
ポップでかわいい「地下足袋」!?和装文化を自由に楽しむモダンなテキスタイルデザイン
2026/01/29
今回編集長アッキーが注目したのは、日本の伝統と和装文化をアップデートしたファッションアイテム。伝統的な素材や技法を用いながら、現代的な感性でデザインされた”地下足袋”や”一切袋(いっさいぶくろ)”です。手がけているのは、京都のテキスタイルブランド「SOU・SOU」。日本の四季や風情をポップに表現したオリジナルテキスタイルを使った和服や小物、家具などを製作・販売しています。その背景にある想いとは?取材スタッフが、ブランドの代表兼プロデューサーである若林株式会社 代表取締役の若林剛之氏にお話を伺いました。

若林株式会社 代表取締役の若林剛之氏)
―ご自身の経歴を伺えますか?
若林 京都に生まれ、高校まで地元で暮らしていました。学生の頃からファッションが大好きで、高校卒業後は東京の専門学校に進学。お金がなかったので寮付きの学校を選んだのですが、そこがたまたま日本に1校しかないオーダーメイド紳士服の学校で。スーツを手縫いで仕立てるような高度な縫製技術を学ぶことができました。卒業後は東京のデザイナーズブランドでパタンナーとして6年間働き、26歳のときに独立。仕事を辞めてアメリカに行ったとき、現地のファッションを目の当たりにして「これこそが“本物”だ」と衝撃を受け、買い付けの仕事を始めたのです。
でもしばらくやっているうちに、アメリカで流行っているものを買って日本で売るだけでは全然クリエイティブじゃない。ただの運び屋やなぁと。もともとパンクやヒップホップが好きでしたが、そういう文化には社会的な抑圧や既存の体制に抗うための手段として発展してきた背景がありますよね。その文化をファッションとして日本に持ち込んでも仕方がない。じゃあ自分でものづくりを始めよう、やるなら日本の衣装文化の延長線上にあるものを作っていくべきだと考えるようになりました。
―そこから和装に着目されるようになったのですね。
若林 そのとき私が想像していたのは日本の織り、日本の染め、日本の縫製で作られた和服で、それが売れると国内の工場や職人さんに利益が還元されるという前提で考えていました。でも、実際は中国やベトナムなどの海外製が多いのです。しかも着物は着付けが面倒だし、値段も高い。そこで、着物の延長線上にあるようなデザインだけれど、洋服のように自由にファッションとして楽しめる——そんなものづくりを通して、日本の衣装文化やそれを支える技術の発展・継承に寄与したい。それを叶える理想の仕組みを自分で作ろうと思ったんです。

SOU・SOUを代表するアイテム「貼付地下足袋」。
カラフルなものからシックなものまで、数多くのテキスタイルデザインからセレクトできる。
―それで2003年にテキスタイルブランド「SOU・SOU」を設立されたんですね。
若林 テキスタイルデザイナーの脇阪克二さん、建築家の辻村久信さんと3人で立ち上げました。SOU・SOUでは「新しい日本文化の創造」をコンセプトに、伝統的な素材や技法を用いながら、現代のライフスタイルに寄り添うものづくりを展開しています。
―SOU・SOUの顔ともいえる「地下足袋」が生まれたきっかけは?
若林 ブランドを立ち上げて、最初は風呂敷や扇子、和菓子などを作っていたのですが、さっぱり売れなくて。このままだと倒産するなと思っていた頃に、倉庫に転がっていた地下足袋のサンプルを見つけて、直感的に「これだ!」と思いました。地下足袋って労働現場やお祭りで履かれているイメージですけど、ポップなテキスタイルデザインをほどこすことで若い子に履いてもらえるんじゃないかなと考えたんです。
まず大変だったのは、工場を探すこと。地下足袋も約98%が海外製で、国内生産しているところは全国で3社しかないんですよ。今は3社とも取引させていただいていますが、当時は必死の思いで探して、1社を見つけるのがやっとでした。そこの職人さんと何度もやりとりしながら作り上げたのが、SOU・SOUのポップでカラフルな地下足袋です。これがヒットしたことで売上がグッと伸び、会社も倒産せずに済みました。

