されていますね。
増江 現在は地元の能登ヒバを多く扱っています。青森、能登と産地を変えながらも、湿度の高いこの地域に必要とされるヒバ木材を提供し続けてきたのだと改めて思い返します。
地元能登のヒバの良さを伝え続けたい。
私自身は子どもの頃から、木の匂いがする家で育ち、父の背中に憧れて大きくなりました。いつかは自分が会社を継ぐとごく自然に思うようになり、大学は農学部に進学し林業経営を学びました。家業のアルバイトもしました。
―4代目社長として事業を承継されて取り組まれたことは?
増江 大学卒業後は木材の専門商社に入社し、輸入などについて知見を得て、その後当社に入社しました。米ヒバなどを輸入しているカナダに赴任し、木にグレードをつける業務なども経験しました。
そうやって当社以外の会社や、海外での経験を重ねて会社に戻ると、組織としての弱さを感じたのです。“有能な番頭さんが軒を連ねている個人商店”という感じです。これを会社としてうまく機能させていくために、社内評価制度を設けたり、勉強会を開催したり、社内のコミュニケーションを円滑化させ、業務を属人化させないために尽力しました。
木材のプロフェッショナルたちがより活躍できる企業へ。
増江 一方で長年地元の木材業界を引っ張ってきた当社の強みも感じています。山の素晴らしさ、木材の良さ、特にヒバという木の持つ力をよく知っているのは、他社にはない特色です。生簀にヒバの木片を入れると魚の鮮度を保てる、風邪をひいたらヒバのかけらをかじると良くなるなど、真偽は不明ながら生活の中で培われたヒバの知恵をよく聞いていました。
―ヒバにはさまざまな効果が期待できるんですね。
増江 昔から、これだけ良いと言われているのだから、何らかのパワーはあるのではないかと、成分を調べてみることにしたのです。社内に研究施設を設けて、ヒバに含まれる有効成分を分析すると、高い殺菌作用を持つ成分が多いことがわかりました。体感として語り継がれていた知恵は、根拠のあるものでした。また、代表的な有効成分である「ヒノキチオール」がかなり珍しい成分で、どんな木にも含まれているものではないとわかりました。これを活用しない手はないと思いました。
ヒバの成分について、自社内で分析や研究を重ねた。
―ヒノキチオールを生かした「NOTOHIBAKARAエッセンシャルウォーター」は、どんな商品ですか。
増江 住宅用資材として生産されるヒバの中には、曲がったり割れたりして建築資材としては使えないものがあります。この廃棄されてしまう木材を何とか活用できないかと思っていたところ、ヒノキチオールなどの有効性が判明し、商品化へと動き出しました。
廃棄されてしまう半端なヒバ材を蒸留窯で煮沸して、うまくヒノキチオールが抽出されるようにしています。抽出された水分をエッセンシャルウォーター、油分をエッセンシャルオイルとして販売しています。
水蒸気蒸留法で抽出された、まじりっ気なしのエッセンシャルウォーター。
爽やかな木の香りがするので、リラックスできますし、消臭殺菌にも効果を発揮します。お部屋全体にスプレーするのはもちろん、トイレや下駄箱、気になる匂い消しにも使えます。アリやゴキブリなどの侵入防止に使っているという方もいます。これまで地域の温泉旅館に使っていただき、客室の食べ物の匂いや、お風呂のカビを抑えるのに活用できたというお声をいただきました。他にはペットの皮膚がただれているところにスプレーしたら、状態が良くなったというメッセージもありました。
ルームスプレーとして空間はもちろん、さまざまな物への噴霧もOK。
私は風邪をひきそうな時に顔周りにスプレーして吸い込み、症状を悪化させないようにしています(笑)。これは極端な例ですが、完全無添加で自然成分のみが使われているので、お子さまからペット、人体にも悪い影響を与えないのもメリットです。
子どものおもちゃや衣類などにも使える。
―木材に技術や科学的知見を掛け合わせて、商品に付加価値を加えているのですね。
増江 そうです。質の高い木材の安定供給を主軸としながら、木の力を生かした付加価値の高い商品も展開していきたいと考えています。NOTOHIBAKARAの商品群の他に、近年では不燃木材「もえんげん®」という資材を販売中です。
もともと金沢工業大学で研究されていた物を燃えにくくする薬剤があって、主にカーテンなどに塗布するために開発されたのですが、これを木材に使ったらどうかというアイデアが出たのです。石川県では杉の生産量が多い割に需要は低かったので、杉で集成材などを作っていました。しかし、どうしても外材との価格競争になってしまうので、何か付加価値を加えられないか考えていたところでした。
木造の家屋は20分ほどで全焼してしまうと言われており、法律上、不燃材を名乗るには20分以上燃焼しないことが求められます。有害ガスを発生させないことも必須要素です。これを満たした商品が「もえんげん®」です。
「もえんげん®」を活用した公共施設の施工例。
木材の良さを広く知ってもらい、広く活用してもらうための工夫を続けたいです。
―NOTOHIBAKARAのエッセンシャルウォーターも、さらに広い場面、用途で使えそうですね。
増江 現在、能登半島地震の被災地へお届けできないかと検討しています。被災地の仮設トイレの防臭や殺菌にも役立てられると思いますし、避難所の感染症予防のためにも使っていただけるのではないでしょうか。実際に私たちの職場では、エッセンシャルウォーターをディフューザーで噴霧しているのですが、この冬感染が広まることがほとんどなかったのです。
除菌、除ウィルス、消臭の1本3役をこなす。
能登ヒバの魅力を存分に伝えるためのサウナが作れたら良いな、とも思っています。能登ヒバの木材で作ったサウナに、エッセンシャルウォーターでロウリュをしたら、森の香りが漂う素敵なサウナになるはず。サウナ自体をカビづらいものにできるし、利用される方の感染症予防にも良いと思います。まだ構想レベルですが、私はサウナが大好きなので、ぜひ叶えたいです。
―今後の展望を教えてください。
増江 事業を通じて「山への恩返し」をしたいと思っています。木を育む山は、林業にとってはもちろん、自然環境にとっても貴重で大切な場所です。しかし近年では林業の担い手が減り、山は放置されています。古い木をしっかり伐採して活用した上で、若い木を植えないと、暗く光合成も少ない環境になってしまう。山を再生させるために、木材が安定した価格・量で販売できるような仕組みを整えながら、地元の林業を盛り立てたい。林業や山に関わる人皆が、Win‐Winでいられるような形を作っていきたいです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
「エッセンシャルウォーター」(200ml)
価格:¥1,840(税込)
店名:NOTOHIBAKARA(ノトヒバカラ)通販ショップ
電話:076-238-4131(9:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.noto-hiba.com/view/item/000000000011
オンラインショップ:https://www.noto-hiba.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
増江世圭(加賀木材株式会社 代表取締役社長)
1973年石川県生まれ。1996年江間忠合板株式会社に入社し、6年間の修行を経て2002年に加賀木材株式会社へ入社。2010年に同社代表取締役社長に就任。山への恩返しプロジェクトを立ち上げ、石川県産材を活用した高付加価値商品と木育カフェやおが粉酵素風呂などの独自の商品とサービスを展開。TSUKURUという植林活動にも注力している。2012年金沢大学の非常勤講師、2023年金沢木材協同組合の理事長に就任。現在に至る。
<文・撮影/鈴木満優子 MC/高橋知 画像協力/加賀木材>