埼玉・羽生で明治から続く伝統「藍染め刺子織(さしこおり)」とジャパンブルーのテディベア「あいくま」

2026/03/19

今回、編集長のアッキーが注目したのは、驚くほどやわらかく風合いのある伝統織物「藍染め刺子織(さしこおり)」と、世界が認めたジャパンブルーを纏った愛らしいテディベアの「あいくま」です。職人が手間暇を惜しまず、糸の芯まで染め上げる伝統技法「綛染め(かせぞめ)」と、高速織機の約25分の1という驚くほどの低速で織り上げる生地には、深い魅力が宿っています。
その背景には、150年以上にわたり埼玉県羽生市で「藍・染・織(あい・そめ・おり)」の伝統を守り、あえて時間をかけることで生まれる「本物の風合い」を追求する情熱がありました。取材スタッフが、小島染織工業株式会社の代表取締役、小嶋秀之氏にお話を伺いました。

小島染織工業株式会社 代表取締役の小嶋秀之氏

―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。

小嶋 創業は1872年(明治5年)で、今年で154年目を迎えます。埼玉県羽生市は、江戸時代後期から綿の栽培や藍染めが盛んな地域で、農家の皆さんが副業として行っていた藍染め織物を企業化したのが弊社の始まりです。当時は一般の人々が農作業や山仕事などをする際に着ていた衣服などが中心で、地域の暮らしに根ざしながら「藍・染・織」の全工程を自社で一貫して行う体制を築いてきました。現在、糸染めから織りまでを一貫生産できる工場は全国でもきわめて希少ですが、150年以上この地で伝統を守り続けてきたことは私たちの誇りでもあります。長年、剣道着などの武道の世界で、激しい動きにも耐えうる機能性と美しさを両立させるものづくりを追求してきました。

150年以上の時を超え、今もなお息づく伝統の技 。
江戸後期から藍染めが盛んだった埼玉県羽生市で、地域の暮らしに根ざした「藍・染・織」の一貫体制を続けている。

―社長ご自身は、一度外の世界を経験してから家業を継がれたそうですね。

小嶋 大学卒業後は商社に勤めており、家業とは接点のない生活を送っていました。しかし、父が体調を崩したことをきっかけに継承を真剣に考えるようになったのです。2003年に戻ってきた際、幼い頃の遊び場だった工場に漂う藍の匂いを感じた瞬間、当時の記憶が鮮やかに蘇りました。そこには、私が子どもの頃から知っている従業員の方々も変わらず働いていて、その姿に歴史の重みを再確認したのです。150年という歳月は人の一生よりもはるかに長く、さらに言えば今後は永遠に続いていくものかもしれません。その長い歴史の中の「次世代へ繋ぐ1ページ」に自分も関われることに、大きな魅力を感じて決意を固めました。

―今回ご紹介する「藍染め刺子織(さしこおり)」を、一般の方向けに販売するようになったきっかけを教えてください。

小嶋 もともとは剣道着や作務衣を手がけるメーカーへ、その材料となる生地を卸しており、私たちの織物は表に出ることのない「裏方」の存在でした 。しかし、近隣の方から「1メートルだけ分けてほしい」といった要望をいただくことが増え、少しずつ切り売りを始めたのがきっかけです。その後、コロナ禍に家で過ごす時間が増えたことで、マスクやポーチなどを自分で作るハンドメイド需要が急速に高まりました。伝統工芸を特別なものではなく、日常の趣味として自分好みの形にして楽しんでほしいという思いもあり、オンラインショップでの販売にも力を入れるようになったのです。

伝統技法が宿る「藍染め刺子織生地」。
カラーはディープインディゴ(左)、ダークインディゴ(右)の2種類。

―この生地へのこだわりとおすすめの使い方は?

小嶋 昭和40年代のシャトル織機をあえて使い続けているのが最大の特徴です。現代の高速織機の約25分の1ほどの低速でゆっくりと織り上げていきます。空気をたっぷり孕ませるように織ることで、刺し子特有の凹凸感がありながらも、驚くほど柔らかく温かみのある風合いに仕上がるんですよ。

シャトル織機で空気をたっぷり孕ませるように織り上げられた生地は、驚くほど柔らかい 。
肌に触れるたび、その優しい風合いに心が安らぐ。

剣道着にも使われる素材ですから、きわめて丈夫な点も魅力です。使い込むほどにデニムのように色が変化し、自分だけの色に育っていく「経年変化」は、藍染めならではの贅沢な楽しみ方。バッグやインテリア小物など、一から手作りするひと手間にも愛おしさを感じながら楽しんでいただけたらと思います。

マスクやバッグなど、日常のアイテムに伝統工芸を取り入れて 。
使い込むほどにデニムのように色が変化し、自分だけの色に育っていく。

―生地を購入されたお客さまからは、どのような声が届いていますか?

