40年間進化し続ける口どけ。塩気が後を引く、山梨の愛されスイーツ「イタリアンロール」

2025/10/29

今回、編集長のアッキーが注目したのは、山梨県で40年以上にわたって愛され続ける銘菓「イタリアンロール」です。一度食べたら忘れられない、しっとりとした優しい口どけが多くの人を魅了しています。
そのおいしさの秘密は、伝統の味を守りながらも、「毎年、少しずつ進化している」ことにあるといいます。そして、その絶え間ない進化の裏には、作り手の温かい親心が隠されていました。取材陣が、製造元の株式会社清月 代表取締役社長の野田清紀氏に、その歴史と商品に込めた思いを伺いました。

株式会社清月 代表取締役社長の野田清紀氏

―まず、御社のルーツについてお聞かせください。

野田 清月のルーツは、私の祖父にあたる初代が創業した1931年に遡ります。初代は皇室御用達の菓子店として知られる「麻布松玄堂」で腕を磨き、その確かな技術を見込まれて、のれん分けを許された人物でした。
東京で始まったお菓子作りの道でしたが、戦火でお店を失うという悲劇に見舞われます。しかし初代の情熱は消えることなく、安住の地として選んだ山梨で事業を再開します。それが現在の清月の礎となりました。

最高峰の場所で培われた技術と、「本物」だけを追求する真摯な心。初代から受け継がれるお菓子作りの精神は、時代を超えて今もなお、清月のすべてのお菓子に深く息づいています。

現在は山梨県南アルプス市に本店を構え、県内で8店舗を展開。

―野田社長は四代目でいらっしゃいますが、どのような経緯で就任されたのでしょうか。

野田 大学卒業後、私は家業をすぐに継がず、農協に勤務するという少し変わった経歴を歩みました。一度外の世界から家業を見つめたことで、大きな変革の必要性を痛感したのです。
四代目として父の後を継ぐと、当時の主力だった卸売業からの転換を決意しました。800軒もの得意先がある安定した事業から、自社で企画・製造・販売までを手がける自主製造販売へと、大きく舵を切ったのです。

その大きな決断の裏には、経営者としてだけではない、もう一つの顔がありました。私を突き動かした大きな転換点、それは病弱だった娘の存在です。
「自分の子どもに、心の底から安心して食べさせられるものだけを作ろう」。この偽りのない「親としての本音」は、やがて「菓心天創(自然のままに作る)」という会社の理念へと昇華され、安心・安全なお菓子作りにおける絶対的な基準となりました。

―看板商品の「イタリアンロール」は、どのようにして生まれたのですか?

野田 今でこそ当社の看板商品ですが、その原型は、外側を少しゴワゴワしたシュー生地で巻いた「シューロール」というお菓子でした。しかし、このシューロールには、「カットする時に、皮とスポンジがずれて剝がれてしまう」という課題があったのです。

この課題を何とかしたいと、改良に着手しました。目指したのは、スポンジとクリーム、そして皮が三位一体となった、どこまでも滑らかな口どけです。
試行錯誤の末にたどり着いたのが、クレープのようにしっとりと柔らかく、それでいて存在感のある、現在の皮でした。おいしさだけでなく、「食べやすさ」というお客様への優しい配慮から、この形は生まれたのです。

ほんのり塩味のシュー皮が、ふわふわのスポンジとクリームを優しく包み込む。

―多くのお客様に長く愛されるための、こだわりについて教えてください。

野田 「イタリアンロール」の最大にして最高の秘密は、40年もの間「毎年、レシピを改良し続けている」という事実にあります。

「昔ながらの味」という評価に甘えることなく、毎年少しずつ改良を加え、時代ごとの「おいしい」を追求してきました。例えば、現代の嗜好に合わせて甘さを少し控えめに調整したり、生クリームを濃厚なものからライトな風味に変えてみたり。その変化は、長年のファンですら気づかないほど、ごくわずかで繊細なものです。

そして、ただ甘いだけのお菓子で終わらせない、プロならではの工夫も隠されています。味の決め手となる皮には、フランス産の岩塩をひとつまみ。この絶妙な塩気が、クリームとスポンジのやさしい甘さをより一層引き立て、奥深い味わいを生み出しているのです。

「昔から変わらないね」と愛されながら、実は今日が一番おいしい。最高の「いつも通り」を届けるための静かなる進化は、これからも続いていきます。

―読者におすすめの楽しみ方はありますか?

野田 「イタリアンロール」は、どんなシーンにも寄り添ってくれます。頑張った一日の終わりに、お気に入りの紅茶と合わせて楽しむ、自分だけの贅沢なご褒美として。また、気のおけない友人との集まりにもぴったりです。

プレーンだけでなく、季節のフルーツを使った限定フレーバーもご用意しています。これもお客様に楽しんでいただける要素かと思います。その時々の旬を味わうことで、訪れるたびに新しい発見があります。

夏は桃、秋には栗など、季節限定のフレーバーが楽しめる。手土産としても大人気。

―お客様からはどのようなお声が届いていますか?

野田 おかげさまで、地元・山梨では「ロールケーキといえば清月」と言ってくださるお客様も多く、世代を超えてご愛顧いただいています。地元で長く親しまれている“ソウルスイーツ”のような存在になれていれば、大変嬉しく思います。

近年では都内の有名百貨店の催事に出させていただく機会も増えました。また、「食のオリンピック」とも称されるモンドセレクションでは、6年連続金賞をいただいています。このことは、長年ご愛顧くださっている地元のお客様への、何よりの恩返しになったのではないかと感じています。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

野田 私が経営において最も大切にしているのは、「経営理念は時代に合わせて変えていくべき。しかし、人としての在り方、すなわち企業理念は決して変えてはいけない」ということです。

当社がこれからも決して変えないもの。それは、「親としての本音」というお菓子作りの核です。そして、お客様に「清月なら大丈夫」と信じていただける、誠実なお菓子作りを続けることです。

これからも真摯なお菓子作りを続けながら、山梨で愛されてきたこの味を、一人でも多くの人に届けていきたい。私たちの挑戦は、これからも続きます。

「イタリアンロール(プレーン)」
価格:¥2,450(税込)
店名:清月
電話:0120-082-606(9:30~17:00 ※土日・祝日を除く)
定休日:なし(南アルプス本店のみ)インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.saygets.co.jp/?pid=73405380
オンラインショップ:https://www.saygets.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

野田清紀(株式会社清月 代表取締役社長)
1956年山梨県生まれ。1988年株式会社清月代表取締役社長に就任。現在南アルプス市商工会会長を務め、また「夢現塾」塾長として若手経営者を育てる活動にも注力している。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/清月>

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