
「日常を彩る力」に優れた南部鉄器。ただの目玉焼きさえ驚きのおいしさになる「フライパン21」
2026/02/25
今回、編集長のアッキーが注目したのは、厚みのある鉄がじっくりと熱を伝え、食材の旨みを引き出す南部鉄器の「フライパン21」です。キッチンに立って料理をする。そんな何気ない日常が、一つの道具で「ワクワク楽しい時間」に変わるとしたら。手に伝わる心地いい重みと、食材にじわじわと熱を伝える厚み。このフライパンで焼く目玉焼きは、驚くほど白身がぷるんと、黄身が濃厚に仕上がります。
「道具を育てる」という贅沢。その背景には、伝統を守りながらも常に使い手の声に寄り添い続けてきた、老舗メーカーの飽くなき挑戦がありました。取材スタッフが、岩手県盛岡市に本社を構える、株式会社岩鋳の代表取締役社長、岩清水 弥生氏にお話を伺いました。

株式会社岩鋳 代表取締役社長の岩清水 弥生氏
―まずは、120年を超える貴社の歩みと、そのルーツについて教えてください。
岩清水 私たちの歩みは、1902年(明治35年)にまで遡ります。曾祖父が、盛岡の地で鉄瓶(てつびん)作りから商売を始めて以来、120年以上の歴史があります。その道のりは決して平坦なものではありませんでした。最も大きな試練は、やはり戦争の時代です。武器を作るための鉄材供出が必要となり、生活道具である鉄瓶作りを中断せざるを得ない時期がありました。職人の技が絶えてしまいかねない苦境でしたが、戦後、再び火を灯すことができたのです。
曾祖父は父が生まれる直前に亡くなっており、私はもちろん、父も曽祖父のことを直接は知りません。それでも「伝統とは、決して立ち止まらないこと」という信念は、120年以上の時を超えて今の私たちの中に脈々と受け継がれています。時代に合わせて形を変えながら、南部鉄器の火を守り続けてきました。



幾多の困難を乗り越え、120年以上もの間、南部鉄器の火を守り続けてきた。
代表的な鉄瓶。
―社長ご自身は、一度外の世界を経験されてから家業に戻られたそうですね。
岩清水 はい。生まれたときから「後継ぎ」だと言われて育ちましたので、私自身もそれに疑問を持つことなく、いつかは継ぐものだと決めていました。ただ、学校を卒業後、他社へ勤務しました。当時はまだ女性の仕事が限られていた時代でしたが、大手企業での経験は今の私にとって大きな財産となっています。外の世界を知ったからこそ、当たり前すぎて気づけなかった南部鉄器の「日常を彩る力」を再発見することができたのです。戻ってから父の背中を見て学んだのは、社員一人ひとりに目を配り、業界全体の発展を願う「利他の精神」でした。自分たちだけがよくなるのではなく、仲間と共に歩む。その思いは、今の私の経営の根幹にあります。
―南部鉄器といえば鉄瓶のイメージが強いですが、「フライパン21」のような調理道具が生まれた背景を教えてください。
岩清水 高度経済成長期のころ、祖父は「鉄瓶だけを作っていては、これからの暮らしには馴染まなくなる」という危機感を抱いていました。そこで、伝統的な鉄瓶作りで培った技を活かし、現代のキッチンに馴染む調理器具への進出を決めたのです。すき焼き鍋や灰皿など、当時の食卓や生活に必要とされるものを次々と開発していきました。その流れを汲む「フライパン21」は、伝統工芸品という枠を超え、今のガスコンロやIH(一部)でも使いやすい道具として再定義したものです。守るべき鋳造技法はそのままに、今の食卓に何が必要かを問い続けて生まれた、いわば究極のスタンダードを目指しました。サイズ感や重さのバランスを何度も検討し、多くのご家庭で「一生モノ」として愛していただける今の形に辿り着いたのです。


