憧れはあるものの、ハードルの高さを感じるヨーロッパのアンティーク。今回、編集長アッキーが気になったのはお酒の時間にぴったりの「エミール・ガレ 小花文小酒杯」と「オールドバカラ 薔薇文リキュールボトル」です。輸入販売業者のアンティックかとう 代表取締役の鈴木尚志氏に、アンティークの魅力や手に取る喜びを取材陣が伺いました。
アンティーク酒器を日常に。「エミール・ガレ 小花文小酒杯」と「オールドバカラ 薔薇文リキュールボトル」
2024/05/24
アンティックかとう 代表取締役の鈴木尚志氏
―家業についてお聞かせください。
鈴木 明治初期に名古屋で七宝細工を制作・販売していた頃、ツーリズム人気が高まる京都に移ったのが家業の始まりです。当時は神戸や大阪に停泊中の外国人が京都を観光し、新門前通りでお土産を買うのが定番でした。1970年代に円高の影響で外国人観光客が減り、日本土産の需要が落ちたことで商売を変えていったと父から聞いています。
父は和物の骨董屋を経営していたので、店に出せない状態の骨董皿を自宅で使用するなど、身の回りには常に骨董品がありました。品の良し悪しや製作年代を自然に理解する環境でしたが、幼少期の僕は新しいものや流行り物の方が好きでしたね。
―西洋骨董の輸入を始めたのは鈴木さんですか?
鈴木 父の体調が優れないため本店を継いだのですが、自分が本当に関わりたいジャンルは和物ではありませんでした。学生時代から海外旅行が好きだったので、ヨーロッパに面白いものを探しに行ったところ、ルネ・ラリックというガラス工芸作家の作品に出会ったのです。旅行のたびに少しずつアイテムを仕入れたところ、売れ行きが良く、ビジネスとしての可能性も感じました。
ラリックは有名作家でありながら、多数の企業とコラボレーションしています。まるでインダストリアルデザイナーのような作品づくりも、他の作家と異なる魅力です。コラボ作品を代表する香水瓶や、1930年代の車に見られた飾りはアートとして楽しめるほか、弊社では実用的なテーブルウェアも取り扱っています。
―社名やギャラリーについてもお聞かせください。
鈴木 当社は、自社で運営しているギャラリーの情報発信をしています。世界唯一のルネ・ラリック専門ギャラリーが「ギャルリーオルフェ」、その他の商品を扱うのが「アンティックかとう」「ノルディック」です。
ルネ・ラリック専門の「ギャルリーオルフェ」店内。
「ギャルリーオルフェ」は、店内2階でルネ・ラリックのオリジナル作品を展示・販売し、1階のコンセプトを「日常で使えるアンティーク」としています。日本の西洋骨董店には「なんでもあり」の店が多いのですが、僕自身はコンセプトを作りたかったのです。さらに、アンティークの間口を広げるものとしてアールデコ時代の品を集めました。アールデコは1920~30年代に流行した装飾様式で、ラリックの作品とも関連性も強くあります。弊社ではさらに範疇を広げて「20世紀の装飾美術」というカテゴリーにしています。
―アンティークとはどういうものとお考えになっていますか?
鈴木 破損や消耗しない限り、アンティークは世の中におけるバリューがあまり崩れないものです。先祖代々使える上に、家族から受け継いだものをお店に売ることもできます。自分のものにするというより、「お金を出して一時期に預かる」と考えていただく方がわかりやすいかもしれません。人は好みが変わることもあるので、マーケットに戻したいときは弊社をはじめ業者に委託してください。30年以上やっていると「次に必要とする人にお譲りできる仕事」として、よろこびを感じる出来事がたくさんあります。
―「エミール・ガレ 小花文小酒杯」と「オールドバカラ 薔薇文リキュールボトル」について教えてください。
鈴木 弊社はガレの初期作品を多く扱っていて、なかでも酒器が充実しています。初期のガレはエナメル彩が特徴的で、小花文小酒杯は小ぶりながらも独特の表現を堪能できます。
特別な気分に浸れる「エミール・ガレ 小花文小酒杯」。
グラスによって異なる底部の厚みや色彩を楽しんで。
オールドバカラはその名のとおり、1890年から1900年頃の古いバカラです。本来のリキュールセットはボトル・グラス・トレーが揃ったものですが、ドリンクを入れて楽しめるボトル単体を求める方は少なくありません。その他にもバカラ製品は、1930年代から50年代に量産されたものや、ハンドカットの高級ラインなど、幅広く揃っています。
アール・デコの洗練されたラインが美しい「オールドバカラ 薔薇文リキュールボトル」。
―今後の展望を教えてください。
鈴木 これからも自分が本当に好きなものだけを扱い、ギャラリーのセレクトに共感してくださるお客様を大事にしたいと考えています。弊社のお取り扱い品は、僕が海外で直接買い付けたものです。いつでも簡単に調達できるものではなく、物がないからといって適当なものを仕入れることもしません。自分の目の届かないところまで企業が大きくなると、そうしたバランスが崩れてしまうと思うのです。
―貴重なお話をありがとうございました!
「エミール・ガレ 小花文小酒杯」
(H:5×W:4×D:4(cm))参考商品
店名:アンティックかとう
電話:075-561-1580(10:30~18:00 火曜休み)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://antique-kato.com/antique/art_nouveau/item87737
オンラインショップ:https://antique-kato.com/
「オールドバカラ 薔薇文リキュールボトル」
(H:19.8×W:10.5×D:10.5(cm))
価格:¥132,000(税込、送料込)
店名:アンティックかとう
電話:075-561-1580(10:30~18:00 火曜休み)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://antique-kato.com/antique/decorative_glasses/item84452
オンラインショップ:https://antique-kato.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
鈴木尚志(アンティックかとう 代表取締役)
1959年京都生まれ。1985年から、家業である骨董品店を父と共に携わる。1995年に会社代表となった際、扱う品種を日本ものの骨董品から欧米のアンティークものに変更。そのなかでも、20世紀装飾美術品というさらに限定した時代のものを扱っている。
<文/マスダアヤノ MC/山口優花 画像協力/アンティックかとう>