
どんな料理もおいしくしてしまう話題の椎茸パウダー。その秘密は?
2026/02/27
常日頃から簡単においしい料理を作りたいと願っているアッキーこと坂口明子編集長。今回、見つけたとっておきの商品は宮崎県・高千穂産の干し椎茸を粉末にした椎茸粉です。いつもの素材、いつもの料理の自然なうまみが深まり、減塩による健康効果、ダイエット効果も期待大。国内外で話題を呼んでいる魔法のパウダー開発の経緯と、国産椎茸の生産を守るために奮闘する理由を株式会社杉本商店の代表取締役、杉本和英氏に取材スタッフがお話を伺いました。

株式会社杉本商店 代表取締役 杉本和英氏
干し椎茸を広く知ってもらう場にはこの格好で活動中。
このキャラクターは「椎茸プリンス」と名づけられている。
―御社はどのような事業をなさっていますか。
杉本 当社は1954年の創業以来ずっと、宮崎県高千穂郷の約600軒の生産者さんたちが作った椎茸をすべて購入して加工し、販売している企業です。生産農家さんは、くぬぎの木を原木として種菌を植え、椎茸を栽培し、収穫した椎茸を熱風乾燥させます。それを当社が購入し、さらに遠赤外線を使って乾燥させ、商品として販売します。
九州には甘い樹液を含むくぬぎの木がたくさん自生しています。高千穂郷では寒暖の差を利用してじっくり育ったくぬぎの木を原木にして椎茸を栽培、ほかの土地では真似できない、最適な環境を利用しています。
また、くぬぎの木はおもしろいことに木を切った後、そこから芽が出て15年で元の大きさの木になります。それをまた切って原木にして椎茸を育てるという循環型の栽培方法が成り立っています。くぬぎが自生する山は、保水能力や土砂流出防止機能が高くなります。また若い成長盛りの樹木は多くの二酸化炭素を吸収します。

椎茸は宮崎県高千穂の豊かな自然に育まれる。

くぬぎの原木に種菌を植え椎茸が育つ。
―最近、干し椎茸のうま味成分が注目されていますね。
杉本 うまみ成分には昆布に含まれるグルタミン酸、肉や魚に含まれるイノシン酸があり、干し椎茸にはグアニル酸が含まれています。私が調べたところ、グアニル酸の含有量は日本の原木椎茸が一番多いことが分かりました。
―現在、干し椎茸の購買層はどのあたりですか。
杉本 現在、干し椎茸の購買層の中心は80代です。家で料理を作るというライフスタイルが40~50代の層で途絶えがちになっているのが残念です。私も同世代なのでわかりますが、日本の経済成長期に生まれ、ファミレスやコンビニを利用することがあたりまえになったのです。
また、昨今の物価高で、家計で干し椎茸にまで予算が回らないという現状もあります。ただ、おもしろいことに20~30代で干し椎茸の消費が少し上がっています。これは離乳食の需要ではないかと考えています。少子化の分、子どもには手をかけてきちんとしたものを食べさせたいという親の思いが反映されているのではないでしょうか。この世代は生まれたときにすでにインターネットやデジタル機器が身近にある、いわゆるデジタルネイティブ層なので、検索して知識を得て、よいと思うものはすぐに取り入れます。天然素材である干し椎茸はアレルギーにもなりませんし、うま味を深めるだしとしての需要があるのではないかと思います。

椎茸の匂いが苦手という人にもパウダー状の椎茸なら大丈夫。
―さて、今回ご紹介いただく「SUGIMOTO 杉本商店 九州産本格椎茸粉」はどのように開発されたのですか。
杉本 私は「椎茸プリンス」として料理教室を開いて干し椎茸の良さを伝えていますが、それだけでは非常に難しいのです。もう少し顧客層を細分化して、私たちの思いが響く層を見つけながら販売していかないといけないと思いました。 当社の売上を上げたいというよりも、あくまでも椎茸農家の方たちが作ったものを今後も買い続けるためにはどうしたらいいかというのが発想の基本です。

