170年の歴史を持つ株式会社安藤醸造は、地元・秋田県の伝統と自然の豊かさを感じさせる素材をふんだんに使った、味噌、醤油などを製造販売しています。日々の食事を豊かなものにしてくれる調味料の数々は、県内外の多くの人に愛され続けてきました。なかでも、今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった「しろだし」は、口に含めば豊かな自然と、秋田県の人の実直さが伝わってくるような逸品です。株式会社安藤醸造の代表取締役社長、安藤大輔氏にお話を伺いました。
角館の風土で育まれた手作りの味。手軽に料理をワンランク上に引き立たせる「しろだし」
2024/02/07
株式会社安藤醸造の代表取締役社長 安藤大輔氏
―御社の沿革についてお伺いします。
安藤 当社は1853年に創業して、今年でちょうど170年です。地主の傍ら、味噌、醤油、漬け物の製造を中心に行ってまいりましたが、戦後は味噌、醤油、漬け物のほうを、専業で行っております。私で6代目になり、間もなく息子が7代目になります。
創業以降、順調にやっていましたが、2011年に東日本大震災があり、2020年からはコロナ禍ということで観光客が減少。なかなか難しい時代がここ15年ほど続いております。さらには地元の人口減少というのも影響を受けていますが、そのなかでも、長くご愛顧いただいているお客様も多く、ここまでやってまいりました。地元の方には自宅用のほかご贈答用にも利用していただいています。観光でいらした方がご帰宅後に、通販で購入していただくことも多いです。
秋田県仙北市角館町で江戸時代からの伝統を受け継ぐ株式会社安藤醸造。
―無添加と天然醸造で味噌を作られています。
安藤 発酵食品は時間と手間暇かけて製造すると、おいしいものができ上がります。私どものところでは杜氏が自分で管理できる量だけを作っています。秋田県はお米もおいしい県で、食にこだわる人が多く、そういう方たちに向けておいしい発酵食品を作ろうとしていたら、無添加、天然醸造に行き着きました。ただ、天然醸造というのは手間暇がかかり管理も大変です。気候の影響を受けやすく、なかなか一筋縄ではいきません。秋田県は冬がとても寒いという点では発酵食品の製造に向いておりますが、やはり夏の暑さには気を使います。
おいしいものを少しでも多くの人に届けるため
必要に応じて機械を使うものの、無添加、天然醸造にこだわる。
―使われる素材のこだわりとは?
安藤 角館は三方を山に囲まれて二つの川が流れていますが、良質な地下水が豊富にあります。山に降った雪が溶けて川となり、あるいは地下水となって流れてくるわけですが、山に蓄えられた水が、樹木の恵を吸収して、地下水となって出てきますので、醸造に適した軟水となります。昔からこの地下水を利用して、味噌、醤油、漬け物の製造を行ってきました。
また、大豆はうまみと甘みがある秋田県のリュウホウという品種の物を使っています。秋田県は昔から大豆の産地でもあり、良質な大豆が取れるのです。
―特にお米もですね。
安藤 米は、専業農家と一緒に農業生産法人を作っていまして、その専業農家の方が田んぼの管理をやってくれています。米を作る理由としてはやはり、味噌、醤油、漬け物と一緒においしいご飯を食べてほしいというのがありました。せっかく、あきたこまちという素晴らしい銘柄が秋田県にあるので、あきたこまちを中心に作っています。また、当社では米麹を使った製品が多いので、その原料のお米にもこだわっていきたいというのもありました。
豊かな角館の自然に育まれ米がすくすくと育つ。
―最近の家庭用調味料の消費に変化があるとか?
