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家庭で味わう海苔を 風味豊かな”一番摘み”に

2024/01/12

炊き立てのごはんを、海苔で巻いて食べる。日本らしい、幸せなシーンではないでしょうか?その海苔に、”一番摘み”というものがあることをご存知ですか?今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、広島県広島市で、一般的には貴重な一番摘みの海苔を、家庭でも楽しめる価格で販売し、食卓に届けている「株式会社前田屋」。商品開発のエピソードについて、代表取締役の前田勲氏に伺いました。

株式会社前田屋 代表取締役社長 前田勲氏
株式会社前田屋 代表取締役社長の前田勲氏

―前田社長は2代目でいらっしゃるのですね?

前田 はい、父が創業者です。父は10歳で自分の父を亡くし、小学生の頃から祖母が作った豆腐を売り歩いていたと言います。そして中学卒業後、叔父の紹介で海苔屋へ就職しました。海苔は非常に目利きが難しい食材で、一人前になるまで5年から10年はかかります。父はそれを身に付けた上で、30歳ほどで独立しました。

―創業した前田屋ではまずどんなことを?

前田 産地で仕入れた海苔を同業者へ卸すという問屋業を始めました。ただ海苔は冬場しか獲れませんので、春・夏に味付け海苔や焼き海苔などの加工も行いました。

―社長は、ずっとお父様の仕事をご覧になっていたのですか?

前田 そうですね。創業時は自宅が仕事場でもあり、海苔の加工も自宅の2階の工場で行っていましたので、幼い頃から海苔の加工、父が仕事をしている姿を見ていました。

―そんな前田社長は大学卒業後、MRに。

前田 父は、跡を継いで欲しいということなどを何も言わない人でしたので、私は普通に進学し、就職活動をし、バイオ技術の分野で当時先行していた製薬会社に勤めました。

―社会に出て学ばれたことは?

前田 原価、利益の管理などでしょうか。大きな会社でしたので新人教育が充実しており、さまざまなことを学ばせていただきました。MRになってからは、モノを売り込むということを徹底的に。

―そして4年ほどお務めになって前田屋様へ。何かきっかけがあったのですか?

前田 父が少し体調を崩した時期がありまして、後継者や事業継承という文字が頭をよぎったようです。それで初めて「戻ってこないか?」と。ただ父は事業に関して楽しい部分しか話してくれませんで、今にして思うと、何かうまく騙されたな、と思っています(笑)。

―その頃の前田屋様は、社長の目から見て、どのような会社でしたか?

前田 詳しいことがわからないまま戻ってきたのですが、これが中小企業の実態なのだなとは感じました。社員が25、6名、パートさんを入れると30数名の頃で、私はまず製造部門の方に入り、営業にも出るなど柔軟にやっていました。

当時、世の中は価格破壊の真っ只中。こだわってモノを作ろうが、結局「いくら?」と言われる時代で、広告を出すような余裕もないので非常に苦労しましたね。本来、会社にとって大事なのは、商品・顧客・販売であるはず。でも実際は問屋があり、小売店があり、販売は他者依存にならざるを得ませんでした。私は、これからの時代、このスタイルだと中小企業は厳しい、自社で販売をちゃんとコントロールできるようにならねば、と思い、1996年に直販部門を立ち上げました。

―周りの反応はいかがでしたか?

前田 大反対されました。当時はメーカーが直販を始めるなどあまり例がありませんでしたし、様々な業者様とのお付き合いもあります。そこで、通販部門は「前田屋」ではなく、「安芸郷」という別の屋号で、商品も別のものを作って販売することにしました。最初はカタログ通販で、社員の友人知人にカタログとサンプルを送るところから始めました。

通信販売では一番摘みの上質な海苔が、小売店価格の4割引相当で販売でき、立ち上がりは非常にうまくいきました。担当は私と、新卒で採用した2人。当時は結局競争相手がいなかったので、売り上げは右肩上がりでした。

―その中の商品の1つが、今回ご紹介いただいた「桂浜の月」なのですね。

前田 そうですね。通信販売を始めた頃は、お中元、お歳暮のギフト商品が良いのではと考えていたのですが、3,000円、5,000円といった商品だとやっぱり躊躇しますよね。そこで、板海苔を最も美味しく味わえる“一番摘み”の中でも、ちょっと欠けや穴があるものを「わけありこぼれ」「ご家庭用」としてお求めやすい価格で販売することにしたのです。最初は弊社が扱う海苔の味を知っていただくためのお試し商品みたいな位置づけで始めたのですが、一番摘みならではの旨味、歯切れ、口どけの良さを楽しめることから非常に喜ばれ、大ヒット商品となりました。また、「桂浜の月」がヒットしたことで、ギフトも動くようになりました。

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通信販売限定で発売し、大ヒットした「桂浜の月」。
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味付けは、北海道産コンブと瀬戸内産イリコを大釜で煮出した本ダシをベースに、
愛媛県伯方の塩、オリゴ糖、天然醸造本みりんなどで整えて。

「桂浜の月」は、弊社の製造ノウハウを活かして作れる商品でした。一方、心配していたのは通信販売の販売促進、どうやってお客様に認知してもらうかだったのですが、「人から頂いて美味しかったから私も買いたい」というご質問に、「店頭商品ではなく、通販専用商品なんですよ」とお答えしていくうちに、通信販売で海苔が買える、ということが徐々に広がっていきました。

ちなみに「桂浜の月」というネーミングは、万葉歌にちなんで命名しました。
広島県呉市の倉橋島は万葉歌ゆかりの土地。736年にここで遣新羅使(けんしらぎし)の一行が詠んだ歌に「わが命を 長門の島の 小松原 幾夜を経てか 神さびわたる」というものがあります。長門の浦=桂浜というわけです。

その年で一番初めに摘まれる貴重な海苔を食卓にぜひ。

―通販を通じて広島が海苔の名産地であることが知れ渡ったのでは?

