やさしい甘さがレンコンの風味を引き立てる老舗菓子店が地物素材で作る「加賀れんこん餅」

2023/12/26

加賀藩の城下町として栄え、茶の湯の発展と共に優れた和菓子文化が生まれた金沢は、京都、松江と並ぶ「日本三大菓子処」の一つといわれています。株式会社越山商店が営む「越山甘清堂」は、地元金沢で愛されている老舗和菓子店。市内6店舗で「加賀れんこん餅」などの多彩な商品を販売するほか、カフェも運営。最近は発酵がテーマの商品開発も注目されています。今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になった6代目で代表取締役社長の徳山康彦氏に、商品開発のエピソードやこだわりなどを伺いました。

株式会社越山商店 代表取締役社長の徳山康彦氏
株式会社越山商店 代表取締役社長の徳山康彦氏

―会社の沿革について教えて下さい。

徳山 創業は明治21年(1888年)です。きな粉のお菓子や豆菓子などの雑菓子を扱う菓子屋で働いていた創業者が、店を引き継ぐかたちで始めたようです。戦前は甘納豆の専門店を営み、輸出も行っていましたが、太平洋戦争が起こり休業。戦後再開したものの物資が入らないため、地元で手に入るお米やもち米を使った生菓子作りから始め、いろいろな商品を増やしていきました。一時期、洋菓子も作っていましたが、和菓子に特化することを決め、現在の一般的な和菓子全般を作るようになっていったようです。

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金沢の文化風習を大切にしたお菓子や、地元産の素材を取り入れたお菓子、
創作菓子など、素材にこだわったさまざまな和菓子を揃える。
本店では和菓子手作り体験も行っている。

―今回の「羽二重 加賀れんこん餅」はどのようなきっかけでできたのですか。

徳山 お客さんの立場で見てみると、地元のお菓子屋さんのお菓子はどこもそれほど違いがない。その中で何をもって商品を選んでくださるだろうかと考えたときに、金沢ならではのものが入っていることだと思ったんです。それには地域の産物を上手に使ったものが一番わかりやすいだろうと、いろいろ試していって着目したのがレンコンでした。

―レンコンとは珍しいですね。

徳山 金沢で「加賀野菜」といわれる野菜の一つに、加賀れんこんがあります。ほくほくした食感や独自の風味がよく、これをお菓子に使おうと決めて知り合いの青果業者さんにJAのれんこん部会の生産者を紹介してもらいました。本さんという代々レンコン農家をしている方で、ほかには絶対負けないレンコンを作ろうと、土地の改良や栄養の付け方、掘り方などいろいろ創意工夫されています。このレンコンを使えばいいものができるかもしれないと思い、本さんの奥さんに作ってもらったレンコン料理をヒントに、お団子、焼菓子、羊羹など試作していったんです。一時は暗礁に乗り上げましたが、羽二重餅と組み合わせてレンコンのもちもち感を生かすことを思いつき、改良を重ねながら現在のれんこん餅を作っていきました。

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羽二重餅に伝統野菜の加賀れんこんを練りこんだ看板商品「羽二重 加賀れんこん餅」。
ふわふわのお餅は独特の粘りやプチプチとした蓮の実の歯ごたえ、
のど越しに感じる風味など、素材の魅力をシンプルに楽しめる。

―苦労された点は?

徳山 レンコンは加工対象としては手強い素材で、ペースト状にするのが難しく大変でした。あと、レンコンは7月末~8月に収穫が始まり4月くらいに終わるのですが、最初にとれたときと終わりの時期ではもの自体が全然違うため、その都度使うとお餅が安定しません。一年通じて安定したおいしさにするにはどうしたらいいか思案した結果、ほっくりした食感になる春と秋に大量に買って、一度に加工する方法を選択。うちにはレンコンをすりつぶす機械がないので、県の工業試験場にメーカーを紹介してもらいました。現在は年に2回レンコンを仕入れ、蒸して刻んだものを機械メーカーさんで粗いペースト状のものにしてもらい、冷蔵保管してその都度使っています。

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野菜を入れる背負い籠をイメージした小さな竹籠の中に、一口サイズのお餅が4つ。
ふんだんに使われている加賀れんこんは、食物繊維やビタミンC、
ポリフェノールが豊富というヘルシーさもうれしい。

―レンコン作りからこだわっておられる。

徳山 僕たちはおいしいものを提供したいのですけど、素材のおいしさ以上のことはできません。ですから、レンコンがしっかり風味があっておいしいことは大前提で、その風味をちゃんと感じていただくためにお餅の中に一定の割合入れないといけない。利益よりもおいしいものを作ることが先にあるということで作り上げてきているんです。

―籠入りでプレゼントにもいいですね。どのような方が求められますか?

徳山 最初は皆さんレンコンのお菓子を珍しがられて、どちらかというと観光の方を中心に買っていただいているようです。あと法事のお土産などにも使われますね。

―今後の展望について教えてください。

徳山 「AZUKI de HAKKO」という事業を2022年から始めました。「美味しくて健康」をテーマに、小豆やインゲン豆などの素材を米麹で発酵させてお菓子や飲料から化粧品まで作るという幅広い事業で、そのテストとして今、麹で作った餡を入れた「発酵あんの白玉あんみつ」と「発酵あんのぜんざい」をカフェで提供しています。お客さんから「こんなおいしくてさっぱりしたあんこ、食べたことない」という反応を多くいただいています。
また2024年1月頃から「発酵羊羹」を売り出す予定です。
れんこん餅を作って15年経ちますが、発酵のお菓子も同様に認知されいろんな地域の方に召し上がっていただけるようにしたいです。また食後のお菓子として提供することで、結果的に健康に寄与できればと思っています。

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同社が運営する人気の和カフェ「CAFÉ 甘」では、
和モダンな空間で季節のかき氷、ぜんざい、パフェ、加賀棒茶など和のスイーツやドリンクを提供。
パフェに自家製アイスを使用するなどこだわりが窺える。
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町家を改装した「CAFÉ 甘 本店」は「AZUKI de HAKKO」研究所を併設。
あんみつやぜんざいなど、発酵あんを使った発酵メニューも展開される。
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コロナ禍の3年間に自社の強みを深掘りしていったことが
誕生のきっかけとなったという「AZUKI de HAKKO」プロジェクト。
発酵あんみつなどの発酵スイーツは海外への発信も計画されている。

―本日は貴重なお話をありがとうございました!

羽二重 加賀れんこん餅

「羽二重 加賀れんこん餅」
(6個入【一口サイズ4切入】)
価格:¥1,696(税込)
店名:越山甘清堂オンラインショップ
電話:076-221-0336(9:30~17:30 水曜定休除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kanazawamiyage.jp/?pid=125163067
オンラインショップ:https://kanazawamiyage.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
徳山康彦(株式会社越山商店 代表取締役社長)

1956年石川県羽咋郡志賀町生まれ。中央大学卒業後、石川日産自動車販売株式会社に入社。その後1987年に株式会社越山商店に入社、専務取締役を経て2013年に代表取締役社長に就任。

<文・撮影/山本真由美 MC/津田菜波 画像協力/越山商店>

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