まろやかな甘口仕立て「数の子松前漬」と、脂ののった天然紅鮭でつくる「親子ルイベ」

2026/06/25

今回、編集長のアッキーが注目したのは、北海道・函館で愛され続けている「数の子松前漬」と、10日間に及ぶ熟成が驚くほどまろやかな口溶けを生む「紅鮭親子ルイベ」です。手造りを貫くその味わいには、素材を知り尽くした目利きと、時間を惜しまない職人のぬくもりが宿っています独自の理想を追求して辿り着いた「甘口」の幸福感は、自分を労わる静かなご褒美。
その背景には、異業種から転身して実績を守り抜く2代目の覚悟がありました。取材スタッフが、北海道に本社を構える、株式会社誉食品 代表取締役社長の熊谷輝彦氏にお話を伺いました。

株式会社誉食品 代表取締役社長の熊谷輝彦氏

―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。

熊谷 もともとは私の妻の父である先代が1982年に創業いたしました。魚の卸売を主業としていましたが、その傍らで始めた「昆布巻き」がきっかけでした。卸売業者としての確かな目利きを活かし、ニシンを一匹丸ごと使った贅沢な昆布巻きは、当時とても珍しく、大きな評判をいただいたと聞いています。

しかし平成に入り、若い世代の方々の好みが変化していく中で、いつまでも昆布巻き一本では将来的に厳しいのではないかという危機感を抱くようになりました。そこで、より幅広い世代に親しんでいただける松前漬や塩辛へと主力をシフトさせていったのです。魚のおいしさを届けるという軸は変えずに、時代のニーズに寄り添う柔軟な姿勢を大切にしてきました。

魚の卸売業から始まった誉食品。
事業の傍らで始めた昆布巻きから始まり、時代の変化に合わせ松前漬けや塩辛の製造を手掛けている。

―社長ご自身は、東京で宝石やアクセサリーを扱うお仕事をされていたそうですね。

熊谷 全く異なる業界に身を置いていたのですが、結婚を機に函館へ移り、家業を手伝うことになりました。初めて足を踏み入れた製造現場は、想像を絶する厳しさでしたが、同時に職人たちのひたむきな手仕事に強く心を打たれました。食は人の命を支えるきわめて重要なものだという実感を抱き、先代が築き上げた「手造り」の精神を何としても継承しようと決意したのです。現場の苦労を肌で知っているからこそ、スタッフたちが守り続ける味には絶対の自信を持っているのです。

―商品について伺います。「数の子松前漬」は、一般的なものよりもまろやかな印象を受けます。

熊谷 当時の函館では、塩気の強い味が主流でした。そんな中で弊社は、あえて「甘口・薄味」という独自の路線を切り拓いてきたのです。毎日食べても飽きない、体に優しいおいしさを届けたいという一心で、理想の配合を追求し続けました。当初は地域の常識とは異なる味付けに戸惑われることもありましたが、「誉食品の甘口がいい」と認めてくださるお客さまが徐々に増え、今では函館全体でもこうした味付けが好まれるようです。時代に合わせて少しずつ塩分を控え、素材本来の甘みがより際立つ「黄金バランス」へと、今も微調整を重ね続けています。

時代に合わせて調整を重ね、独自の甘口に仕上げた「数の子松前漬」。

―その「おいしさ」を支える、具体的なこだわりを教えてください。

熊谷 原料には、希少な大西洋系ニシンの卵のなかでも、一切の折れがない完全な形の「一本羽(いっぽんば)」を贅沢に使用しています。まずは仕込みの3日前から大きな桶でじっくりと塩抜きを行い、熟練のスタッフが目視で不純物を丁寧に取り除いていきます。この手作業こそが、雑味のない澄んだ味わいを生むのです。

さらに、ここからが一番の肝なのですが、弊社の松前漬は他社よりも1日長い「3日から4日間」をかけて漬け込みます。この「あと一日の辛抱」が、数の子の芯まで深いコクと旨みをしっとりと染み渡らせる秘訣なのです。機械では決して出せない、手造りならではの絶妙な食感と風味を大切にしてきました。

長く漬け込むことで、数の子の芯までコクと旨味が染み込む。

―社長おすすめの、贅沢な楽しみ方はありますか?

