菊水堂_top

工場直送、できたてのおいしさでじゃがいもを味わう「できたてポテトチップ」

2023/03/02

知る人ぞ知るプレミアムポテトチップ。もはやスナック菓子でなくじゃがいも料理とも感じられるのは、口に入れるとまず、フレーバーや調味料の味でなく、しっかりとしたじゃがいもを感じられるからかもしれません。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった有限会社菊水堂 代表取締役 岩井菊之(きくじ)氏に、取材陣が伺いました。

有限会社菊水堂 代表取締役 岩井菊之氏
有限会社菊水堂 代表取締役 岩井菊之氏

―創業からポテトチップメーカーとなるまでの歩みをお聞かせください。

岩井 菊水堂としては、1953年に父が瓦せんべいの製造販売を開始したのが始まりです。それ以前はさつまいもの羊羹を販売していたようです。

あるとき「温泉旅館で、じゃがいもをスライスして揚げたお菓子がおいしいらしい」という噂を聞きつけて、トライ。さつまいも菓子販売の経験から、薄切りにして砂糖をかけるなど試行錯誤したようです。そうこうしているうち、市場にポテトチップが出るようになり、現在のようなポテトチップを製造販売するようになったのが1964年でした。

その4年後、父はアメリカへ渡って製造設備を視察。自動フライヤーを導入し、オートメーション化による大量生産を始めました。それまでは丸鍋をいくつも使って揚げていて、丸鍋を1人いくつ担当するかというマンパワーありき。とても大量生産と呼べるものではありませんでした。父がアメリカで見てきた連続フライヤーは、当時日本にはなかったと思います。

えびせん、スナック菓子、ポップコーン、瓦せんべいなど、ほかにもいろいろ作っていましたが、設備の老朽化とともに徐々に減らし、2000年に私が社長を継いでからはポテトチップに絞ることにしました。

―岩井社長入社までのご経歴は?

岩井 父との約束で、家業を継ぐことは決まっていました。ですから父は大学進学に反対でしたが、母が、会社にもしものことが起きた場合、薬剤師の資格があれば路頭に迷わないのではないかと提案してくれて、薬学部に進学。卒業後4年で菊水堂に入ること、まずは関西の製薬会社で働くことなど、父の指示通りにしてきました。

その父の指示で、ネット通販を最初に始めたのは1996年。当時から採算は合いませんでしたが、2000年に入って物流の価格が変動し、商品と送料の価格が同じくらいになり、一旦終了しました。

―ポテトチップへのこだわりは?

岩井 国産のじゃがいもをスライスし、米油とパーム油を混ぜたフライオイルで揚げ、沖縄の焼き塩で調味するというシンプルな工程です。輸入のものや遺伝子組み換えのじゃがいも、うまみ調味料などの食品添加物は一切使いません。

フライヤーは、フライ油の中を炎が通り抜ける直火炊き方式です。昔は同型式もありましたが、今は全国に2台しか残ってないんじゃないかな。扱いは難しいですが、じゃがいもの風味が強く出るんですよ。お客様からは、「懐かしい味がする」「昔食べていたポテトチップだ」「じゃがいもの味をしっかり感じられる」などのお声をいただいています。

菊水堂_2
控えめな塩味でじゃがいもの風味を強く感じられる菊水堂のポテトチップ。

―社長ご就任からの歩みは?

岩井 大きな試練は東日本大震災でした。うちの被害としては、幸いにもコンベアがずれたり洗い水がはねたりといった程度。その後は余震のたびにラインが自動停止して作業が滞りましたが、別のところに大きな問題がありました。

原料であるじゃがいもが、北海道から届かない、フライオイルやパッケージのメーカーが被災して納品されないという状況に陥りました。多少のストックはありましたが1か月分程度。いつ停電が起こるかわからない不安もありました。さらには、原発事故の影響でスキー客が激減。当時、スキー客向けの土産物としてご当地ポテトチップのような商品を出していましたが、そのマーケットがなくなってしまったのです。

従業員は守りたい、何かしなくてはと考えていた矢先、ネット通販のコンサルタントである鈴木徹さんが声をかけてくれたのです。まずは破格値でWebサイトをリニューアル。やめていた通販も、ダメ元で再開することにしたのです。

―なぜダメ元のお気持ちだったのですか?

岩井 ポテトチップは配送が大きな課題なのです。空気充填して袋に入れるのでかさばる、それでいて、湿気やすく割れやすい。配送するのではなく、できたてを運べる範囲で届けるのが当たり前だと考えていたからです。

鈴木さんの提案を受けて、私は「作る人」に徹して「売る」を鈴木さんに任せることにしました。私は「できたてのポテトチップを届けたい」、鈴木さんは「『できたてポテトチップ』という商品を届けたい」そんな想いの差が自然と役割分担を明確にしたのだと思います。

―株式会社トポロジー 代表取締役の鈴木徹さんにも伺います。どのようなお気持ちで通販の提案をされたのですか?

