ひと息いれるときや疲れを感じたときは、甘いおやつがほしくなるものです。素材の風味を生かしたやさしい味わいのお菓子なら、お腹を満たしてくれるだけでなく、心も癒やしてくれるに違いありません。
今回、編集長アッキーが注目したのは「川越ぽてとクッキー」です。サツマイモの風味が生きた味わいと本物そっくりの見た目がどのように生まれたのか、小江戸と呼ばれる埼玉県川越市でお菓子の「紋蔵庵」を営む有限会社亀屋紋蔵、代表取締役の小泉昌弘氏にお聞きしました。
2024/05/21
ひと息いれるときや疲れを感じたときは、甘いおやつがほしくなるものです。素材の風味を生かしたやさしい味わいのお菓子なら、お腹を満たしてくれるだけでなく、心も癒やしてくれるに違いありません。
今回、編集長アッキーが注目したのは「川越ぽてとクッキー」です。サツマイモの風味が生きた味わいと本物そっくりの見た目がどのように生まれたのか、小江戸と呼ばれる埼玉県川越市でお菓子の「紋蔵庵」を営む有限会社亀屋紋蔵、代表取締役の小泉昌弘氏にお聞きしました。
―御社は創業が1865年、これまでの歴史を教えていただけますでしょうか。
小泉 発祥の地(埼玉県入間郡古谷村)は川越のなかでも郊外でしたので、創業当時は農業と家業の兼業でした。家業ひと筋になったのは1986年に会社を設立した頃で、当時発売してヒットしたのが現在も販売している名産さつまいもを使った「川越ポテト」というスイートポテトです。1991年には屋号を「紋蔵庵(もんぞうあん)」にしました。その頃はNHKで放送された大河ドラマ「春日局」が反響を呼び、川越の「喜多院」というお寺にある「春日局化粧の間」を見にくる観光客が増えた時期で、当社も喜多院の門前にお店を出させていただくことができました。
その後、2009年にNHKの朝ドラで川越を舞台にした「つばさ」が放送されるにあたって、NHKの方が「お菓子に『つばさ』という名前を使ってもいいですよ」と言ってくださり、「つばさかりん」を発売しました。おかげさまで好評で、当社の看板商品のひとつとなっています。
―やはり、ドラマの影響は大きかったですか?
小泉 多くのお客様にお越しいただけました。とはいっても、紋蔵庵のお客様は観光客よりも地元の方が多く、ご挨拶に行くときの手みやげなどにお使いいただいています。川越にお住まいのお客様がよそへお出かけになるときに、「川越には自信を持っておすすめできるお菓子があるんだよ」と「つばさかりん」を選んでくださっています。
―地元の方に愛されていらっしゃるのですね。企業として大切にしていることとは?
小泉 お菓子は、頑張った自分へのごほうびや、手みやげにするために買うことが多いと思います。嫌なことやつらいことがあったときも、おいしいお菓子を食べると心が慰められますよね。誰かに差し上げるときも、「喜んでもらいたい」という気持ちで購入されるのではないでしょうか。私が持ち続けているのは「お菓子を買うことで、幸せな気持ちになっていただきたい」という思いです。
それに、お菓子を買いにいくときはワクワクしたり、楽しい気分になったりします。2021年に開催された東京オリンピックの際、「おもてなし」という言葉が流行しました。お客様をもてなして喜んでいただくには、おいしいお菓子を作るのはもちろんのこと、お店のしつらえもできていなくてはいけません。
小泉 加えて、販売スタッフの装いがきちんとしていることも欠かせないと思います。さらにもう一つ、振る舞いも大切です。会社では、「お客様をお出迎えするときに喜んでいただける振る舞いをしているか、期待を裏切らない振る舞いができているかを考えながら仕事をしよう」と話しています。
―今回ご紹介する「川越ぽてとクッキー」について教えてください。
小泉 当社の商品は、もともと日持ちのしない生菓子ばかりでした。そのうち「つばさかりん」などの焼き菓子も扱うようになったのですが、それでも賞味期限は一週間ほどです。「もっと日持ちするお菓子を作らなければ」と思っていたとき、やはり、川越の特産品であるさつまいもを使ったお菓子を希望されるお客様が多いことが分かりました。そこでさつまいもを使い、多くの方に食べていただけるお菓子として、クッキーを考えました。
―一番こだわった点を教えてください。