椎茸粉をアヒージョに一振りするだけで味が引き立つ。
―パウダーの干し椎茸に注目したきっかけは何ですか?
杉本 私たちは2016年から海外での販路を開拓しようとしました。しかし、簡単には売れませんでした。アメリカのスーパーマーケットに行くとアジア系のスーパーマーケット以外は干し椎茸は一つも売られていません。しかし、大手オンラインサイトには販売されていて、他国産の干し椎茸が販売されていたのですが、価格は日本の1/6ほどです。原木を使わずにおがくずで栽培しているので安価ですが、味も食感も違います。そこで当社の原木栽培の干し椎茸を出店したらカテゴリーの中でトップ10に入りました。でも、1位にはなれません。2020年からのコロナ禍の中で、巣ごもり需要が生まれ、欧米でも食品販売は好調でしたが、それでも1位になれません。そのとき、1位を取得していたのが、椎茸パウダーだったのです。そこで当社でも椎茸をパウダー状にしてみようと思いました。
―開発で苦心なさった点は何でしょう。
杉本 先ほど述べたように、生産者さんから持ってきていただいた椎茸はすべて購入するというのが杉本商店の事業モデルです。ということは販売するには小さ過ぎたり大き過ぎたりする椎茸があり、それが年間で約10トンありました。これを原料にしてパウダーの商品を開発しようとしました。
しかし、原木栽培ですから土や砂がついているなど不純物が混入するリスクがありました。1枚ずつブラッシングして軸を切り、軸についている木皮も切るなど下処理に手間がかかります。そのときちょうど、地域の障害者支援施設の方が見えて、新しい仕事がないかと依頼されました。その施設ではコンビニエンスストアのごみ箱の中のごみを分別する仕事を請け負っていましたが、コロナ禍でごみ箱が撤去され、仕事がなくなり困っていらっしゃいました。そこで干し椎茸の下処理をお願いできることになりました。ていねいな下処理のお陰で雑味のない良質な商品ができました。下処理後に粉砕して熱処理をして商品化し、2020年8月に出品しました。大手オンラインサイトに1ケース200パックだけ納品しました。

魚料理のうま味もアップさせる。
―不安はおありでしたか?
杉本 ありました。それはパウダーにすると干し椎茸の味がまったくしなくなることです。私は干し椎茸の味がなくなるので失敗作だと思いました。ところが消費者の中には干し椎茸の匂いや食感が苦手な方が一定数いらっしゃって、それが逆に人気の理由になりました。また、干し椎茸を水で戻して調理する手間が省けるのもよかったようです。
―出品の結果はいかがだったでしょう?
杉本 200パックが1週間もたなかったですね。すぐ売れちゃうんです。他国産の商品に比べて当社の商品は高価格です。それは障害者支援施設さんの工賃を当社の従業員と同じ単価で発注していることもあります。支援施設の仕事が少なくなっても単価が高ければ何とかカバーできるんじゃないかという思いがあったからです。
売れゆきが好調なので慌てて国内でも販売するようにしました。メディアから取材も受けるなどして話題になりました。ただ、実のところ、皆さんがどうやって使っているのかがよく分かっていませんでした。
―売れているのにどう使われているかを知らなかったんですね。
杉本 2023年コロナ禍が一段落したので私はアメリカの展示会に出かけていきました。展示会で立っていると、ある女性の方がいらして、「私はいつも、この商品を買っているわ」とおっしゃいます。そこでチャンスだと思って(笑)、「どうやって使われているのですか」と聞いてみたんですよ。すると、その方は何言ってるの?という感じでびっくりされて「お肉にかけるに決まってるじゃない」とおっしゃいます。私のほうがびっくりしました。肉と椎茸の組み合わせに違和感があったからです。そこで、展示会が終わった後、スーパーで肉を買って、宿泊していたキッチン付きモーテルで焼いて食べてみたんです。そしたら、アメリカの脂肪分のない赤身肉が和牛のような味になりました。
「え?すごい」と思いました。その後、シカゴの展示会で「アイスクリームにかけるとおいしくなる」という声を聞いたりしました。今は海外のフレンチやイタリアンの有名店でも使われています。