地下足袋工場があるのは、ゴム工業の発祥地として100年以上の歴史を有する兵庫県高砂市。
職人の手によって、一つひとつ丁寧に作られている。
―偶然の出会いから誕生した商品だったんですね。地下足袋が持つ魅力を教えてください。
若林 実を言うと私は、地下足袋は日本の履物の最高傑作だと思っています。優れた機能性と独特なデザイン、そして伝統性。この3つを兼ね備えた履き物って、世界に地下足袋しかないんじゃないかと思います。
地下足袋は二股に割れたつま先が特徴ですが、これが理にかなっています。鉄棒で逆上がりするとき、親指を割って棒の下に回し、握り込むようにして持ちますよね。これは、指で挟むことで力が入りやすくなるからです。足指も同じで、親指が分かれていると踏ん張りが利きますから。だから労働現場やお祭りで神輿を担いだりするときなどに履かれているわけです。
ソールが薄くて柔らかいので、素足に近い感覚で歩けるというのもメリット。歩くたびに足裏のツボにいい刺激になるし、足の筋力など本来の機能を呼び覚ますことができます。履物のクッション性が高すぎると脳が退化するということも科学的に明らかにされています。これほど優れた履物が、大正時代から100年以上ものあいだ同じ形で作られてきたんです。SOU・SOUが作っているのも、そんな昔ながらの“本物”の地下足袋です。

SOU・SOUを象徴するテキスタイルデザイン「SO-SU-U」は、日本語で書くと”十数(そすう)”。
その名の通り、0から9までの数字が散りばめられている。
―数字が散りばめられたテキスタイルデザインも印象的です。
若林 これはテキスタイルデザイナー・脇阪克二さんの「SO-SU-U」という作品です。脇阪さんは日本人で初めてフィンランドのマリメッコ社でテキスタイルデザイナーとして活躍した方で、SOU・SOU自体、この方との出会いでつくったようなブランドでもあるんです。ルイ・ヴィトンのモノグラムや、バーバリーのチェックのようにブランド名やロゴがなくてもSOU・SOUの商品だとわかるような文様をつくりたいという思いで、ブランド立ち上げ当初からSO-SU-Uのテキスタイルを使った商品を出し続け、それが今ではすっかりSOU・SOUの代名詞になってくれています。

サイドゴアブーツの形を取り入れたデザインの「サイドゴア 革足袋 いろは底」。
ソールにはSOU・SOUオリジナルの “いろは底”を採用。
―サイドゴアデザインを取り入れたレザー素材の地下足袋もあるのだとか。
若林 はい、「サイドゴア 革足袋 いろは底」という商品です。ブーツ風のスタイリッシュなフォルムが特徴ですが、地下足袋と同じ工場で作っているので地下足袋の良さも失っていません。ソールにはSOU・SOUのテキスタイルデザイン「色は匂へど」を用いたオリジナルソール“いろは底”を使用していて、雨の日に履くと地面にひらがなが転写されるんですよ。

SO-SU-Uデザインのソールを用いた完全防水仕様のブーツをはじめ、
SOU・SOUらしい遊び心を盛り込んだ洋装アイテムも展開。
―新しい商品をつくるとき、大切にしていることは何ですか?
若林 シンプルに言うと「可愛くて楽しい」という要素だけですね。食品であれば、そこに「おいしい」が加わります。着物や浴衣を持っていても、楽しくなかったら着ないと思うんです。「ちゃんと着付けしなあかんよ」とか、うるさく言われると「もうええわ」ってなりますよね。そういった思いから生まれたのが「SOU・SOU着衣(きころも)」と「SOU・SOU傾衣(けいい)」という和装カテゴリーです。
京都の祇園祭りでは浴衣姿のカップルを見かけることもありますが、少し前までは彼女は浴衣なのに隣にいる彼氏はヒップホップ系のファッションということも多かったんですよ。別に浴衣や着物で揃えなくてもいいのですが、和服とのバランスが取れる装いがあってもいいじゃないですか。Tシャツにジーパンくらいの感覚でパパッと着られて、和服の人の隣にいてもすんなり馴染むような。そんな現代のライフスタイルにフィットした和装をイメージしています。