小泉 見た目がさつまいもの輪切りに似ているため、発売当初は「本物のおいもだと思った」とよく言われました。さつまいもを使ったクッキーを販売している会社はほかにたくさんありますが、当社のクッキーはとりわけ本物に似ているのかな、と思います。食べておいしいことも大事ですが、手みやげとして持っていきたくなるような、他社にない見た目にすることを心がけました。
―確かにインパクトがあります。味や食感の特徴も教えてください。
小泉 見た目どおりにさつまいもの風味を連想してもらえるよう、気をつけました。さらに食べておいしいと思っていただくために、原材料にはよいものを使っています。サクサク感を出すには油脂が重要なので、その部分にはこだわりました。さつまいもの皮に見える部分には、紫芋パウダーを使用しています。
―開発にあたって難しかったことなどを教えてください。
小泉 さつまいもの皮にあたる紫色の部分がうまくできなかったり、真ん中のゴマが移動してしまったり、見た目の完成度を高めるのに苦労しました。見た目がさつまいもらしくならないと、他社の商品との違いが分からなくなってしまいます。また、直径が大きめの割に薄いため、割れるのを防ぐために原材料の配合を変えるなども工夫をしました。割れていると贈り物にならないですし、自分で買うにしても縁起が悪いので、気をつけています。
―「割れやすいから厚くしよう」とはならなかったのですね。
小泉 はい、どこにでもあるようなクッキーでは価値がないですから。それに厚くすると、食べたときのボリュームが出過ぎてしまうと思います。
―お客様からの反響で印象的なものはございますか。
小泉 やはり「本物のさつまいもだと思った」というお声ですね。本物と見間違えるほどのものを作れてよかった、と思いました。
―「川越ぽてとクッキー」や「つばさかりん」以外のおすすめ商品を教えてください。
小泉 新商品として、さつまいものあんを入れた「いも大福」を作りました。こちらは日持ちが短いので、販売は店舗のみです。生菓子を長持ちさせるには添加物を加えたり、砂糖をたくさん入れたりしなくてはなりません。当社では日持ちを長くすることよりも、さっぱりした甘さのお菓子を提供することを心がけています。
―さまざまな商品を手がけていらっしゃるのですね。
小泉 当社は和菓子屋ですが、チョコレートを使ったものなど、洋風のお菓子も販売しています。和菓子と呼ばれているものには、はるか昔に中国から伝来してきたものが少なくありません。カステラも今の日本では和菓子に分類されますが、もともとは海外から長崎に入ってきたものです。ケーキも日本のものと、アメリカやヨーロッパで作られているものでは味が違います。海外が発祥のものでも、時代の流れとともに日本人の口に合うようにアレンジされてきたお菓子は、もはや和菓子と表現してもいいのではないでしょうか。
実際に、今は和菓子と呼ばれているお菓子も、海外の文化を取り入れることで進化や成長を続けています。個人的には、これからは和菓子にも洋の素材を使うことが当たり前になり、和と洋の境目がなくなっていくのかな、と感じています。
―今後の展望について教えてください。
小泉 これからもおいしくて見た目も楽しめるお菓子を作り、「紋蔵庵に来てよかった」と思っていただける接客をして、お客様に喜んでいただきたいです。企業の規模を大きくすることよりも、お菓子を食べて楽しく幸せな気持ちになっていただくこと、お客様に元気になっていただけるような商売を続けていくことが大切だと考えています。
―ありがとうございました。
「川越ぽてとクッキー」(4枚入)
価格:¥615(税込)
※価格とパッケージは変更になる可能性があります。
店名:お菓子の紋蔵庵
電話:049-235-1857(9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://monzouan.com/kawagoepotetocookie/
オンラインショップ:https://monzouan.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小泉昌弘(有限会社亀屋紋蔵 代表取締役)
1963年生まれ。高校時代から家業を手伝い、高校卒業後家業を継ぐ。
<文・撮影/坂見亜文子 MC/木村彩織 画像協力/亀屋紋蔵>