小嶋 素材選びを妥協しないハンドメイド愛好家の方々から、熱烈な支持をいただいています。有料サンプルを取り寄せて色味や質感を確認し、納得してから購入されるケースも多くあります。「想像以上の風合いだった」「刺子織の表情が豊かで見ているだけで楽しい」といったお声をいただくと、効率を度外視して守り続けてきた甲斐があったと感じます。日本らしい丁寧なものづくりを求める方の期待を裏切らない品質であることが、高い満足度につながっているのだと考えています。

―もう一つの商品、ぬいぐるみの「あいくま」について教えてください。

小嶋 実は「あいくま」は、もともと販売する予定のない非売品サンプルだったのです。生地のPR用として、社員自ら夜な夜な手作りしていたのが始まりでした。それを展示会などに並べていたところ、お客さまから「どうしても譲ってほしい」「海外の方へのプレゼントにしたい」という声が相次ぎ、異例の商品化へと至りました。社員の生地への愛から生まれた、私たちにとっても思い入れの深いぬいぐるみです。

職人の技と社員の愛情から生まれた、愛らしいテディベア「あいくま」 。

―「あいくま」の細部にも、伝統の技が散りばめられているそうですね。

小嶋 糸を輪っか状にして染める伝統技法「綛染め(かせぞめ)」を採用しています。職人が手作業で芯まで深く染め上げることで、ムラのない美しい藍色が生まれるのです。お尻のタグには明治時代から伝わる貴重な図案を取り入れており、当時の職人の作業風景が描かれているのですよ。世界が認めるジャパンブルーを手のひらサイズで楽しめる特別感があり、一点一点わずかに異なる表情も、藍染めならではの唯一無二の価値だと自負しています。

糸の芯まで深く染め上げる「綛染め」を採用 。

お尻のタグに描かれているのは、明治時代の職人の作業風景。
ひとつひとつ異なる表情も、藍染めならでは。

―どのようなシーンで「あいくま」を手に取っていただきたいですか?

小嶋 藍染めの色は「勝色(かちいろ)」として古くから縁起がいいとされています。そのため、大切な人の門出を祝うギフトや、応援の気持ちを込めた贈り物として選んでいただくことが多いですね。日本の伝統美を、世界共通のアイコンであるテディベアの形で贈ることで、言葉を超えた喜びが伝わるはずです。日常の中でふと目に入ったときに、深い藍色を眺めて心を安らげていただけたら嬉しいですね。

藍染めの色は、古くから縁起がいいとされる「勝色(かちいろ)」 。
応援の気持ちを込めた贈り物や、海外の方へのプレゼントとしても、言葉を超えた喜びを届けてくれる 。

―世界的な評価も高いとお伺いしました。

小嶋 おかげさまで「おもてなしセレクション」を受賞することができました。また、ロンドンなど海外の感度の高い生地専門店や目利きのプロからも絶賛され、定期的に輸出も行っています。海外でも「素晴らしい」と評価されたことが、地元の皆さんにも魅力を再発見していただくきっかけになればいいなと考えています。「大切な人にこそ贈りたい」という購入者の方々の喜びの声は、私たちの大きな励みになっています。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

小嶋 この文化や技術が、200年、300年と続いていくことを最優先に掲げています。30名強の社員一人ひとりが主役となり、複数の技術を習得してものづくりを支えるチーム体制をさらに強化していきたいですね。社員を大切にする姿勢こそが、製品の一針一織に美しさとして宿るのだと信じています。藍染めの文化を絶やすことなく、新しい感性を取り入れながら進化し続け、読者の皆さんが私たちの製品を手に取ることで伝統の継承に加わっていただけるような、そんな未来を目指していきたいと考えています。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「藍染め織物〈剣道-KENDO〉素材 刺子織 厚地生地」
価格:¥3,245(税込)~
店名:KOJIMAYA FABRIC
電話:048-561-3751(9:00~17:00)
定休日:土・日・祝日(インターネットでのご注文は24時間365日受付)
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/i-kumahei/ksa1000kk/
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/i-kumahei/

「あいくま 刺子織 ダークインディゴ」
価格:¥13,200(税込)
店名:KOJIMAYA FABRIC
電話:048-561-3751(9:00~17:00)
定休日:土・日・祝日(インターネットでのご注文は24時間365日受付)
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/i-kumahei/a7f4310/
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/i-kumahei/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

小嶋 秀之(小島染織工業株式会社 代表取締役)
1970年埼玉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、伊藤忠商事に入社。2003年に小島染織工業株式会社に入社。2005年に同社代表取締役に就任。150年以上の伝統を持つ藍染織物の生産工場と新しい技術を導入した染色加工場を併設しており、伝統と革新を融合させた新しい染織工場を目指している。

インスタアカウント
https://www.instagram.com/kojimasenshoku
アカウント名:kojimasenshoku

ショップ用インスタアカウント
https://www.instagram.com/kojimayafabric
アカウント名:kojimayafabric

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中 香花 画像協力/小島染織工業>

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