300年の伝統と新潟・村上の風が育む熟成の旨み!「塩引鮭(しおびきざけ)」と「鮭の酒びたし」

2026/05/12

今回、編集長のアッキーが注目したのは、熟成の旨みが口いっぱいに広がる「塩引鮭(しおびきざけ)」と、じっくり歳月をかけて熟成させた「鮭の酒びたし」です。

ひと口食べれば、新潟県村上市の冬に吹く、冷たく湿った風によって凝縮されたアミノ酸の旨みが広がります。その背景には、江戸時代から300年以上続く「鮭を慈しむ」という村上独自の製法と、自然の力を最大限に活かす作り手の情熱がありました。取材スタッフが、株式会社永徳 代表取締役社長の本間光浩氏にお話を伺いました。

株式会社永徳 代表取締役社長の本間光浩氏

―まずは、新潟県村上市における鮭の深い歴史、そして御社の歩みについて教えてください。

本間 村上と鮭の関わりはきわめて古く、平安時代にはすでに、京都の朝廷に鮭を献上していたという記録が残っているほどです。特にこの地を流れる三面川(みおもてがわ)は鮭の宝庫として知られてきました。江戸時代中期には、村上藩の下級武士であった青砥武平治(あおとぶへいじ)が、鮭が生まれた川に帰ってくる性質に着目し、いずれ生まれた川に戻ってくる鮭の稚魚を増やすため、採捕区域・時期の制限や人為的に川の流れを整備して鮭が産卵しやすい環境を整えた「保護増殖事業」である、「種川の制(たねがわのせい)」を確立しました。

この事業による収益は、村上の若者たちの学費にも充てられました。鮭が人を育てたと言っても過言ではないほど、この地域と鮭の絆は深いのです。弊社は、そのような歴史を持つ村上の地で、1934年に小売店として開業しました。代々、先人たちが築き上げてきた鮭文化を継承し、守り続けることを使命として歩んでいます。

鮭との歴史的繋がりが深い村上の地で、文化と技法を継承し、現代の食卓へと鮭を届けている。

―社長ご自身は、どのような経緯で入社をされたのでしょうか。

本間 私は村上で生まれ育ちましたが、大学卒業後はあえて一度地元を離れ、全国規模の食品卸問屋に勤務していました。そこではカップ麺やコーヒー、缶詰といった加工食品の流通を広く学んだのです。外の世界を知り、広い視野を持てたからこそ、地元に戻ったときに村上の伝統製法が持つ「本物の価値」を再認識できたのだと考えています。

弊社に入社してから38年になりますが、2026年1月に代表取締役社長に就任いたしました。私は現場に立つことを大切にしており、年末などの活気あふれる時期には自ら店頭に立ち、 お客さまと触れ合うようにしています。「今年もこの味を待っていたよ」と言っていただけることが、何よりの原動力です。

―今回ご紹介いただく「塩引鮭(しおびきざけ)」ですが、村上独特の姿には理由があるそうですね。

本間 はい。塩引鮭には、300年以上前から変わらない独特の加工文化が息づいています。まず、お腹を切り開く際に、真ん中の一部をあえて繋げたままにする「止め腹(とめばら)」という手法を用います。これは、当時の村上藩のお殿様に、切腹を連想させないようにという敬意から生まれたものなのです。

また、干す際も首を吊るのではなく、尻尾の方を縛って吊るす「尻尾吊り」という形をとります。これもお殿様に失礼のないよう「頭を高くしない」という、先人の奥ゆかしい心の表れです。この伝統的な製法を今でも守り続けています。

秋鮭を使用した、8切入りのセット。

―製法におけるこだわりについても、詳しくお聞かせいただけますか。

本間 原料はきわめてシンプルで、雄の秋鮭と塩のみです。一切のごまかしが効かないからこそ、素材の質と職人の技が重要になります。弊社では、北海道にある関連会社で、水揚げ直後の最も鮮度が良い状態で1次加工を行う一貫体制をとっています。

村上に運ばれた鮭には、熟練の職人が一尾ずつ、鱗の逆目に沿って丁寧に塩をすり込んでいきます。これを「塩引き」と呼び、まさに手塩にかける作業です。その後、最も大切になるのが、村上特有の気候を活かした熟成工程です。村上の冬は「凍結しない適度な低温」と「多湿な北西の季節風」が吹くのが特徴です。この風に晒すことで、鮭の水分が適度に抜け、旨みが凝縮されます。さらに、村上特有の「凍結しない適度な低温」が鮭自らの持つ酵素の働きを促し、タンパク質をアミノ酸へと分解させることで、生鮭にはない深いコクと熟成の旨みが生まれるのです。

鮮度がいい状態の鮭に、職人が塩をすり込んでいく「塩引き」の工程。
その後、尻尾の部分を紐で結び、冬の風に晒して旨味を凝縮させていく。

―ご家庭でおいしくいただくためのポイントはありますか。

本間 熟成の味を最大限に引き出すために、ぜひ実践していただきたい「ひと手間」があります。まずは冷凍で届いた身を、完全に解凍してから焼いてください。水分が適度に抜けるため、旨みが凝縮されるのです。焼きすぎると固くなってしまうので、「まだ少し生っぽいかな?」と感じるタイミングで一度火を止めてみてください。余熱でじわじわと中まで仕上げることで、ふっくらとした食感に焼き上がります。週末の朝、炊きたての白いご飯にこの塩引鮭を乗せて味わう時間は格別です。

