
人気の紀州南高梅の梅肉入り「梅うどん」は、和歌山の麺メーカー・成戸製麺所が作る自信作
2025/10/30
今回、アッキーこと坂口明子編集長が注目したのが、和歌山県の製麺会社が作る「梅うどん」。長年、製麺所として信頼されてきた知る人ぞ知る企業が自社で開発し、30数年間にわたって人気を得てきたご当地麺です。国内産小麦粉を使い、和歌山県産の紀州南高梅の梅肉を練り込んだ冷やしうどんは口に含むと爽やかな梅の香りが広がり、麺のもちもちした食感が味わえます。この商品の魅力と、麺づくりへのこだわりを株式会社ナルト代表取締役の成戸真司氏に取材スタッフがうかがいました。

株式会社ナルト 代表取締役 成戸真司氏
―御社の所在地は和歌山県有田川町ですね。
成戸 そうです。当社は1950年に麺類の製造販売の工場として創業されました。両親が働く製麺工場の隣に自宅があり、家庭と仕事がリンクする暮らしでした。私は小学校1年生から工場の仕事を手伝っていましたが、厳密に言えば労働基準法違反でしょうね(笑)。当時は麺の袋に価格や製造年月日をシールで貼っていたのですが、そのために今はもう使っていませんが、ハンドラベラーという器具があってカチャカチャとひたすら打つのです。それが私の仕事で、小学生の小さい手で一生懸命握って打つわけです。小中高とずっとハンドラベラーを握っていたので、私はこの人口36,000人の町でずっとスポーツテストの「握力」は断トツ一番でした(笑)。
―会社を継ごうと思っていらっしゃいましたか。
成戸 いえ、大学を卒業してから和歌山の食品会社に就職し、工場勤務をしていました。お世話になりましたが、当時、大手食品工場は2~3交代で24時間操業することで効率を求めて業務をしていました。勤務半年で夜勤に配属されそうになり、私はやはり日中働いて、夜は休養したりお酒を飲んだりする(笑)暮らしがいいと思って退職しました。その後、貿易会社など数社での勤務を経て、26歳ぐらいのとき当社の工場が老朽化し、父が体調を崩したこともあり、会社を閉じるか私が継ぐかの選択を迫られました。きれいごとに聞こえるかもしれませんが使命感のようなものを感じましたし、小さいころから父の背中を見てきて、家業をなくしたくないと思ったので、初めて両親に頭を下げ、「継がせてください」と言いました。そして多額の借入をして工場を今の有田川町に新設しました。
―実際に会社を継いでみていかがでしたか。
成戸 業績が良くない状態で引き継いだのですが、両親がほとんど口出ししなかったおかげで自由に私がしたいように商品開発でき、業績も徐々に上向いていきました。受注しすぎて工場の生産が追いつかなくなるなど失敗もありましたが、今は私の経験値も上がり、お客様に自信を持っておすすめできる商品を開発できるようになってきたように感じています。
ちなみに、両親が口出ししなかったと述べましたが、母が口出ししなかった理由は、母も自分で会社を立ち上げて事業に必死だったので私の会社に立ち入る余裕がなかったのが理由です。母の会社は「ふみこ農園」といい、1993年に梅干しの加工販売からスタートして成長し、今では和歌山県産フルーツを使ったコンポートやジュレなども幅広く扱う会社になっています。
―「ふみこ農園」さんの商品は人気ですね。株式会社ナルトのポリシーはどんな点ですか。
成戸 当社はコンビニやスーパーマーケットに向けた、冷麺セットなどチルドタイプの麺製品をいろいろと工夫を重ねて開発・製造していました。麺にハムを乗せ、錦糸卵を乗せ・・・というように具材をトッピングして製品化するのですが、他社との価格競争で疲弊してしまっていました。将来が見えない中、別の道を模索しようとしました。考えた結果、父が創業した当時の精神である、良質な麺を製造するという原点に立ち返って麺作りをもっと究めなあかんと思いました。社名は株式会社ナルトですが、今は創業時の名称である「成戸製麺所」を屋号として、とにかくおいしい麺を作ることを基本にしています。

ナルトのラーメン麺。ストレート麺、細麺から太麺まで、要望に応じて製麺できる。
―ラーメン専門店向けにラーメンの麺を製造しているのですね。
成戸 自家製麺のお店も最近は少しありますが、基本的にラーメン店は麺を購入して使われています。私はあるとき、横浜のラーメンチェーン店の経営者と懇意になりました。彼に「どんな麺でも作る自信があるから、一度うちで麺を作らせてくれ」と頼んで要望を聞き、麺を作ってみたら、彼の理想通りの麺だったので驚かれました。以来、横浜を中心に関東のラーメン店の麺を製造するようになりました。お客様の要望に応えるのが当社の仕事で、どこにもない技術があり、製麺のプロとして自信を持っています。また、作る麺に合わせ最適な素材を選ぶ眼にも自信があります。「なんでナルトの麺はそんなにおいしいの」と聞かれたら、材料に対する目利きと技術だとお答えできます。