伝統の技を現代のキッチンへ。
鉄瓶作りで培った技術が、使いやすいフライパンへと進化を遂げた。
―製造におけるこだわりや、南部鉄器ならではの独自性はどこにあるのでしょうか。
岩清水 私たちの最大の強みは、デザインから鋳造、仕上げ、そして販売までをすべて自社で完結させる「一貫生産体制」にあります。すべての工程に熟練の職人の目が行き届くからこそ、揺るぎない品質と安心をお届けできるのだと信じています。機能面では、南部鉄器特有の「厚み」が魔法のような役割を果たします。この均一な厚みが安定した熱伝導を生み、食材の旨みを逃さず芯から火を通してくれるのです。
また、調理するだけで自然に鉄分が溶け出すのも大きな特徴です。病院で貧血を指摘された方が買いに来られることも多いのですが、私はよく「漢方薬のような優しさ」と例えています。薬のような即効性はありませんが、日々の食卓で使い続けることで、さりげなく健康を支えてくれる。そんな存在でありたいと願っています。


職人の技と南部鉄器の「厚み」が織りなす、日常の優しさ。
鉄分が溶け出すため、おいしいだけでなく体にも優しい料理に。
―どのような体験を届けていきたいですか。
岩清水 まずはシンプルな卵料理から試していただきたいですね。目玉焼き一つとっても、普通のフライパンとは全く違う、ホテルの朝食のようにふっくらとした仕上がりに感動していただけるはずです。そして、何より楽しんでいただきたいのが「道具を育てる」プロセスです。使い終わったら洗剤を使わずにお湯で洗い、火にかけて水気を飛ばす。たったそれだけのことですが、繰り返すうちに油が鉄の表面にしっとりと馴染んでいき、食材がくっつきにくくなります。次第に鉄の色が深く落ち着き、美しいツヤが出てくる。新品のときよりも、使い込んだ後のほうが格段に使いやすくなっていくんです。自分だけの道具へと変化していく様子は、愛着もひとしおですよ。
―実際に愛用されているお客様からは、どのようなお声が届いていますか。
岩清水 「お母さんが使っていたものを、嫁ぐ娘へ持たせた」というエピソードを伺ったときは、本当に胸が熱くなりました。新しいものを買うこともできますが、家族で楽しい時間を過ごしてきた思い出が詰まった道具を、次の代へとつなぐ。それは単なる「物」の受け継ぎではなく、家族の思いをつなぐ役割を果たしているのだと感じます。
最近では「実家を整理していたら古い鉄器が出てきたので、また使い続けたい」という修理や手入れのご相談も増えています。世代を超えて愛され、100年後の家族にも残せる価値がある。そんな「思い出をつなぐ商品」であることを、多くのお客様に教えていただきました。
―最後に、これからの岩鋳が目指す未来のビジョンについてお聞かせください。
岩清水 私たちのビジョンは「世界に誇れる製品と、社員が誇りを持てる工場作り」を実現することです。単に品質がいいものを作るだけでなく、文化、人、環境すべてに配慮した持続可能な経営を目指しています。盛岡には、南部鉄器組合の青年部を中心に、同業者同士が技術を教え合い、切磋琢磨する温かい文化があります。こうした素晴らしい文化を次世代へつないでいくことも私の使命です。
社員たちが「ここで働いていることが誇りだ」と思える環境を整えることで、初めてお客様を幸せにできる製品が生まれるのだと信じています。100年後のキッチンでも、南部鉄器の温もりが当たり前に存在し続ける未来。伝統を守ることは、人を幸せにすることだと信じて、これからも挑戦し続けてまいります。
―素晴らしいお話をありがとうございました!

「フライパン21」
価格:¥7,700(税込)
店名:IWACHU ONLINE STORE
電話:019-635-2501
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://iwachu.co.jp/products/24011
オンラインショップ:https://iwachu.co.jp/pages/iwachu_online_store
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
岩清水 弥生(株式会社岩鋳 代表取締役社長)
1969年盛岡市生まれ。1993年に株式会社岩鋳に入社。経理や直営店での経験、父である先代社長からの学びを経て、2019年に代表取締役に就任。120年以上の歴史を持つ南部鉄器の伝統を守りながら、現代のライフスタイルに寄り添う製品作りと、社員が誇りを持って働ける工場環境の整備に力を注いでいる。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井 ちあき 画像協力/岩鋳>




























