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まさに別格のお酢! 時間をかけた伝統製法から生まれる、まろやかな香りと深い旨みの「富士酢」

2024/02/16

毎日のように使う調味料は、素材や製法、味の違いがお料理のおいしさを左右します。今回、編集長アッキーが気になったのは、京都・宮津で130年にわたり伝統のお酢づくりをおこなっている株式会社飯尾醸造。20年以上の研究の結果生まれたプレミアムなお酢を中心に、商品づくりについて取材陣がお話をうかがいました。

株式会社飯尾醸造 5代目当主 飯尾彰浩氏
株式会社飯尾醸造 5代目当主 飯尾彰浩氏

―1893年に創業されて130年。伝統製法をずっと守っておられるのですか?

飯尾 広い意味では昔ながらの作り方をしていますが、細かく言えばそれをブラッシュアップして、新しい作り方を取り入れているというところです。たとえば、当社の「富士酢」には欠かせない「静置発酵」という発酵法はクラシックな作り方で、それに独自の作り方をかけ算して現在製造をおこなっています。

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1893年(明治26年)創業の飯尾醸造。「酢もともろみ」を醸す酒蔵も有し、自社内で伝統のお酢づくりを行っている。

―社長ご自身は大手飲料メーカーに勤務されてから、家業に入られたそうですね。

飯尾 大学院修了後、当時、世界ナンバーワンブランドとされた大手飲料メーカーに入社し、そこでトップの戦略を知った上で自社に戻りました。大手の真逆をするとうまくいくだろうという思いがありました。ですから、常に真逆をするというつもりで、マーケティングやブランディングをおこなってきたんです。

―真逆とはどういうことですか?

飯尾 飲料でもお酢業界でも、大手すなわち強者は他社の模倣をし、アレンジしながら、販売力でシェアを取っていくのが一般的な方法だと学んだのです。その真逆ですから、当社では大手や他社が真似したくなるような商品を作ろうと考えました。シェアは奪われるかもしれませんが、先駆者利益というものがありますし、品質も価格もより高いものを作るので競合しないというわけです。

―先駆的商品、アイデアということで最初に作られたのは?

飯尾 ピクルスをつけるお酢を開発しました。今から15年ほど前、日本はフードロスが多いと言われるようになりましたので、野菜のフードロスを減らすという目的で作ったのが「ピクル酢」という商品です。ひからびてしまったり、食べなかったであろう野菜をお酢に浸けることによって、賞味期限が伸び、味もおいしくなるという思いで開発したんです。我々が販売してから2、3年で大手メーカーが類似品を出し、結果的に野菜のフードロスは減っているようです。

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商品の栞には「自分の良心に照らして恥じないお酢を作りたい……」当代の父で4代目当主の飯尾徹氏の言葉が記されている。

―開発された商品を販売していくために、どのような工夫を?

飯尾 売り込んでいくのはあまり得意ではないんです。ですから、営業しなくても売れる仕組みを作ることを考えました。まずは良い商品を作ること、買いたくなる理由を作ること、希少性、手に入れられない状況を作ることでしょうか。

―買いたくなる理由とは?

飯尾 たとえばうちでは限られた鮨店にだけ納品しているお酢があります。現在国内外で150軒ほどだけ。そのお酢を使うとお鮨がおいしくなり、お店がミシュランガイドで星を獲るとか、予約の取れないお店になることの近道なんです。手に入りにくいけれど「分けてもらえませんか?」と言ってもらえる、そういう仕組みを形作るわけです。具体的には、われわれは「世界シャリサミット」というものを主催しているのですが、そこには世界中から鮨店が来られます。そこで、おいしい酢飯の作り方をお教えすると、酢が欲しいとおっしゃいます。「在庫がないから待っていただけますか?」と伝えると、売り込まなくても欲しいと思ってくださるようになります。もちろんコンテンツである商品そのものの良さが大事ですが、仕組みづくりも必要です。

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大量生産品とは一線を画す株式会社飯尾醸造のお酢の味と香り。手に入りにくい品だからこそ、使いたい気持ちはつのる。

―今回ご紹介する「富士酢プレミアム」について教えてください。20年来の夢だったと?

飯尾 もともと私が中学生くらいの時に、父(4代目当主・飯尾毅氏)が、当時作っていたものよりもさらに香りがおだやかなお酢を作りたいと考えていました。というのも、当時は量産品のお酢がほとんどで、うちのお酢のほうがまろやかなのに、量産品しか知らないお客様にとっては、ふだんと違う香りがするから、違和感からおいしくないと思われることが多かったんです。そこで、新たな香りのお酢を作ることが、私のミッションになりました。

―ミッションだったのですね。

飯尾 この大学のこの教授の研究室で、ある香りの成分を減らす研究をするよう父に言われ、大学院でも研究を続けましたが、遺伝子等の基礎研究ですから結果としては自社の商品開発には結びつきませんでした。飲料メーカーを経て、飯尾醸造に入社して商品開発をするようになり、そこでたどり着いたのが「富士酢プレミアム」です。父の思いから始まって20年ですね。

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4代目に始まる20年来の夢が実現し、誕生した「富士酢プレミアム」。

―こだわられた部分は?

