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だし醤油のパイオニア 山形・丸十大屋の「味マルジュウ」 「やまがた 芋煮のたれ」「特選減塩」

2022/06/14

百七十余年にもわたって醤油や味噌を造り続けてきた醸造元「丸十大屋」。「だし醤油」のパイオニアと聞いて、編集長アッキーのアンテナがピピッと反応。8代目当主である株式会社丸十大屋代表取締役の佐藤利右衞門氏に、取材陣がお話を伺いました。

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株式会社丸十大屋 代表取締役 佐藤利右衞門氏

―山形出身の人に「山形で醤油といえば『味マルジュウ』」と聞きました。

佐藤 それは、うれしいですね。実は弊社は、最初から醤油を造っていたわけではないんです。天保15(1844)年、紅花商として創業しました。醤油や味噌を造るようになったのは、明治中期からです。
「味マルジュウ」が誕生したのは昭和39(1964)年。私の祖父にあたる6代目・佐藤利右衞門の時です。当時、山形にも醤油醸造元が多く、安売り合戦状態が続いていました。でも、それでは商売にならないし品質も保てなくなってしまうから、何か違うことをやろうということになり、生まれたのが「味マルジュウ」です。
今でこそ、だし入り醤油は珍しくありませんが、当時は全国的にもほとんど存在していなかったんですね。山形でも、最初にだし入り醤油を造ったのはおそらく弊社ではないでしょうか。

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丸十大屋の代名詞「味マルジュウ」。厳選素材のだしを抽出。

―パイオニアならではのご苦労もあったのでは?

佐藤 発売当初は、消費者のみなさんになかなか受け入れていただけなかったようです。「なぜ、醤油にわざわざだしを入れるのか」と。価格も、普通の醤油よりは高いですし。
でも、今やだし入り醤油やめんつゆが一般の家庭には欠かせない存在になっていることを考えると、祖父には先見の明があったと思います。容器にしても、醤油といえば一升瓶入りがほとんどだった時代に、もっと家庭で使いやすようにと「味マルジュウ」を軽い樹脂製の容器に入れて販売したんですよ。

―「味マルジュウ」が長く愛され続けているのは、そうした消費者ファーストの精神があるからこそなのですね。

佐藤 時代とともに味の好みも変わります。塩分にしても、発売当初は19%とかなり高かったのですが、減塩志向の流れを受けて現在は約13.5%。色も、昔は真っ黒に近かったのですが、今は少し赤みを感じられるように。また、容量についても、今は1世帯あたりの人数が少なくなっていますから、それに合わせて500mlをはじめ小容量のものを出しました。冷蔵庫にも入れやすいと、ご好評いただいています。

―味や製法について、こだわっているのはどんな点でしょう?

佐藤 味マルジュウの特徴は、甘み。深い甘みを出すために三温糖を使っています。また、味マルジュウの味を構成する大事な要素、だしに関しては、鰹節、宗田節、鯖節、煮干しを合わせて自社で抽出しています。

―自社でやるからこその抽出法があるのですか?

佐藤 いえいえ、特別に変わったことはしていません。原価を抑えたくて自分のところでやっているだけですから(笑)。ただ、たとえば鰹節なら、鰹節屋さんが弊社の製造開始時間に間に合うように、朝鰹節を削って、削りたてを持ってきてくれるんですよ。あとは、蔵王の伏流水を汲み上げて熱し、70度の状態で20分。沸騰させずにゆっくり抽出する。こうしたことは、おいしいだしを引くには当然のやり方です。ただ、今の時代はそうした当たり前のことをやり続けるのが、むずかしくなってきているのかもしれませんね。

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「味マルジュウ」は煮物にも大活躍。
こちら2倍に希釈して肉豆腐を。
だしがしっかりきいているので、希釈してもまったく味が崩れません。
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希釈せずそのままの状態のところへゆで卵を漬けるだけで、
味玉の出来上がり。
同じく、大根の拍子切りと花山椒、酢を加えて1日置けば、
中華風大根漬けが完成。
「味マルジュウ」、作り置きにも重宝します。

