
創業170年、南部鉄器の老舗の自信作。IH対応の鉄瓶「東雲アラレ 1L」
2026/04/16
今回、編集長のアッキーが注目したのは、南部鉄器の鉄瓶「東雲(しののめ)アラレ 1L」です。朝、鉄瓶がシュンシュンと鳴らす柔らかな音を聞きながら、驚くほどまろやかなになった白湯を一口。それだけで日常が整うような、マインドフルなひとときを叶えてくれます。しかも、現代のキッチン事情に嬉しいIH対応で、実用性も備えています。
その背景には、170年以上の伝統を守りながらも「今の暮らしに合うデザイン」を半世紀以上前から追求し続けてきた、革新的なものづくりの歩みがありました。取材スタッフが、岩手県に本社を構える、及源鋳造株式会社の代表取締役社長、及川久仁子氏にお話を伺いました。

及源鋳造株式会社の代表取締役社長、及川久仁子氏
―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。
及川 弊社は江戸時代末期の1852年に創業し、岩手県奥州市で170年以上にわたって南部鉄器を作り続けてきました。大きな転機となったのは、1960年代に当時専務だった父(4代目)がアメリカを視察したことです。当時、南部鉄器のメーカーはどこも同じような「日本昔話」に出てくるような鍋釜を作っていましたが、父はアメリカで”デザイン”というものの概念に触れ、「これからはデザインの力が不可欠だ」という確信を持って帰国しました。それから東京出身で岩手で活躍する若手デザイナーと協力して、新商品開発に積極的に取り組むようになったのです。その結果、業界の中でも最多となる数のグッドデザイン賞をいただいてきました。伝統工芸という枠にとどまらず、常に「今の暮らしに合うもの」を追求してきたのが、私たちの革新の歴史なのです。



創業、岩手県奥州市で170年以上の歴史を紡いできた及源鋳造。
100年使い続けられる耐久性と、時代を超えて愛される美しさを兼ね備えた一生ものの道具づくりを追求している。
―社長ご自身も、デザインや現場を深く知る歩みをされてきたのですね。
及川 私は奥州市で生まれ育ちましたが、幼い頃から家業を継ぐものだと言い聞かされてきました。武蔵野美術大学の短大でデザインやマーケティングを学び、東京のデザイン事務所で2年間勤務した後に岩手に戻りました。入社後はまず6年程、現場に入って石膏原型(せっこうげんけい)を作ったり型を調整したりする仕事を重ねたのです。当時は問屋さんに言われたものを作るのが当たり前でしたが、私は自分たちで「何が必要か」を考え、直接価値を届けるべきだと徐々に考えるようになりました。そこで社内に新しい部署を立ち上げ、メーカーから商品を発信していくことをスタートしました。それが自社ブランド「OIGEN」の確立につながったのです。現在は管理職の半分が女性という風通しのいいチームで、使う人の五感に響くものづくりを大切にしています。
―今回ご紹介する「東雲(しののめ)アラレ 1L」は、どのようなきっかけで誕生したのですか。
及川 「南部鉄器を使いたいけれど、うちはIHだから」と諦めている方の声にお応えしたいという思いが始まりでした。実は、鉄は素材そのものに磁性を持ち、IHの熱に最も効率よく反応する素材。そのため、製品安全協会の基準をクリアするためには、底面が12cm以上で平らであることなど、緻密な設計が必要でした。この条件をクリアしつつも、容量は1Lと、女性が片手でも扱いやすく、現代のキッチンに馴染むサイズ感を追求しています。南部鉄器らしい伝統的な表面に小さな粒状の凹凸をつけた伝統の「あられ模様」の美しさを損なわないフォルムを実現するのは容易ではありませんでしたが、今の時代に求められる機能美をかたちにできたと考えています。飾っておくだけで絵になる、インテリアとしての価値も大切にしているのです。


現代のキッチンに欠かせない、IHに対応した鉄瓶「東雲アラレ」。
安全性と使い勝手を両立するよう、徹底的に計算した設計だ。
―道具としての使い心地や、一生ものとしての品質へのこだわりを教えてください。
及川 私たちが最も大切にしているのは、20年、30年と世代を超えて使い続けられる耐久性の良さと、愛着の持てるデザインです。IHの強い熱源に対しても変形せず、効率よくお湯を沸かせるよう、鉄の厚みをコンマ単位でコントロールしています。また、この鉄瓶は少し平らな独特の形状をしていますが、これはIHへの対応だけでなく、実はお湯の注ぎやすさを考えた結果でもあります。注ぎ口の角度や蓋の閉まり具合など、毎日使う中でストレスを感じないよう、細部までこだわりました。伝統技法と現代のテクノロジーを融合させることで、及源鋳造にしか作れない、一生ものの品質に仕上げています。
―鉄瓶でお湯を沸かすことで、どのような変化が楽しめるのでしょうか。
及川 一番は、白湯が甘くまろやかになることですね。沸かすことで水が軟水化し、角が取れたような味わいになるのです。おすすめしているのは、使い始めに硬水のエビアンなどを数回沸かして、内部に「白い湯垢」の膜を作ること。こうすることで錆びにくくなり、さらにお湯がおいしく育っていきます。手入れは「洗わない・触らない・乾かすだけ」ときわめてシンプルです。重さや熱さや湯が沸く音など、人の五感を刺激しながら使う鉄瓶は、「生きる力を与える道具」としても楽しんでいただけるはずです。


鉄瓶の内部に付着した白い膜の正体は、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が結晶化した「湯垢(ゆあか)」。
この湯垢がついた鉄瓶で沸かすお湯は、まろやかで甘味のある味わいに変化する。
―評価も高く、贈り物としても選ばれているそうですね。
及川 ご自分で使うという事のほか、最近では、大切な方へのギフトとして選んでいただくことも増えています。「一生大切にしたい宝物になった」というお声をいただくと、本当に励みになります。自分たちの製品が、誰かの人生を豊かにするパートナーになっているのだと実感できるのは、ものづくりに携わる者としてこの上ない喜びですね。
―最後に、御社が描く未来のビジョンをお聞かせください。
及川 岩手県奥州市にある私たちのファクトリーショップを、世界中から人が集まる「ワクワクする目的地」にしたいという夢があります。伝統工芸を、次世代が希望を持って働ける「誇れる仕事」にすることで、地域を活性化させていきたいのです。私たちのミッションは「鉄に“愉しい”を鋳込む(いこむ)」こと。単なる道具としての鉄ではなく、使うたびに心が躍り、生きる力が湧いてくるような体験を届けていきたいと考えています。地球にある鉄という素晴らしい素材を大切に扱い、お客様に届け続けることが、私たちの役目だと思っているのです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「鉄瓶 東雲アラレ 1L」
価格:¥19,800(税込)
店名:OIGEN ONLINE SHOP
電話:0197-24-2411(10:00~17:00※土日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://oigen.jp/products/tetsubin_shinonome
オンラインショップ:https://oigen.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
及川久仁子(及源鋳造株式会社 代表取締役社長)
1960年岩手県生まれ。武蔵野美術大学短大卒業後、都内のデザイン事務所に2年間勤務。1984年、岩手に戻り及源鋳造株式会社に入社。6年間の工場勤務を経て、商品企画や自社ブランド「OIGEN」の立ち上げを牽引。常務取締役を経て、2007年に代表取締役に就任。「鉄に“愉しい”を鋳込む」をミッションに、伝統と現代の感性を融合させたものづくりを追求している。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/及源鋳造>



