梅の香が立ち上る「梅うどん」(生麺)。
つゆにも梅肉を溶かし込んであり、さっぱりとした風味。
茹でた後しっかり冷水にさらすのがおいしくいただくコツ。
大葉、梅干しを添えるとさらに味が引き立つ。
―今回は御社の自社製品の中から「梅うどん」を紹介していただきます。これはどんな商品ですか。
成戸 1989年に両親が開発したのでもう35年以上にもなる当社を代表する商品です。私はまだ中学生で失敗した試作品を廃棄するのはもったいないからと、大量に食べさせられた記憶があります(笑)。そのときはストレスでしかありませんでしたが、考えてみると私は長い間、ラーメン、うどん、そばと麺ばかりを作っては食べ、作っては食べてを繰り返していて、おいしい麺とは何かを体で覚えることができたと思っています。
「梅うどん」は梅肉というpHの低いものを麺に練り込むので、小麦のグルテンのつながりが悪くなり麺が切れやすくなり難しいのですが、工夫して舌ざわりのいいなめらかな麺にしています。この技術が難しいので、大手メーカーが梅うどんに参入することもありましたが、今は中止していますね。やはり日本で一番梅うどんを売るのは当社ですと断言できます!
小麦粉は国内産小麦粉の中から最も適した品種を選んでいます。梅肉はもちろん和歌山県産の紀州南高梅のみを使っています。和歌山の麺製造会社が和歌山の梅を使って作る正真正銘のご当地麺です。
―賞を受賞していますね。
成戸 2013年に東京の代々木公園で行われた「うどん日本一決定戦(U-1グランプリ)」の味評価部門で全国2位になっています。当社以外は飲食店ばかりで麺メーカーから参加しているのは当社だけだったので、その場で「梅うどん」を作って出すのには苦労しました。私は何かで日本一になることが夢だったので優勝できなかったのがたいへん悔しかったです。大手ECサイトでの麺類ランキングでは1位になったことがあります。

温かい梅うどんも。「紀州梅うどん」(2食スープ付 540円税込)。
―「梅うどん」はどこで販売していますか。
成戸 有名な高級スーパーマーケット、人気の食のセレクトショップでずっと販売してもらっています。昨年、東京・六本木にあるセレクトショップの麺売場に行ったら、「梅うどん」をたくさん並べていただいているのを見ました。和歌山の田舎で作っている麺が東京の中心で売られていると感激して(笑)、思わず、レジの方に「和歌山で『梅うどん』作っている成戸です。たくさん売っていただいてありがとうございます」と声をかけて挨拶させていただきました。お客様が実際に手に取っていただいているのを見るのはうれしいですね。
ありがたいことに、ほかのお店からも取引して欲しいと要請が来ています。営業は私1人で商社に手伝っていただきながらやっています。オンラインでは母の「ふみこ農園」のオンラインショップを使っています。私の姉も「ふみこ農園」で仕事をしていてネット事業部で頑張ってくれているので、販売は母と姉にお任せして、私は製品作りに専念しています。当社の「和歌山中華そば」「湯浅醤油ラーメン」もここで販売しています。

「和歌山中華そば」は販売を委託している「ふみこ農園」で一番人気のラーメン。
―今後の御社の展望をお聞かせいただけますか。
成戸 梅肉以外でも抹茶を練り込んだパスタや、唐辛子を入れた麺などを模索しています。「梅うどん」をきっかけにいろいろな具材を練り込んだ個性的な麺を作っていきたいです。あとはまだ構想中ですが、麺を使ったスナックができたらいいと考えています。これからもいろいろなメーカーとコラボしながら新製品を作っていきたいです。今、楽しく仕事をしていますが、麺屋として私ができることはまだまだたくさんあると思っています。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「紀州南高梅練込「梅うどん」(つゆ付き・2人前)
価格:¥540(税込)
店名:紀州グルメの通販店「ふみこ農園」
電話:0120-14-2353(9:00~17:00 日曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.fumiko.co.jp/shopdetail/000000000153/I138044/page1/order/
オンラインショップ:https://shop.fumiko.co.jp/shopbrand/all_items/

「和歌山中華そば」 (4食スープ付)
価格:¥1,200(税込)
店名:紀州グルメの通販店「ふみこ農園」
電話:0120-14-2353(9:00~17:00 日曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.fumiko.co.jp/shopdetail/000000000045/I138138/page1/order/
オンラインショップ:https://shop.fumiko.co.jp/shopbrand/all_items/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
成戸真司(株式会社ナルト 代表取締役)
1974年和歌山県生まれ。藤本食品に入社後転職し、貿易会社などで3年間を過ごし、2000年株式会社ナルト入社。2017年代表取締役に就任。代表取締役就任後も営業活動は一人でこなしている。近年は業務用ラーメン店への生麺の供給、独自開発の即席ラーメンの製造開発に注力している。
<文/今津朋子 MC/田中香花 画像協力/ナルト>




