―「やまがた 芋煮のたれ」も人気の商品だとうかがいました。

佐藤 山形の郷土料理に「芋煮」があります。昔から、秋の収穫が終わると芋煮をするという習慣が全国各地にあったようですが、山形の芋煮の特徴は里芋と牛肉を使うこと。県内でも豚肉で作る地域がありますが、多くは牛肉ですね。味にコクが出るんです。昔は、どこの家庭でも、醤油と酒、砂糖を合わせて作っていたのですが、最近はみなさん忙しくて「料理に時間や手間をかけられない」とおっしゃるんですね。ならば、「これさえあれば誰でも簡単に芋煮が作れる」という商品をご提供しようということで生まれたのが、「やまがた 芋煮のたれ」です。

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「やまがた芋煮のたれ」は醤油味。
ほかに「芋煮のたれ みそ味」もあります。
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ボトルの裏に書かれた「芋煮」のレシピどおりに、
最初は水から里芋を煮て、やわらかくなったところに
芋煮のたれ、牛肉、こんにゃく、(好みで)きのこを入れて
牛肉に火が通れば、芋煮の完成です。
簡単なのに、味は本格的!

―「マルジュウしょうゆ特選減塩」も好評だそうですね。

佐藤 昭和50(1975)年頃に減塩運動が始まりました。とくに東北の食事は塩分過多で、それが健康を害する大きな原因だからと、醤油や味噌、そして漬物業界はみなさんからかなり厳しい声をいただいて。そこから塩分の少ない醤油を開発し始めたのですが、これがむずかしかった。
単純に考えれば、濃いめの醤油を水で割れば塩分濃度の低い醤油ができます。ただ、その時は醤油の旨み成分も薄まってしまうので、醤油としての美味しさが半減してしまうんです。「減塩=味が落ちる」というイメージをお持ちの方が多いのは、そのためでしょう。
塩分は低いながら、醤油本来の旨みたっぷりの醤油を何とかして造れないかと試行錯誤の末に生まれたのが「マルジュウしょうゆ特選減塩」です。弊社の本醸造しょうゆを、電気透析膜を用いてイオン交換を行い、しょうゆの中のNaCl(食塩)からNaだけを取り出すという新製法を採用しました。そうすると旨みがギュッと凝縮するんですね。塩分は本醸造しょうゆの半分ですが、旨みは本醸造しょうゆに負けていません。ストレスなく減塩に取り組んでいただけると思います。
おかげさまで、2021年8月に大阪・国立循環器病研究センターの「かるしお認定制度」の認定を受けることができ、販売にこぎつけました。
品質劣化の要因である空気に触れさせないよう二重構造の密閉ボトルを採用しているので、開栓後90日間、フレッシュな状態が保たれます。また、ボトルを押すとしょうゆが出て、戻すと止まる「押出方式」なので1滴からお好みで調整でき、塩分を気になさっている方にも「注ぎすぎを防げる」とご好評をいただいています。

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「【かるしお認定】マルジュウしょうゆ特選減塩新鮮ボトル」。
「かるしお」とは国立循環器病研究センターが推奨する
「しおをかるく使って美味しさを引き出す」減塩の新しい考え方。
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減塩ながら旨みがあるので、物足りなさを感じません。
白身の魚との相性、ばっちりです。

―味噌や醤油の醸造元でありながら、レトルトのカレーも製造していらっしゃいますね。それは、なぜでしょう。

佐藤 忙しくて、料理に手間や時間をかけられないという方々に対して、弊社ができることは何だろうと考えたとき、レトルトのカレーが頭に浮かびました。日本のカレーは、いまや国民食といわれるほど。そして、家庭でカレーを作る際に、隠し味としてソースや醤油、インスタントコーヒーやチョコレートを入れる方もいらっしゃいますよね。ならば、弊社は醤油を隠し味にしたカレーができるじゃないかと。実際、味に深みが出るんですよ。そして、自分たちがつくるなら具は山形牛にこだわろうと考えました。1番人気の「山形牛ほぐし肉のビーフカレー」はどなたにも召し上がっていただけるよう、肉の形がなくなるまで煮込んで仕上げています。併設のカフェ「蔵膳屋」でもお出ししていて、ご好評いただいているんですよ。