少し早めのタイミングで火を止め、余熱で火を通すことでふっくらと仕上がる。

―お客さまからは、どのような反響が寄せられていますか。

本間 ありがたいことに、年末になると「これを食べないと年を越せない」と言ってくださるリピーターの方々が数多くいらっしゃいます。中には12月になると、お正月用の塩引鮭を求めて関東から夜中に出発し、開店前から駐車場で待っていてくださる熱心なファンの方もいらっしゃいます。

新潟にゆかりのある方が懐かしい味を求めて注文してくださることも多いですね。「大切な方へ贈って本当に喜ばれた」というお声をいただくと、この信頼をこれからも守っていかねばと、身が引き締まる思いです。

―もう一品の「鮭の酒びたし」は、さらに長い時間をかけて作られるのですね。

本間 「鮭の酒びたし」は、冬に仕込んだ塩引鮭をさらに半年以上、夏まで干し続けることで完成する商品です。もともとは7月に行われる村上大祭で、初物を振る舞うというハレの日の文化から生まれました。

梅雨時期の高温多湿な環境を逆手に取り、鮭の中から油が滴り落ちるまでじっくりと熟成させることで、独特の風味と発酵に近いプロセスが進みます。最終的には1尾の大きさが元の3分の1程度にまで凝縮され、身は釘が打てるほど硬くなるのです。これほど長い歳月をかけて作られる鮭は、全国的にも珍しく、まさに「時間を食べる」という贅沢を楽しめる逸品なのです。

塩引鮭をさらに半年間干し上げ、熟成させた逸品。

―「鮭の酒びたし」の魅力的な食べ方や、おすすめのペアリングを教えてください。

本間 硬く締まった身を、職人の技で透き通るような薄さにスライスしてお届けしています。お皿に並べた身に、地元の名酒である「大洋盛(たようざかり)」や「〆張鶴(しめはりつる)」といった日本酒をひと振りしてみてください。そのまま3分ほど待つと、お酒を含んだ身がしっとりと柔らかくなり、熟成香と日本酒の香りが溶け合うまろやかな味わいになります。

この食べ方は生臭さを消し、鮭本来の旨みを引き立ててくれるのです。週末の夜、ご夫婦でゆっくりと地酒を酌み交わしながら、ちびちびと味わう。そんな大人のための至福の晩酌シーンにぴったりの佳肴として、プロの料理人の方々からも高い評価をいただいているのです。

日本酒を振りかけ、数分置いてから食べるのが伝統。
お酒を含んだ身がしっとりと柔らかくなり、熟成香と酒の香りが重なり合う。

―世界遺産との関わりについても、誇らしいお話があるそうですね。

本間 はい。この商品と深く関わりのある「村上大祭」は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。お祭りの格式を支え、地域の誇りとして受け継がれてきた「鮭の酒びたし」は、世界が認めた文化の一部とも言えるのです。ご自宅で召し上がる際やギフトとして贈る際に、そうした歴史的な背景を添えていただくと、より一層その価値を感じていただけるのではないかと考えているのです。

―最後に、これからの展望についてお聞かせください。

本間 現在、天然鮭の水揚げ量は深刻な激減に直面しています。厳しい現実はありますが、人工的な油を加えない天然鮭本来の美しさを届けるという使命感は、決して忘れてはならないと思っています。村上の鮭文化を絶やさず、後世に伝え、さらには世界へと発信していくことが、私たちの次なる挑戦です。

また、北海道の良質な海産物を活かしたほたて製品など、新たなおいしさへの探究も続けています。「鮭と言えば村上」という誇りを持ち続け、おいしい鮭を食べ続けることが、村上の歴史と自然を守ることにつながる。そんなサステナブルな視点を持って、これからも一歩ずつ進んでいきます。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「新潟 村上 塩引鮭(塩引き鮭) 切身8切」
価格:¥7,800(税込)
店名:鮭・いくらの専門店 永徳 鮭乃蔵
電話:0254-52-6141(土日祝日は除く)
商品URL:https://www.nagatoku.co.jp/SHOP/407960.html
オンラインショップ:https://www.nagatoku.co.jp/

「新潟 村上 鮭の酒びたし 60g」
価格:¥1,690(税込)
店名:鮭・いくらの専門店 永徳 鮭乃蔵
電話:0254-52-6141(土日祝日は除く)
商品URL:https://www.nagatoku.co.jp/SHOP/401031.html
オンラインショップ:https://www.nagatoku.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

本間光浩(株式会社永徳 代表取締役社長)
1962年生まれ、新潟県村上市出身。大学卒業後、全国規模の食品卸問屋にて勤務。食品流通の現場で修業を積んだ後、1988年に家業である株式会社永徳に入社。常務取締役などを歴任し、長年現場主義を貫きながら地域の鮭文化を守り続けてきた。2026年1月、同社の代表取締役社長に就任。村上の気候風土を活かした伝統製法の維持と、天然鮭の価値を次世代へつなぐ活動に尽力している。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中香花 画像協力/永徳>

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