着物のようですが着付けは不要。和装の要素を取り入れてデザインされたアイテムが揃う「SOU・SOU着衣」。

現代の傾き者(=変わった身なりをする人や自由奔放にふるまう人のこと)を
コンセプトにした和装カテゴリー「SOU・SOU傾衣」では、独自のスタイルを持つ衣装をデザイン。
―若い頃に描いていた夢と、今のお仕事。振り返ってみていかがですか?
若林 何十年後かに地下足袋を作るとは思っていませんでしたね。でも今の方が、デザイナーズブランドにいた頃より、よっぽどやりがいもあるし大義もあるし楽しいです。若い時の夢って別に追い続ける必要ないねんな、と思いましたね。やりたいことをやるのもいいのですが、自分ができることをやることの方が大切。「松は松らしく」という言葉がありますけど、松には松にしかできないことがある。そういうことに気づけるチャンスがあったのは、SOU・SOUのおかげかなと思います。
僕が子どもの頃の夢は歌手だったんですよ。でもカラオケ行っても70点以上取れないんです。今も諦めてなかったら悲劇ですよね。でも、たまたまファッションも好きで、幸いものづくりも勉強した。立ち上げたブランドには、ファンの方々もいてくださる。自分の考えたことで誰かを喜ばせることができる、それでもう人生としては最高やなぁと。夢を追い続けることに固執すると、本当に大事なものを見失う気がします。

SOU・SOU流の和の装に合うカバンを、という思いから生まれた「一切袋 穏」。
江戸時代から使われていた「あづま袋」から着想を得た、風呂敷にショルダーを付けたようなデザイン。
―今後の展望をお聞かせください。
若林 最近上海で、すごくいいパートナーを見つけまして。上海の人たちもみんないい人ばかりで。和装の根本っていうのはやっぱり中国から来ているので、親和性があると感じました。
アパレル業界では世界中に同じものを輸出するのが普通ですが、私はただ既存の商品をそのまま持っていったり出店したりするのではなく、中国の伝統的な技術や生地を用いた中国バージョンのSOU・SOUを作っていきたいと考えているんです。いいパートナーさえ見つかれば、ヨーロッパでもアメリカでも同じことができる。そうやってその国にあったSOU・SOUを作って、単なるファッションではなく文化やアートとして見てもらうことができれば嬉しいなと思います。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

「貼付地下足袋」(SO-SU-U昆(こん) 薄墨色(うすずみいろ))
価格:¥12,870(税込)
店名:SOU・SOU netshop
電話:050-3172-1526(12:00〜17:00 水・日曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.sousou.co.jp/products/0082276
オンラインショップ:https://www.sousou.co.jp/

「サイドゴア 革足袋 いろは底」(濡羽色(ぬればいろ))
価格:¥22,900(税込)
店名:SOU・SOU netshop
電話:050-3172-1526(12:00〜17:00 水・日曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.sousou.co.jp/products/0400501
オンラインショップ:https://www.sousou.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
若林 剛之(わかばやし たけし)(若林株式会社 代表取締役)
1967年京都生まれ。日本メンズアパレルアカデミーでオーダーメイドの紳士服の製作を学んだ後、アパレル会社勤務を経て、1994年、自身で買い付けした商品を扱うセレクトショップをオープン。1996年に若林株式会社を設立。2003年にSOU・SOUを共同設立し、地下足袋や和服、和菓子や家具など、多岐にわたるアイテムを製作・販売。また、様々な分野の企業とのコラボレーションによって、日本のテキスタイルデザインの可能性を広げている。
<文/野村枝里奈 MC/藤井ちあき 画像協力/SOU・SOU>




























