口の中にフワッと広がるラムレーズンの香り。サブレとクリームとの相性も抜群。そのバランスに魅了される鎌倉小川軒のお菓子「レーズンウィッチ」があります。今年で販売開始から35年を迎え、地元鎌倉で長く愛され続けている味です。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった有限会社ケイワンの代表取締役の中村友氏に、取材陣が伺いました。
どこか懐かしい、幸せな味。親子3世代に愛され続ける鎌倉小川軒の「レーズンウィッチ」
2024/04/15
有限会社ケイワン 代表取締役の中村友氏
―まずは創業時のお話をお聞かせください。
中村 私の父が創業者であり、私は二代目です。父は東京代官山の小川軒で修業を積み、1988年に有限会社ケイワンを設立し、1989年に鎌倉にて、鎌倉小川軒としての店舗をオープン。工場を併設し、工場直売店としてスタートしました。東京代官山の小川軒は本家でして、暖簾わけさせていただいています。鎌倉という場所を選んだ一番の理由は、父が地元である鎌倉で店舗を構えたい想いが強かったからです。地域密着を目指してお店を運営していきたかったようです。
鎌倉の土地柄なのでしょう。新しいお店がオープンすると、興味を持って来店してくださるお客様が多かったようです。比較的すぐにお店の情報が周知され、人気が高まっていきました。また、鎌倉は東京の大手企業勤務や経営者の方が多く、すでに代官山の小川軒を知っている方も多かったので、鎌倉に新しく小川軒がオープンすると知って来店してもらえました。
現在の鎌倉小川軒 鎌倉本店。本店にはカフェスペースも。
―創業当時からレーズンウイッチを?
中村 当時は、間口が2軒ほどの小さい店舗。ショーケースも一つのみでした。その中で、主力商品であるレーズンウィッチのほかにも、10~15種類ほどの商品が販売されていました。たとえば、ケーキやシュークリームなどの生菓子や、マドレーヌやリーフパイなどの焼き菓子がありましたね。やはり売り上げの半分は、レーズンウィッチが占めていました。
現在もレーズンウィッチのほかにも様々な焼き菓子が、オンラインショップでも販売中。
―お店のコンセプトは?
中村 当時から気取った雰囲気ではなく、地域に溶け込めるような温かみのあるお店を目指していました。父はよく、地域の子どもたちから「ケーキ屋のおじちゃん」と呼ばれて親しまれていましたね(笑)。当時のレーズンウィッチは、手にとっていただきやすいように、1つ80円で販売していました。贈答品というよりは、手軽にお持ちいただける手土産として利用していただいていたと思います。
―家の形をしたロゴマークも温かみがあります。
中村 ロゴマークには、五角形の家の形を使用しています。家はやはり安らぎを与えてくれる場所だと思うので、鎌倉小川軒のお菓子を食べることで、家にいるような幸せや満足感を感じてほしいという想いがあります。私の考えとしては、鎌倉小川軒の「鎌倉」はサブタイトルであり、五角形の「お菓子の家」がメインタイトルであると思っています。
お店のロゴマークは3年前にリブランディング(既存ブランドを再構築すること)によって新しく変えたのですが、レーズンウィッチの個包装には、創業当時からのロゴを使用しています。
左:創業当時のロゴマーク。
鎌倉小川軒のお菓子を食べることで、家にいるような安らぎを感じてもらいたい想いが。
右:3年前のリブライディングによって新しくなったロゴマーク。
五角形の家の形と、ロゴマークに込められた想いは同じ。
レーズンウィッチの個包装のフィルムには、創業当時のロゴマークを使用。
―レーズンウィッチのこだわりを教えてください。
中村 まず、レーズンウィッチの主役となるラムレーズン。レーズンは、アメリカ合衆国のカリフォルニア州のフレズノにある農園で生産しています。そこで太陽の恵みをたくさん浴びた、細長くて大粒のブドウを栽培しています。収穫したブドウは、天日干しや独自の製法などによって、レーズンへと生まれ変わるのです。
そのレーズンを日本へ仕入れた後は、シロップで煮込み、ラム酒で香り付けしてから1週間ほど漬け込むと、ラムレーズンとなります。グツグツと煮込んだシロップの中に、ラム酒を入れてアルコールを揮発しているので、お酒が弱い方やお子様にも安心して召し上がっていただけます。ブドウの本来持っている酸味を失わずにふっくらと煮ることや、ラムの香りにこだわっています。
