
一粒に込めた京菓子へのこだわり。あずき処・宝泉堂の黒大豆菓子「しぼり豆丹波黒大寿」
2026/03/13
今回、編集長のアッキーが注目したのは、JR東海新幹線の京都駅改札内にもお店を構える「宝泉」の黒大豆菓子「しぼり豆丹波黒大寿」です。店主自ら産地へ赴き厳選した、最高級の大粒黒大豆をふっくらと炊き上げ、風味を最大限に引き出した逸品。口に含めば優しい甘みが広がります。
その背景には、かつて大量生産の波を経験しながらも「本来の京菓子の姿とは何か」と自問自答し、原点回帰を決意した作り手の強い信念がありました。京都市に本社を構える、株式会社宝泉堂 代表取締役社長の古田泰久氏に取材スタッフがお話を伺いました。

株式会社宝泉堂 代表取締役社長の古田泰久氏
―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。
古田 私たちの会社が組織として歩み始めたのは、戦後間もない1952年(昭和27年)のことです。創業当時は甘納豆などの製造を中心に行っていました。昭和50年代に入ると京都観光が大きなブームとなり、全国の百貨店で京菓子がクローズアップされるようになったのです。その流れの中で、私たちは京都を代表するような大手の会社から委託を受け、全国のデパートで販売する品物を大量に製造する時期が20年ほど続きました。
しかし、機械化が進み、短時間で大量にものを作る体制が当たり前になっていく中で、私は少しずつ疑問を感じるようになりました。本来、京菓子というのは日本一といわれるような厳選された材料を使い、作る人間の感性や経験を注ぎ込んで育てられてきたものです。大量生産の時代を経験したからこそ、一度立ち止まって、本来あるべき姿に立ち戻る必要性を強く感じました。そこで今から約30年前に、それまでの商売のやり方を大きく変え、質の追求へと舵を切ったのです。


京都・下鴨に構える「宝泉堂 本店」。
創業から70余年。大量生産の時代の流れを経験したからこそ、
30年前に辿り着いたのが「京菓子の真髄」への回帰だった。
―社長ご自身の、お菓子作りに対する思いについて教えていただけますか。
古田 私自身、小豆の持つ奥深い魅力に惹かれ、京都市内の老舗へ弟子入りして修業を積んだ時代がありました。そこで学んだのは、職人は単にお菓子を作るだけでなく、安らぎや癒しをもその小さなお菓子の中に詰めるものだという心得です。
時代は刻々と変化しており、私たちの働き方も変わらなければなりません。かつては長時間働くことが当たり前という時代もありましたが、今は8時間の勤務時間の中で、いかに価値の高いものを作り続けられるかが重要だと考えています。現在は現場の仕事を息子に任せ、私は一歩引いた視点で品質を見守っていますが、職人としての誇りと、今の時代にふさわしい「本物」を届けたいという決意は、次世代にも温かく引き継がれていくはずです。
―今回ご紹介する「しぼり豆丹波黒大寿」は、どのようなきっかけで誕生したのですか。
古田 宝泉堂の「顔」となる商品を模索して辿り着いた答えが、このお菓子でした。余計なものを一切使わず、豆本来のおいしさだけで勝負するという、非常にシンプルで潔いコンセプトから生まれた看板商品です。
「素材」と「技」そのものを商品化するということは、ごまかしが一切きかないという挑戦でもあります。日本一の素材を使い、職人の感性を注ぎ込むことで、かつての京菓子が持っていた原点を形にしたいと考えました。派手さはありませんが、一度食べていただければ、私たちが理想とした「本物」の味わいを感じていただけると信じています。


最高級の丹波黒大豆が主役の「しぼり豆丹波黒大寿」。
素材の選定から仕上げまで、一切の妥協を許さない「本物」の風格。
―商品のこだわりや、他にはない独自性について詳しくお聞かせください。
古田 一番のこだわりは、何といっても素材です。毎年、私自身が兵庫県の丹波などの産地へ直接足を運び、その年の黒大豆の生育状況を自分の目で確かめています。農産物ですから収穫量には限りがありますが、その中でも「日本一」の称号にふさわしい最高級のものは、全体のわずか1割から2割ほどしかありません。私たちはその希少な大粒の豆だけを、産地とのつながりを大切にして確保しているのです。
製法においては、保存料や防腐剤を一切使用しません。豆の状態を職人が一粒ずつ見極めながら、大きな釜で時間をかけてじっくりと炊き上げていきます。炊き上がった後も、皮が剥がれた豆などを手作業で一つひとつ丁寧に取り除く、非常に手間のかかる選別工程を欠かしません。
私たちは繁華街ではなく静かな住宅地に店を構えています。自社の土地や建物を活用し、余計な宣伝費や固定費を極限まで削ることで、その分を素材や人件費といった「ものづくり」の根幹に注ぎ込んでいます。最後はスタッフの手で一つひとつ心を込めて包むことで、機械では生み出せない手作りのぬくもりをお客さまへお届けしたいと考えています。籠入りのパッケージからも、京都らしい端正で上品な佇まいを感じていただければ幸いです。


厳選された最高級の豆と、職人の技で勝負。
口に含めば、しっとりとした食感とともに、黒大豆本来の濃厚な風味が豊かに広がっていく。
―読者の皆さまには、どのようにこのお菓子を楽しんでいただきたいですか。
古田 一度にたくさん召し上がるのではなく、小袋を一袋ずつ、数日に分けてゆっくりと味わっていただくのが理想的です。お仕事や家事の合間、あるいは週末の午後に、お気に入りの日本茶やコーヒーを用意して、心身をリセットするリラックスタイムのお供にしていただけたらうれしいですね。

家事や仕事の合間に、小袋を一袋。
何気ないひと時が、心身をリセットする贅沢なおやつ時間に。
―お客さまからはどのような反応がありますか。
古田 都内の有名なセレクトショップでも私たちの豆菓子を選んでいただいており、その品質を認めていただけたことは一つの励みになっています。また、企業の秘書の方が、ここ一番の大切な贈り物として指名買いしてくださることも多いのです。おもてなしのプロから厚い信頼をいただけることは、職人冥利に尽きます。贈り物として受け取った方がそのおいしさに驚き、今度はご自身が誰かに贈りたくなるという、そんな幸せの循環が生まれていることをとてもありがたく感じています。
―これからの展望についてお聞かせください。
古田 今京都にある4店舗を、自分の目がしっかりと届く範囲で、質を守り続けていくつもりです。働き方改革という時代の波の中でも、短い時間で最高の成果を出す「高付加価値なものづくり」に挑戦し続けたいと考えています。
長年培ってきた技術と、お菓子に込める思いを、息子や娘たち、職人たちへ確実に引き継いでいくことが私の使命です。読者の皆さまやファンの皆さまに、「これからも宝泉堂には変わらないおいしさがある」という安心感を届け続けられるよう、一粒ひとつぶに真心を込めてまいります。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「しぼり豆丹波黒大寿 小袋5袋入り籠」
価格:¥1,620(税込)
店名:宝泉堂
電話:075-781-1051(10:00~17:00 日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://housendo.shop/items/5f4419c28b4f20685842971e
オンラインショップ:https://housendo.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
古田泰久(株式会社宝泉堂 代表取締役社長)
1949年京都市生まれ。大学卒業後、住金機工株式会社へ入社。4年後に家業である宝泉堂へ入社し、50歳で代表取締役社長に就任。1999年に下鴨の本店に数寄屋造りの店を開業し、2003年には「茶寮宝泉」をオープン。2007年の京都駅新幹線構内への出店、2011年の下鴨神社にさるや開業。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/宝泉堂>




























