福島の酒米「福乃香」を100%使用。穏やかな香りと優しい旨みが広がる純米吟醸酒「ふ」

2026/06/01

今回、編集長のアッキーが注目したのは、一口飲めば“ふぅ”と安らぎが広がるような、マイルドで優しい口当たりが特徴の純米吟醸酒「ふ」です。福島県が開発した、酒造りに最適な酒造好適米「福乃香(ふくのか)」を使用。料理や会話をそっと引き立てる「最高の脇役」として丁寧に醸されています。
その背景には、幾多の困難を創意工夫で乗り越えてきた蔵の誇りと、地域への深い愛情がありました。取材スタッフが、福島県に本社を構える、笹の川酒造株式会社 代表取締役の山口哲蔵氏にお話を伺いました。

笹の川酒造株式会社 代表取締役の山口哲蔵氏

―まずは、御社の歩みについてお聞かせください。

山口 私たちのルーツを辿ると、1710年に猪苗代湖(いなわしろこ)の南にある舟津という港町で酒造免許を取得したのが始まりです。その後、1742年に商業の盛んな郡山の地へ移り、1765年に本格的に酒造りを開始しました。300年を超える歴史の中には大きな転機が何度もありましたが、特に印象深いのは先代たちが窮地を乗り越えてきた「創意工夫」の精神です。太平洋戦争中の深刻な米不足の際には、東北で先駆けて合成清酒の製造に転換。原料となるアルコールを製造するための蒸留機を木製の桶を組み合わせて自分たちで造っていたという記録が残っています。また戦後、アメリカの進駐軍の需要を見込んでウイスキー製造を志した際も、当時の主税局長であり、後の総理大臣・池田勇人氏に祖父が直訴に行き、わずか2週間ほどで製造免許をいただいたというエピソードもあります。

1765年の創業から260余年、日本酒に加え、自社の蒸留技術を活かしたウイスキーや焼酎も幅広く展開。

―酒造りに対するこだわりについて教えていただけますか。

山口 私は10代目として創業250年の年に、戸籍の名前を変えて「哲蔵」を襲名しました。代を繋ぐことは非常に重い責任を伴いますが、伝統というバトンを次の世代へ渡すための決意だと考えています。私たちの酒造りの大きな特徴の一つは、私の妻が杜氏を務めていることです。女性ならではの視点や感性は、現代の食卓において非常に大切な要素だと感じています。妻が現場を指揮するようになってから、さまざまな賞を受賞するなど、周りから評価をいただく機会が多くなりました。酒造りの現場に女性の感性が加わることで、力強さの中にもどこか優しく、現代の女性の好みにも寄り添うような味わいを追求できるようになったのです。

―今回ご紹介する純米吟醸酒「ふ」は、とてもユニークなネーミングですね。誕生した背景にはどのような思いがあったのでしょうか。

山口 このお酒は、福島県が長い歳月をかけて新しく開発した酒造好適米「福乃香(ふくのか)」との出会いから生まれました。地元の新しいお米を使って、地域の人々に愛される「真の福島のお酒」を造りたいという情熱が形になったものです。ネーミングについては、既存の日本酒の難解なイメージを払拭したいと考え、ひらがな一文字の「ふ」を採用しました。
この一文字には、3つの想いを込めています。福島の「ふ」、福乃香の「ふ」、そして慌ただしい日常の中で一口飲んだときに、心から「ふぅ」と安らげる瞬間を届けたいという思いです。ラベルのデザインも、直感的に「あ、いいな」と感じていただけるような親しみやすさを大切にしました。

福島県が開発した「福乃香(ふくのか)」を使用した純米吟醸酒「ふ」。

―お酒の味わいや、こだわりについて詳しくお聞かせください。

山口 私の持論なのですが、お酒は食卓の主役ではなく、会話を弾ませるための「最高の脇役」でありたいと考えています。ですから、「ふ」も料理を引き立て、場を和ませることに徹した設計にしました。日本酒特有のツンとしたアルコール感を抑え、米の柔らかな旨味を最大限に引き出した、きわめてマイルドな口当たりを実現しています。女性杜氏の繊細な技によって、洗練された華やかな香りと、スッと喉を通るキレの良さを両立させました。福島の豊かな水と、丁寧に磨き上げた「福乃香」が織りなす透明感は、この土地でしか出せない唯一無二のものです。日本酒を飲み慣れていない方でも、一口目で「おいしい」と実感していただけるような、包容力のある味わいを目指して造っています。

女性杜氏の繊細な技により、華やかな香りとキレの良さを引き出している。

―「ふ」をよりおいしく楽しむための、おすすめの飲み方はありますか。

山口 ぜひ、お気に入りのワイングラスに注いでみてください。純米吟醸ならではの華やかな香りが広がり、より贅沢な気分を味わっていただけます。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で最高金賞をいただいたこともあり、現代的な楽しみ方にぴったりの設計になっています。また、肌寒い夜には人肌程度の「ぬる燗」もおすすめです。温度を上げることで米の柔らかな甘みがより際立ち、心までじんわりと温まる感じがします。和食はもちろんですが、洋食や日々の家庭料理にも合います。食中だけでなく、一日の終わりに、自分を労う「リセットの時間」としても楽しんでいただければ幸いです。

―さまざまなコンテストでも高く評価されていますが、お客さまからはどのような声が届いていますか。

山口 専門家が技術の精度を審査する鑑評会での評価も光栄なことですが、それ以上に「全国燗酒コンテスト」や「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」のように、お客様が実際に楽しむシーンに近い視点で選ばれる賞は、私たち造り手にとって格別の喜びです。プロが認めた確かな品質であることを安心材料として、大切な方への贈り物に選んでくださる方も増えています。
名前が可愛らしくて親しみやすいことや、誰にでも飲みやすいマイルドな味わいから、「ギフトとして贈るとセンスがいいと喜ばれる」というお声もよくいただきます。自分へのご褒美としてはもちろん、福島の温かさを伝える手土産としても、多くの方に信頼をいただいていることは、造り手として大きな励みになっていますね。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

山口 最も大切なことは、この酒蔵を「続けていくこと」だと考えています。現在は、地域のシンボルだった廃校を活用して、ウイスキーの貯蔵庫として蘇らせるプロジェクトも進めています。伝統を守るだけでなく、地域と共に新しい文化を創り出していきたいのです。現在は大学4年生の長男も、ゆくゆくは11代目として蔵を継いでくれることを願っています。100年先を見据え、次世代へ確かな技と精神をバトンタッチしていく。酒造りを通じて福島を元気にし、いつか世界中から人々が訪れるような場所を目指して、これからも一歩ずつ歩みを進めていきたいと考えています。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

「笹の川 福乃香 純米吟醸『ふ』(720ml)」
価格:¥1,936(税込)
店名:風の酒蔵 笹の川酒造
電話:024-945-0261(9:00~16:00)
定休日:土・日・祝日・お盆期間・9/9・年末年始(当社カレンダーによる)
商品URL:https://www.sasanokawa-shop.com/p/item-detail/detail/i164.html
オンラインショップ:https://www.sasanokawa-shop.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

山口哲蔵(笹の川酒造株式会社 代表取締役)
1954年、福島県生まれ。成蹊大学卒業後、1977年に山桜酒造(現・笹の川酒造)へ入社。1992年に代表取締役に就任。2015年には創業250周年を機に、代々受け継がれてきた伝統を継承する使命感から、戸籍上の名前も「哲蔵」へと襲名した。東北最古の地ウイスキーメーカーとしての誇りを守りつつ、地域再生プロジェクトにも力を注いでいる。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井ちあき 画像協力/笹の川酒造>

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