鈴木 良い商品だったので、売り方を工夫すれば必ず売れるという確信がありました。といっても、商品に関して私がしたのは、袋と箱のデザインを変えただけ。賞味期限を14日間として、製造日当日に出荷するシステムを構築しました。

菊水堂_3
中身が透けて見えるパッケージへとリニューアルしてネット通販をスタート。

―賞味期限がたったの2週間のポテトチップは確かに珍しいです。

鈴木 フライオイルに使っている米油は、日本人の口に合うおいしさがありますが、味の変化や風味の低下が速いのです。食品、特に揚げ菓子は生き物ですからね。賞味期限の短さは、大手との差別化にもつながり、できたてを食べられるのは菊水堂だけ、14日しかないおいしさというブランディングにもなっています。

岩井 しかし実は、当日出荷はリスクも高いんですよ。配送トラックを待たせて品質チェックをすることもしょっちゅうですし、チェックで引っ掛かり、一旦積んだ商品を下ろしたこともあります。トレーサビリティの意味でも、時間管理は徹底しています。

菊水堂_4
賞味期限は製造日から14日。
製造日表示の「CL43」は時間を示している。

―商品には、産地情報を記載したチラシが同梱されています。

岩井 お客様から「前回と味が違う」というクレームが非常に多かったのです。その時季に獲れるおいしい品種を、北海道から九州までいろいろなところから仕入れますから、1年中同じではありません。余計な調味料を使わないのでじゃがいもそのものの味がダイレクトに出ます。以前からお客様宛の手紙を入れていたので、原料の情報を一緒にお伝えすることにしました。産地契約していて、品種も生産者も収穫日もすべてわかりますからね。

鈴木 これも実は差別化につながっているんですよ。大手メーカーは逆に味を揃える作り方をしていますよね。原料が変われば味が変わるのが当たり前で、そこが菊水堂の強みにもなりました。

菊水堂_5
届いたポテトチップの製造日やジャガイモの産地、
品種などがわかる特別感。

―ネット通販以外の販売チャネルは?

鈴木 2015年3月に、マニアックな一般人がタレントさんにプレゼンをする全国放送のテレビ番組で紹介してもらった際、爆発的に売れました。それを機に、健康志向の商品を扱うコンビニエンスストアとのお付き合いが始まり、今は、数量限定で月に数回置いてもらうお店がいくつかあります。

岩井 大手メーカーのような大量生産はとてもできませんし、できたてを食べていただくには工場の規模としても限界があります。「当日出荷」で助かっている面もあるんですよ。できた商品をストックしておく広い倉庫がうちにはありませんから(笑)。

菊水堂_6
早ければ製造の次の日に届く。
1枚1枚表情が違い、原料のじゃがいもを感じられる。

―コアなファンも増えているとか?

岩井 ネット通販リスタート10周年の記念にプレゼント企画をしたのですが、10年間で150回以上購入されている方が100人以上いました。

菊水堂_7
できたてのおいしさは格別で手が止まらない。

―今後の展望をお聞かせください。

鈴木 同じ埼玉県内にある製麺会社とコラボして、埼玉県の名物となりつつある肉汁うどん味のポテトチップを作り、2023年の2月から販売をスタートしました。実は、日本にポテトチップを年間通して製造する会社は大手を含めて1桁なのです。これからも、菊水堂らしさを大切にしながら、おいしいポテトチップを送り出せたらいいですね。

岩井 私は父に会社を継ぐことを半ば強制されましたが、息子には継がなくていいと言ってきました。私と同じく薬学部を出た息子は、製薬会社に勤めていましたが、3代目を継ぐことになりました。今は業界や経営について勉強中ですが、人脈や知見を広めてくれることを願っています。

どうやって菊水堂の商品ができているのか、工場見学にも気軽に来てください。ポテトチップは嗜好品なので、ぜひとも楽しみながら味わってほしいと思っています。

――本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

できたてポテトチップ(120g)3袋×2箱

「できたてポテトチップ」(120g)3袋×2箱
価格:¥1,980(税込)
店名:できたてポテトチップの菊水堂
電話:048-598-4086(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kikusui-do.jp/SHOP/11348/11349/list.html
オンラインショップ:https://kikusui-do.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
岩井菊之(きくじ)(有限会社菊水堂 代表取締役)

1957年東京都渋谷区生まれ。1980年東京薬科大学薬学部第一薬理学教室卒業、薬剤師の資格を取得。1984年東京製菓学校洋菓子科卒業。製薬会社等に勤務後の1984年、父・岩井清吉が1953年に創業した菊水堂に入社。2000年代表取締役に就任。全日本菓子協会代議員、日本スナック・シリアルフーズ協会監事、(一財)いも類振興会元監事、日本いも類研究会副会長。植物分類、山登り、洋菓子の食べ歩きが趣味。

<文・撮影/植松由紀子 MC/丹野優紀乃 画像協力/菊水堂>

OFFICIAL SNS

Instagramでハッシュタグ#お取り寄せ手帖を検索。

  • Instagram
  • Facebook
  • Twitter