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30秒で甘みあふれる冷茶もできる「市川のぐり茶」

2024/02/27

今回、編集長アッキーが注目したのは、伊東市の名産である「ぐり茶」。あざやかな緑色が際立つ深蒸し茶で、甘みが強く、普段使いはもちろん、お土産や贈答にも喜ばれる逸品です。古くは明治時代末期から作られていたという、ぐり茶の歴史や独特の製法をたどりながら、市川製茶の味・品質へのこだわりや美味しい淹れ方について、株式会社市川製茶の代表取締役市川正樹氏に伺いました。

株式会社市川製茶 代表取締役の市川正樹氏
株式会社市川製茶 代表取締役の市川正樹氏

―「ぐり茶」という言葉を初めて聞きました。どんなお茶ですか。

市川 玉緑茶とも呼ばれる特殊な製法で作られたお茶で、茶葉のまるまった形状が勾玉に似ていることから、勾玉の別名「ぐり」を取って名付けられたと言われています。茶葉の開き方がゆっくりで、甘みが強いのが特徴です。伊東市では3軒だけがぐり茶を製造しており、当社がその元祖です。

―市川製茶は、伊東市のぐり茶の元祖なんですね!いつから作っているのですか。

市川 もともと私の祖父が裾野市で和菓子屋をしていたのですが、お菓子に合わせるお茶に興味を持ち、1919年から共同創業者とともに伊東市でお茶を作り始めました。当時は茶葉の栽培も自分たちでやっていました。

皆さんが想像する煎茶は、伸び茶と言われる針状の形状のものでしょう。これにはお茶を拠る工程(精揉・せいじゅう)があるのですが、精揉のための機械が非常に高価なので、当初からその工程を必要としないぐり茶を作り始めたそうです。幼い頃に見た、トタン作りの素朴な工場の様子を思い出します。

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昔ながらの製法で作られたぐり茶。

―ぐり茶の製法について教えてください。

市川 静岡のお茶は主にやぶきた茶という品種で、当社ではこれを深蒸しした上で、回転する機械の中で乾燥させながら丸めていきます。お茶を拠って作る煎茶と比べて、茶葉をいじめないので、お茶本来の甘い味わいになります。そもそもうまく丸まるように、柔らかい茶葉を選ぶ必要があり、これもお茶の甘さにつながっています。また、じっくりと深蒸ししているので、色も鮮やかです。

当社は製法に加えて、茶葉の栽培にもこだわりがあります。農家さんに茶草葉農法と呼ばれる昔ながらのやり方で、一部のお茶を栽培してもらっています。

―茶草場農法とはどんなものですか。

市川 当社が茶葉を仕入れている掛川市や牧之原市で受け継がれている農法です。ススキや笹を干して、茶畑の畝にかけることで、腐葉土のような効果を発揮します。昔行われていたやり方を、近年復活させました。

お茶栽培では長年化学肥料を使っていたのですが、それによって土壌や水資源がどんどん綺麗になりすぎて、微生物などがいなくなってしまったのか、池の生物が根絶やしになってしまった例を聞きました。SDGsなどの観点からも、茶草場農法は素晴らしい農法だと思っています。ただし、手間がかかるんです。ススキや笹は一度乾燥させる必要があり、これを年に4〜5回やっているのですから、頭が下がります。

茶草場農法で作られたお茶は少し淡白なので、ブレンドを工夫して味わいを生かしています。

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茶草場農法で作られた特別な商品も。

―ぐり茶はブレンドされているんですか。

市川 お茶はコーヒーに似ているなと思います。1種類だけだと深みが出ないんですよ。だから別の産地の玉緑茶と、バランスを考えてブレンドします。この辺りは本当は企業秘密なんですが、主に九州のゆたかみどり、さえみどり、あさつゆ、などと合わせています。

同じ品種の茶葉でも、収穫時期によって味が違います。静岡では4月20日に新茶、その後、いわゆる八十八夜の前後である5月10日から5月15日が一番茶です。当社では新茶、一番茶を中心に、2番茶までを仕入れています。3番茶より先は、ほうじ茶などにしますね。1年分の茶葉を4ヶ月程度で一気に仕入れるので、いつも頭を悩ませます。

こうした仕入れ時期・お茶のランクを考慮して、ブレンドも考えながら商品を作ります。当社商品の〇〇号というのは大体100gあたりの値段を反映したもので、号数が高いほど高いランクの商品ということになります。でも、高ければ高いほど良いかというと、それはお客様の好みや用途があるので、試しながら好きな商品を見つけていただきたいんです。