安藤 醤油は、昔は家庭料理に欠かせない調味料でしたが、今は消費量が減少しています。お刺身やおひたしにかけて食べるという方は多いようですが、やはり食生活の変化で使われることが少なくなりました。そこで、私どもでは醤油を加工して、日ごろの食事に使いやすくしたタレやつゆといったものも製造販売しております。
―今回ご紹介の「しろだし」もその1つですね。
安藤 「しろだし」は、人気ナンバー1です。発売して18年ぐらいになりますが1Lに換算して18年間で120万本ぐらい販売しています。金額としては年間1億円ぐらいでしょうか。
幅広い世代、ライフスタイルのお客様にご利用いただいています。家庭で簡単においしい煮物やお吸い物、麺つゆなどを作りたい方や、ご自身のこだわりの味を実現したいというお客様に人気です。
一度使ったらリピーターになったという方が非常に多くいらっしゃいます。私どもは店舗での直売がほとんどですが、店頭で試飲してお買い求めになった方から、その後も重ねて購入いただくことが多いです。
やはり魚醤と醤油の旨味、それからいろんなだしの旨み、そういったものの味をご理解いただいているのだと思います。
しろだしは360ml、1L、1.8L入りがある。
―「しろだし」を使ったおすすめのレシピを教えてください。
安藤 本当に何にでも使える万能だしで、だし巻き玉子、稲庭うどん、おでんなどさまざまな料理に合います。うちの店頭では10倍に薄めて試飲していただいておりますが、実はシンプルに味わっていただくのが一番。「しろだし」を薄めてネギなどを散らして、そのまま飲んでいただくと、おいしさを直に知っていただけると思います。
「しろだし」はだし巻き玉子やうどん、和風パスタなど
さまざまな料理と相性が抜群。
―イワナを使った魚醤を使用されていますが、他の魚醤との違いを教えてください。
安藤 秋田県には昔から、しょっつると呼ばれ親しまれている魚醤があります。しょっつるといえば通常、海の魚を使用しますが、私どもの魚醤は渓流魚のイワナを使っています。角館は内陸の山間にありますので、海の魚じゃなくて渓流魚を使ったらどうかと。
非常にきれいな水で育ったイワナで、海の魚を使った魚醤に比べるとすっきりとした味わいです。開発に関しては、渓流魚で魚醤を作っているところがなかったので、海の魚のしょっつるを参考にしながら試行錯誤して作り上げました。
昆布だしとともに風味豊かなしょっつる(魚醤)が味の決め手。
―また、御社は飲食店も経営されています。
安藤 食事処の「土鍋屋」と、ちまきや豚まんの「せいろ亭」です。現代の生活スタイルにおいては、なかなか基礎調味料をご自宅で使っていただく機会も減っているので、ならば、当社の味噌や醤油、漬け物、お米などをすぐに食べられる形で提供したいと思いました。そこで食べていただいて、気に入っていただけたら、下が販売所になってますので、家でも作ってみようと商品に興味を持っていただけたら嬉しいです。
―最後に今後の御社の展開についてお聞かせください。
安藤 最近は海外のお客様が角館によく来られますが、店頭で買っていただく商品の中で味噌が非常に人気です。海外では天然醸造長期熟成の味噌って、なかなか手に入らないとか。今後はもっと海外のお客様に買っていただけるような仕組みを整えていければと思っています。
「しろだし」については、直販と通販で細々とやっていますが、できるだけ全国のお客様にも、購入していただけるようなやり方ができればと考えています。
―素敵なお話をありがとうございました。
「しろだし」(1L)
価格:¥1,577(税込)
店名:安藤醸造
電話:0187‐53‐2008(9:00~17:00 日曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.andojyozo.co.jp/marujyobannodashi/shirodashi/shirodashi1l/
オンラインショップ:https://www.andojyozo.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
安藤大輔(株式会社安藤醸造 代表取締役)
1959年秋田県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒。全国農業協同組合連合会を経て1988年入社。2007年に代表取締役就任。秋田県味噌醤油工業協同組合理事長。一般社団法人田沢湖角館観光協会会長。
<文/平野智美 MC/橋本小波 画像協力/安藤醸造>