飯尾 一般的にある、特定の香りの成分を減らしてほしいというのが、父の要望でした。でも、単に減らそうとすると、使用する原材料が減って安いお酢に近づいてしまいます。ですから、その特定の香りを減らすという発想をやめ、別の香りを増やしてマスキングする、見えなくするという発想に変えてできあがったのが富士酢プレミアムです。お米をこれまでよりも多く使って、特定の香り以外の香りを作り出すことによって、減らしたい香りを抑えることにしたわけです。地元丹後で栽培された無農薬のお米を、通常の8倍使うことで、他の香りが生まれるだけでなく、結果として味わいもやわらかくなりました。

―富士酢プレミアムの製法の特徴、一般的な作り方との違いについても教えてください。

飯尾 一般的なお酢は、発酵の期間が8時間から2日ほどですが、富士酢プレミアムの静置発酵という作り方の場合、お酢の発酵だけで100日から200日ほど、他社の約100倍の期間がかかるんです。このお酢は大量生産できませんが、まろやかでおいしい。長期熟成に関しても、一般には2週間くらい寝かせるんですが、うちでは最短で8か月から、長いものですと10年以上というのもあります。安いお酢は10年寝かせても変わりませんが、うちで作るようなお酢の場合は10年置くとさらにおいしくなります。

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お酢づくりには地元丹後の棚田で無農薬で育つ米を使用。富士酢プレミアムには、通常の8倍の米を使っている。

―時間がかかりますが、販売方法の工夫は?

飯尾 父の代ではたとえば1,000円の商品を500円で問屋に卸していましたが、私の代では2,000円の商品を2,000円で買ってくださるお客様に販売しています。そこで利益が増えると経営的によくなり、値上げが抑えられ、できあがりまでの時間が長くても借金をあまりしなくてもよくなります。
当然、2,000円でも喜んで買っていただける品質のお酢を開発することが前提ですが。

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飯尾醸造では「静置発酵」と呼ばれる昔ながらの製法でお酢を作る。
100~200日の時間をかけて、アルコール分が酢に変わってゆく。その後数ヶ月から数年熟成。

―富士酢プレミアムのおすすめの使い方は?

飯尾 一番はお鮨。江戸前の高級な鮨店でも多く富士酢プレミアムを使っていただいています。関西の押し寿司やいなり寿司は砂糖が多いイメージがありますが、富士酢プレミアムを使うと砂糖は要らないんです。お酢と塩だけで酢飯が作れます。一人3、4万円のコースを出される江戸前の高級鮨店のお鮨にはうちの酢が合っていると言っていただいていますので、お鮨が最も相性がいいかなと思います。酢飯に関しては、ご家庭でも高級店とほぼ同じものが作れると思いますよ。

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器に入れるとやわらかなお酢の香りがふわりと漂う。
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家庭でも酢飯作りに利用。酢飯に関しては高級鮨店と変わらないレベルのおいしさに。

―世界中から鮨職人さんが集まられる世界シャリサミット。始められた経緯を教えてください。

飯尾 サミットのテーマは「鮨のうまさを底上げする」。江戸前鮨の職人さんに対して、お鮨をもっとおいしくする方法があることをご提案する場です。具体的には私から科学的にこういう操作をすると、酢飯の食感や香りがよくなるとか、おいしさを保てるということをお伝えします。他にも醤油や海苔、包丁の研ぎ方など、日本のトップランナーの方々がブースを出してくださるので、そこで新しい知見を得ることもできます。多くの鮨職人さんは魚には詳しいのですが、シャリをはじめ魚以外のことを知る機会は少ないので、魚以外での知識を共有するのがこのイベントです。

―今後チャレンジしようとされていることは?

飯尾 2028年までに社員食堂を作ると社内で伝えています。いま社員食堂がどんどん減っていますが、だからこそ逆を行って、会社に来たくなる仕組みを作ろうと。テーマは「日本で一番原価の高い社員食堂」。福岡の醤油、岐阜のみりん、岩手の豚肉などうちでお取り寄せしているもの、地元の無農薬のお米など、顔が見えて、私が日本のトップクラスと思う商品を集めて社員食堂で食べてもらおうと思っています。ここで働きたいと思う人も増えるでしょうし、今働いている人たちの満足度も高まると思います。

―社外に対しては?

飯尾 生産量を増やすつもりはなく、たくさんの人に知ってもらうというよりも、一人ひとりのお客様に長く愛してもらえるようなものづくりとサービスが大切かなと思っています。広くではなく深く。田植えや稲刈りにお客様を招いて体験をしてもらったり、会社のビジョンを伝えたり、商品がおいしいだけでなく、この会社と一生関わりたいと思ってもらえるような取り組みをお客様にも社員にも伝えています。コロナ禍など何かあった時もサポートしていただいたように、会社が愛されるようなブランドづくりをこれからもおこなっていきたいと思います。

―貴重なお話をありがとうございました。

「富士酢プレミアム」900ml

「富士酢プレミアム」900ml
価格:¥2,592(税込)
店名:富士酢オンラインストア
電話:0772-25-0015(9:00~17:00 土日・祝日・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://iio-jozo.com/products/富士酢プレミアム360ml?variant=41924220289180
オンラインショップ:https://iio-jozo.com

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
飯尾彰浩(株式会社飯尾醸造 5代目当主)

1975年京都府宮津市生まれ。東京農業大学大学院修了後、大手飲料メーカーに入社。2004年に地元に戻り株式会社飯尾醸造入社。5代目当主としてブランディング、商品開発に携わり、伝統製法を大切にしながら、130年続く老舗を進化させている。

<文・撮影/大喜多明子 MC/髙橋美羽 画像協力/飯尾醸造>

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