
寿司飯が格段においしくなる! 国産木曽椹(さわら)の「寿司桶」
2025/11/05
今回編集長アッキーこと坂口明子が注目したのは、良質な木材の産地で知られる長野県木曽郡産の寿司桶。創業80年の老舗が、伝統の技に現代の手法を組み合わせ、すべて自社工場で生産しています。志水木材産業株式会社 代表取締役の志水弘樹氏に、取材陣がお話を伺いました。

志水木材産業株式会社 代表取締役の志水弘樹氏
―創業からのあゆみをお聞かせください。
志水 戦争に行ってけがをして戻った祖父が、1944年に創業しました。このあたりは山の中なので、当時の主な仕事は林業でしたが、けがでできなくなり、製材業を始めたそうです。当初は製材業のみで、製品づくりまではしていなかったと思います。1950年代、公団住宅が続々と建ち、木の風呂桶を作って納めるようになって1955年に会社を設立しました。寿司桶やお櫃(ひつ)、木の風呂桶、そして養蜂資材が当社の主力商品です。

製材業からのスタート。
―養蜂資材とは珍しいですね
志水 養蜂業の本場、岐阜県に近い事もあり、創業のころから作っています。昔から、趣味で養蜂をされる方が多くいらっしゃいますし、最近は地方都市のビルの屋上で蜂を飼っているところも増えましたね。
―志水社長のご経歴は?
志水 国立の長野工業高等専門学校で土木工学を専攻し、卒業後は建設会社に就職しました。私は次男でしたし、家業を継ぐつもりは全くなく、実は何をしているかもよく知りませんでした。ところが、長男である兄も継げないと言い出し、話し合いの末、最後はじゃんけんで、私が継ぐこととなったのです(笑)。
入社後は、とにかくすべての現場に入りました。製材と木工がありますので、材料となる木を買うところから覚える必要があったのですが、当時父は町会議員で議長をしており、ほとんど会社を不在にしていましたから教わることはできなかったのです。材木の買い付け、製材の仕方、機械の使い方、物づくり……周囲の人に聞きながら、必死に手足を動かしてコツコツと学びました。
―特にご苦労されたことは?
志水 入社後驚いたのは、職人たちの賃金の低さでした。自分が勤めていた会社の水準と大きく異なり、工場長すら、退職前の私の給料より安かったのです。これでは働きがいもないし、やる気が起きないだろう、と……。しかし、給料を上げるには商品の値段を上げなくてはならず、お客様に理解いただくのが一番大変でした。適正価格まで引き上げるのに5年くらいかかったでしょうか。

熟練の職人技なくてはできない製品たち。
―寿司桶についてお聞かせください。
志水 作り始めたのは45年ほど前だと思います。1967年に会社が火事で全焼して、3~4年かけて復興したのですが、公団の風呂桶需要が一段落したこともあって新しいことを始めようと、桶作りの機械生産を始めました。そもそも専用の機械が存在しないので、全ての機械を特注で作ったと聞いています。
国産の寿司桶の材料は、私たちが使っている椹(さわら)と、杉、北海道では樅(もみ)の3種類がほとんどだと思います。これは私の主観ですが、寿司桶やお櫃には、椹が最も適しているのではないでしょうか。香りが薄く、ごはんを邪魔しませんし、柔らかいのが長所です。桶は、木を「タガ」という金属の輪の内側に縮めてはめるので、柔らかいほうが作業しやすいのです。桶に適した木材がこのあたりでよく育つことも、作り始めたきっかけになりました。
地元に育つ椹を、丸太の仕入れから製品まで自社工場で一貫加工しています。自社サイトを見ていただくと、職人の顔まで出していますから、誰がどのように作っているかがわかって安心してご購入いただけると思います。



丸太の仕入れから加工、組み立てまですべて自社工場で行っている。

機械作業と職人技を駆使して出来上がる寿司桶。
―焼き印やレーザーで名入れ等もできるとか?
志水 ノベルティとして使われることも多く、多くの企業様とコラボ商品も作ってきました。もともと、一般消費者向けの流通が非常に少なく、量販店や百貨店より、プロが使う道具店でのお取り扱いが多いのです。一般の方は、自社のECサイトからご購入いただいています。
寿司桶のラインナップはシンプルで、蓋の有無とサイズのみがお選びいただけます。サイズは細かく設定していて、0.8合用の21cmから3cm刻みで54cmまであり、それ以上のサイズも業務用で10升用90cmまで取り揃えています。ご家族構成に合わせて選んでいただけるといいかと思います。

桶のみ、蓋付き、蓋のみで購入できる。
最近では寿司桶を使うご家庭が少なくなっていますね。職場実習見学に来る地元の高校生に寿司桶を見せると「洗面器」と言われることも……。聞けば、プラスチックのボウルですし飯を作っているとか。それでも作れますが、やはりできあがりが全く変わります。程よく水分を飛ばしてふっくらおいしくなりますから、ぜひ寿司桶を使っていただきたいですね。
―今後の展望をお聞かせください。
志水 寿司桶やお櫃(ひつ)の需要は減少傾向にあり、廃業に追い込まれるメーカーが増えています。職人もどんどん減っています。当社としても、当然、事業を継続することが目標ではあるのですが、最終的には最後まで生き残って、生産シェア日本一にしたいと思っています。
木のお風呂も、需要が減ってはいますが、実は、自社サイトには、個人のお客様からの問い合わせが多く寄せられます。最近のビルダーは、木の風呂桶を扱うことが少ないので、施主の要望があっても断るケースが多く、直接弊社に問い合わせてくださるのです。木の風呂桶を、ユニットバスに設置できることをご存じですか? それができるビルダーもあまりいないので、私達が自ら工事までするのですが、「うちのユニットバスにもヒノキ風呂を入れられますか?」という問い合わせは非常に多いです。


受注生産の木の風呂やベビーバス「うふっ湯桶」にも一定のニーズがある。
寿司桶やお櫃(ひつ)にしても、業務用のシェアは比較的高いと思いますし、そのうちの2~3割は海外です。まだアメリカなどでも、和食や寿司店の新規オープンは続いていますから、他の国にも裾野を広げられたらいいですね。
今、電気代や機械設備などさまざまな値上げが続いています。人件費も、この山奥ではある程度出さないと人材が集まりません。ですが、1944年から続くこの会社を、なんとか守り、20年、30年と継続できるよう、しがみついてやっていこうと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました!

「寿司桶(飯台 飯切り)」(21cm/約0.8合~)
価格:¥3,850~(税込)
店名:寿司桶(すし桶)、おひつ、檜風呂(ヒノキ風呂)の製造販売は木曽の志水木材
電話:0264-58-2011(平日8:00~17:30)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shimizumokuzai.jp/goods_cat/sushioke_all
オンラインショップ:https://shimizumokuzai.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
志水 弘樹(志水木材産業株式会社 代表取締役)
長野工業高等専門学校で土木工学を学び、建設会社に就職。4年後、家業である志水木材産業株式会社へ入社。2004年より現職。
<文/植松由紀子 MC/藤井ちあき 画像協力/志水木材産業>




