熊谷 炊きたての白いご飯にのせるのはもちろんですが、私がぜひ試していただきたいのは、ご飯にのせてだしやお茶を注ぐ「松前漬け茶漬け」です。さらさらとかき込む瞬間に、松前漬の旨みが溶け出し、最高のごちそうになりますよ。

さらにおもてなしの席では、練りわさびや柚子の皮をほんの少し添えてみてください。柚子の香りがふわりと立ち上がるだけで、日常の食卓が一気に料亭のような華やかな雰囲気に変わります。日本酒と共にゆっくりと味わっていただきたいです。

おすすめはお茶漬け。
松前漬けの旨味がだしに溶け出し、最高の贅沢を味わえる一品に。

―お客さまからも高い信頼を得ているそうですね。

熊谷 ありがたいことに、第60回函館圏優良土産品推奨会で、こちらの松前漬が最高賞である「函館市長賞」を受賞するなど、プロの方々からも品質を評価していただいています。何より励みになるのは、15年、20年と通い続けてくださるリピーターの方々の存在です。「ここの松前漬でないと」とおっしゃってくださるファンの方々に支えられています。

お客さまがご友人に裾分けしてくださり、「どこで買えるの?」と聞かれたことがきっかけで新しいご縁が広がることも多いそうです。こうした口コミから広がる信頼の輪こそが、私たちの誇りであり、ものづくりの原動力になっています。

―もう一品の「紅鮭親子ルイベ」についても教えてください。

熊谷 もともと弊社には、紅鮭を麹で漬け込んだ「石狩漬」という看板商品がありました 。非常にリピーターの多い自慢の味なのですが、「このおいしさをさらに引き立て、食卓の主役になるような華やかさを出せないか」と試行錯誤して生まれたのが、この親子仕立てです 。

脂ののった天然の紅鮭と、宝石のようにはじけるいくらを組み合わせた、心躍る構成に仕上げました。贈り物としても大変喜ばれる一品で、食卓に並べるだけでその場がパッと明るくなるような満足感を目指しました。魚そのものの美しさを活かしつつ、麹の力で鮭の旨みを最大限に引き出しています。

紅鮭を石狩漬風に仕上げ、いくらをトッピングした華やかな一品。

―このルイベ、驚くほどまろやかで生臭さが気になりません。ここにも秘密があるのでしょうか。

熊谷 魚特有の生臭さを徹底的に取り除くため、私たちは10日間という時間と手間をかけています。まず、紅鮭を社内で三枚におろし、骨や皮、血合いなどを丁寧に取り除いてサイコロ状にカットします。その後、本漬けの前に3日間の「一時調味漬け」を挟むのです。この工程でしっかりと臭みを抜き、さらに本漬けと合わせて合計10日間ほどじっくり熟成させることで、麹の優しい甘みが鮭の身の奥まで浸透します。一度の仕込みでわずかな量しか作れないほど手間はかかりますが、このまろやかな口溶けだけは、絶対に譲れないこだわりなのです。

紅鮭を麹とともにじっくり熟成させ、麹の甘みを浸透させる。

―こちらは、どのようにいただくのがおすすめですか?

熊谷 解凍したてのルイベをご飯にたっぷりのせて召し上がってみてください。とろける紅鮭と、温かいご飯、そして弾けるいくらの食感。麹のまろやかな甘みが体に染み渡ります。このおいしさは全国的にも注目していただいており、九州のテレビ番組で「取り寄せたい逸品」として紹介されたこともあるのですよ。地方を問わず、本物のおいしさを求める方々に愛されていることを、とても嬉しく思っています。

―最後に、今後の展望について教えてください。

熊谷 伝統の味を守りながらも、新しい感性を取り入れ続けていきます。最近では、若い世代の方向けに「数の子チーズ」といった新ジャンルの商品開発にも力を入れており、展示会でも大変良い反応をいただいています。実は現在、私の娘が後継者として修業中なのです。かつて私が先代から受け取ったバトンを、次は娘が受け継ぎ、新しい風を吹かせてくれることを楽しみにしています。家族で紡いできたこの物語を次世代へと繋げ、「いつまでも変わらない、安心できる函館の味」として、たゆまぬ挑戦を続けていくつもりです。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「数の子松前漬」
価格:¥1,015(税込)
店名:誉食品ネットショップ
電話:0138-86-9291(08:00~17:00)
定休日:土曜日、日曜日、祝日
商品URL:https://hakodate-homare-shop.com/item-detail/1499947
オンラインショップ:https://hakodate-homare-shop.com/

「紅鮭親子ルイベ」
価格:¥1,858(税込)
店名:誉食品ネットショップ
電話:0138-86-9291(08:00~17:00)
定休日:土曜日、日曜日、祝日
商品URL:https://hakodate-homare-shop.com/item-detail/1536517
オンラインショップ:https://hakodate-homare-shop.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

熊谷輝彦(株式会社誉食品 代表取締役社長)
1964年生まれ。奈良県出身。東京で宝飾・アクセサリー業界に従事した後、結婚を機に函館へ移住。義父が創業した株式会社誉食品に入社し、現場での厳しい修業を経て、二代目代表取締役社長に就任。先代から受け継いだ「手造りへのこだわり」と、自身の繊細な感性を融合させ、時代に即した「甘口」の海の幸を追求し続けている。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中香花 画像協力/誉食品>

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