
創業300年!お茶に合う和菓子。姫路の銘菓「玉椿」と「塩味饅頭」
2025/12/18
創業から300年以上。江戸幕府の将軍家とも縁の深い、兵庫県姫路市の老舗和菓子店があります。今回、編集長のアッキーが注目したのは、幻とも呼ばれる希少な「白小豆(しろしょうず)」を贅沢に使った銘菓「玉椿(たまつばき)」と地元で長年愛されている「塩味饅頭」です。
その背景には、「江戸や京都に負けない菓子を」という姫路藩の熱いプライドと、それを現代に守り伝える若き社長の挑戦がありました。兵庫県姫路市に本社を構える、株式会社伊勢屋本店の代表取締役社長、山野芳昭氏に取材スタッフが、話を伺いました。

株式会社伊勢屋本店 代表取締役社長の山野 芳昭氏
―まずは、御社の歩みをお聞かせください。
山野 1702年(元禄15年)に創業しましたので、現在まで300年を超える歴史があります。大きな転機となったのは江戸時代、天保年間(1830年~1845年ごろ)のこと。当時の姫路藩家老であった河合寸翁(かわいすんのう)公から、「江戸や京都に劣らない菓子を作るように」という命を受けたことが始まりなんです。その特命を受けて、当時の職人である伊勢屋新右衛門が江戸へ修行に向かい、その技術を持ち帰って数種類の菓子を献上したことが、今の菓子作りの礎になっています。

元禄15年の創業から300余年。
姫路藩家老の命により始まった菓子作りの伝統は、若き当主へと受け継がれている。
―社長ご自身の経歴について伺います。家業にはいつ頃戻られたのでしょうか?
山野 大学卒業後は関西を離れ、東京の製粉会社に就職しました。小麦粉を扱う食品メーカーで、そこで数年ほど働いていました。広い世界を見ておいたほうがいいという思いもあり、外から食の現場を経験しました。その後、30歳くらいの時に家業へ戻り、2022年に社長に就任しました。当時私は38歳で、社内の職人やパートさんを含めても一番の最年少だったんです。ベテランの職人たちが守ってきた暖簾(のれん)の重みを感じつつも、若い感性で新しい風を吹き込んでいきたいと考えています。
―看板商品「玉椿」は、どのようなきっかけで誕生したのですか?
山野 「薄紅色の柔らかな求肥(ぎゅうひ)に包まれた、上品で透き通るような甘さが特徴です。これは天保年間のことですが、11代将軍・徳川家斉(いえなり)の娘である喜代姫(きよひめ)様と、姫路藩主・酒井忠学(ただのり)公との婚礼という慶事がきっかけに誕生したお菓子なんです。
姫路に誇れるものを、ということで開発された数ある和菓子の中で、家老の河合寸翁公が最も気に入り、「玉椿」と命名されたといわれています。婚礼にあたって考案されたと言い伝えられていますので、まさに幸せな門出を祝うために作られたお菓子です。当時の花嫁様も、この味に微笑まれたかもしれませんね。また、戦後の何もない時代にも、手作りだったからこそいち早く復興でき、昭和天皇が関西へ行幸された際には献上の栄誉も賜りました。そうした歴史の節目に、常にこのお菓子があったのです。

薄紅色の求肥と黄金色の黄身餡が織りなす断面は、まさに咲き誇る椿の花のよう。
―「玉椿」の素材や製法について、こだわっている点を教えてください。
山野 一番のこだわりは、やはり餡に使っている「白小豆(しろしょうず)」ですね。これは日本でも収穫量が非常に少なく、栽培が難しいため「幻の小豆」とも呼ばれる希少な素材なんです。一般的な白餡の手亡豆(てぼうまめ)とは違い、雑味がなく、香り豊かで上品な風味が特徴ですね。
この白小豆を丁寧に炊き上げ、ゆで卵の黄身を裏ごしして加えることで、濃厚でコクのある「黄身餡(きみあん)」に仕上げています。それを包む求肥には、北陸産の最上級の羽二重粉(はぶたえこ)を使用しました。冬の寒さの中に凛と咲く椿の花に見立てた、薄紅色の愛らしい形も特徴の一つです。
白小豆で作ったあんこは非常に柔らかく、口当たりが良いのも魅力なんですよ。口に入れた瞬間の、求肥のもっちりとした食感と、黄身餡のとろけるような甘さが一体となる感覚は、素材への妥協なき追求があればこそだと思っています。