フレズノで栽培されているブドウは、マスカットのような見た目で、そのままでも充分な甘さ。
天日干しと工場での独自の製法を経て、おいしいレーズンに。
中村 次に、レーズンウィッチの中に入っているバタークリーム。卵白の中にシロップを加えてメレンゲにするイタリアンメレンゲを採用しています。このメレンゲに、ホイップされたバターを加えてバタークリームを作っています。温度設定に注意し、滑らかで口当たりの良いバタークリームになるようにこだわっています。
そして最後のクリームとラムレーズンを挟んでいるバターサブレ。原材料のほとんどがバターです。植物性油脂であるショートニングを使用してサクサク感を生み出しています。バターサブレで挟む工程は、人の手によって仕上げられています。
サクサクのバターサブレは、単体でも販売してほしいとの声が多く寄せられたほどのおいしさ。
実際に、バターサブレ単体の商品も販売中。
こだわりのラムレーズン・バタークリーム・バターサブレ。
この三つがバランスよく合わさり、鎌倉小川軒のレーズンウィッチが出来上がる。
―本家である東京代官山の小川軒と同じレシピですか?
中村 ベースは同じですが、様々なアレンジが加えられて、鎌倉小川軒独自のレーズンウィッチとなっています。ラムレーズンとバタークリームを、バターサブレで挟むお菓子の構造自体は、本家と共通ですね。また、レシピの内容は変えておらず、創業当時のレシピ通りです。
―2024年で創業35年、幅広い年齢層のファンがいらっしゃるのでは?
中村 そうですね。幼少期の頃にレーズンウィッチを食べていたお客様が、次はお子さんを連れてご来店されることも。親・子・孫の3世代、もしくは4世代でレーズンウィッチのファンでいらっしゃるケースもあります。やはり、小さい頃に食べていた食べ物は、ご自身の味となると思うのです。その味がベースになっているので「ほかにも色々なお菓子を食べたけれど、最終的に鎌倉小川軒に戻って来ました」という声をいただくことも多く、嬉しく思います。
お客様の比率的には、地元の方が多いのが特徴ですね。良い評判も悪い評判も、すぐに広まってしまうでしょうが、地元の方から愛されている証拠とも思っています。ですから、味だけでなく接客においても、一つたりとも手を抜いてはいけないと思っています。
レーズンウィッチは、贈答用にはもちろんですが、友人宅への手土産やおやつにもぴったり。
―レーズンウィッチに合う、おすすめのお飲み物を教えてください。
中村 コーヒ、紅茶、日本茶のどれにでもよく合います。紅茶ですと、アールグレイですね。柑橘系の紅茶も合うかと思います。日本茶ですと、濃いめに淹れていただくと、バターの香りがより一層感じられます。
お好きな飲み物と合わせて、好みの組み合わせを見つけてみるのも楽しそうです。
―今後の展望をお聞かせください。
中村 レーズンウィッチの新しいフレーバー「レーズンウィッチコーヒー」を展開しています。コーヒークリームがサンドされています。店舗のみの販売にはなってしまいますが、季節限定のフレーバーも展開中です。そのほかにも、バターサンドの部分だけを販売してほしいといったお声も多かったので、チョコがけしたバターサンドの販売も行っています。こちらの商品も好評です。このように、レーズンウィッチのベースの味とロゴに込められた思いを守りつつ、新しいことにも挑戦しています。レーズンウィッチのお菓子を通じて、多くの方へ喜びや満足感をご提供し続けていきたいです。
―貴重なお話をありがとうございました。
「レーズンウィッチ 3個入」
価格:¥500(税込)
店名:鎌倉小川軒 オンラインショッピング
電話:0120-157-041(10:00~17:00 月~土)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.ogawaken.jp/view/item/000000000007?category_page_id=raisinwich
オンラインショップ:https://shop.ogawaken.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
中村友(有限会社ケイワン 代表取締役)
1971年生まれ。明治大学卒業後、父が創業した有限会社ケイワンに入社。製造、営業の責任者を経て2017年代表取締役に就任。
<文/土屋香名子 MC/三好彩子 画像協力/ケイワン>