お刺身に一振りすると魚の新鮮な風味が強くなる。
―日本の家庭で使うならどんな使い方がありますか。
杉本 お刺身にかけたりしたら格段においしくなりますよ。味噌汁に入れたり、さばを焼くとき下ごしらえとして椎茸パウダーをふりかけてから焼くと格段に味が違います。ハンバーグの下ごしらえに入れてもいいし、エビチリやチャーハンなどの中華料理もおいしくなります。冷凍ピザなどの冷凍食品にかけてもおいしくなります。当社のホームページにレシピ集がありますので参考にしてください。取扱い店は生活協同組合の店舗、有名スーパーマーケット、ドラッグストアで入手できるほか、大手オンラインサイトがあります。
―健康効果にも期待できそうです。
杉本 2025年末にアメリカのマサチューセッツ大学から論文が発表され、ダイエット効果が立証されました。アメリカ人の食事は脂肪摂取量が多いので肥満は大きな課題ですが、椎茸パウダーを加えた高脂肪食とただの高脂肪食をマウスで実験した結果、体重増加が10%、体脂肪増加が30%抑制されたという結果が出ました。もちろん、椎茸粉を料理に利用すると、うま味がある分、塩分を加えて味を出さなくても済むので、減塩効果もあり、生活習慣病対策にもなります。
図解で3分: 論文紹介PDF https://sugimoto.co/files/shiitake-powder-reseach-JP-A4.pdf
―椎茸に未来を感じました。
杉本 海外に出ていって私たちの干し椎茸がこんなに国際競争力があるとは思いませんでした。宮崎の椎茸は古い文献を見ると江戸中期から生産が脈々と続いていたことが分かります。海外の方はこのような歴史や文化に価値を感じていただけます。ストーリー性を持っていることも高千穂郷の干し椎茸の強みだと思います。
―お話をうかがって杉本社長が常に挑戦する姿勢に感服しました。経歴をお聞かせください。
杉本 私は宮崎生まれの宮崎育ちです。田舎で育ったせいか見たいものがたくさんあり好奇心は強かったですね。学生時代にサーフィンを始めて、先輩に誘われてサーフィンの仕事をしていましたが、その後、アパレル業界に転職しました。ちょうどムートンブーツが流行した時代で、アパレル各社に向けてムートンブーツを販売する営業担当として仕事をしました。2011年に東日本大震災をきっかけに帰郷し、椎茸の仕事をすることになりました。
―今後のビジョンをお聞かせください。
杉本 私のビジョンはシンプルです。干し椎茸の生産が途絶えないようにして、この土地の干し椎茸の文化を守りたいだけなんです。最近、気候変動の影響で椎茸の生産量が激減するという問題が出てきました。生産者さんの高齢化も心配ですが、私は干し椎茸にはまだまだ可能性が秘められていると信じています。
今後、世界中で干し椎茸のブームが起きたときに、ちょうどワインといえばフランスのボルドーだと言われるように、椎茸といえば宮崎の高千穂郷だと言われたいというのが私の願いです。大変なことだとは思いますが、地図を頼りに山登りをしている感じで、頂上からの景色を見てみたい、先の景色を見てみたいという思いがあります。
―本日はワクワクするお話をありがとうございました。

「SUGIMOTO 杉本商店 九州産本格椎茸粉
(30g)」
価格:¥798(税込)
店名:九州高千穂郷産しいたけ杉本商店
電話:0120-666-580(平日 08:00〜17:00)
定休日:土曜、日曜、祝日 ※インターネットでのご注文は24時間365日受付受付
商品URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F42XN14M
Amazon SUGIMOTOストア:https://www.amazon.co.jp/stores/SUGIMOTO/page/1183A911-58EA-4ACE-A72C-761F541E8421
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
杉本和英(株式会社杉本商店 代表取締役)
宮崎県高千穂町出身。外食、アパレル業界で営業を経験後、東日本大震災を機に2011年、干し椎茸卸の杉本商店に入社。契約農家の高齢化や需要低迷という課題に直面し、新規開拓で生産者を守ることを決意。高千穂郷産椎茸の商品開発により県外市場を開拓し、海外展開も推進。2020年代表取締役就任。2021年中小企業応援士・GFPアンバサダーに選出。
<文/今津朋子 MC/藤井ちあき 画像協力/杉本商店>




