長年買ってくださるお客様に、サービスとしてランクが上の商品サンプルを差し上げたことがあったのですが、「味が違う、いつも飲んでいるのが良い」と言われてしまったことがあります。同じ商品でも茶葉の収穫時期、ブレンドによって味が変わり、お客様も長年慣れ親しんだ味があるので難しいです。号数だけでは計り知れない部分です。こういう部分はワインにも似ていると思います。私は味覚を繊細に保つために、お酒やタバコ、辛いものも控えています。

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茶葉が丸まっているのが特徴。

―美味しいぐり茶の淹れ方についてもお聞きしたいです。

市川 お茶は一定の温度を超えると渋みが先に出てしまうんですよ。だから70℃くらいのお湯で淹れてください。蒸し時間は10〜15秒。思ったより短いと言われますが、これくらいでしっかりと味が抽出されます。

“さしがきく”という言い方をするのですが、ぐり茶は3煎してもまだおいしくいただけるお茶です。茶葉がゆっくりとよく開くことが特徴なので、お湯を注ぎ直してもまだ抽出が進みます。

もう一つ、ぜひおすすめめしたいのは、水出し。急須に氷と水、少量のぐり茶を入れたら、30秒ほど急須を揺すってください。それでもう美味しい冷茶の完成です。水出しというと長時間置く必要があると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は非常に気軽にできるんですよ。より甘く癖のない味わいが楽しめます。水は軟水が良いです。お酒が好きな方は、酎ハイとして割っても良いと思います。

いずれにせよ、お茶の淹れ方に間違いなんてないので、気楽に気軽に自分の好きな淹れ方でお茶を楽しんでほしいです。

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冷茶を作るのも簡単。

―お茶請けには何が合いますか。

市川 和菓子はもちろんなんですが、洋菓子も意外とマッチします。私は地域の菓子店「梅家」の「ホール・イン」という銘菓に合わせるのが好きです。伊東市はゴルフ場が多く、人口あたりの和菓子店も日本一多いようです。そこで作られたこのお菓子は、その名の通り、ゴルフボールをモチーフにした和洋菓子。お茶の渋みとホール・インのホワイトチョコレートの相性は抜群です。

ぐり茶を抹茶状に粉末にして、ふりかけてあるお饅頭も、美味しいですよ。機会があれば伊東のお茶とお菓子をぜひ一緒に味わっていただきたいです。

―お茶には奥深い世界があるんですね。

市川 そもそも静岡でお茶栽培・製造が盛んになったのは、家康のおかげだと言われています。太平の世になって、武士に仕事を与えるために始めた産業なのです。その後、明治時代末期には清水港から帝政ロシアへの輸出品としても珍重され、その時にもう「ぐり茶」という名称があったようです。そう考えると、歴史の重みを感じます。

地域の小学生が育てたお茶を、ぐり茶に加工したこともありました。日本茶は静岡県に深く根付いた文化だと感じます。これからも産地、農法、製法にこだわりながら、本当に美味しいお茶を届け続けていきたいです。

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ゆっくりとお茶を楽しむひとときを作りたい。

―貴重なお話をありがとうございました!

特撰ぐり茶 150号

「特撰ぐり茶 150号」(100g / 200g)
価格:100g ¥1,782 / 200g ¥3,564(税込)
店名:静岡 伊豆に香る ぐり茶 株式会社市川製茶
電話:0557-45-0990(月~金曜日 9:00~17:00)
定休日:土・日曜日
インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.guricha.jp/SHOP/GU0003.html
オンラインショップ:http://guricha.zk.shopserve.jp/index.html

静岡の茶草場農法 市川のぐり茶

「静岡の茶草場農法 市川のぐり茶」(100g)
価格:¥1,663(税込)
店名:静岡 伊豆に香る ぐり茶 株式会社市川製茶
電話:0557-45-0990(月~金曜日 9:00~17:00)
定休日:土・日曜日
インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.guricha.jp/SHOP/Q00005.html
オンラインショップ:http://guricha.zk.shopserve.jp/index.html

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
市川正樹(株式会社市川製茶 代表取締役)

1958年、静岡県伊東市生まれ、1977年に県立伊東高等学校卒業、1982年商学部経営学科卒業し、のち5年間は家業を継がずに外へ出る。その後、静岡の大手製茶問屋にて、5年間過ごし1990年に家業の市川製茶に就職し、製造担当に従事する。1998年伊東市吉田に新店舗をオープン、1999年、本社にお茶の冷蔵庫を新築、2000年12月に父である先代が急逝し翌年4月に代表取締役に就任し、大正8年から続くお茶屋の3代目となり「ぐり茶」の元祖として現在に至る。

<文・撮影/鈴木満優子 MC/三好彩子 画像協力/市川製茶>

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