前田 どうでしょうか。かつては海苔の加工業者も広島県内だけで26社ぐらいあったのですが、現在はそれも半分以下になっていますし、冬だけのお楽しみだった海苔も保存技術が良くなり、一年中楽しめて季節感も無くなりましたので、地方性を感じていただけているものなのか。

また海苔は、今よりも、昭和40年代の方が高価でした。海苔の生産漁家は小舟で冬の海に出て、海苔を手で漉くなど労力のいる仕事でしたから当然ですね。父の世代の方は、お弁当に海苔むすびが入っているのは運動会と遠足のときだけ。毎日海苔むすびを持ってくるのは金持ちの家の子だけ、と話していました。そんな高級食材はもちろん重宝がられ、大変ですが儲かりました。その後は一気に海苔養殖漁家が増え、機械化も進み、全盛期は国内で年間100億枚を超える生産量を誇ったそうですよ。ただ、量が取れると当然値は下がっていくのです。昨年は大凶作で海苔相場は2.5倍と暴騰しましたけど。

―ところで前田社長は、「バカな!?なるほど!?」という考え方を大切にされているとか。

前田 今は存在しないけれども、近い将来、大きな需要となる新しい価値を見つけて、効率よく提供する。新しい需要は、他社から見れば、「まさかこんなに売れるとは!」つまり「バカな」です。しかし当社からしてみれば、ちゃんと合理的な理由があり、それを後になって知るので「なるほど」となるわけです。

今、弊社商品の中で一番人気のばら海苔「漁師のまかない海苔」はまさにこの考え方が当てはまるものです。2016年の少し前、海苔の生産量が落ち、相場が約1.5倍になったことがありました。これはちょっと尋常じゃない、このまま板のりだけやっていては厳しいと、他社にはないものを発売したところ、大変人気となりました。
実を言うと、弊社では15年前にも同様の商品を製造、販売していました。ただ当時はあまり売れず、廃版にしてしまっていたのです。それが、時代が変わったことで支持されて売り上げを伸ばし、会社の柱になってくれました。

―具体的にはどんな商品なのですか?

前田 海苔をそのまま乾燥させた商品で、漁師のまかないとしてかなり以前からありましたが、商品として大量に作るとなると異物除去などが大変だということで、反対もありました。ただ生産工程が少ない分、海苔の旨みがダイレクトに味わえるというメリットがあり、ぜひお客様の元に届けたいと思いました。以前のものは「食べ方がわからない」などのご意見もいただくことも多かったのですが、今はSNSがあります。そこでインフルエンサーの方々にいろんな食べ方で楽しんでいただき、発信していただくうちに広く知られるようになり、ヒット商品となりました。大切なのはお客様の半歩先を行くこと。一歩以上行くと売れません。以前の失敗は、発売が早すぎたことが原因だと思っています。

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発売の翌年には農林水産省の「フード・アクション・ニッポン アワード」で入賞!
詳しい商品紹介はこちらへ
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2023年12月には、フードアナリスト正会員23,000人のアンケートに基づいて評価される「第70回ジャパンフードセレクション」で金賞を受賞!なお評価のポイントは、「磯の香りと味そのものが良く、率直に美味しい」「『巻かない』と『賄い』をかけたネーミングのセンス」など多数
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ご飯に乗せたり、味噌汁に入れたり。さまざまな料理に風味をプラス。

―今後の展望についても教えてください。

前田 これからは日本も人口減少の傾向にあります。そう考えると、弊社もいかに海外のお客様を掴んでいけるか。それを考える時に来ていると思います。

―まだまだ様々なことに挑戦されそうですね。

前田 そうですね。人は本来、同じことを繰り返す方が楽で、変化を嫌います。このままいったら地獄だぞ、ということが見えていても、なかなか変えようとしません。でもそうした感じでいると、弊社のように年商10億ちょっとの規模の会社はあっという間に落ちていきます。なので、弊社は変わることを恐れません。社員も「あ、また始まったな」という感じで、ナチュラルに適応してくれていますので、これからもどんどん前へ進んでいきたいと思っています。

興味深いお話がたくさん伺えました。ありがとうございました!

「ご家庭用 味付け海苔 桂浜の月」(10切120枚)

「ご家庭用 味付け海苔 桂浜の月」(10切120枚)
価格:¥530(税込)
店名:海苔匠 安芸郷
電話:フリーダイヤル0120-4567-66(9:00~17:30)
定休日:日曜・祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.akinosato.co.jp/shopdetail/000000000001/
オンラインショップ:https://www.akinosato.co.jp

「漁師のまかない海苔」(15g)

「漁師のまかない海苔」(15g)
価格:¥432(税込)
店名:海苔匠 安芸郷
電話:フリーダイヤル0120-4567-66(9:00~17:30)
定休日:日曜・祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.akinosato.co.jp/shopdetail/000000000088/
オンラインショップ:https://www.akinosato.co.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
前田勲(株式会社前田屋 代表取締役)

1967年3月1日生まれ。1990年に中央大学を卒業後、協和発酵(現:協和キリン)へ入社し、医薬事業部にてMR(Medical Representative、メディカル・リプレゼンタティブ)として従事。1994年、前田屋へ入社し、1996年に通販事業部(安芸郷)を立ち上げる。2005年より現職。

<文・撮影/鹿田吏子 画像協力/前田屋>

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