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「山形牛ほぐしに肉ビーフカレー(辛口)」
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スパイシーでコクのある欧風カレータイプ。
隠し味の醤油が全体の味を引き締めてくれ、
牛肉の風味が際立ちます。

―もう1つ気になったのは、「ハラール認証」商品を出していらっしゃることです。

佐藤 2013年に、バングラディッシュの知人から「イスラム圏でも使用できる醤油を造れないか」と問い合わせがあったことがきっかけです。ご存知のとおり、イスラムの教えはとても厳格です。消毒用アルコールさえ規律違反とされるので、認証を取得のために大変苦労し、開発から商品化されるまで1年以上かかったでしょうか。でも、その甲斐あって、イスラム圏での販売にこぎつけることができました。

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国際的なハラール認証機関である「日本ハラール協会」からハラール認証を受けた
「【ハラール認証商品】こいくちしょうゆ(特級)」500ml ¥648。
ほかに、「めんつゆ」「だししょうゆ(特級)」「和風てりやき」「ぽんず」も。

―ハラール認証ほど厳格ではない「ムスリムフレンドリー」の商品もあるなか、認証にこだわっているのですね。老舗でありながら、そうした「攻め」の姿勢を崩さない。その原動力は何なのでしょう。

佐藤 世の中の流れは、1カ月単位でどんどん変化します。だからといって、醤油屋がいきなり明日から違う商売を始められるわけがないですから、消費者のみなさんのニーズに応えるもの、それも「醤油を活かした何か」をつくれないかと、つねに考えていることでしょうか。今後、人口減少にともなって醤油の消費量も落ちていくでしょう。醤油の市場環境としては正直なところ、展望はよくありません。
しかし、たとえば「塩を減らそう」という流れになった時に「減塩醤油、減塩味噌がありますよ」、外国の方が多く日本を訪れるようになって「ハラール認証のものでないと口にできない」という方がいらしたら「ハラール認証の醤油、ありますよ」というように、すぐにお出しできる商品を持っておけば、まだまだ勝負できるのではないか。そう考えています。

―変化に柔軟に対応しながら、新しい価値を生み出し続けているのですね。次に、丸十大屋さんからどんな商品が誕生するのか、楽しみにしております!

味マルジュウ_商品1

「味マルジュウ」(500ml)
▶価格 ¥594(税込)
▶会社名 丸十大屋
▶電話 023-632-1122(平日9:00~17:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://shopping.marujyu.com/products/detail/37
▶オンラインショップ https://shopping.marujyu.com

味マルジュウ_商品2

「やまがた 芋煮のたれ」(300ml)
▶価格 ¥507(税込)
▶会社名 丸十大屋
▶電話 023-632-1122(平日9:00~17:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://shopping.marujyu.com/products/detail/110
▶オンラインショップ https://shopping.marujyu.com

味マルジュウ_商品3

「【かるしお認定】マルジュウしょうゆ特選減塩新鮮ボトル」(200ml)
▶価格 ¥367(税込)
▶会社名 丸十大屋
▶電話 023-632-1122(平日9:00~17:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://shopping.marujyu.com/products/detail/149
▶オンラインショップ https://shopping.marujyu.com

味マルジュウ_商品4

「山形牛ほぐし肉のビーフカレー」(辛口)
▶価格 ¥810(税込)
▶会社名 丸十大屋
▶電話 023-632-1122(平日9:00~17:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://shopping.marujyu.com/products/detail/4
▶オンラインショップ https://shopping.marujyu.com

<Guest’s profile>
佐藤利右衞門氏(株式会社丸十大屋 代表取締役)

1963年生まれ。1985(昭和60)年、西武百貨店入社。1991年、丸十大屋に入り2008年から現職。2018年に8代目利右衞門を襲名した。山形県醤油味噌工業協同組合理事長を務める。

<文・撮影/鈴木裕子 MC/根井理紗子 画像協力/丸十大屋>

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