味の決め手となるのは、国内でも生産量が極めて少ない白小豆。
手間ひまをかけた職人の手仕事が、素材本来の上品な風味を引き出している。
―おすすめの食べ方や、楽しみ方はありますか?
山野 玉椿は一口で食べてしまうのではなく、ぜひ半分かじってみてください。そうすると、中の黄色い黄身餡と、外側のピンクの皮のコントラストが、まるで本物の椿の花のように見えるんです。その断面の美しさを愛でていただくのも、一つの楽しみ方ですね。
お飲み物は、やはりお抹茶がよく合います。お茶を点てて、季節を感じながらゆっくりと味わっていただきたいですね。

濃厚な黄身餡の甘さは、点てたばかりの抹茶と好相性。
―長年愛され続けている理由や、お客様からの評価について教えてください。
山野 昭和天皇への献上をはじめ、長年にわたり宮内庁の各宮家への贈り物として度々お買い上げいただいている実績があります。そうした歴史が、お客様にとっての安心感や信頼につながっているのだと思います。現代でも「五つ星ひょうご」への選定や、お取り寄せグルメアワードでの受賞など、変わらぬ評価をいただいています。地元・姫路では「姫路土産といえばこれ」と言っていただけることも多く、大切な方への手土産として選んでいただけるのは本当にありがたいことですね。
―もう一つの銘菓「塩味(しおみ)饅頭」についても教えてください。
山野 塩味饅頭は、赤穂や姫路など播州地方に古くから伝わる郷土菓子で、私たちも長年作り続けている大切な商品です。地域の方々にとっては、昔から馴染みのある、ふるさとの味なんです。
地域全体で愛されてきたお菓子ですが、時代に合わせて少しずつ変化もさせています。最近では、姫路城を描いた新しいデザインのパッケージに刷新し、観光で来られた方にも手に取っていただきやすくしました。


播州地方で古くから愛される、塩味が効いた大人の味わい。
姫路城を描いた新パッケージは、旅の思い出や手土産にも最適。
―「塩味饅頭」ならではの魅力や、おすすめの味わい方はありますか?
山野 味はこしあんと、粒あんの小倉、そして抹茶などをご用意しています。甘いだけではなく、塩味が効いているので、甘すぎるのが苦手な方やお酒を嗜む方にも「甘じょっぱい」味わいが好評なんですよ。実は、そのまま食べるだけでなく、お椀に入れてお湯を注ぎ、溶いて召し上がっていただくのもおすすめなんです。少しとろっとした「お汁粉」のようになり、寒い日には体が温まります。一つの商品で二度楽しめる、ちょっと通な食べ方として提案しています。
―「塩味饅頭」には、どのようなファンがいらっしゃるのでしょうか。
山野 「玉椿もいいけれど、塩味饅頭も好き」という、熱心なファンの方も結構いらっしゃるんです。玉椿が華やかな「ハレ」のお菓子だとすれば、塩味饅頭は毎日の生活に寄り添う、飽きのこない味わいなのかもしれません。隠れた名品として、長くご愛顧いただいていますね。
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
山野 「姫路といえば玉椿」というイメージを全国に広め、お菓子を通じて故郷である姫路の知名度をもっと上げていきたいですね。姫路城を見に来られた方が、旅の思い出と共に私たちの味を持ち帰ってくださる、そんな存在になりたいと思っています。そのためには伝統を守るだけでなく、革新も必要です。最近では、伝統的な技術を活かしつつ、チョコレートを使用した「プレミアム花祥月」など、洋菓子の要素を取り入れた新商品の販売もしています。若い職人の採用や育成にも力を入れ、300年続く技術と心を、次の世代へしっかりと繋いでいきたいですね。
―素晴らしいお話をありがとうございました!

「玉椿 5個入」
価格:¥842(税込)※2026/2/21~896円(税込)
店舗名:伊勢屋本店
電話:079-292-0830(9:00~16:00)
定休日:1月1日のみ。インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.iseyahonten.com/shopdetail/000000000098
オンラインショップ:https://shop.iseyahonten.com/

「塩味饅頭 6個入」
価格:¥745(税込)※2026/2/21~810円(税込)
店舗名:伊勢屋本店
電話:079-292-0830(9:00~16:00)
定休日:1月1日のみ。インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.iseyahonten.com/shopdetail/000000000006/ct57/page1/price/
オンラインショップ:https://shop.iseyahonten.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
山野 芳昭(株式会社伊勢屋本店 代表取締役社長)
1984年生まれ。大学卒業後、東京の食品メーカー(製粉会社)に勤務し、食の流通や現場を学ぶ。30歳頃に家業である株式会社伊勢屋本店へ入社。2022年、38歳で代表取締役社長に就任。300年続く老舗の暖簾を守りながら、組織の若返りや新商品開発など、伝統と革新の融合に取り組んでいる。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/藤井 ちあき 画像協力/伊勢屋本店>




























